デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録 作:enigma
「うーむ、ここまでは拍子抜けするほど簡単だったな、ここまで・・・はな。」
星が強く大きく輝く夜空、地平線の彼方まで続く明鏡の如き青い水面・・・家を出てこのオーバーヘブンの異次元世界に踏み込んだ俺は、十分程時間をかけてさっきここに集合させた就寝中の八神家御一行と足元に置かれている闇の書に視線を向ける。八神はともかくヴォルケンリッター達は事前に確認した通り監視網がキツく、闇の書に至っては四六時中研究員達がデータ取りに励んでいてどうしたものかと悩んだが、騎士達は【監視網に引っかからないように、全員眠ったままこの世界に移す】という真実を上書きしてそれも問題なく解決し、今はこの通りだ。闇の書は・・・・・・うん、さっさと終えて戻そう。
騎士達はともかく八神はやての方はこれとセットで解決しないと何が起こるかわからんし、仕方がないね(白目)
(さあ、次の一手だ。解決する順番はまずは・・・こいつらからにするか。いきなり主から解決したらこれがどう動くかわからんし。)
顔を顰めながら闇の書を足で小突き、次いで寝こけているヴォルケンリッター達の下に歩み寄る。
「ザ・ワールド・オーバーヘブン、真実を上書きしろ。」
『無駄無駄無駄無駄ァッ!!』
オーバーヘブンの拳を一発ずつ打ち込んで【 闇の書から独立した存在になる】という真実を騎士達に上書きする。
上書きされた騎士達は数瞬程体にノイズが走った後、それが終わって上書きが完了する。
「これでこっちはOK。一応目を覚ましても面倒だしこのままお帰り願おう。」
自分の精神力を使ってヴォルケンリッター達には八神家のそれぞれの寝床に帰っていただいた。
「次は・・・まあ妥当に考えて両方同時に解決するのが望ましいよなぁ?」
次に見据えるは、八神はやてと闇の書のセット。こっちは片方ずつ解決しようとしても、上書きの最中に闇の書の悪足掻き、もしくは暴走が起こってご破産になる場合があるため、はやての契約解除とほぼ同時に本の全システムを強制的に停止させる。その後で、序でに・・・えっとなんだったっけ?たしか矢島の話だと無限転生機能と自己防衛機能が無ければ管理局の連中でもどうにかなるんだったか?うん、その辺りの機能を消去することにしよう。もちろんバックアップも軒並みその関連は消す。
あ、それと勝手に契約してパスを繋げられないようにもしとかないと。また同じ事の繰り返しは嫌だし。
「というわけで、始めていくか。」
はやての契約は多分そこまでパワーはいらないだろうから闇の書に触れる左手にパワーを集中して・・・・・
---ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ
「よし、OK。」
充填が完了し、
「オーバーヘブン!」
オーバーヘブンをはやてと闇の書に発動する・・・・!?
「&$@%×●≠‰▶↟∇∅%≯⊕&⬛⊕∀∃」
「ぬおっ、こいつ・・・!!」
ノイズが走る闇の書が藻掻き苦しむ様にザ・ワールドの手の中で真っ黒のオーラのようなものや悍ましい気分にさせられるような奇怪な音を出しながら暴れ始め、うっかり手放さないようにちゃんと持ちながら上書きを続けていく。
「&$#@・・・≪‰∅∂★♂◇・・・∇∅≥<⊕⊗・・・・ア゛・・・・ri餓・・・・t・・・o・・」
2〜3秒ほどの時間経過の後、抵抗も音も徐々に弱くなっていき、上書き開始から4秒ほど経った後、上書きが終わって闇の書は完全にその動きを止めた。一分くらい観察するがその間も全く動きは見られない。
「・・・両方の上書きの終了を確認。あとはシステムを幾つか消して・・・・・よし!これで仕事は完了だ・・・・思いの外エネルギー使わなかったな・・・」
ちょっとした達成感と肩透かしを食らったような気分を味わいながら、ふぅっ、と1つため息をつく。終わってみれば案外と呆気なかったな。
それに、今回のでオーバーヘブンの残量が思いの外減っていない事に少し驚きだ。はやての契約解除も騎士たちの独立も全部含めて、精々+99のディスクが一枚分てところか、減ったのは。計画練ってた当初はフルチャージのディスク三十枚分くらいは使うかもとか思ってたんだが・・・・何でだ?これ闇の書がまだ不活性状態だったからだろうか?
まあいい。消費が少なくて済んだのは良い事だし、これでひとまず心配する要素はなくなったと言っていいだろう。
あ、でもその前に闇の書の記録から俺やこの空間のことを消しておかないとな。万が一そこから俺のことが漏れたら不味いし。
「・・・ファ〜〜〜〜、ねぇむい。用事も終わったしさっさとこいつも返すか。」
いよいよやる事が終わりそうになり、色々と安心したためかそろそろ眠気を感じ始めてきて思わず欠伸を漏らす。いつもの生活リズムを考えれば当たり前といえば当たり前だろう。まだ寝る訳にはいかないと、目の端を軽くこすりながら湧き上がる睡眠欲を振り払い、俺は闇の書を左手で持って俺やこの世界に関する記録を消しておく。その後で寝ているはやての右手を同じく右手で軽く握り、またオーバーヘブンをここに来る時と同じように自分の精神力で発動して、はやてと闇の書も元いたところへと返した。
「さっ、明日も早いし帰ろかえろ。ファア〜〜〜・・・アァ〜〜〜。」
そして最後に、靴を脱いで持ってきていたビニール袋に入れ、寝間着に着替えてから俺自身にオーバーヘブンを発動して自室に戻る。部屋の壁掛け時計が十時半をちょうど過ぎていたのを確認し、ベッドに潜り込んで取り敢えず今日という日を終えることとなった。
これで明日からまた平和に過ごせる・・・・zzzz〜〜〜
Side out
===AM09:09 アースラ艦内の会議室===
「「「 「「「·························」」」」」」
明くる日の朝・・・リンディ、プレシア、ヴォルケンリッターの四人、クロノがそれぞれ会議室の席につき、重苦しい雰囲気で沈黙しながら机の中心にあるものを睨んでいた。
中心にあるものは闇の書・・・前日の夜、なんの前触れも無く管理局の技術開発部(プレシアの今の仕事場)から忽然と姿を消し、局内全体を大いに混乱させた後完全に機能を停止された状態で、まるで何事も無かったかのように元の解析装置の上にポンッと置かれていたそれを見ながら、リンディは重々しそうに口を開いていく。
「・・・・・何度も同じことをお聞きするようで申し訳ありませんが、それでも念のためにもう一度だけ確認させて頂きます・・・・・皆さんは、本当にこの魔導書の状態に心当たりがないのですね?」
「何度聞かれても同じだよ。あたしらは何一つ知らねえ。ていうかむしろこっちが聞きてぇくらいだっての!」
「右に同じだ。一体何がどうなっているのやら、検討も付かない。闇の書にしても、我ら自身に起こったことも・・・・」
リンディの問いかけに、ヴィータとシグナムがそれぞれ反論する。はやてがいないことによりいつもより献立が貧相になってしまった朝食の直後、突然クロノを通して招集を受けた彼女達は、昨日闇の書に起きた事と現在の状態の説明を受けた後、自分たちと闇の書とのリンクが切れていることに気が付き、そこから自分たちがいつの間にか闇の書と独立した存在になっていることにも理解が及んで、彼女達自身当初かなりの困惑を見せていた。
「あ、あの!はやてちゃんは今どうなっていますか!?闇の書がこの状態ということははやてちゃんにも何か・・・・」
「{ウィーン}失礼しまーす。検査の方終わってきましたー・・・・あれ?四人ともそんな顔してどうしたん?」
シャマルのはやてを心配する発言の途中で、丁度本人が車椅子に乗って会議室に入室した。ヴォルケンリッター達の一瞬時が止まったかのようなその空気に、はやてが不思議そうに聞くと・・・
「「「「・・・・・・・ハッ!?はやて(ちゃん)(主)!!」」」」
思考が再起動したヴォルケンリッター達が、全員席を立ってはやての元へと駆け寄っていく。
「はやてー!」ガシッ
「おっと。よしよし、どないしたんやヴィータ?」
「そりゃこっちのセリフだよ!大丈夫か!?どこも悪くないのか!?」
「ふふふ、どうもないよ。このとおりピンピンしとるで。」
ヴィータは横からはやてに抱きついて何度もしきりに心配し、はやてが安心させるようにヴィータの頭を撫でながら大丈夫だと返事をする。他の騎士二人と守護獣一匹が、はやての様子から本当に無事である事を悟って安堵していると、後ろからクロノが済まなそうにしながら声を掛ける。
「あー、伝えるのが遅れてすまない。君達を呼ぶ前にはやてにはアースラで一通りの精密検査を受けてもらうように手配しておいたんだ。一応彼女が一番危険な状況にあったからね。」
「・・・やれやれ、そういうことは早目に言って欲しかったな。」
「ごめんなさい、こっちもこっちで色々と立て込んでしまってて・・・それに状況が状況だから、少しでも早く多くの情報がほしかったのよ。」
クロノの謝罪に苦笑しながら応えるザフィーラに、リンディも加わって謝罪をする。
「いや、別に構わない。言っていることは一理あるし、何よりも主の安全が確かならば何の問題もないからな。」
「そうだよ!そんなの別にいいじゃねえか!もう元気になったんだろ!?」
「うん、詳しい結果はまた追々伝えるそうやけど、少なくともこれ以上悪くなることは無いらしいわ。なんやったっけ?契約が完全に切れて、りんかーこあ?から魔力ってのが抜かれることが無くなったからやって。」
「そっか・・・良かった・・・・・・本当に良かったぁ・・・!!」ギュウッ
「ああ・・・無事で良かった・・・!」
「うぅ・・・ヒック・・・・」ポロポロ
「皆・・・・うん、心配してくれてありがとうな。」
ヴィータは涙を零しながら、はやてに抱き返されながらより一層強く抱き着き、シグナムは目元に薄っすら水滴を作り、シャマルは顔を手で覆って下を向きながらその場で号泣していた。ザフィーラは内心ではやてが無事だった事を喜んでいたのか、泣くことはなかったが尻尾がこれ以上ないくらいに上に向けて立っていた。
ここに解決した本人がいれば、「ありきたりなハッピーエンド・・・良いじゃない( ̄ー ̄)ニヤリ」と誰にも聞こえないようにそっと呟いてていたことだろう。手段は全く持ってありきたりでもなんでもないものだったが。
「・・・・・結局どうしてこうなったかは解らず終いか。頭の痛い話だ。」
「まあ今はいいじゃない。それよりも今は他の仕事から片づけていきましょ。ここはお邪魔みたいですし。」
「それもそうですね・・・」
八神家の面々が誰一人欠けることなくまた集まれた事を喜んでいる最中、リンディとクロノは机の上の闇の書を持ち、空気を読んで会議室を出ていった。なお艦内通信で、一時間くらいしたらヴォルケンリッター達にも精密検査を受けさせるよう指示した模様。
Side:梶原 泰寛
「いただきまーす。」
朝八時半、冬休みという事もあって何時もより少しだけ遅く起きて、自室で二十分ほどアライブを使ってストレッチを行ってからリビングにて朝食を頂いていた。献立は出汁卵と鰤大根、味噌汁、法蓮草のおひたしと炊きたての白ご飯である。
ちなみに母さんたちはとっくに家を出ていて、今は俺一人しかいない静かな朝だった。
「(モグモグ)ん〜〜、今日は潜るか。」
オーバーヘブンのストックを増やすために、今まで持っていたエルメェスのパn・・・アレを全て使い切ってしまったからな。新たな補充の為に今日は天国巡りをすることにしよう。
ん?前に話してた二つの方法じゃないとって話はどうしたって?エネルギーの増やし方はともかくDISCそのものの増やし方までは言ってない。それに俺はこうも言った。
「全くパンティ集めが捗るぜ!(白目)」とも。つまりそういう事だ。
・・・まあ白目を剥いている事から察しのいいやつは分かるだろうが、アレはアレでかなり希少なものだ。天国にしか出ないアイテムだし、出現頻度が今までの平均で大体2000階層潜って一個か二個ってレベルだし。オマケにこの頻度というものは、いつもの修行用の装備じゃなくてGERと大量の食料品、シンデレラとハーヴェストのスタンドディスク、それからボインゴのディスクをちゃんと持って行って、そんでモンスターハウスを出しまくって、アイテムの出現数を限界まで上げて進んでいく時の平均頻度だ。 素で行ったら10000階層潜ってようやく一個ってとこ。正直白目どころか発狂して○顔○ブルピースを晒しそうになるくらい労力と手間がいる。泣きてぇ(´Д⊂ヽ
・・・・・・・・・・・後今更だけどこれ、絵面的にはシールが貼ってあるだけのアニキ(女)のパンティー求めて危険な場所に行ってるようなものなんだよなー。
十歳の少年がパンティーを求めての危険な冒険・・・・辞めよう、これ以上はいけない。主に精神衛生的に。
「御馳走様。」カチャカチャ
いつも通り料理を綺麗に食べ終えて、台所の流しで皿を洗い、乾燥機に立てかける。
そして自室に戻り、倉庫に入って着替えた後呼吸を整えて鉄球を数回まわしながら雑念を取り払い、感覚を研ぎ澄ませていく。
「・・・うし、行くか。」
準備が終わった所でヴェネツィアホテルの一室に移り、いつもの様にDioと一緒にベッドで本を読んでいるプッチに話し掛ける。
「今日も天国に送ってよ。」
「ん、良いだろう。神のご加護が君にあることを祈っているよ。」
「神か・・・・無限に死ねる加護なら昔あったけどな。」
苦笑しながらそう言うと、いつもの様に何をされたのか全く理解することもできないまま、何時の間にか広い荒れ地のような場所に放り出されていた。
ギアッチョとか生ハム兄貴とか、第5部の主要キャラ達がたくさん見える荒れ地に。
「開幕パッショーネとかこれもうわかんねぇな(震え)」
初っ端から明らかに殺しに来ているとしか思えない状況に思わず声が震えた。G・E・Rがあるとは言え、入った瞬間に全方位から超一流のギャングや殺し屋の殺気が込められた視線を数十人単位で向けられるのは相も変わらず心臓に悪いわ。
「まあいいや。取り敢えず状況開始!」
まずは安全確保のため、いちばん近い位置に居るホルマジオから始末すべく俺は動き出した。