デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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今回は息抜き回です。
それでは、どうぞ。


第六十話

===12月22日 矢島家===

 

「で、どうなのよその後?闇の書解決しちゃった?解析班頑張ってみんなの力でハッピーエンディングだった?」カチャカチャッ カカカッカッ

 

今日は近況の報告会という事で、WiiUとスマブラを持って矢島の家に遊びに来ていた。

俺はコタツで足をぬくぬくと温めながら、机の上に有る白い筋まで丁寧に剥かれた蜜柑をアライブを使って頬張り、休む事無くコントローラーを忙しなく動かしてカービィを操作しながら今のところの状況を聞く。

 

「いや、うん、まあー・・・・・解決したって言えばしたんだろうけど・・・・・なんて言ったらいいんだろうなぁあれ・・・」カチャカチャ カカッ

 

対する矢島は俺と同じように忙しなくサムスを操作し、こちらの逃げ道を塞ぐようにチャージショットやミサイルを巧みに撃ちながら、どこか浮かない表情でそう答える。

 

「なんだよ、煮え切らない返答だな。また何か予想外の事でも起きた?」カチカチカチッ バキンッ ポイッ

 

ものすごく微妙そうな顔をして、操作が一瞬止まった矢島のサムスに、大樽からいっぱい出てきたボム兵を順番に投げつける。

 

「危なっ!?」パシッ ポーイッ 

「キャッチ&リリース!?」ポイッ ボォーンッ

 

最初に投げたやつが空中でキャッチされ、二つ目のボム兵が向こうが投げたボム兵で迎撃されて空中で爆発した。しょうがないから3つ目のボム兵を持って当てられそうなタイミングを図っていく。

 

「・・・予想外、か。まあ確かに予想外っちゃあ予想外だな・・・・解析中の闇の書が突然消えたと思ったら機能が止まった状態で戻ってきてたって話だし。しかもはやては何故か闇の書との契約が切れて元気になってるわ、騎士達は闇の書から独立しちまってるわでもうあっちもこっちもてんやわんや。」

「意味が分かるように言って、どうぞ。」

「俺だって又聞きだからそんなに詳しくはねえよ。ぶっちゃけ当事者のプレシアさんとかでも全く訳のわからないことだったらしいし。お前の好きなジョジョ風に言うなら【階段を上がっていたと思ったら実は降りていた】的な?」

「何それ怖い。」

 

まあそれをやらかしたのがここにいる俺ちゃんな訳だが。

だがあえて真相は語らない。だって後が面倒臭そうだから!

・・・結局当てる隙が無いままカービィの手の中でボム兵が危ない雰囲気を醸し出し始めたから、勿体無いが仕方なく正面に投げて放棄する。

 

「まあ何はともあれ、これでバグの大元になっていたプログラムも無くなってたわけだから、あとは大円談待ったなしなんだけどな。その点は本当に良かったわ。」

「・・・?バグ?」

「ああ。プレシアさんやユーノ達から聞いた話なんだけど、あの闇の書って昔主をしてた誰かが勝手に後から自己進化型の防衛プログラムを書き加えたせいで今の今まで暴走してたらしいんだよ。ちなみに元々の正式名称は【夜天の魔導書】っていって、古代ベルカ文明・・・ていってもわからねえよな。」

「勿論だ!!」

「そこを元気よく言ってどうするよ(^_^;)まあとにかくそういう名前の文明の人達が当時の戦争を生き残る為に他の世界の文明から魔法技術を集めて、ソレを後世に伝えていく為に造られたんだと。」

「へ、へぇ・・・そうだったんだ・・・」

 

(そうか・・・あれって元々ああだったんじゃなくてどっかの馬鹿が勝手に改造してああなったのか・・・・・・オーバーヘブンじゃなくてクレイジー・ダイヤモンドを使っておけば良かったかもしれん・・・・まあ今更言ってもしょうがないし、こうして丸く収まってるみたいだから別にいいや。)

 

「まあひとまずメデタシメデタシってわけだ。」

「ま、そうなるな・・・・・・・・ていうかさ」

「んー?あ!スマッシュボール!」

「退け!ゼロレーザーを撃つのは俺だ!!」

「させん!ここは俺のウルトラソードが閃く場面だ!!」

 

矢島が何か言いかけた直後、マジカント上空に出現したスマッシュボールを巡って醜い争いが勃発する。

今、お互いの残機はそれぞれラス1。ダメージは矢島が40%で俺が65%。若干俺が不利だがこれが決まれば逆転も可能!!

 

「そこで止まれ!」

 

まずサムスの方に行ってしまったスマッシュボールを追い掛けると牽制用にサムスがミサイルとチャージショットとたまたま持っていたアイテムのレーザーガンを撃ってくる。それらをハンマーやファイナルカッターで打ち落としたりジャストディフェンスしたり避けたりしながらカービィが距離を詰めていく。

 

「ヨッシャ先ずは先制!」

「まだまだぁ!」

 

サムスの空中攻撃が当たってより一層距離を離されるが、俺はその間に拾ったモンスターボールをスマッシュボールとサムスの間に投げ込む。ボールが開いて、閃光と共に現れたのは・・・・

 

「ゲ、ニャース・・・」

「足止め宜しくー。」

 

回避しても次々に投げつけられる荒ぶるニャースの小判の連射(技名は忘れた)で足止めを喰らうサムスを横切り、カービィがスマッシュボールにハンマーの回転攻撃やティンクルスター、三連空中キックなどを当てていく。

 

---ガンガンガンッ! ガキンガキンッ! バキィーンッ!!

 

「しゃあオラァ!準備OK!」

「畜生やばい!ニャース早く消えろー!!」

 

やがてスマッシュボールの砕ける音とともに画面が若干暗転して、カービィが綺麗な色のオーラを身に纏う。これで最後の切り札の発動条件が整った・・・・

 

「あぶねぇ!戻って来る前になんとか消えた!」

「チィッ!!だが今はこれで十分!!」

 

と思った丁度そのタイミングで、ニャースの出番が終了してサムスが自由に動けるようになってしまった。本当はあともうちょっとだけ持って欲しかったが仕方がない、このまま殺りに行く!!

 

「ヒャッハー!!粉微塵にしてやるぜーっ!!」

「やめろー!こっちくんな!」

 

さっきと同じように追尾ミサイルを撃ち、レーザーでこっちの動きを牽制してくる。動きの遅いミサイルと逆に早いレーザーのミックスが鬱陶しいが丁寧に避けていく。

下手に攻撃を食らうと切り札の状態が切れてまたやり直しになるから一時たりとも気が抜けない。

 

「待てぇええええ!!」

「待てと言われて待つバカはいない!」

 

 

 

 

 

その後一分程の逃走劇の末、明らかにシミュレーション能力を使ったとしか思えない反応で切り札を躱され、なんだかんだとグダグダしつつ最後は俺がステージ外にふっとばされて負けてしまった。この時から、今度はキンクリを装備しながら戦う事を堅く心に誓った。

 

 

 

「なあ、梶原。」

「ん?なんだ?」

 

途中からジャックフロストたちも参戦して、ジャックランタンと俺が組んだり人間対悪魔の構図になったり、途中からマリオカートにシフトしたりして程々にゲームも遊び倒した。そして時間もちょうどいい具合になっていたから自宅に帰ろうとしていると、矢島が玄関の前で俺を呼び止める。

 

「ぶっちゃけさ、今回解決したのお前だろ?」

「俺が?どうやって?」

「どうやってってそりゃ・・・スタンドで?」

「(ヾノ・∀・`)ナイナイ」

 

まあこいつにはバレるよな、普通。いろいろとタイミングが良すぎたし。

 

「そう言わずにさぁ〜〜〜!ホレッ!言ってみそ?俺にだけこっそりどうやったか言ってみそ?ホォ〜レホレホレ。」

「だから知らねぇっての・・・だぁ〜〜〜〜引っ付くな鬱陶しい!離せ!!俺はもう帰るぞ!!」

 

しつこく聞いてくる矢島から離れ、さっさと玄関から外へと出ていく。ちなみに俺は、矢島にはオーバーヘブンの能力についてはまだ話してはいない。あまりにも強力なのと補充が難しいことと、あとまだまだ使いこなせているとも言い難い気がするから、一番信頼できるこいつにも秘密の能力ということにしておきたいのだ。チャリオッツの奥の手(ラストシューティング)みたいな感じで。

 

「チェッ、まあそこまで言うならいいか・・・あ、それと一つ伝え忘れてたんだけど。」

「今度はなんだよ・・・」

「24日か25日辺りにはやての家に集まって退院祝を兼ねて皆でクリスマスパーティしないかって話が出てるんだけど、お前どうする?」

「あー、そうか。このままなにも無ければ後はもう治っていくだけだもんな、あいつ。んーーー・・・イブは家族で揃って楽しみたいから25日でいいか?」

「OK、25日な。用事はそれだけだから、じゃあまたな。」

「おう、また今度。」

「ヤスヒロー、今度来る時はパイナップルのシャーベットがほしいホ!バケツ一杯分!」

「オイラはかぼちゃのシチュー!」

「バケツ一杯分とか多すぎだろ。後かぼちゃのシチューってお前・・・・まあいいや、気が向いたらな。」

 

一瞬「共食いだろう」と言いかけたが喉元で抑え込み、矢島達に背を向けてマンションを降りていく。そして人目に付かないところでキックボードを倉庫から取り出して、それに乗って冬場の冷たい風が流れる道路を通っていく。

家に帰ったら風呂と飯を終えて・・・あとは何をするか。昨日と今朝でダンジョンを1000階層は潜ったから正直今日は探索する気は起きない。それにエルメェスのアレ探しの過程で、倉庫の中に最近整理し切れなくなるほど新しくアイテムが入って散らかってきたから掃除していきたい。まあこっちについては、正直これから嫌ってほどアイテム探しに潜ることになるから少しずつこなしていくものとして・・・

 

「あ、そうだ!ドット打ちのこともあったな。」

 

ここ数日は忙しくて手に付いていなかったが、フリーゲームの作成に必要な制作しなくちゃいけないドット絵はまだ結構な数が残っていた。ゲームの流れやアイテム、キャラの設定などの構想はローグライクゲームの作り方をネットで調べたりしながら、自分の経験を思い出しつつ前の人生の段階でもう詰めるところまで詰めていたが、アレ等を作り終えてからでないと多分矢島にプログラムの作成の手伝いは頼めない。

・・・出来ればプログラミングも自分でやってみたいなぁと昔は思ったが、ソースコードとかをネットで調べて読んでいる内に、流石に一朝一夕にはどうにもならないと思って当時はやめちまったんだよなぁ。スタンドや波紋、鉄球の訓練とか普段の日常生活でそこそこ忙しかったし。

 

「そうとなればさっさと帰るか・・・・・・ん?そこの家は今日はカレーか。」

 

ふと、通り過ぎた家のほうから食欲をそそるスパイスの香りが匂い立ってきて思わずそう呟き、同時にある事も思い出す。

 

(・・・・そう言えば本場式カレーが食べたくなって調合したスパイス、そろそろ熟成し始めて一ヶ月が経つな。大体今くらいが食べ頃か・・・・退院祝に皆に出してみようかな?)

 

前の人生において、カレー専門店や本場インドカレーのお店で働いていた時の記憶をザ・ブックで反芻しながら調合してみたが、皆気に入ってくれるだろうか?皆何気に舌が肥えてるからな。きっと辛口な意見が飛んでくるに違いない。

 

 

 

カレーだけに、とか審議拒否とか思った人。先生怒らないから静かに挙手しましょう・・・・いや、何を考えてんだ俺は。

意図せず、大してうまくもないことを考えて思わず苦笑いしてしまう。

 

「馬鹿やってないで早く帰ろ。」

 

アライブの脚を出し、アスファルトを蹴りつけて加速し、さっさと自宅に向かっていった。

早く帰ってドット打ちを進めよう。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「・・・・・・・・・」

 

---カチッ カチカチカチッ カチカチッ

 

特に特筆することも無く帰宅した後、俺は風呂と飯を終えてから自室のパソコンの前に座り、ジョジョの奇妙な冒険の第55巻を片手に無心になってドットを打っていた。

一つ一つ試行錯誤しながら打ったドットは、少しずつ水色を基調とした人の形を形成していく。

 

「・・・・・・・・よっし!やっとこのキャラも完成だ。」

 

修正も含めて約一時間半ほどの時間をかけて、一キャラ分のドット絵が納得のいく形で完成した。

 

「・・・・うん、これはどこからどう見てもギアッチョだ、うん。」

 

見るものが見れば分かるであろう、スーファミ時代のドラクエのキャラのような規格に収まったその姿はどこから見てもギアッチョのそれだった。

そのギアッチョのドット絵を保存して、時計を見ると、そろそろ九時になりかけていることがわかる。

40ドット×40ドットの規格の元、移動用と攻撃用とやられた時用と特殊能力を使った時用の四種類の動作を、一つの身体の向きごとにそれぞれ三枚ずつ描いた。そして描いた身体の向きは八方向。合計96枚をこの一時間半で描いたことになる。ヘブンズドアーの練習の経験がなかったら正直後もう2、3時間はやってたかもしれん。

 

「ぬぉわぁ〜〜〜〜〜〜〜・・・・前の時にもうちょっと描いときゃ良かった。後幾つ描きゃいいんだっけ?」

 

背伸びしつつそう言い、【泰寛の大冒険】と書かれたファイルを開いて、更にその中にあるファイルを一つずつ開いて中を確かめていく。

 

「第五部はさっきのギアッチョで終わってて、第六部以降のキャラ絵が全部出来てねえな・・・グラフィックが一つしかないアイテム類や、スタンドはデザインが凄く好きだからいの一番に全て描き上げていて、ダンジョンのグラフィックは六割終わっているってところか・・・・先が長い。」

 

毎日少しずつやってはいるけど今日みたいなのはかなりペースが早い方で、大概は今日の三分の一くらいの早さだ。加えて今は他にもやりたいことが山ほどあるし・・・ぶっちゃけ今のペースだと、これじゃあ後半年以上は時間をかけてしまいそうな気がする。

 

「どうしたものか・・・・・・・」

 

椅子の背もたれによりかかり、少しの間考え込む。このまま長期に渡ってやってるとまた気力が尽きて放置なんてことになる。何か作業を短縮する方法はないか・・・・・・・・

 

「・・・・・あ、そうだ。ヨーヨーマッ!を使えばいいじゃん。」

 

妙案が頭を過ぎった。

たしかあいつ、自動操縦型のスタンドのくせしてかなり器用で知能も有り、はっきり言ってこういうことではかなり便利で使えると思われる奴だ。倉庫を常に開け続けてないといけないのと母さんたちに気をつけないといけないのが難点だが、そこさえ気を付けていればかなり良い方法なのではなかろうか。

いや待て、そもそも倉庫を開けていなくてもいい。スタンドディスクのヨーヨーマッ!じゃなくてダンジョンで徘徊しているヨーヨーマッ!を複数体捕まえてきて、パソコンを持ち込んでホテルの中で作業をさせればそれでいいのだ。あそこにも古い方だけど一台パソコンもあるし。ただしホルマジオのビンの外に出したままダンジョンに行くといつの間にか消えているから作業中はダンジョンに行く事だけはできないが。

 

「・・・・・・・まあ、アシスタント程度に使ってみるのは悪くない手だよな。」

 

流石に全部やらせるつもりはないが、取り敢えず明日からこの方法を採用してみよう。上手く行けば予想よりも早く終わるはずだ。あとやっぱり、さっきはグラフィックを描き終わってから矢島にプログラムを頼もうかと思ったが明日にでも菓子折り持って頼みに行こう。できる事ならば早く完成させたいし、アイツならきっと片手間でもできてしまうはず!きっと!

 

「さてと、それじゃあそろそろ寝るか。」

 

絵を描き始める前に歯磨きも既に終えているため、電源を落としてささっとベッドに入り込む。

 

「・・・・・zzzーー・・・zzzz・・・・」

 

 

体感で20分ほど時間が経った後、意識が途絶えたことに気がつく間もなく寝入っていた。

 

 

 

===12月24日 16:30===

 

ヨーヨーマッ!をアシスタントにする案は概ね良好だった。どうせだからといつもの修行も兼ねて徘徊しているのを探し出すのは若干手間だったが、とりあえず見つけた二体をダンジョンから出して、ヘブンズ・ドアーでいつものように命令を下してからは格段に絵が出来るペースが上がった。

第六部のキャラクターがこの2日足らずで三分の二は描き上がってしまったのだからはっきり言って予想以上である。ヨーヨーマッ!、間違いなく優秀だわ。あと隣で同じ事やっていたってのもあってか、俺もついついペースが上がってしまった。

それと矢島にプログラムを頼む件については、まあ問題なくOKが貰え、来年に組み上げて渡してくれるらしい。先払いとして熟成させてたカレー粉が入った瓶10のうち7つとちょうどいい具合に漬け込んでたタンドリーチキンの肉(エニグマで保存済み)、フライパンで焼いてすぐ食べられるように発酵させてたナン(同じく保存済み)を持って行かれてちょっと悲しくなったが。また今度作らなきゃ(使命感)

 

「泰寛、ケーキはそろそろ終わり?」

「(おっといかんいかん。)あ、うん。後はこれを流し込んで冷蔵庫で冷やすだけだよ。」

 

母さんに声をかけられ、意識を改めて目の前の料理に移す。

円形上の型の底に敷き詰められたクッキー生地は、20ほど前にミキサーで砕いたクッキーをバターとよく混ぜ、さっき俺が懇切丁寧に押し込んで固めたものだった。

 

「よっ・・・と。」

 

その生地の上に、クリームチーズとヨーグルト、砂糖、レモン汁を中心とした柑橘系の果汁、溶かしたゼラチン質を滑らかな液状になるまで混ぜたレアチーズの素を流し込んでいく。

箆を使って容器に残ったものも全て掻き出し、流し終わったのを確認したら使い終わったものを流し台に投入して水で流しつつ、先に下拵えをしていたビニール袋入りの丸鶏の肉を避けて冷蔵庫にレアチーズケーキを入れてしまう。これで父さんが仕事から帰ってきた後、パーティをする頃にはチーズの部分がしっかり固まっている筈だ。食事をあらかた食い終わったらこれに切ったいちごやキウイ、蜜柑やパイナップルなどのカットフルーツを乗せて持っていくとしよう。

 

「よいしょっと・・・サラダとホワイトシチューもこれで完成。泰寛、ローストチキンの詰め物作るからお野菜出して。」

「あいよー。どれくらい作る?」

「どうせだから出来るだけ多めに作るわ。余った分は何回かに分けて食べていきましょう。」

「分かった。」

 

母さんは母さんで他の料理を一通り作り終わり、俺に次の指示をする。

俺は冷蔵庫の野菜室からぶなしめじ、人参、玉ねぎ、ピーマン、グリーンピース、じゃがいも、大蒜を取り出し、調理台の上に置く。

 

「それじゃあ泰寛は人参お願いね。」

「おう。」

 

母さんがフライパンにバターを入れ、コン炉を点火して温める。次に人参と玉ねぎの皮を二人で剥き、剥き終わったらそれぞれ細かく切り刻んで一緒に熱されたフライパンに投入する。

 

---ジュワァ〜〜〜ッ!

 

溶けたバターが絡まり、香ばしく焼けていく人参と玉ねぎを母さんが焦げ付かないように丁寧に強火寄りの中火で炒めている傍ら、俺は残りの野菜を細かく切って別々のボールにそれぞれ入れておき、それとは別にローストチキンと一緒に焼くじゃがいもと人参と大蒜を大きくカットする。

 

(もうやる事は無いか・・・使った道具でも洗おう。)

 

オーブン皿に耐熱シートを敷いた事で、次の作業はバターライスができるまでもう無いため使い終った調理器具を流し台の下で洗っていく。

 

「泰寛、そろそろ丸鶏も用意しておいて。」

「ぬ、了解ー。」

 

器具を全て洗い終わり、一息ついているとバターライスを完成させ、混ぜながら軽く団扇で仰いで冷まさせていた母さんから声が掛かって冷蔵庫から丸鶏を出す。一昨日の夜から下拵えしただけあって生でも美味しそうだと思うくらい良い感じに仕上がっているそれをビニール袋から出して水気を払い、オーブン皿に載せる。

続いて母さんが丸鶏の中にバターライスを少しずつ詰めていき、入るだけ入れたら入り口を締めて両側の手羽の部分を凧糸で寄せ、強く結ぶ。

最後に香味野菜を周りに乗せてオーブンに入れ、設定を決めて焼き始める。あとは2回程上と下をひっくり返して焼いていけばいい具合に出来上がるだろう。

 

「ぬわああん疲れたもおおおおおおん。」

「お疲れ様、まだお父さんが帰ってくるまで少し掛かるから先にお風呂に入ってらっしゃい。」

「あいよ~、お先に〜。」

 

母さんに勧められて、準備をして一旦風呂に入りに行く。調理のせいで汗を結構かいたし、母さんも同じ気持ちだろうしさっさと入ってスッキリして上がってくるとしよう。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

その後風呂に入っている間に父さんが帰ってきて、俺が風呂から上がった後父さんと母さんが順番に入り、いよいよクリスマスの前祝いが始められる。

俺は今年、別世界の存在とは言え世話になったから今年は感謝の意を込めてやっていこうと思う。

 

 

「 We wish you a Merry Christmas,

We wish you a Merry Christmas,

We wish you a Merry Christmas,

And a Happy New Year! 」

「も、もういいか?そろそろ腹の具合が限界なんだが?」(゚ρ゚*) ジュルリッ

「父さんェ・・・」

 

歌いながらローストチキンが乗せられた皿をテーブルにおいていると、父さんから催促がかかって母さんと一緒に苦笑する。まあ気持ちは分かるから俺もさっさと座ろう。

 

「じゃあいただきましょうか。」

「ああ、それじゃあ・・・」

「「「戴きます!」」」カチチチンッ

 

飲み物が注がれたコップをそれぞれ持ち、号令とともに全員で乾杯する。

 

(ジョジョの世界の聖人さん、あの時はありがとうございました。そして来年からは平々凡々と過ごせますように。)

 

『無理ジャネ?』

(不吉な事を言うんじゃねえよ!!て言うか喋るの久々だなお前!?)

 

「どうした泰寛?突然顔色変えて?」

「い、いやなんでもないよ・・・ささっ!冷めないうちに食べちゃおう!!」

「おっとそうだったな。せっかく二人が作ってくれたんだから一番美味い時に食べないと。」

 

そう言って、いつものように山盛りにされたご飯をかき込んでいく父さん。

俺は二人が美味しく食べている姿に気を良くしながら、コップに注いでおいたシャンメリーを口に含む。

 

「ご飯が終わったらケーキもあるから、みんな食べすぎないようにね。」

「俺はともかくお父さんは大丈夫じゃないかなぁ?」

「あと5杯はいけるな。」 ( ー`дー´)キリッ

「流石にそこまで炊いてないよ・・・」

「なん・・・だと・・・!?」

『落チ込ミ過ギテテわろた。』

(ははは。)

 

 

ああ、平和っていいなぁ・・・・・・

 


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