デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録 作:enigma
というわけで当日にすら間に合いませんでしたが、日常編です。どうぞ。
===12月25日 AM11:23 とある病院===
「経過は問題なく良好みたいね。この分なら今日から家に帰っても大丈夫よ。」
「ホントですか!よかったぁ!」
診察室で主治医である石田から退院の許可が下りたことにより、両手を上げてはやては喜んでいた。
付き添いできていたシャマルも、後ろで同様に喜んでいるのがよく分かる。
「石田先生、これも先生が私の事一生懸命治そうとしてくれたからや!本当にありがとうございます!」
「フフフ、そう言われるとむず痒いわね。」
(正直ちゃんとした治療法はおろか原因すらよくわからないまま治っちゃったからその台詞を聞くのはむず痒いどころかすごく心苦しいけど··········まあ、一応本人が元気になったんだから、今はとりあえずそれで良しとしておかないとね。)
「後は弱った筋肉を日々のトレーニングで少しずつ鍛えていけば、徐々に歩けるようになるはずよ。これからまだまだ大変だけど、皆で一緒に頑張っていきましょう。」
「はい!よろしくお願いします!」
「ええ、それじゃあ今日の検診はここまで。またね、はやてちゃん。」
「はい、さよなら先生!はよ行こうシャマル!みんな待ってくれとるんやろ?」
「ええ、何人か朝から家に来て色々と準備してくれてたようですよ。」
「ホンマに!?ん〜〜〜〜〜〜楽しみやなぁ〜〜!!そうと決まったら一刻も早く帰宅せんと!!」
「ふふふ、そうね♪」
シャマルが病室のドアを開け放し、はやては車椅子の車輪を転がしてこれからのイベントに期待を膨らませながら診察室を出ていった。
「それでは先生、ありがとうございました。」
「はい、お大事に。」
シャマルは扉の前で会釈し、はやてを追いかけて自分も退出していった。
「···········それにしてもなんだったのかしらね、はやてちゃんの病気。まるで魔法でもかけられたみたいに治っちゃったみたい······まさかね。」
暫く後、はやてのカルテを見ていた主治医がそう呟く姿があったとか無かったとか·············
はやての診察が終わる2時間半前·····
Side:梶原 泰寛
「ファ〜〜〜〜·····やれやれ、冬場の朝方は起きづらくてしょうがねえなぁほんと。」
「たしかに。あの外気の寒さと布団の中の心地良いあったかさのギャップはマジで反則だわ。しかしおこたの誘惑もまた捨てがたいものが······」
脇に雪が山積みにされ、ところどころ凍りついてしまっている道路。その左端を歩きつつ、欠伸を噛み殺しながら発された俺の言に、矢島は心底同感だと言わんばかりにウンウンと頷きながら俺の右隣を歩いている。
············今日は、いよいよはやての退院祝兼クリスマス祝いのパーティーが行われる日だ。ということで彼女が病院で用事を終えて自宅に帰ってくるまでに、俺達ははやての家にそのパーティーの準備をするべくはやての家に向かっていた。
まあ本当はなのは達も含めて一時間前くらいに集合する予定だったんだけれど、それじゃあちょっと料理の方が間に合わないかもしれないので、俺たちはこうしてみんなよりも更に一時間早く向こうに付く為にこの寒空の下を歩いているわけだ。ちなみに食費は全て俺持ちで、事前に家主からキッチンの使用許可ももらっているから、俺のお財布の急速な軽量化を除けば問題はない。
しかしなんだ···········普段の運動のおかげか代謝はいい方だし、その上結構厚着をしているけどそれでも寒いものは寒い。早く着きてえなぁ。
「えっと後はここを左に曲がればはやての家だから········周囲の警戒頼むぞ。」
「はいはい、用心深いなほんと·········大丈夫、今のところ監視の目はなさそうだ。誰かが窓から見てるってことも無さそうだぞ。」
「OK。それじゃあ御開帳と。」
呆れる矢島を尻目に懐から紙を一枚取り出し、紙を広げて中から幾つかのクーラーバッグを取り出す。 中には今日のパーティで出す料理に使う食材が沢山入っている。
本当なら重いからはやての家についた時に開けたいところだったけど、それは流石に我慢我慢。
まあアライブと一緒に持つから大丈夫だしね。
「じゃあ行くか。」
「おう。」
クーラーバッグの肩にかかってるベルト部分をアライブの手でぎりぎり俺だけで持っているように見えるように浮かせて、再び歩き始める。三十秒くらいで普通にはやての家の前につき、呼び鈴を鳴らすと家の中からトタトタという音が響いてきて玄関前で止まり、扉が開く。
「お前らか。言ってた通り来たんだな。」
出迎えてくれたのはヴィータだった。すずかの家で知り合った時は他所行きの態度だった彼女だが、その後何度かはやてとセットとは言え交流している内に今ではこういう風に少しは砕けた態度で接してくれるようになった。面倒事が起こった時は基本裏方に徹するから魔道師云々の交流はほぼ無いだろうが、こういう日常での交流は出来ればこれからもしていきたいものだ。
「おう、今日は名いっぱい祝わせてもらうぜ!」
「おはよう。良い思い出になるように、今日はいつも以上に腕によりをかけて作らせてもらうよ。中に入っていい?」
「ああ。荷物大丈夫か?」
「ありがとう、大丈夫だよ。」
ヴィータの許しも得て、俺達は中に入っていく。
リビングには獣状態のザフィーラが床に座ってこっちに流し目を向けており、シグナムはさっきまでテレビを見ていたのかソファーの前で起立し、俺達に向き直っていた。
「おはよう二人とも。今日はあるj·······もといはやてのお祝いに来てくれたことに礼を言わせてほしい。」
「(うっかりいつもの呼び方で呼んじゃったんだな)気にしないでくださいよシグナムさん!俺ら好きでやってるだけなんで!な?」
「(うっかりいつもの呼び方で呼んじゃったんだな)友達のお祝いだし、ま多少はね?」
シグナムのお礼に若干むず痒い感覚を覚えながら、矢島、俺の順にそう返事する。さて、問題のキッチンはっと·······うん、ちゃんとキレイにしてあるな。全体を台拭きで吹いた後すぐに始められそうだ。
「それじゃあ予定通りキッチンお借りしますね。」
「ああ、何か手伝えることがあったら遠慮なく言ってくれ。微力ながら協力させてもらう。」
「ありがとうございます。それでは失礼しまーす。」
キッチンに入り、クーラーバッグを床に置いてまずは調理器具の位置と炊飯器や冷蔵庫の中身を確認する。冷蔵庫はそこそこ空いているところがあるな·····炊飯器は多少中身が入っているがこれじゃあ到底足りないだろうから、調理前に残りの米をタッパーに移して新しく白米を炊き直す。
そしてご飯をセットする傍ら、アライブを使ってクーラーボックスから材料を順番に取り出させる。
さて、まずは時間が立っても問題のないスープと煮物·····かぼちゃのポタージュ風スープと、別枠でロールキャベツのトマト煮込みを作る。その調理の後サラダを作り、みんなが来て他の準備を行っている間にまた別のおかず類の準備までこなしておく。そしてはやての帰宅時間になったら、準備済みのおかずを順番に作っていくとしよう。
フフフ、腕が鳴るわ······そして地味に緊張する。八神一家に自分が作ったご飯を振る舞うの、何気にこれが初めてだし。大丈夫かな?ちゃんと口に合うものが作れるかな?
「梶原〜、用意はいいか?」
「ん?おう、もういいぞ。手を洗ってまずは玉ねぎから切っておいてくれ。俺は人参切るから。」
「おk、把握。」
矢島に呼びかけられて心配を一時中断し、料理を開始する。
さあバリバリやっていきますか。
····················································································
「ちょ!?これまさかマンガ肉か!?実物は始めて見たぞ!」Σ(゚Д゚)
「いいだろう〜?今日焼くつもりで昨日のうちに下拵えだけしておいたんだよそれ。」(*´∀`)
「はぇ〜〜〜〜〜、すっごい美味そう······このままかぶりついちゃ駄目?」(ノ´∀`*)
「腹壊すぞお前······」(;・∀・)
「··················」(゚ρ゚*)ジュルルル
「(ボソボソ)梶原、だいぶこの視線にも慣れてきたな、俺たち。」
「(ボソボソ)スープの匂いが立ち始めたあたりからずっと凝視してたもんな。向こうもよく飽きないもんだ。まあそれだけ期待されてるって思うと嬉しいけど。」
手元の調理を続けながら、背後のカウンターでヨダレを啜っているヴィータのことに気が付かないふりをしつつコソコソ話し合う。
スープの調理が最終段階に入り、コトコトと煮込んでいたら背後に気配を感じてアライブで確認したら、口の端からちょっとヨダレを垂らしながら鍋を凝視しているヴィータがいつの間にかいて最初はちょっと吹き出しかけたものだ。因みに矢島も俺の様子から背後の映像をバレないように出し、それを見て俺と同じように吹き出しかけていたりする。
その後、俺達が二人してキッチンのカウンターに背を向けている時は必ずこっちに顔を出してずっと凝視しており、逆にカウンターの方をどっちかが向いていたら一瞬で影に隠れるといったことを何度かしていたのがわかったときにはいろんな意味で微笑ましく思ったことも多々ある。
(まあ割りとお茶目で可愛いとこもあるってわかったし、ちょっと得した気で続けようぜ。)
(だな。プクク、普段はツンケンしてんのにこれは·······)
矢島は笑いをこらえようとして肩を震わせながら剥き海老にエビフライ用の衣を付けていく。
調理の音でこっちの会話が聞こえていないからいいが、もし聞こえていたらどうなることやら·····
そんな事を考えながら、俺は丁度出来上がった白身魚のカルパッチョにラップをかけて冷蔵庫にしまう。
ーーーピンポーン
「ん?他の連中も到着か?」
視界をリビングの方に向けると、呼び鈴に気がついたシグナムが玄関の方に向かっているのが見えた。序にヴィータがカウンターの前からこっそり離れていく姿も少し見えた。
「もう一時間以上経ったのか、一生懸命やってると時間の流れも早いな。」
「楽しいから早いんだろ。これが戦闘中とかだったらどんだけ遅く感じることか。」(-_-;)
「お前に至っては時間が止まるしな。」
「そういうのはあまり言うなよ·········」
ーーーガチャッ
「さあ皆、遠慮なく入ってきてくれ。」
「はい、お邪魔します!····あ!泰寛君!ケイイチ君!ヴィータちゃん!ザフィーラもおはよう!」
「お邪魔します·····あ、おはよう泰寛、ケイイチ、ヴィータ、ザフィーラ。」
「お!やっほー!元気してた?」
「おい~っす、この通り元気だよ〜。」
「おはよー、後右に同じ〜。」
「······お、おはよう····」
扉を開けて、シグナムの後からなのはとフェイトとアリシアが荷物を持った状態で姿を現してこっちに挨拶をしてきたから簡単に挨拶を返す。ヴィータはちょっと照れながら挨拶していて、ザフィーラはなのは達に顔を向けている。
「おはよう········わぁ、いい匂い。」
「お邪魔します······あ、本当だ。すごく美味しそうな匂い。何作ってるの?」
そして続いてすずかとアリサ(バニンクス)とアリサ(ローウェル)が、これまた荷物を持って入室してきて部屋に漂う料理の香りに頬を緩ませ、アリサ(ローウェル)からメニューを聞かれる。
「それは皆で集まってからのお楽しみだよ。それより皆、その荷物は······」
「これは部屋の飾り付け道具とクリスマスプレゼントだよ。」
「皆ではやてちゃんが欲しがってたものとか、喜びそうなものを選んで買ってきたんだ。」
「ほぉ〜。」
なのはとフェイトの返答に納得する。
俺は·······食材の準備とか私用とかで用意できなかったな。
「ちなみに俺も持ってきたぞ。ブツは······フッフッフ、後のお楽しみだぜ。」
「はいはい、口動かさないで手を動かしなさいよ。それで終わりじゃないんでしょ?」
「へーい。梶原、さっさと終わらせちまおうぜ。」
「ん?ああ。」
アリサに作業の続行を勧められて、俺達は再度調理に戻る。
俺はひとまず洗い場に溜まっている使い終わった調理器具を片付けていき、それが終わったらその後コロッケとクリームコロッケの準備を進めていく。
······································································
ーーートゥルルルルルルッ トゥルルルルルルッ
「アタシが出るよ。」
更に一時間後、突如として鳴り始めた固定電話へとヴィータが駆け寄っていく。
「{ガチャッ}はいもしもし、八神です·········はやて?今帰る?·····うん·····うん、わかった。じゃあみんなで待ってるから、気をつけて帰ってこいよ·····うん、また後で········{ガチャッ}」
「はやてちゃん、今から戻って来るの?」
「うん、いつもと同じ道順なら後40分位で戻ってくるはず。」
「それじゃあ急いで仕上げに入るか。矢島、再開するぞ〜。」
「お〜ッス。」
電話後のヴィータとすずかのやり取りを聞いて、一時休憩を終えて料理を再開する。
「皆は食器の準備をしといてくんない?」
「OK!」
「任せて。」
「あたしらもやるぞ。」
「ああ、流石にそこまで任せきりという訳にはいかん。」
アリシア、フェイト、ヴィータ、シグナムの返事を筆頭にみんなが了承してくれる。アリシアだけ返事の後にズドン!という効果音がしそうな気がしたがまあそれはこの際おいておき、俺はマンガ肉をオーブンに入れて焼き始め、矢島は油の温度を上げて先ずはコロッケを揚げていく。
ーーージュワァワァ~~~~~!!
ーーーグゥ~~ッ
油が部屋中に響くほど派手に音を立てて沸き立つ。
リビングの方からそれに紛れてちょっと腹の虫が鳴く音がした気がしながら一つ一つ作業を進めていく。
その近くで皆が食器棚から皿や箸、スプーンなどの食器を取り出してリビングの机に並べていく。
「ローウェルの方のアリサ、冷蔵庫の中にさっき作ったオーロラソースとタルタルソースがあるからとんかつソースと一緒に持って行って。ああ、後ケチャップとかマヨネーズで食うやつもいるかもだからそれも。」
「わかったわ。それにしてもローウェルの方って······もうちょっと良い言い方はないの?」
「······今は思いつかないから今度考えておく。」
「しょうがないわね。」
本当にしょうがないよね。どっちからも名前で呼ぶように厳命されちゃってるし。いっその事2人揃ってる時は今度から名字で呼ぶか?
「はいコロッケ第一弾上がり〜。」
「あいよ〜。」
矢島の呼びかけに応じ、金網を乗せた揚げ物用のバットを側に置く。矢島は油の中から程よく揚がったものを取り上げ、よく油を切り、金網の上に乗せて油がある程度落ちたら俺がそれをキッチンペーパーを置いた皿に盛り付けていく。そして油が落ちるのを待っている間に煮えた油に逐次揚げ物を投入していく。
そんな作業を何度か繰り返していき、クリームコロッケとエビフライも順々に仕上げていく。
(·········ん~~~、マンガ肉はともかく揚げ物がちょっと間に合いそうに無いな。)
調理から25分が経過した頃、海老フライが後二回分くらい残っている。流石にはやてが来るまでにこれを盛り付けて準備しておかないと格好が付かないしなぁ、それにはやてが帰ってくる時にみんなで出待ちしておく計画だから···しょうがない、あれを使うか。
「矢島、もうちょっとスピードを上げるぞ。このままじゃはやての到着に間に合わん。」
「え·····これ以上のスピードアップは無理だと思うんですがそれは·····」
「(ボソボソ)メイド・イン・ヘブンの時間加速を限定的に使用して揚げ物と肉が仕上がるスピードを十倍速まで上げる。そうすりゃあと一分もあれば出来るはずだ。」
「なるへそ。」
原作ジョジョのプッチは緑の赤ん坊と融合した後、新月のパワーをまだ受けていない時に赤ん坊を連れた母親に衝突した際、能力が暴走していろいろなものの時間を中途半端に加速させていた。その場面を昔アニメで見直した後、暴走だろうと無意識の行いだろうと前例がある以上できると思えばできるんじゃないかと考えてかなり練習した結果、前の人生では呼吸をするようにそういったことができるようになったのだ。今でも勿論練習しなおした結果、普通に使えるようになっている。
「矢島、位置を変わってくれ。あとは俺がやるから他の料理の運び出し宜しく。」
「ラージャー。皆ー、料理運び出すから手伝ってくれ。」
「あ、うん。今行くからちょっと待っててね。」
位置を変わり、矢島は冷蔵庫の中のサラダやカルパッチョを取り出したりスープを器に注いだりして、それをこっちに来たなのはたちに順番に手渡していく。その間に俺はこっそりメイド・イン・ヘブンとタイマーをセットして残りのエビフライを油の中に投入する。同時にカウントダウンの開始と鍋の時間加速を開始して十倍速で揚がっていくエビを観察し········タイマーのカウントダウン終了間際で加速を止めてエビフライを金網の上に引き上げる。あと油っ気を適度に取るためにソフト・アンド・ウェットのシャボン玉を使うのも忘れない。
「(ボソボソ)おおーーおもしれー、三次元でビデオの早回しみたいなのを直に見られるって相当レアな体験だよなぁー。」
「(ボソボソ)だろ?············はいこれで揚げ物は終わり。後はオーブンだけだ。」
ガスコンロの火を止めて、序に今度はオーブンに時間加速を行い、マンガ肉をとっとと焼き上げて中から取り出す。肉汁を表面から滴らせ、美味しそうな匂いを立ち上らせる肉を皿に盛り付けたらスタンドディスクを外してちょうどいい具合に油が落ちた揚げ物類を矢島とともに皿に盛り付け、順々にテーブルへと運び出していく。
「「「「「おお〜〜〜〜!!」」」」」
あっという間にテーブルが料理で埋まり、皆が歓声を上げる。
「とっても美味しそう···!!」
「本当ね。はやてもきっと喜んでくれるわよ。」
「ありがとうなのは、アリサ。後みんなも室内の飾り付けお疲れ様。」
周りを見渡せば、部屋の中はみんなの手でクリスマス仕様に変わっている。特にあそこにある、飾りで書かれた【はやてちゃん!退院おめでとう!!】という文字にはちょっと涙腺が緩みそうになる。
正直今日限りで外してしまうのが勿体無く感じてしまうな·······
「ここまで準備してもらえて本当に有り難い。特に我が家の食事はいつもあr····はやてが準備してくれているからあまり作る機会が無くてな、我々だと本当に簡単なものしかできない。」
「全くだ。情けねえけど、料理なんて良いとこはやてのそばでちょっと手伝ってるだけだもんな、あたしら。」
「これを期にちょっとずつ練習してみるのもいいのでは?美味しいと言って貰えるようになると中々楽しいですよ?」
「ふむ······確かにそれもいいかもしれないな。」
「あ、あたしは作る方より食べる方が良いや。」
「俺も今回は梶原を手伝ったけど、基本的には食べてるほうが好きだな。(ん~~~・・・・・・そう考えると将来的にはドラえもんに出てくるあのテーブル掛けとかも作りたくなるな。今作ってる兵装一式の製作が一段落したらそっち方面に着手してみるのも面白いかもしれない。)」
「まあ気持ちは分からんでもない。」
「と言うかアタシはケイイチが料理できたことが何気に意外だったわ。泰寛ができるのは知ってたけど···」
「フッ。」( ・´ー・`)
地味に驚いてるアリサ(バニンクス)にウザいドヤ顔で返す矢島。
皆でそのやり取りを笑って見ていると・・・・・・・・
「{ガチャッ}ただいまー。」
「あ!帰ってきた!皆、あれ構えて!」
「オッケー。こいつだな?」
ほぼほぼヴィータの予想通りの時間にはやて達の声が玄関の扉を開ける音とともに部屋に届いた。
アリサ(バニンクス)が皆に呼び掛け、俺たちは廊下からリビングに入るための扉から4、5メートルほど離れた位置で囲むように立ち、ポケットに入れていたアレ・・・掌サイズの紙吹雪とかが出てくるパーティー用クラッカーを持ち、扉に向けて構える。
---カラカラカラカラカラ・・・・・カチャッ
車椅子の音が扉の前辺りで止まり、ドアノブが回る。
ーーーガチャッ パンッ!パパンッパンパンッ!!
「「「「「「はやて(ちゃん)!退院おめでとーー!!」」」」」
「わ!?」
「きゃっ!?」
扉が開いてはやてとシャマルの姿が現れた瞬間、はやての退院を祝福しながら全員でクラッカーを鳴らした。
火薬の炸裂音と内部から飛び出して降り注ぐ紙吹雪にはやて達は一瞬驚くが、周囲を見渡して一様に微笑んでる俺たちや飾り付け、後ろにある料理の山を見ると状況を理解したのか、両目を輝かせながら嬉しそうになって話を切り出した。
「おーーー!凄い準備っぷり!皆結構張り切りすぎとちゃう!?」
「なぁにいってんのー。せっかくこんな大人数でパーティをやるんだから、これくらい張り切らなきゃむしろ損ってものでしょ!」
へへへ、と笑いながらそう返答する矢島に俺も続く。
「そうそう、それに友達がせっかく元気になって帰ってきたっていうんだから尚更楽しめるようにしなくちゃ。あ、それともあんまり騒がしいのはさすがに嫌だったかな?」
「ううん!そんなことあらへんよ!ただ、今までこんな風に騒げるとか、想像もしてなかったもんやから・・・・・・・皆、私らのためにここまでしてくれて、本当にありがとう!」
幸福感に満ちているかのように笑顔に、皆さらに頬を緩ませていた。
普段はガラじゃあないが、今まで不幸続きだった分今日という日が楽しくて忘れられないように、俺もテンション上げていこうか。
「さぁて、そうとくりゃさっそく始めないとな!」
「お、そうだな。皆ー、テーブル周囲に集合ー!」パンパンッ
「うん!」
「オッケー!」
「待ちくたびれたよー!早く始めよう!」
両手をたたきながら皆に呼び掛けると、元気の良い返事とともに皆料理の乗ったテーブルを囲むように立つ。
「ハイなのは、飲み物。」
「ありがとうフェイトちゃん!」
「泰寛、貴方もどうぞ。」
「ありがとう。」
「はやて!はいこれ!」
「お、ありがとうなヴィータ。」
「アリサちゃん、ケイイチ君。はいこれ。」
「ありがとうすずか。」
「さんきゅー!よし、みんな準備はできたな!?」シュバッ
「ちょ!?どこ行くのよ!」
皆各自飲み物の入ったグラスを手に取り乾杯の準備が完了したところで矢島が一人テーブルから離れ、ソファーの上に一人立つと・・・・・どこから取り出したかわからないが右手にマイクを持ち、スイッチを入れて大仰に音頭を取り始めた。
「えー、それでは皆さん。其々言いたいことがたくさんあるでしょう、目の前の料理に舌鼓を打つ人もいらっしゃいましょう。俺も長ったらしい挨拶は嫌いなので、とりあえずこの言葉を持って始まりとさせて頂きます·················とにかく楽しく盛り上がろうぜ!!」
「Let's enjoy the party time!!」
「「「「「イエーーーーーーーイ!!」」」」」
二度目の小学三年生になってからの、二度目のクリスマスパーティ。一度目は家族と過ごし、二度目はこうして沢山の友達と卓を囲み、賑わい、楽しく時を過ごすこととなったのだった・・・・・・
ちなみに私のクリスマスは家族と粛々と暮らすだけのものでした。
彼女?ねえよんなもん(半ギレ)