デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録 作:enigma
本格的にFGOのキャラが出るのは次話辺りからになると思います。
「やっと高校卒業してフィーバータイムになったと思ったら・・・うちの地域は一体どうなってんだよ。確実に何かに呪われてるだろ。全く・・・」
2012年の春・・・3月に高校を卒業してから今日までの俺は、今思えば相当に浮かれていた。なにせなにせあの受験シーズンが終わり、ようやく、ようやく学生の本分である勉強生活から開放されたのだ。毎日毎日、暑い日も寒い日も休まず遅れず教室に入り、テストで良い点を取り、良い評価を得るために着席して教科書と問題集を傍らに置き、ノートにひたすら文字を書き込んで覚えようと、理解しようと、そして問題を解こうとする日々。
中間テストがあった、期末テストがあった、抜き打ちのテストがあった、学年末テストがあった、卒業テストがあった。二年生の2学期後半からは進学に向けて総合演習が月一で行われるようになり、三年の夏を越えてからは三週間に一回、下手したら二週間に一回なんてこともあった。
何度土日が潰れ、その度に顔を手で覆ったかわからない。好きなことが自分のペースでできないという状況に何度悲壮感を覚え、その度に溜息を漏らしたことか・・・・・
だがそれも!受験シーズンを越えて終わりを迎えた!!ようやくこの手に自由が舞い戻ってきたのだ!!フィーバーするよ、フィーバーしますとも・・・勉強ばっかりで鈍ってた感覚を修行で取り戻したり、食べたい料理をめいいっぱい作ったり、今まで積んでたゲームを自由になった時間で遊び倒したりもしますとも!!
・・・・・・そう思って遊んでいたら、また起こっちゃったよ事件。しかも俺の実家がある海鳴市で。
始まりは、俺が高校を卒業して三日目のことだった。
当時の俺は記念受験を予定通り落ちて、再び手に入れた自由を心ゆくままに満喫する為に高校卒業とともに実家を離れ、ココ・ジャンボの倉庫を拠点に気の向くままに自分のやりたいことをしていた。ちなみに誤解がないように言っておくが、受験料と三年に入ってからの総合演習の代金は、進学する気もないのに親に払ってもらうのは気が引けたからこっそり自分で払っていたりする。ガキの頃からコツコツ貯めていた金の額を考えれば払えないこともなかったしね。
それで話を戻すが、そんな絶頂の最中にいる時、矢島から電話があったのだ。
【海鳴市の地下深くで非常に気になる反応を見つけたんだけど、ちょっと調査するの手伝ってくれない?】と------
正直ペースを崩されてものっすごく垂れたけど、バイト代も出すって言うし放置してて大変なことが起こっても困るから、出ていってばっかりであれだけどとりあえずこうして戻ってきたのだ。
そりゃあね、愚痴を零したくもなりますよ。先に言ったような事も零したくなるってもんですよ。
「この地域っていうか・・・あなた達が呪われてたんじゃない?確か中学の時も高校の時も変なことに巻き込まれてたでしょ。高校の時はこの地域関係なかったし。それにいつの間にか二人共急にフッって居なくなることもあるし······私もあんまり人の事とやかく言えないけど、あなた達も大概運がないわよ。」
そして俺の零した愚痴に、隣を歩いているアリサ(ローウェル)がやれやれといった感じで言葉を返す。
···········そう言われてみればそんな気がしてこないでもない。いやだがしかし····
「いやいやアリサ、あの二件は発生原因と俺達全く関係ないからね。元々あった問題が偶々あの段階で噴き出しただけだから。」
「だからそれがおかしいって言ってるのよ。なんで行く先々でそんなに都合良く世界の危機に巻き込まれてるのよ?どこかの姿は子供で頭脳は大人な探偵並みじゃない。」
「そ、そんなにひどくはないやい(震え声)」
「全くだゾ(震え声)そんなホイホイ世界の危機が起こってたまるかゾ(激震)」
「一度の人生で5回も6回も立ち会ってたらもうホイホイ起こってるようなものでしょ。しかも小学三年生の頃から今日までの十年足らずで。いったい人生何度やり直せば帳尻が合うのかしら?」
「「··········」」(´Д⊂ヽ(TдT)
俺達の反論に対して帰ってきたアリサのツッコミに俺と矢島が無言で男泣きしていると、直後に天啓を得たかの様に物々しく矢島が語る。
「だがちょっと待って欲しいアリサ。確かに俺達のその手の事件との遭遇率は半端じゃない。それは素直に認めよう。けど逆にこうは考えられないか?俺達の運が極端に酷いんじゃなく、むしろそんなフラグばっかりが埋まってるこの世の中が悪いんだと·······呪われてるのは俺達じゃなくてこの世界そのものという可能性が微レ存だということが言えるんじゃなかろうか!?」
「Σ(゚Д゚) そこに気が付くとは··········や は り 天 才 か ! ! !」
「つまりそれって世界は着実に破滅に向かって行こうとしてるってことよね·······そしてそんな世界にいる人類の未来は貴方達の手にかかっていると·······」
「「·············」」
「も、もうやめようこの話は·······たかだか成人女性一人と未成年二人で話す内容じゃないってこれ·············」
「そ、そそそそうだな·······もももももうやめようか······」
「そ、そうね····なんだか変なこと言っちゃってごめんね、二人共···」
俺の提案に矢島が物凄く狼狽えながら賛成し、アリサも謝罪しながら同意する。
「いや、良いんだ・・・それよりも早く現場に行こうぜ。矢島、確かこの近くだよな?」
「そうだ、あそこにでかいデパートがあるだろ?あの建物の真ん中・・・」
「え?そんな目立つところにあるの?」
いや、これは・・・・・
「・・・の、下百メートルの位置にあります。」
「さぁ撤収撤収!みんな解散!!じゃあな二人共!!」
なぁ〜んかおかしいと思ったら思った通りだったよこの野郎。
「待て待て待て待て待て待て待て待て待て!」
「こういう時は相変わらず切り替え早いわね、気持ちはわかるけど。」
「いやそうじゃなくて!もっとこう、方法とか聞こうぜ!?」
「ほう?じゃあどうやるのか聞かせてもらおうか、そして俺が必要なのかどうかも聞かせてもらおうか?場合によっては俺の極限まで練り上げられたオーバードライブが火花を散らす事になるがそれでもいいんだな?」
「何それ怖い。ま、まあとりあえず向かいながら話そうか。」
そう言って矢島は先頭を歩いていく。俺達はそれについていく。
「今から四日前、今言った位置で俺の研究所の観測器が瞬間的な次元振動の反応を感知した。そしてその後その場所に、ほんの数分だけだったが奇妙なエネルギー反応を示していたのさ。今ではもうぱったり止んじゃってるけどね。」
(知ってる、電話してきた時に説明されたからな。位置情報は省かれていたが・・・)
「それで俺はこの場所を色々と調べてみたわけだが・・・その地下百メートルほどの場所に、直径十メートルほどの球体状の空洞が形成されていることがわかった。」
「・・・何らかの拍子に空間ごと地面がくり抜かれたってことか?」
「まあ推測の限りでは俺も同じ考えだ。そしてその空洞の中には・・・今も何かがある。」
「何か?」
アリサが問い、矢島が頷く。
「そうだ。詳細は場所が深くて調べきれなかったが、大体バスケットボールよりも少し大きいくらいのサイズの何かだ。本当は俺一人でなんとかしたかったんだけど、流石に店のど真ん中でボーリング作業をするわけにもいかないし、手持ちの転送技術もその何かに変な影響を及ぼすかもしれなかったから今回は控えさせてもらった・・・」
「それで俺に白羽の矢が立ったのか・・・確かに俺ならそういう事は気にせず地面をこじ開けて回収できるだろうからな。万が一近寄ったせいでその何かが妙な事が起きそうになっても、準備が出来ていれば即座に消滅させられる。」
「そういう事。さ、こっちだ。そろそろ着くぞ。」
気がつけば、場所は目指していたデパートの入り口前。俺達は矢島の先導の元で中に入っていき、食品売場と洋服屋の間にある通路で止まる。
「ここだ。梶原、俺が結界で人目を誤魔化すからその間に頼むぞ。」
「任された。さーてやるか。」
矢島がGUNDAMを用いて結界を貼ったのを確認した後、倉庫からタスクact4とホワイトアルバムとクレイジーダイヤモンドとキング・クリムゾンを取り出して頭に差し込む。
「ああそうそう梶原、これ持ってけ。」
「ん?なんだこれ?マジックパンチ?」
爪弾を撃つために構えようとすると矢島から待ったが掛かり、背負っていたバッグの中から妙な物を渡された。
色は全体的に黒色で大きさはだいたい俺の前腕より少し太く、長さは少し長いくらい。形は緩い円錐のような円筒状のもので、俺の腕がちょうどすっぽり入りそうなサイズの穴が一方に空いており、もう一方には丸い球体のようなものがついている。
「俺の研究所で使ってる万能アームだ。本当は遠隔操作のロボットアームなんだけど今日のためにちょっと改造して持ってきたんだよ。流石に素手で触るのはまずいかもしれないしな。」
「ふーん、これが・・・中に取っ手みたいなのがあるな。」
おもむろに右手を入れて取っ手を掴んでみると、カシャッ!!という音とともに俺の腕にフィットするように形が変わる。白い光の筋のようなものが走り始めた先端の球状の突起を握ろうとすると突然突起部分の形が崩れ、一瞬にして右手の形になって俺の左手を優しく握り返していた。
「お〜。」
「使う奴のやりたい作業に応じて形や機能を変えられる特殊なアームだ。伸縮は自在だし、使い方もお前次第。どんな作業だって可能にする。ライト機能だってついてるから暗いところでも手元はバッチリ見える素敵仕様!」
「なるほど・・・{パァッ}おお、手の部分が光るんだなこれ。しかも光の感じが何気に目に優しい。よし、それじゃあ行ってくるわ。矢島、お前はこれをしっかり持っておいてくれ。」
「ん?ああわかった、あれだな。」
伸ばしたり光らせたりと、一通り調子を確かめながらそう言った後、俺は矢島に割れた割り箸を一本渡す。
「気を付けてね。」
「あいよ。」
アリサからの忠告に返事をして、アームをつけていない方の腕を床に向けて爪弾を放つ。現れたタスクのスタンドビジョンが床をこじ開けている最中にホワイトアルバムで氷の装甲を瞬時に身に纏い、首の後ろ頭部の装甲は個体化した酸素で作って亀裂の中に飛び込んだ。
ライトで下を照らしながら2秒ほどフリーフォールをした後、キング・クリムゾンとクレイジーダイヤモンドに体を支えさせて減速していき、目的の位置から五メートルほど上の位置で一度停止してから恐る恐る降っていく。今のところ嫌な気配はしないが、はてさて鬼が出るか蛇が出るか・・・・
「{スッ}・・・驚いた、中は本当に空洞なんだな・・・さて、お目当ての物は・・・」
アームの光で、矢島が言っていた通りの球体上になった空洞を照らしていると、空洞の底の方で何かがキラリと光を反射した。
「あれか。えぇっと・・・・」
目を凝らして、光を反射している物体をよく見て・・・そこにあったものの存在に思わず首を傾げる。
「何だこれ・・・黄金の、盃?何だってこんなものが・・・」
··········いや、それよりもだ。この盃、なにかとてつもないものを秘めているような感覚がある。今は俺の持ってるオーバーヘブン程じゃあないが、あれに近しい何かを·········
「正直持ち出すのはどうかと思うが、かと言ってここにおいておくのもなぁ·······················まあいい、とりあえず持っていくか。」
取り敢えずここで考えても仕方がないと判断し、危険性も········まあ今はあまり無さそうだからひとまず持ち帰ることにした。
右手の装甲を解除してアームを伸ばすと球体部分が変形して伸びていき、盃の括れた部分を余計な刺激を与えない様にそっと掴み取る。
しっかり掴めているのが確認できたら冷気を上手く操作してポケットから矢島に渡した割り箸の片割れを取り出し・・・
「クレイジー・ダイヤモンド!!」
クレイジー・ダイヤモンドの手で触れて、割り箸をしっかり握ったまま上へ上がっていった。
「お疲れさーん。どうだったよ?」
「ああ、とりあえずこれだろうってものは見つけてきたんだが・・・・・」
「ほほう、どれどれ?・・・・・・えらく眩しい盃だな・・・・これだけだったか?」
「ああ、あそこにあったのはこれだけだ。」
「まさか黄金の盃なんて・・・それ重くなかった?」
「いや、見た目ほどじゃなかったよ。よっこいしょ。」
穴から這い出て床に立ち、スタンドを解除する。act4は役目を終えたと言わんばかりに開いていた亀裂を元通りピッタリと閉じ、そのビジョンはどこかへと消えていった。
「重さは多分十キロ前後ってところだろうな。見た目は金ピカで派手だし豪華そうだけど、多分本物の金じゃねえと思う。」
「ふーん。」
「······························」
アームの手にある黄金の盃を、二人は食い入るように見ていた。特に矢島の目は真剣になりすぎて目が座っているし、声が小さすぎて聞こえないが何か相当必死になって呟いていた。
····················正直これ持っててもあまりいい気がしないし、俺は早いところ手放しておきたいんだが・・・
「で、どうするんだ矢島?一応これが目的の品だったんだろう?これで仕事は完了ってことでいいんじゃねえか?」
盃を床に置き、アームを外しながらそう呼びかけると、矢島は少しだけ渋い顔をしながら返事をする。
「···········そうだな。それじゃあ取り敢えずそれはこっちで預かっておくか。お疲れさん。」
「おう。バイト代の方は·····」
「今渡すよ。でもその前にアームを返して。」
「分かってるよ、ほら。」
「はいどうも。{ゴソゴソ ズポッ}ほれ。」
矢島は返却したアームと引き換えに······················何故かカバンからSFチックな拳銃のようなものと説明書と書かれた書類、それから充電器と思わしき二種類の機械を手渡される。
「···················なんぞこれ?」
「テキオー灯。」
「ドラえもんかお前は!?え!?ていうか作れるのテキオー灯?!!作れちゃうもんなの!?」
「{フッ}科学も技術も、日々常に進歩し続けているのだよ梶原君。」
「す、すげー。」
「こ、これ本当にちゃんと使えるの?」
「無論だ。使えんガラクタを報酬と称して渡すのは俺の技術者魂が許さねえ。持ちうる全てを持ってありとあらゆる動作チェックと環境実験の過程で改良に改良を重ねて、本物以上の性能に仕上がったと言っても過言じゃないぜ。おっと、聞きたいことはたくさんあるだろうが詳しい内容は説明書を参照してくれよ。ここじゃ説明しきれないからな。」
「「」」( ゚д゚)( ゚д゚)
(まあ仕上げのところでちょっとスカさんにも手伝ってもらったけど。)
キメ顔が際立つ矢島に、ただただ絶句する他無い。そうか、こいつも常に進化し続けているんだな(白目)
ま、いいや。最初は現ナマを期待していたけどこれはこれで是非とも欲しい一品だし。使えるなら絶対に貰っておこう。
「さてと、そんじゃあ念のために封印幾つかかけて後は帰って解析するか。改めてお疲れ梶原。」
「おう、そっちはこれから頑張れよ。」
「当然!」
ニッと笑い、早速デバイスを起動して封印処理に取り掛かる矢島に背を向け、俺は倉庫にスタンドディスクとテキオー灯を仕舞う。そして横にアリサが並び、一緒にその場から離れ始める。
「ねえ、よかったら今から一緒に食べに行かない?少し離れたところにおいしいカレーが出る喫茶店を見つけたんだけど。」
「カレーか・・・自作のもいいけど偶には誰かが作ったのを食べるのもいいな。案内頼める?」
「勿論♪」
その後俺は、アリサと一緒にその喫茶店で昼食を取り、其れからゲームセンターに行っていろいろなゲームをしたり散歩したりアリサの家に遊びに行ったりして、時間を過ごした後は大体五時頃に別れた。
·····················アリサの家に行った後から十回くらい強烈な眠気に襲われたり、それを気合で堪えてたらアリサが一瞬だけ物凄く残念そうにしたり、今晩家に泊まっていく提案を妙な威圧感を伴いながらしてきたりしたがまあ概ね楽しかった。
楽しかった!(強調)
そして彼女には悪いが、今晩からは兄貴のシール付きパンツやまだ見ぬスタンドを求めて潜り続けるつもりだから約束は無理である。この前ダンジョンに潜ってたらあのゲームのスタンドがディスク状態で出てきてそりゃあ驚いたのなんの········だから多分二週間くらいはぶっ通しでやる事になるだろう。
まあそんなこんなで、今日の俺の一日は平和に終わっていった·············
そしてこの日が、俺の平和な日々の終わりだった。
「んぁああ〜〜〜〜、よく寝た。」
明くる日、時計の針が午前六時を指した時に俺は倉庫のベッドから起床し、洗面所で顔を洗ってから軽く水分を取り、ジャージに着替えてから朝のランニングに向かうべく倉庫の出口を開けた。
「·········?あれ?」
出口の先に見えた光景に、思わず首を傾げる。
おかしい。昨日俺は確か、実家の自分の部屋にこっそり入った後机の引き出しに鍵を入れてから倉庫に入ったはずだ。
だから普通は、出口を開けた先には引き出しの中の暗闇が広がっているはず。けど今頭上には、明るい照明で照らされた見たことの無い真っ白い天井が広がっている。
「(つд⊂)ゴシゴシ··············変わらねえよなぁ········」
自分の目を疑い、目を擦ったり目薬を指したりして何度も頭上の光景を確認し直すが、それでも見えているものに変化は見られない。次第に俺は、この既視感のある展開に焦りを感じ始めた。
「これ········最初にタルタロスに迷い込んだ時と同じパターンじゃねえか······!アライブ! 」
そう言うと同時にアライブを鍵の外に出し、周囲を確認させる。あの時のように力を抑制されるような感じは無い。真っ白い金属製の壁や天井、床で出来た通路と、所々に自動ドアらしきものがあるただの廊下だった。 埃などがほとんどないことから、日常的に誰かが通ったりしていることも伺える。
「一応敵らしきものは無し······よくわからんが異常事態なのには違いない。まずはここがなんなのか······それから把握していこう。」
監視カメラの類は····あるみたいだ。まずいな、アライブは見えないだろうが鍵と出てくる俺の姿はバッチリ見てしまう。となると使うのはあの四枚のディスクか。これらで隠れ潜みながら情報を·······
「フォウフォーウ。」
(!?誰か来た!)
こんな所に無造作に鍵が置かれていた時点で今更かもしれないが、流石に直接見られては完全に誤魔化しが効かなくなるため、さっさとDISCを取り出して頭に差し込み、能力を使う。
「ザ・ワールド。」
まず一枚目、ザ・ワールドで時間を止めて外に出る。
「スティッキー・フィンガーズ。」
次いで二枚目、スティッキー・フィンガーズで壁を殴り、ジッパーを開いて中に入って再度閉める。
「メモリーオブジェット。」
次いで三枚目、 メモリーオブジェットで自分の存在感を完全に消し去り、他者から認識されないようにする。それとここからは地図も必要だから、最後の四枚目にハーミット・パープルを装備しておく。
と言う訳で、以上の作業を五秒で終えて時間が再び動き始める。耳を澄ませると、甲高い動物の鳴き声のようなものと更に遠くの方から女性らしき声が壁越しに伝わってくる。
その2つは、間違いなくこちらに向かって近づいてきていた。
「フォウ、フォフォーウ。」
「フォウさん、いったいどうされたのですか?そちらには外への出入り口しかありませんよ。」
2つの声が、俺の鍵があった辺りで止まる。
ザ・ワールドを透明にして視覚を共有しながら外に出すと、俺がいる壁の向こう側に白衣のように白い服と薄いピンク色の髪、眼鏡をかけていること、そして明らかに日本人じゃない見た目が特徴の少女と、強いて言うとすればリスに近いような気がする、白くてモフモフした毛並みの4足歩行の生物がいた。
「フォウ······フォー?」
「?そこの壁がどうしたのですか?私には普段と同じ壁があるようにしか見えませんが······」
前脚で俺のいる壁をペシペシと叩いている生物を見て、少女はその生物の行動を疑問に思いながらこっちの方を見ている。
おそらくこの生物は残り香だけでも感じ取って、その先にいる部外者である俺の事を探しているのだろう。
(・・・・・・・・・・ここにずっといても何の解決にもならないし、下手にもたもたしてて厄介なことにならないうちに早く移動するか。ジッパーを開け閉めする音もスタンドのイメージに過ぎないから向こうには聞こえないだろう。)
そう考えて、取り出したpcの画面に周囲の見取り図を念写しながらその場を離れる。
········それにしても本当に何処だよここ········見取り図の感じ的に大手企業か、もしくは国際機関の研究施設じゃねえのか、この規模?相当広いぞこれ。
んーーーーーーー················取り敢えずこの区画から寄ってみるか。どうせ今悩んでも最終的には全部立ち寄る羽目になるだろうし。