デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録 作:enigma
私は元旦の日に武蔵ちゃん狙いで呼び符10枚使って盛大に外し、11日にハサンピックアップで残りの呼び符10枚と無償石69個で何とか初代様をお迎えできました。
初代様マジかっこいい!
それではどうぞ。
「し、しんどい……滅茶苦茶・・・疲れた・・・・・・」
TASの如き効率を目指して、メイド・イン・ヘブンの時間加速の中救助活動と破壊された施設の修復作業を行うこと一分半・・・・体感時間で凡そ半日以上ぶっ通しでスタンドも自分自身も休まずフル稼働させ続けたせいでかなりの疲労が全身を余すことなく襲っていた。
「せっかく着替えたコートが汗だくで気持ち悪い・・・後でソフト&ウェットで汗は抜き取るとして、正直今すぐにでも風呂に入ってすっきりしてベッドに直行して寝てしまいたい・・・・けど休憩してる暇なんてない・・・・・泣きてぇ・・・」
休憩したい衝動に駆られるが我慢して、俺は再び管制室へと足を踏み入れる。
「ん~~~~~~・・・ま、爆発した当時よりはマシだな。」
管制室内部の状態は、最初の段階で爆破によって破壊された壁面や設備を軒並みクレイジー・ダイヤモンドで直しているため、破壊痕はもうほとんどないといってもよかった。
致命傷を負っていたがまだ息のあった者もクレイジー・ダイヤモンドの能力で直っており、死んでいたりミンチになった奴はオーバーヘブンで生き返らせたりすることで死傷者はほぼゼロに抑え込まれた。彼らは今管制室の外にある廊下へと運び出し、全員並べて寝かせてある。
ちなみに管制室以外で怪我をしていた者にも同様の処置を施してある。
マスター候補者たちは蘇生の際に小細工を入れて俺の合図無しには起きられないようにしたから、これで取りあえず当面は問題ないはずだ。
・・・・それはともかく、所長よりも爆心地から離れていたはずのあの所長の副官らしき男だけ、何故か死体が肉片一つ見つからなかったため蘇生が出来なかったが・・・・ひょっとしたら・・・・・・・
『隔壁閉鎖まで 後 40秒。 中央区画に残っている職員は速やかに避難してください。繰り返します―――』
「・・・・・・いや、今はそんなことを考えている場合じゃないな。」
問題はここからだ。この件は俺一人だけでは絶対に解決しえない。何せ最低でも十年以上昔の出来事に介入するのだ、俺がこの問題解決に参加するにはここの職員の協力とここの設備が活用できることが絶対条件だ。
俺自身がレイシフトできるかどうかについては、さっき不意に適性がいると言っていたことを思い出して自分に上書きし、さらに念の為に駄目押しでコンピューター内のマスター情報に俺の分を追加しておいたから何とかなるとして・・・・・説得、本当にどうしよう?俺のコミュ力と弁舌能力だとありのままをそのまま真剣に訴えるしかないんだが・・・・
はぁ、頭の痛い話だ・・・
---ウィィーーンッ
「フォーウ。」
「フォウさん・・・そちらは危ない、ですよ・・・」
「!?」バッ
後ろのドアが開く音が耳に入り、咄嗟に近くの物陰に身を隠して入り口付近を確認する。
扉を潜って此方に来ていたのは・・・俺がここに現れたばかりの時に見た、あの白いリス擬きとピンク色の髪の眼鏡っ娘少女と・・・後よく知らない、他のマスター候補者たちと同じ服装をした赤毛の少女だった。もうちょっと特徴を言えば、左頭部の髪をシュシュで結っていて、右前側にアホ毛が出ていることだろうか。
赤毛の方はともかく眼鏡っ娘の方の少女は、さっきレイシフトの時に起こった爆発で死にかけていたところを他のマスター達と一緒に助けたばかりで、いくら直したといってもそんなに直に起きられるはずじゃなかったが・・・いや、そこは今は問題じゃあない。見たところあの生物、脇目も降らずこっちに走ってきている。そしてその後を追って赤毛の娘が眼鏡っ娘を支えながらこちらに歩んできている。リス擬きは二十秒もすれば俺を発見できる位置まで来るだろう。ここの隔壁、一応後十数秒もすれば閉鎖されるんだが大丈夫なのかあいつら。
・・・・・ていうかどうする?出ていくか、それともまだ隠れたままやり過ごすか・・・
「・・・・・・・幸い相手は二人、出ていくなら今がベスト・・・か?」
上手く丸め込めたならそれでよし、無理だったならさっきのプランで行く他ない・・・・仕方がない、やってやりますか。
---ヴィーーーッ!! ヴィーーーッ!! ヴィーーーッ!!
『システム レイシフト最終段階に移行します。』
「え?」
「え?」
「は?」
意を決して姿を現そうとした瞬間、警報とともに流れたアナウンスに少女達と同じような間抜けな声が漏れた。
『座標 西暦2004年 1月 30日 日本 冬木・・・』
・・・・・・まずいぞ、よくわからんが着々と現地に向かう準備が進んでいるらしい。
---ザッ
「え!?だ、誰ですか貴方は?」
「マシュ、知らない人?」
「はい、先輩。少なくともあの人はカルデアの職員ではありません。」
「そっか…あ、それじゃあもしかして、私よりも遅刻してきた人かな?」
「…確かにその可能性もなくはないかもしれませんが…いえ、でも確かマスター候補者は先輩で最後のはずですしそれは…」
「(仲良く話しとる場合か己ら)・・・おい、話はその辺に・・・」
「フォーウ!」ダッ
「うお!?」ガシィッ
「フォウさん!?」
いつの間にかこっちの心配なぞお構いなしといわんばかりに俺の顔めがけてとびかかってきたリス擬きを危なげなくキャッチし、そっと床に下す。
まったく、この非常時に人の話を遮るのは止めていただきたい…
「フォウフォウ!」シャシャシャッ
「あ、ちょ…ぶっ!?」
しかしリス擬きは床に降ろし、力を緩めた瞬間器用に俺の腕に飛び乗り、反応する間もなくそのまま跳躍して俺の顔に体当たりをかましてきた。咄嗟に後ろに仰け反っていたから鼻先を強く打つ様なことはなく、リス擬きはそのまま俺の頭によじ登った後肩に飛び移る。
「こ、こいつ・・・」
「フォウ。」
リス擬きは2、3秒ほど経つと、目的を達成したかのように俺の肩から降りてその場にちょこんと座りこんだ。
・・・いったい何がしたかったんだ、こいつは・・・
「話は後だ。急いでここから出ないと何もない丸腰のまま特異点に行くことになるぞ・・・」
『中央隔壁、封鎖します。館内清浄開始まで、あと九十秒です。』
---ガシャンッ ガシャンッ
「「・・・あ。」」
『ラプラスによる転移保護 成立。特異点への因子追加枠 確保。アンサモンプログラム セット。マスターは最終調整に入ってください。』
「やべぇよやべぇよ・・・」
そんなことをやっていると、彼女たちの入ってきた隔壁があっという間に閉まってしまい、更にレイシフトの準備が進んでいく。
「あ、あれは・・・そんな・・・・」
「今度は何だよ・・・うわぁ・・・」
開いた口が塞がらない状態になっている少女の視線の先を追うと、さっきまで灰色になっていたはずのカルデアスの表面が見る見るうちに真っ赤に染まっていた。
「おい、一応聞きたいんだがあれは・・・」
『観測スタッフに警告。カルデアスの状態が変化しました。シバによる、近未来観測データを書き換えます。近未来百年までの地球において人類の痕跡は発見できません。人類の生存は 確認 できません。人類の未来は 保証 できません。』
「・・・・・赤くなるとこういう意味になるんだな・・・」
「あ、はい。私もカルデアスがあんな風になるところは見たことがありませんでしたが、どうやらそういうことのようです。」
こんな状況なのにもかかわらず、俺の言葉にピンクの髪の少女が律儀に返答をしてくれた。
能天気なのかはたまた螺子の外れた天然系なのか・・・いやいや、それどころじゃなかった。
早く出ていかないとあの黒い泥絶賛放出中かもしれない冬木市に俺達だけで放り込まれる羽目になる!
『コフィン内マスターのバイタル 基準値に 達していません。レイシフト 定員に 達していません。 該当マスターを検索中・・・検索中・・・発見しました。』
「おい、今すぐ外に出るぞ!このままじゃマジで危険だ!」
「え?でももう隔壁が…」
「いいから行くぞ!そっちのリスっぽいのもだ!」ガシガシガシッ
「きゃっ!?」
「ちょ!ちょっと!?」
「フォウ!?」
少女二人をアライブの両脇に抱え上げさせて、俺はリス擬きを拾い上げたら隔壁によって閉まってしまった出口まで走っていく。
「ゼェ!ゼェ!ゼェ!」
やばい、さっきまでずっと休まず全力疾走し続けてた分の疲労のせいでそんなにスピードが出ない・・・!こんなことならしんどくてももうちょっとディスクを装備しておくんだった!
くそ!今日はじっくりアイテム収集をしていくつもりだったのにどうしてこうなった!
「先輩!これは何かの怪奇現象なのでしょうか!?私達、何か見えない誰かに抱えられているようです!魔術によるものではないようですが、これはいったい何なのでしょうか!?」
「だそうだけど答えは何なのそこの怪しい人!?」
「お前ら余裕だなぁ!?」
『適用番号 22番 マシュ・キリエライト 48番 藤丸立香 49番 梶原泰寛 をマスターとして 再設定 します。アンサモンプログラム スタート。霊子変換を開始 します。』
出口まであと五メートルという位置で、俺や少女、リス擬きとアライブの体が粒子状のものを出しながら発光し始める。おいおいまずいんじゃあないのこれ!?
「あの、もう止まってください。仮に出られたとしても、この状態で外へ出るのはむしろ危険だと思われます。」
「・・・・・マジか・・・・・あぁ~~~畜生・・・!」
と、眼鏡っ娘からストップがかかって俺はその場で足が止まる。
まあ確かに、ここまで来たら無理に出るのはむしろ危なそうだものな・・・オーバーヘブンの上書きも、やる体力が正直残っているかどうか怪しいところだし・・・
・・・取りあえず二人を降ろすか、このままじゃきついだろう。
「「・・・・・・・・」」
「なあ、体の方は大丈夫か?どこか不調があったりとかはないか?」
降ろされた二人が唖然とする中、とりあえず眼鏡っ娘の方の体調を窺う。大丈夫なのは分かりきっているがとりあえず話題を出さないとな。
「え?なぜそんなことを…」
「いや、至近距離であんな大爆発を受けた上瓦礫の下敷きになってたからな。万が一治療に不備があったらいけないと思って聞いただけなんだが・・・」
「・・・何故貴方がそのことを・・・」
「見ていたからさ、あの場で君らも含めたマスター候補者たちが大爆発で吹っ飛ばされるのをな。」
「・・・え?」
「で、肝心の今の調子はどうなんだ?問題無いなら無いで構わねえんだが・・・」
「・・・・いえ、今のところは特に・・・」
「ちょ、ちょっと待って!今の話ってなに!?爆発ってどういう・・・」
『レイシフト開始まで 後 3』
あ、カウントダウンが始まった。
『2 1 全行程完了。ファーストオーダー 実証を 開始します。』
赤毛の少女が眼鏡っ娘と俺に問いただそうとする姿とそのアナウンスを最後に、俺の意識は途絶えてしまった・・・・・
「・・・・・・・・・・・・!?」バッ
・・・なんだ?今猛烈に嫌な感じが・・・・・・・・・てあれ?
「・・・・よっこらしょっと・・・
(・ω・。≡。・ω・)
・・・・・・ここどこだよ Σ(・∀・;)」
熱の篭った地面を踏み締めて周囲を見渡せば・・・・・見渡す限りに火の海が広がっていた。
元は人が大勢住んでいたのだろう、多くの現代建造物群は地獄が顕現したのかと思うほどに無残に破壊されて、もはや何に引火しているのか不思議なほど盛大に燃え盛っている。360度四方、どこを向いても同じ光景だ。
真上はその炎の輝きと中から出てくる黒煙のせいで空の様子がどんなものか窺えないほど真っ黒だ。事前に予想していた展開よりは大分ましだがよくこの環境で生きてたよな、俺。
・・・・・・・あの二人と一匹がいないな。違う場所に出たのか?しょうがない、ちょっくら探しに行くか・・・
---ガラッ
「!アライブ!」バッ
『ハイハイ了解!』
背後の物音と放たれる殺気を感じ取り、アライブに命じて倉庫からいつもの装備を取り出させる。
---ガチャッ ガチャガチャガチャッ ガシャガシャガシャガシャガシャ・・・・・・
「おうおう、どいつもこいつもぞろぞろと出てきやがって・・・」
いったいどこからこんなに湧いてきたのか…廃墟の物陰や火の海の中からもはや音を立てることも憚らず何者かが飛び出してくる。
それは、骸骨だった。明らかに自力で立ち、各々の手に両刃剣や槍、将又折れた標識やコンクリートの鉄筋などを持った骸骨が、カタカタと不気味な音を鳴らしながら30~40体ほど俺を中心として集まってきていた。
「(嫌な予感がした原因はこいつらか・・・)コォォォォォォォォッ」
---ガシャガシャガシャガシャガシャ!!
各々の武器を振りかざして、骸骨軍団が一斉に走って襲い掛かってくる。
俺はアライブからムラサマを受け取り、高周波機構をONにして・・・
「ッ!」ビキィッ!
渾身の力で踏み込んで前方へ駆け出し、4体の骸骨をすれ違いざまに切り捨てて包囲網から脱する。
---ギャリリリリリリリリリッ!! バンッ!!
包囲網の外に出たら地面を蹴って方向を変え、時計回りに移動しながら別の骸骨へと駆けていく。
---カタカタカタカタカタカタカタカタ
逆袈裟、左薙、右薙、袈裟切り、刺突からの横薙ぎ・・・立ち止まることは一切なく、立ちはだかる全てを一太刀で切り伏せていく。
見た目が不気味なだけで大した知能がないのか、ただ突っ込んでくるだけの骸骨達の動きや攻撃は単調で読むのが容易く、下手に囲まれなければどうということはなかった。
(もうちょっと早くても大丈夫だな・・・!)
さらに加速し、突き出された槍を必要最低限の動作で左に躱しながら槍を持つ腕ごと骸骨を切断、続けて縦に並んでいる骸骨を三体続けて刺突で串刺しにし、上に切り上げてから返す刀で唐竹割を行い纏めて両断する。
その両断された骸骨を波紋を込めた蹴りで散弾の如く砕き飛ばし、それに当たって戦闘不能になった奴を避けてまた別の骸骨を切断しにかかる。
({キィンッ}残り五つ!・・・・・・・これで、ラストォッ!!)
最初の踏み込みから十数秒して、ようやく最後の一体を切断し終わった。ガンベルトに引っ掛けておいたムラサマの鞘を右手に持ち、残心とともにゆっくりと刀身を納めていく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
---カチッ
「・・・・・・・・・ま、最初はこんなものか・・・」
納刀が完了し、一先ず一息ついた。
取りあえずこれで、本命が来るまでのウォーミングアップくらいにはなった。後は一緒に来ているであろうあの二人と一匹を見つけ出して・・・・・確か聖杯の大元になるものが寺のある山の下の大空洞にあるはずだから、そこにさり気無く誘導してこの事態を解決するとしよう。
「アライブ、コートと他の武器もくれ。」
『ヘイヘイ、ドウゾ。』
閻魔刀を受け取ってガンベルトの左側に引っ掛け、コートを上から羽織ったら背中にリボルバー二丁を担ぎ、準備が本格的に終わる。
「・・・・・」ピクッ
・・・誰かは知らないが見てる奴がいるな・・・リゾットやスポーツ・マックスがいる時みたいな感じがするから敵だろうな・・・サーヴァントならおそらくアサシンか・・・
なんにせよ敵を引き連れたままじゃ合流はできない。何とか始末するなり振り切るなりしなくては。
「ディスクをくれ、キング・クリムゾンとウェザー・リポートと・・・アヌビス神とハーミット・パープル。」
『カシコマリ!』
アライブが持ってきてくれた四枚のディスクを頭に差し込む。
すると意識が自分の肉体から切り離されていき・・・
「おいおい泰寛さんよぉ~~~~~?随分とこの俺を待たせてくれたじゃあねえか。あんな楽しそうな切った張ったの修羅場によぉ、この俺を出さないのはちょぉ~~~っと薄情が過ぎるんじゃあねえか?」
装備したスタンドの一つ、アヌビス神の人格に肉体の主導権が入れ替わった。
(悪いな、最初っからお前みたいな強力なやつを使ってると精神的に弛んでしまうんじゃないかと思ってさ。これから多分さっきよりもよっぽど手強くて斬り甲斐のある奴が現れると思うからそいつで勘弁しておいてくれ。)
「クックックックックック・・・・まあいい!俺も折角なら雑魚より強い奴を斬りてえからな!!英雄だか何だか知らねえが、相手が強いなら俺もそれだけ強くなり、より多くを斬れる様になるってことなんだからなぁ!!これからが楽しみで楽しみで仕方がねぇぜ!!」
(・・・・・・一応わかってるとは思うが味方になれるかもしれない奴とかには切りかかるなよ。特にリスっぽい生命体と赤毛の少女と眼鏡っ娘には。)
「わかってるわかってる。そいつら相手にやらかすのはさすがにいろいろとまずいからな。」
クックック、と不気味に笑うアヌビス神に、苦笑しながらそうか、と返す。
こいつは俺がレクイエムの迷宮で死にまくってた頃からの付き合いだ。気心は大凡知れているし、何より積んできた経験が尋常じゃない。間違いなく、対サーヴァント戦では大いに活躍してくれることだろう。
(それじゃあとりあえずどうするんだ?適当に隙を見せて釣るか?)
(そうだな・・・とりあえずハーミット・パープルの念写で探せれば見つけ出す。それで無理なら適当にブラブラ歩きながら、調度良いタイミングで仕向けさせてくれ。後あの二人の位置も同時並行で探しておいてくれよ。)
(OK。)
ケラケラと笑いながら、腰の閻魔刀に腕を置いて歩き始めるアヌビス神。俺は俺で、エピタフの予知を見ながらどんな奇襲が来てもいいように備えることにした。