デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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人理焼却?なにそれ怖い その六

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

『・・・・・・それで、これはいったいどういうことなのかしら?』

「いやまあ…その…」

「どう…といわれましても…」

 

目の前の睨み付けてくる所長のホログラムから言葉を濁しながら目を逸らす俺と矢島。

 

『なんで!貴方と!初対面のサーヴァントが!さも昔からの知り合いみたいな感じなのかって聞いてるのよ私は!誤魔化してないでさっさと答えなさい!!』

「いや別に誤魔化してるつもりじゃないんですけど…ぶっちゃけ俺も状況についていけてないだけで…」

「そうだよ(便乗)」

 

所長はさらに視線を鋭くさせ、俺たちは揃って怒鳴りつけられる。

俺はそれに戸惑いながらも返答し、矢島はそれに便乗する。

 

「・・・・・・・で、実際のところどういうことなの?何でお前がサーヴァントとして呼ばれてんの?」

「はははは、まあ確かにそう思うよな。当時の俺が見ても絶対びっくらこくってはっきりわかるくらいおかしな話だし・・・・・・・そうか、そうだよな・・・他のケースならいざ知らず、お前がいるなら俺が呼ばれてもおかしくはないんだよな…」

 

俺からの質問に対して、肩を竦ませながら困惑した様子で矢島は意味深にそう答える。

パッと見の年齢は昨日見た時のそれと変わらないくらいだろうか。頭部はいつもと変わらないウニみたいにはねた髪型と、どこにでもいそうな感じのフツメンフェイス。

服装は上半身に年季を感じさせる草臥れた科学実験用の白衣、その内側に安物の白いカッターシャツを着ていて、サラリーマンが使うような黒いネクタイで首元を締めている。右の手首には、彼の愛用デバイス【GUNDAM】が待機状態の形状であるブレスレットとしてはまっていて町の赤黒い炎の輝きに照らされて輝いていた。

そして下は灰色の作業着と革靴を履いており、体から放たれるサーヴァント特有の人間離れした存在感とは対照的に酷く俗な感じが漂っているように思う。

 

「梶原、人間が英霊として座に登録される条件は覚えてるか?」

「・・・世間の誰もが認めるような偉業をやって、それで良い悪いにかかわらずとりあえず後世に名を残せるほど知名度を得て死んだらなれるんじゃなかったか?後は…確か世界と契約して死後を売り飛ばすんだったか?」

「まあ概ねその通りだ。」

「けどお前昨日まではそんな知名度なかったじゃん。あの段階の研究内容も持ってる技術も現代からしてみりゃ十分英霊になれるレベルだったけどさ、昔から研究に使う資材とかを元素変換装置を使って、その辺の産業廃棄物からでもレアメタルとか作れてたから進路についての話し合いで『有名税めんどくさいでござるwww拙者これから自由にのびのびとモノ作りに励みたいでござるwwwww』って言って細々やっていくことにしてたじゃん。」

「いやまあそうなんだけどな・・・そのはずだったんだけどなぁ……」

「・・・・・・・・お前まさか」

「いやそれはない。さすがにどこぞの弓兵みたいな自己犠牲はしねえよ俺は。」

 

だよなぁ…そんなのこいつの柄じゃあない。けどならなんでこんなことになっているんだ?

 

「あの、先輩…いま凄い事が聞こえてきたんですけど…」

「うん…産業廃棄物からレアメタルが作れるって聞こえたよね、今…」

『元素の変換って…嘘でしょ…錬金術の目標の一つである金の錬成すらこなせるってことじゃない…なんで近代の英霊がそんなことできるのよ…』

 

あまり関係ないが、俺たちの話題とは別に皆矢島の経歴にかなり驚いていた。

それだけじゃないよ、ぶっちゃけ型月で魔法と呼ばれていることの大半をこいつは科学で出来るんだよ…今更だけどほんと技術チートと頭脳チートはとんでもないよね…

 

『しかも今昔からって言ってたよね…あの、キャスター?君がその装置を作ったのっていつ頃なのかな?』

「ん?そうだな…梶原と最初に会った年に作ったから・・・9歳の頃か。早いもんだなぁ…」

『こ、こんなところにも天才が・・・・いや、でもこっちは彼より大分親しみやすいな・・・経歴はぶっ飛んでるけど何というか、振る舞いとか物腰はごく普通というか…』

 

ロマニが矢島の返答に驚きつつも、ふと誰かを思い出したかのように呟くのが聞こえる。

 

「話を元に戻すぞ。」

 

軽く咳ばらいをし、逸れかけていた話の流れを矢島が戻す。

 

「えっとどこまで話したか…そうそう、知名度の話だったな。端的に言うと、今ここにいる俺は【世間に自分の研究成果を発表し、人類史に名を残すほど有名になってしまった矢島 敬一郎】という英霊なんだよ。」

「へえ。」

 

なるほど、未来で何かしらの出来事があって、結果的にかなり有名になってしまった矢島なのかこいつは。衛宮士郎と英霊エミヤみたいな感じの。こいつは世界との契約なんてことはしていないらしいが。

へぇ、そっかぁーー・・・・・・・・・・・・・・そうかぁ……

 

「・・・・・・・・・・・・・・仮に人類史の保障が終わっても俺たちの苦難は続くのか…」

「察しが良くて助かる。一応ネタバレをしておくとな…【巌戸台】と【稲羽市】での事件、あっただろ?あれと似た事件が何年か後に起こる。例にもれず選択をミスったら結末は世界終末レベル。」

「回避方法は?」

「俺達じゃまず無理。ほぼ十割起こる。」

「またかよ…またかよ畜生・・・・・・・!」

「ああ、またなんだよ………はぁ、おかげで俺はスカさん並みにいろんな方面から狙われるようになるわ家族の方にも地味に危険が及びそうになるわ…皆がいなかったら本当にどうなってたかわかりゃしねえ…はぁ……」

 

俺は顔を覆いながらどうしたものかと頭を悩ませ、矢島はすでに通ったのであろう自分の過去に盛大に溜息をついた。

嫌だなぁ・・・・・・・凄く嫌だなぁーー。またあんなことが起こるっていうのかよ…はぁーー…

 

「よくわからないけど二人から凄く苦労人オーラみたいなのが漂ってきてる…」

「はい、何と言いますか…こう、ものすごく重い空気が二人から流れて来ているように感じます。」

『別にそれはいいけど・・・・・・今キャスターが言った世界終末レベルの事件のほうが私としては気になるわよ。』

「あ、皆はそれについては気にしなくてもいいよ。俺や梶原の元々いた世界での話でこの世界では起こらないことだから。」

「「『『・・・・・・・・・・は?』』」」

 

矢島の突然の暴露に、またしても皆が凍り付いた。

そしてみんなの思考が回復した後、またしても所長の質問攻めが行われたことは言うまでもない。

・・・頃合いを見て話そうと思ってたのにこのタイミングでそれを言うなよこいつ……流れ的に言わないとそれはそれでまずかったかもしれないけどさ…

 

 

 

 

 

 

 

 

その後皆の質問攻めを何とか無難にやり過ごし(皆最後のほうは目が死んでいたがそこは無視した)、改めて矢島の自己紹介が行われることになった。

いろいろとあってグダグダになっていたが、元々戦力不足の解消のために召喚したわけだしな・・・

 

「それじゃあとりあえず、改めて自己紹介と行かせてもらうぜ。サーヴァントキャスター、真名は矢島 敬一郎だ。前衛もできるが一応本業は研究者であり技術者なんで、あまり期待はしないでくれよ?」

「魔導師ランクSが何か言ってる・・・・・」

「梶原、一応言っておくけど今の俺、サーヴァントとしては現状大分弱いほうだからな。」

「えぇ~~~~ほんとぉ~~~?」

「嘘言ってどうすんだよ。俺キャスターだよ?本来は時間をかけて入念な準備を行ってから戦いに挑むクラスだぞ?マスターの力量の問題なのかカルデアの召喚方式の問題なのかは知らんけど霊基の強度自体もかなり低いし。まあ魔力供給自体は俺のスキルのおかげもあってそこまで心配がいらないのがせめてもの救いだけどさ。」

「うっ・・・・正直面目ないです…」

「まあそのあたりは今はいいさ。元々素質があるだけの一般人だったんだろ?これから何とかしてばいいよ。」

 

目線を落とし、申し訳なさそうに落ち込む藤丸を矢島が苦笑しながら励ます。

 

『それで藤丸、そいつのステータスは実際どの程度のものなの?少し見てみなさいよ。』

「あ、はい。わかりました。えっと…筋力と耐久って欄がEですね。俊敏と幸運ががちょっと高くてD+で・・・魔力と宝具の欄がA+です。」

『なるほど、まあキャスターとしては普通ね・・・・キャスター、貴方の宝具はどんなものなの?』

「ああ、俺の宝具は…」

『一寸待った皆!今そっちに敵性生物の反応が近づいてきている!サーヴァントではないけど気を付けてくれ!』

 

矢島が言いかけたその時、ロマニから敵が近づいてきていることが知らされる。

それを聞いた矢島はというと、待ってましたと言わんばかりににやりと笑いながら藤丸に提案し始める。

 

「それはちょうどいい。マスター、どうせだからここは俺一人に戦わせてくれないか?百聞は一見に如かずともいうし、実際に見てくれたほうが俺がどの程度できるか実感しやすいだろう。」

「…うん、わかった。気を付けてね。」

「よし来た!」

 

---ガシャッ・・・ガシャッガシャッガシャッ

 

二人のやり取りが終わった直後にあの骸骨共の足音が聞こえてきて、廃墟の影や瓦礫の山からワラワラと武器を持った奴らが姿を現す。

数は…今のところ見えてるのは12ってところか。見えていないところだと多分もっといるな。

肝心の矢島は両手を握ったり広げたりしてから、腕にはまっている待機状態のGUNDAMを頭上に掲げる。

 

「折角の初陣だ、派手に決めるぜ。GUNDAM、セットアップ!」

『Yes sir.system set up.』

 

矢島の声にGUNDAMが反応し、腕輪から矢島の魔力光である蒼色の光の粒子が噴出して全身を覆う。

その後一瞬にして光は物質化し、灰色のガンダムタイプの装甲へと変わった。

 

「なんかすっごくメカっぽくなったーーー!?」

「当然さ!だって俺科学者として有名になった英霊だし!」

「え!?科学者として有名な英霊というのは皆そういう風になるのですか!?」

「きっとな!某ア○アンマンの中の人だって英霊化したらこんなもんだよきっと!」

『そういうものなんだろうか…まあ彼も片腕だけならそれっぽいしあり得ない話じゃないのかな?』

『私の知ってるサーヴァントと全然違う・・・・・・ああ、レフ・・・こんな時貴方がいてくれたら・・・』

 

・・・ん~~~~~?

 

「おい、この前までの装備はどうした?」

 

矢島のバリアジャケットの装甲や武装は、昔使っていた改良型ストライクフリーダムのそれだった。

見てくれこそ大人サイズになっていて小学校の頃より頭身は真面になっちゃいるが、それは確か中学に入る前にGNドライブを作りたいって言い始めてからお蔵入りになったはずだ。今は確かグランゾンとかのスパロボをリスペクトした装備だったと記憶しているんだが…

 

「霊基強度の関係からこれに戻さざるを得ないんだよ・・・ゲーム風に言うとぶっちゃけレベルが足りないっす…」

「本当にぶっちゃけやがったな。」

「まあこの程度なら問題ねえよ。相手も雑魚だし・・・・じゃあ行くぜ!」

 

そう言い終わった次の瞬間に灰色の装甲は頭の天辺からおなじみのトリコロールカラーへと変わり、背中のブースターを点火してスーパードラグーンを機動兵装ウィングから展開しながら骸骨の群れの真ん中に突っ込んでいく。

 

---ビシュゥンッシュバッ!! バシュバシュバシュバシュッ!!

 

矢島はビームサーベルを両手に持って華麗に舞い、敵の繰り出す攻撃を最低限の動きで躱しながらすれ違いざまに骸骨を両断していく。そして展開された突撃砲はそれ自体が意思を持っているかのように縦横無尽に動き、俺たちの後ろや左右の物陰から向かってくる骸骨を一撃一殺と言わんばかりに片っ端から打ち抜いていく。

 

「ハッ!」ギュォンッ!

 

ある程度進んだところで全身のスラスターを使って瞬時に真後ろを向き、進行方向と直角に急上昇していく。俺たちの周りの掃除が終わった突撃砲もその後を追っていく。

上空40メートルくらいのあたりまで上昇し終わると、真下を向いて腰の超電磁砲、上昇中にサーベルから持ち替えていたビームライフル二丁、周囲に配置された突撃砲をそれぞれ残っている敵に向けて狙いをつけ・・・

 

---ドギューーンッ!!

 

背中のウィングからロケット噴射をしながらそれぞれから一斉掃射することで残っていた敵を駆逐した。

ふむ…何時もながらの無駄の無い精密射撃だな。

 

『・・・・・・・・・・・・えっと、敵性生物の反応がすべて消失。皆、戦闘終了だよ。』

「・・・凄いです、先輩。あれだけいた敵がこんなにもあっさり撃破されました。」

「うん、もはやキャスターっていうより機動戦士だったね…」

「それだとまんまじゃねえかよww  あ、帰ってきた。」

 

藤丸の感想に突っ込みを入れた直後、矢島が俺たちの目の前に降り立ってバリアジャケットを解除する。

 

「ふう、どうよマスター?俺は役に立ちそうかい?」

「うん、すっごく。」

「そりゃあよかった。」

 

ハハハ、と矢島は藤丸の評価に笑いながらそう答える。

 

「・・・さて、お披露目も大体終わりましたけど、これからどうします所長?」

 

ひと段落したところで、俺は話を進めるために所長に指示を仰ぐ。

 

『そうね…まだ不満はあるけど、とりあえず今はこれでいいわ。これから皆には、先ほどまでの探索の続きをしてもらうわよ。藤丸、マシュ、いいわね?』

「あ、はい、私はそれでいいです。」

「私も問題ありません。」

『よろしい。それでは四人とも、さっきのようなサーヴァントの襲撃に気を付けつつ、慎重に調査を進めていきなさい。』

「「「「了解です。」」」」

「フォーウ。」

 

 

 

 

「で、肝心な話だけどどこから調査するよ。あんまり闇雲に行っても時間ばっかりかかるし…皆何か手掛かりとかはねえの?」

 

再開から30秒後、皆で歩き出したは良いもののどこから見て回るかをみんなに聞いておく。

 

「ごめん、私たちもあんまり調べられてなくて…」

「すみません…」

「そうか…」

 

藤丸とキリエライトの返答に俺は少し残念に思いながら頷く。

確か原作の冬木だとどっかに大きな寺のある山があって、そこの下の大空洞に聖杯を構築するための魔術式が存在するはずだ…

一応アサシンを始末する前に場所だけは調べておいたからな。本当はみんなが既に知っていて、それに乗っかる形が一番面倒がなくて良いがこれはこれで仕方がない。合流する前にそれらしいのを見つけたからそこに行ってみないかと、さり気無く提案してみることにしよう。

 

「・・・ならここの事情に詳しい奴に聞いてみればいいんじゃないか?ほら、ちょうどそこの物陰にそれらしいのがいるし。」

「なんだと?」

 

皆にそう言いだそうとした直前に、矢島が先にそう言いながら廃墟の一角を指し示す。

俺達が疑問に思いながらその方向を見ると…

 

「・・・おいおいなんだよ、とっくにばれちまってたのか。」

 

その物陰から薄い水色のフードに身を包んだ、自分の身長ほどの大きさの杖を持つ男がため息をつきながられ達の前に姿を現した。

・・・・・さっきからなんか見られてる感じはあったけどそんなところにサーヴァントがいたとは…

 

「っ!?下がってください先輩!そこにいるのはサーヴァントです!」

『なんですって!?またサーヴァントなの!?』

 

キリエライトが盾を構えながら俺たちの前に立ち、遅れて所長の声が響く。

 

「お、なかなか面白いもん持ってるじゃねえか。そいつは魔術による連絡手段か?」

「・・・・・・」

「あー・・・・まあ落ち着きな、お嬢ちゃん達。気持ちはわかるが俺は別にお前らと争おうって気はねえ。むしろ互いの目的を思えば、俺はあんたらの味方と言っても過言じゃないぜ。」

「・・・どういうことだ?」

 

そう言いながら、男はフードをとって顔を見せた・・・・・・・・って……・

 

「「クー・フーリンッ!!?」」

 

俺と矢島は、その男の顔を見て思わずそう叫んでしまった。

それを聞いたキャスターは一瞬だけ驚くと、俺たち二人に面白そうなものを見つけたといわんばかりの視線を向ける。

 

「へえ、驚いたな。そっちのキャスターはともかく坊主の方が一目で俺の真名を看破しちまうとは。地元じゃともかくこの国での知名度はそこまででもなかったと思うが…」

「いや、うん、その・・・・・・ある意味有名ですよ、ある意味で・・・・なぁ?」

「うん・・・そうだよな・・・・ある意味で有名だよな、ある意味・・・・・・」

 

幸運Eとか、ランサーが死んだ!この人でなし!とか、自害せよランサーとか、マスター運の低さに定評があるとか、聖杯戦争では槍の当たらなさに定評があることとか…駄目だ!本当は滅茶苦茶強い筈なのにぱっと思いつくものに碌な物がない!

しかもクラスはまさかのキャスター。ランサーではなくまさかのキャスターである。

いやまあ確かクー・フーリンは魔術も習得していたらしいしあり得なくはないんだろうが…

 

「あ?なんだよ、えらく意味深な言い方だな・・・」

 

俺たちの態度を見て、クー・フーリンは訝しげにこっちを見る。

すんません、さすがにこれを俺たちの口から言うのは非常に憚られるというかなんというか…

 

『・・・・・え、えええええええええええええええ!?クー・フーリンだって!?も、もしかしなくてもあのクー・フーリン!?あのケルト神話の大英雄のクー・フーリンなのかい!?!』

『え!?嘘!?本当にクー・フーリンなの!?』

 

俺がそんな馬鹿なことを考えている隣で、ロマニと所長は目の前にいるクー・フーリンノ正体にかなりの驚きようだった。

まあこの二人は俺達みたいなネタ的な意味の知識ではなく、ちゃんと元となった神話や伝説の方を知っているだろうからこういう驚き方になるのも無理はない。

俺はよく知らないけど、こいつ神話ではかなり凄いことをいろいろとしていたらしいし。

 

「・・・・・・・・・・・・・えっと…誰?」

「先輩、あの方はどうやらクー・フーリンのようです。彼はアイルランドに伝わるケルト神話の大英雄で、100万の軍勢をたった一人で抑え込んだり、単身で影の国へと向かい魔女スカサハから教えを受けたりなど、数多くの逸話を残した方なんですよ。」

 

一方でもともと一般人でしかなかった藤丸は俺たちの反応を見て頭の上に疑問符が浮かびそうなほど頭を傾げており、キリエライトからクー・フーリンに関する簡単な補足説明を受けていた。まあ日本での知名度なんて実際こんなもんだろう。前世の日本でだって、クー・フーリンやゲイ・ボルグが有名になりだしたのってフェイトやメガテンなどのゲームが大体の原因だったし。

 

「そうなんだ・・・・・えっと・・・・・・とりあえずどういうことなの?貴方は敵じゃないってことですか?」

 

キリエライトの説明をあんまりわかっていない様子の藤丸が戸惑いながらもおずおずとクー・フーリンに話しかけると、

 

「おう、その通りだぜお嬢ちゃん。俺の目的はこの聖杯戦争を手っ取り早く終わらせることだけなんでな。けどそうするにはちょいと今の俺だけじゃ心許無くてよ、そこで何とかするためにいろいろと方々駆け回っていたんだが・・・」

「結果、手を組めそうだったのが俺達だったと。」

「そういうこった。そっちの事情は知らねえがさっきまでのやり取りを見る限り悪党でもイカレた阿呆というわけでもなさそうだからな。オタクらとしても悪い話じゃねえだろ?ここで起こった出来事を知ることができて、さらに戦力も増える。まあよく相談して決めてくれや。あの野郎が来なきゃ今すぐ事態がどうこうなるってこともねえだろうし、気楽に待たせてもらうぜ。」

 

彼は薄く笑みを浮かべながらそう話をし終わった。俺たちは顔を見合わせ、所長とロマニのホログラムに視線を向ける。

 

『所長、皆、とりあえず事情を聴いてみよう。どうやら彼はまともな英霊のようだ。』

『・・・・・・ええ、そうね。さっきと違って今度のは一応ちゃんとコミュニケーションもできるみたいだし…みんなもそれでいいかしら?』

「はい、私はそれでいいと思います。」

「私も異論はありません。」

「まあこれと言って敵意もやばい感じもないし俺も賛成です。」

「以下同文。」

 

藤丸、キリエライト、俺、矢島の順に全員がOKを出す。

 

『全員賛成だね。それでは改めて初めまして、キャスター。我々は尊敬と畏怖を持って…』

「ああ、そういう前口上は結構だ。聞き飽きた。手っ取り早く用件だけ話せよ軟弱男。そういうの得意だろ?」

『うっ!?・・・・・・そ、そうですか、では早速。・・・・・・軟弱……軟弱男とか、また初対面で言われちゃったぞ……』

「「・・・・締まらないなぁ・・・」」

「フォウ。」

 

最後の最後で上手い事締まらず、若干凹んだ状態のロマニがキャスター相手に説明を始める。

そしてロマニの説明が終わった後、キャスターにより特異点内の粗方の状況と彼自身の事情の説明が行われて、お互いの状況を確認しあった後、俺達はキャスターがとりあえず信用出来る奴だと判断して、彼と共闘することになった。

 

 

 


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