デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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山も落ちもない、日常回になります。


第六十二話

===三月一日 AM10:10===

 

気が付けば、十二月末のクリスマスパーティーから早二か月ちょっとが経過していた。

八神一家は元々ヴォルケンリッター達が色々やらかしていたこともあり、はやても彼女達の監督責任を問われて様々な方面へと奔走する羽目になっていたが、それ以外はあれからは特に何事もなく、穏やかに平和に時間が過ぎて行っていた。

年末年始は神社に皆でお参りをしに行ったり、皆に誘われてスキー旅行に行ったり、学校のテスト勉強に何故かつき合わされたり、アリシアが宿題サボってて皆に泣きついているところを腹抱えて笑ったり、矢島の新しい装備や道具のテストに付き合ったりした。確かアリシアは結局プレシアから説教を受ける羽目になっていたな。

後プライベートな物だったら、二月の中盤でようやく作っていたフリーゲームのβ版が完成してタイムアタックやどれだけ進めるかのチャレンジを行ったり、年末の大掃除で偶々掘り起こした前世の積みゲーの消化をしたり何時もの修業を行ったりなど・・・・・・まあとにかく、結構楽しく充実した毎日を送っていた。冬休みに予定していたグルメ旅行計画が夜天の書関連の騒ぎのせいで実行できなくなってしまったのは残念極まりなかったが、それでもまあ俺の求める適度な平穏と刺激に満ちた日々であったのは確かだ。

・・・・・・・・・・さて、これから約二十日後には春休みだ。

長期の休みという絶好の機会に加えて、春キャベツや山女魚、ゴボウに筑紫などの春が旬の食べ物がこの時期には店に並ぶことになる。これを逃す手があろうはずがない。いやぁ、ワクワクしてきたぜ・・・!

 

 

 

 

と、そんなふうに思っていた時期が俺にもありました・・・・いやね、流石にいつまでもあれのことを見過ごしておくわけにはいかないんだよなぁ・・・

はあ、サイレントヒルや羽生田村じゃあるまいし、なんであんな厄ネタ染みた場所が俺達の地球に存在するんだか・・・

 

 

 

 

 

---ピンポーンッ・・・・・・ガチャッ

 

『はい、どなたでしょうか?』

「あ、すみません。今日遊ぶ約束をしてた梶原です。」

『あらいらっしゃい、敬一郎ー!泰寛君が来たわよ!』

『あいよー!今出る―!』

 

インターホンのスピーカーから矢島の声が聞こえた後、インターホンの回線が切れる。

その後少し時間が経った後、ドアが開いて矢島が顔を出す。

 

「ちわーっす。どうだ?調子の方は?」

「ぼちぼちだな。今のところは・・・・・お前はどうだ?自作のゲームは楽しんだか?」

「おう、プログラム組んでくれてありがとうな。おかげで満足いくものになったよ。」

「そう言ってくれて何よりだ。まあ俺ならあんなドットの2Dグラフィックじゃなくて超リアルなVR式のものに出来たけど・・・」

「・・・・あんまりリアリティが高いのはいいや。」

 

現実で散々やりなれてることだしな……

 

「・・・・・・で?本当に本当なんだろうな、あのメール…」

 

矢島は露骨に嫌そうな表情で、俺に確認をする。

あのメール・・・というのは、俺が三日程前に、今日ここに来るきっかけとしてこいつに送った電子メールのことだ。

多分内心では、ちょっと早めのエイプリルフールネタであってくれと切に願っていることだろう・・・残念ながら違うんだなぁ、これが・・・

 

「ああ、間違いなく俺が去年体験したことだ。詳しくは中で。」

「おk・・・・・・で、土産は?」

「はいこれ、今回は無難に自作の最中と煎茶セット。」

「餡の種類は?」

「小倉の粒餡。」

 

( ^ω)つポン(ω・ )

 

「分かってるじゃない。」

 

満面の笑みで矢島は返答した。

どうやら満足してもらえたようだ。

 

「ははは、どうも。」

「いやー、最近頭使ってばっかりで糖分が恋しくてさー。こういうあっさりした甘味は正直助かる。ささ、あがれあがれ。」

「お邪魔しまーす。」

 

矢島に続き、靴を脱いで玄関を上がり、廊下を歩いていく。

 

「あ、矢島君のお母さんこんにちわー。」

「ええ、こんにちわ梶原君。今日はゆっくりしていってね。」

「ありがとうございます。」

「飲み物とお菓子は自分で選んで持って行ってね。」

「あ、了解でーす。なにがある?」

「見た方が早い。というわけで冷蔵庫を覗くぞー。」

「おー^^」

 

俺は水道水と氷をポットの中にいっぱい入れて矢島が選ぶのを待つ。

少しして選んだのであろう矢島は二人で冷蔵庫の中からジンジャーエールの入ったペットボトルを取り出し、コップに氷を入れる。

後はお菓子をいくつか大皿に入れ、俺の部屋に持っていく。

 

「矢島、話の前に部屋に結界を張ってもらえるか?一応内緒話だからな。」

「・・・随分と慎重だな。まあいいや。ほれ。」

 

矢島の足元に魔法陣が発生し、部屋の中と外の空間が分け隔てられる。

俺は床に座り、お徳用のドライソーセージに手を伸ばす。

 

「よいしょっと・・・・{カリッ!ポリッポリッポリポリッ}・・・それで本題だけど、この文面は一体何だよ?」

 

椅子に座り、落ち着いた矢島はじゃがりこを一口齧った後、空中にホログラム映像を投影して俺に事情の説明を要求する。

投影されているのは一つの文章ファイルで・・・俺が去年の夏に、一人グルメツアーで立ち寄ったあの辰巳ポートアイランドでの体験と、矢島にここについて調査を一緒にしてほしいと記したものだった。

俺は某ネルフの髭司令官のように手を口の前で組み、それに少し間を空けた後話を切り出していく。

 

「紛れもない、俺自身が体験してきたことだよ。」

「・・・・・あの転生してきた屑が作り出した異界に似た雰囲気を持つ一都市規模の異空間、街に聳え立つ月に届くんじゃないかってくらいの巨塔、そして異空間内部をうろつく悪魔に似た気配を持つ化け物達・・・・・・冗談・・・と切り捨てるには俺もいろいろと体験しすぎたからなぁ、ん~~~~~~~・・・・」

 

少しの間唸り、はぁ、と大きく溜息を付きながら矢島は頭を抱える。

こいつも去年だけで世界終末レベルの案件に三度は首を突っ込んでいるのだ。いい加減今年からは平和にやっていけると思っていた端からこんな話を切り出されたのだから、気持ちは嫌でもよくわかる。俺だって同じ状況だったら同じ反応をする。

しかしすぐに気持ちを切り替えたのか、真剣な表情になって矢島は提案を投げかけてくる。

 

「・・・・・・分かったよ。お前の話を信じることにする。次の土日辺りにちょっとそこに下見に行こう。で、明らかにやばそうだったらなんとかして排除する方法を考える、放っておいてもよさそうなら放置、これでOK?」

「異議無し。」

 

矢島の提案にOKを出す。

若干希望的観測の入ったものだが今はこれでいい。実際に見れば多分嫌でもよくわかるんだし。

 

「{ゴクッゴクッゴクッゴク・・・・・・}プハァ!!よーし暗い話題はこれで終わり!後はゲームでもしようぜゲーム!他のメンツも呼んでマリカだマリカ!」

 

ジンジャーエールを飲んで咽喉を潤し、さっきまでの緊迫した空気から普段の遊びモードに切り替わる。

俺もコップに入っている氷水を飲んで喉を潤し、さっきまでのシリアスな気分から切り替えた。

 

「あいよ、ナンバリングはどれにするんだ?」

「8のデラックスで!」

「・・・・・・それ発売がまだ十年以上先だろ。他のメンツが見たらまずいって。」

「あ・・・・・じゃあ皆が来たら去年出たダブルダッシュに切り替えってことで。」

「まあ無難にそのあたりだろうな。確かクリスマスでもしこたまやった記憶があるけど。」

「二か月以上も経ってるしそろそろ大丈夫だろ。寧ろアリシア辺りは張り切ってリベンジを仕掛けてくる気がするわ。」

「あ、なんかわかる気がする。」

 

クリスマスの時はアリシアとフェイトがタッグ組んでいて、その時は確かあまり戦歴が良くなかったな・・・それで次のマリカでは絶対勝つ!!とか言っていたはずだ。

因みに俺はアリサ(ローウェル)と、矢島はすずかと、なのははアリサ(バニンクス)と組んでいて、矢島達と俺達が一位と二位を行ったり来たりしてた。

 

「よし決定!俺ちょっと他のメンツに電話かけてくるわ!」

「じゃあ俺先に居間に行って準備してくるわ。」

「頼む!お袋ー、ちょっとゲームやるからテレビ使っていいー?」

「いいわよー。」

 

矢島と一緒に部屋を出て、あいつは固定電話の方に、俺は居間に行ってコップとおやつの入った皿をテーブルに置き、テレビの表示をニンテンドースイッチと接続されている画面に切り替える。

ゲームの電源ボタンも押して……よし、後は矢島とゲームの起動を待つだけだ。

皿に盛られたお菓子の中からドライソーセージをもう一度取り出し、包み紙を開いてチマチマと齧る。

お酒の御供として作られたであろう濃い目の塩味と香辛料のコラボに、口の中の唾液腺が刺激される。

体が子供だからか、この濃い味が何とも言えず心地よい。年を取ると体調管理のためにこういうのをあまり食べられなくなるからなぁ…こういう時、子供からやり直せてよかったと本当によく思う。

 

「おまたせー!なんかなのはとバニンクスの方のアリサとすずかは塾で来られんらしい。」

 

十五分くらい経過した後、矢島がそう言いながらリビングに戻ってきた。

 

「そうか、そりゃ残念だな・・・」

「けどローウェルの方のアリサとテスタロッサ家の姉妹はお昼食ったら来られるらしい。」

「よし、とりあえず男二人で寂しくって落ちにはならなかったか。となると実際の全員の集合時間は一時くらいか?」

「まあそうなるだろうな。飯の準備は?」

「当然してきてるさ。朝の残りで作ってきた。」

 

矢島の母さんが見てないことを確認しながら俺は倉庫から弁当を取り出す。

 

「うし、じゃあゲームしながら昼はここで食う・・・」

「敬一郎?まさかゲームしながらご飯食べるなんて行儀の悪いことはしないわよね?」ニッコリ

「アッハイ。」

 

廊下の向こうから顔を覗かせて鋭い視線を向けてくるお袋さんに、矢島はかなりビビった様子で即答する。

それを見て笑顔を張り付かせたまま、矢島のお袋さんは廊下の向こうへとフェードアウトしていった・・・・・・前から思ってたが矢島の母さんも大分怖えな。こう、いろいろと貫禄がある感じというか・・・

まあ家の親が怒った時の比じゃないと俺は思っているが。

 

「ま、まあ取りあえず今はこっちをやろうぜ。俺マリオで。」

「おk、了解。」

 

矢島はマリオか。

 

「ふむ・・・じゃ俺ルイージで。」

「兄より出来た弟など存在しねぇ!今日はそれを証明する良い日になるであろう・・・」

「大袈裟すぎワロタw 取りあえず乗り物はバイクにするか。バランスはスピード3・加速4・重さ3を目安にして・・・めんどくさいから最初は初期パーツにしよ。」

「お互い万能型だからな、これは純粋に腕が試される・・・・・・まあ俺はスーパースターで行くけど。」

「ちょwおいw」

 

矢島はカートをスーパースターに切り替え、グライダーはスーパーカイト、タイヤはゴールドタイヤにしていた。

二人とも準備が完了して、今度はカップの選択。

 

「このレースはどうする?」

「まずは指慣らしにキノコカップでよくね?」

「あんまりギミックが多くても鬱陶しいからおk。じゃあやるか。」

「行くぞぉおおおおおおおお!」(小声)

 

コースのロードをしている間に水分補給を済ませてお菓子を口に放り込み、ロード画面から切り替わってマリオカートスタジアムのスタート地点に参加プレイヤー(二人を除いて皆NPC)が並ぶと二人同時にコントローラーを持ち直す。

開始のカウントダウンが2を指した直後に二人揃ってアクセルボタンを押し続け・・・

 

---ピィ―――ッ!

 

スタートと同時に二人揃って先陣を切った。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「お、さっそくトリプルキノコか・・・{ガンッ!}ファ!?」

「いっよしゃナイスコントロール!お先しつれーい。」

「おのれ・・・!だがこのトリプルキノコがあればショートカットは造作もない!」

 

ミドリ甲羅のスナイプによる遅れをダート内にあるショートカットルートで出来るだけ縮める。

更に二つ目のアイテムであるブーメランフラワーで矢島を狙い・・・

 

「そこ!」

「{ガンッ}あ!くそ!良い腕してやがる!」

「ふはははは!あーばよとっつぁーん!」

「逃がすかこの野郎!」

 

マリオが怯んでいる隙に追い越し、一位の状態で突き進む。

 

 

 

「あ、イカ墨だ。」

「昔は単なる目隠しだったけど最近は地味にスリップ効果も追加されたゲッソーさんのイカ墨優秀。」

「まあ慣れるとそこまで邪魔にもならないんだが{ボーンッ!}あふん!ちょ!?誰だトゲゾー甲羅投げたやつ!?」

「俺じゃねえぞ、NPCの誰かだな。ついでにお先―。」

「ぐぬぬ…」

 

どこぞのNPCのせいで矢島や後ろから来る連中に先を越されてしまった・・・いや、まだまだこれからだ!

 

 

 

 

 

「もしもし、私キラー。今貴方の後ろにいるの。」ゴオオオオオオオオオ

「ヤメロー!こっちに来るんじゃなぁあああい!!」

 

NPCを跳ね飛ばしながら矢島の後ろにぴったりついて迫る俺に悲鳴を上げながら何とか避けようと矢島は左右にカートの車体を揺らす。

 

「ほぉ~れほれほれ。早くどかないとあたっちまうぞぉ~~?」

「だったら後ろに張り付くのをやめて下しあ…」

「だが断{ポンッ}チッ、もう時間切れか。」

「よ、よし。何とか逃げ切ったk「じゃあ次はスターだな。」{ガンッ!}あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

「アデュー!ヒャッハー!」

 

 

 

 

 

 

「見よ!この華麗なるドリフト!うおおおおおおおお!」

「くらえ!ジェットストリームアタック(緑の三連星)!」

「馬鹿め!そんなもの軽く避け・・・」

「追撃のボム兵で妨害の成功率はさらに加速する!」

「あちょそこは駄目{ボーンッ!}ああああああああああああああああ」

「じゃあの!」

 

計算された緑甲羅の三連射とボム兵の絶妙な配置により、見事に爆撃されて足止めを食らった俺を後続が容易く追い越してゆく・・・グギギ…!だがまだ勝負はこれから…!

 

 

 

 

 

 

===そんなこんなしているうちに・・・===

 

 

 

「ぬぐぁあああああああ負けたぁあああああああっ!!」

「ぬわああああああああ僅差で勝ったあああああああああっ!!」

 

約10分後、レースが全て終了し、表示された最終結果に膝をつく俺と両腕を上げて歓喜する矢島。

1コース目と3コース目はギリギリ一位を取れたんだ…!けどコインの枚数が足りなかった…!コインさえ足りていれば・・・勝っていたのに・・・・!

というか矢島のアイテムの命中精度がおかしいわ。なんで緑甲羅やバナナがあんなによく当たるんだよ。

 

「畜生!もう一戦だもう一戦!次はサンダーカップ行くぞオラァンッ!!」

「来いよ梶原ぁッ!カートなんて捨ててかかってこいっ!」

「それじゃただの障害物競走だろ!ええい、今度はちゃんとパーツを吟味して選ばねば…!」

 

キャラはヨッシーに変え、車体をマスターバイク、パラフォイルMKTV、トライフォースタイヤに換装する。

 

「次こそ勝つ!」

「いいよ!来いよ!」

「二人とも熱中するのはいいけどもう少し静かにね。昼間とはいえお隣さんの迷惑になるかもしれないし。」

「あ、すみません。」

 

何時の間にか声量が大きくなっていたようだ。

二人していったん落ち着いた後、矢島はキャラとマシンはそのままにして再び勝負を行うらしく、サンダーカップを選んでコースのロードを待つ。

ロードが終わると最初のようにスタートダッシュの準備をして…

 

「レディ!」

「ゴーッ!」

 

二度目の戦いの火蓋を切った!

次こそ絶対勝つ!

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「えぇい、今回は引き分けか。あそこでキラー引いてりゃなぁ…」

「トップ陣営がそんな都合のいいものそうそう引けるわけがないじゃん。」

「ですよねぇ~。」

 

昼食のミートスパゲッティを啜りながら、俺は弁当に入っている白魚のカルパッチョを白御飯と一緒に口に入れ、咀嚼しながら器用に話す。

俺達はその後何度か一進一退の攻防を繰り広げながら昼食前まで勝敗を競い続けた。

大体10回くらいカップを選んで・・・・・結果は先に語った通り、5対5で引き分けた。あと少しというところまで行ったんだがなぁ…まあいい。この決着は次回に持ち込むとしよう。

 

「モグモグ・・・ゴクンッ!ふう、御馳走様。」

 

先に矢島がミートスパゲッティを食い終わり、片付いた皿を台所に持っていく。

 

「矢島、後で弁当箱そっちで洗ってもいいか?」

「おう、俺が洗った後でな。」

「よし。じゃあ俺もとっとと食い終わるか。」ガツガツガツガツガツ

 

矢島の許可を取り、俺は残りのポテトサラダと御飯を全て一緒に食べ終わる。口の中が空いたら、最後にデザートの薩摩芋と林檎のきんとんの甘みをよく味わって箸を置き、弁当箱を台所に持って行って水をかける。

 

---ピンポーンッ

 

「「ん?」」

 

スポンジに洗剤を垂らして洗おうと泡を立て始めた瞬間、玄関のチャイムの音がリビングに鳴り響く。

 

「誰か来たか?ハーイ、今出ますよー。」

 

矢島が応対しに行く。誰が来たのやら・・・

 

「{ピッ}はい、もしもし。」

『あ、矢島君お待たせ。呼ばれてきちゃったよ。』

「ん?アリサか。思ってたよりも早かったな。」

「え?どっちのアリサ?」

「ローウェルだローウェル。取りあえず俺は応対に行ってくるからその前に片づけよろしく。」

「おk把握。」

 

そう言えばニンテンドースイッチ片づけてなかった…こりゃ失態だ。

矢島が彼女を迎えに行っている間に俺は洗剤を洗い落とし、急いでニンテンドースイッチの電源を切ってゲームキューブと入れ替える。

 

「{トットットットット}ハァーイ泰寛、こんにちわ♪」

「お待たせー♪」

「二人ともこんにちわ。」

 

ゲーム機の切り替えが終わった直後、リビングの入り口から矢島とともに少し額を汗で濡らしたアリサと、相変わらず健在そうなフェイトとアリシアが姿を現す。

俺もいつも通り、彼女に挨拶を返した。

 

「うぃーっす・・・アリサは二人と違って汗流してるけどどうした?」

「うん、ちょっとね。孤児院での手伝いが思いのほか長引いちゃって、急いで自転車で走ってきたの。」

「そうか、お疲れ。」

「ありがとう。あ、矢島君お水もらってもいいかな?」

「どうぞどうぞ。」

 

アリサは矢島から許可を貰い、台所で取り出したグラスに氷と水を注いで一気に水を飲み干していく。

俺はその姿に背を向け、モードセレクトからグランプリを選択してキャラをワリオに決定する。

 

「あ、ダブルダッシュやるんだ。けどこの人数だと一人あぶれない?」

「確かにな・・・俺は皆が来るまでに結構遊んだし、俺は後ろで皆がやっているのを見てるわ。」

 

弁当箱もまだ洗ってなかったしね、と付け加えてキャラクターセレクトを戻し、コントローラーをおいて台所に戻る。

 

「よぉ~し!じゃあ私ピーチで行く!フェイトはどうする?」

「あ、じゃあ私はディジーにしようかな?」

「おk。じゃあ俺はキノピオで行くわ。」

「私はキャサリンにするわ。」

 

弁当箱を洗っているうちに皆はそれぞれ扱うキャラクターとカートを決めていた。

どうやら矢島とアリサ、フェイトとアリシアでタッグを組むようだ。カップはスペシャルか。最初から飛ばしていくなあ皆・・・まあそっちの方が見応えがあって面白いけどね。

 

「フッフッフ、この一か月で鍛えたドラテクを見せてやろう・・・!行くよフェイト!!」

「うん、頑張ろうね。」

「ケイイチ君、いつもの狙撃よろしくね。」

「OK、その綺麗な顔を吹っ飛ばしてやる!」

「あ・・・・・・・ケ、ケイイチはちょっと縛りを入れない?アイテム全縛りとか・・・」

「全部とか流石にきつ過ぎるだろ・・・まあ投擲系は使わないでおくよ。俺は。」

「十分十分!さあさあレッツゴー!」

 

矢島のアイテム縛りが決まって及び腰になっていたアリシアがまた張り切り出す。

そうこうしているうちに一つ目のコース【ワリオコロシアム】のロードが完了する。

 

「勝ったタッグにはこちらのグレープフルーツとヨーグルトのタルト1ホールを進呈しよう。」

「MAJIDE!?これはますます負けられない・・・!」

「あらおいしそう。そういうことなら私も手は抜かないわ。」

 

アリサもやる気を出してくれたところで、二組とも華麗なスタートダッシュを決めて先頭へと躍り出た。

その後の皆のワイワイとレースを楽しむ姿を、俺は皿のお菓子類をポリポリと食べながら楽しませてもらうことにした・・・・・・

 

 


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