デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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第六十四話

 

予想は大当たりして、どうやら俺と矢島は揃ってこの街の異界に引き込まれたようだ。

辺りを照らす光は人口の灯火から月より降り注ぐ黄緑色の光に切り替わっていて、所々に見える血のように真っ赤な赤色の水と相まって不気味な雰囲気を漂わせていた。

そして、昔と比べるとかなりマシだがやっぱり体にかかるこの異界特有の重い空気は気分のいいものじゃない。

 

「・・・・妙だな、あの塔がないぞ。」

 

・・・・・しかしそれはそれとして、お目当てのものである肝心の塔が、俺が前に見た場所・・・月光館学園と同じ位置にないこの状況は一体どういう事なんだろうか・・・。

 

「・・・・・・どういうことだ?まさか場所が移動しているのか?」

「{ニヤニヤ}いや、場所はここで会ってるぞ。まあ見てろって、すぐにわかるから。」

「は?いったいどういうこと・・・」

 

---ズゥン・・・

 

「!?」

 

何故かニヤニヤと隣で笑っている矢島に言葉の真意を問おうとした直後、俺達の足元が地鳴りで大きく揺れる。

何事かと思って辺りを見渡していると、目的地である学園の方に変化が訪れた。

 

---バギャァッ!ギギギギギ・・・ゴォンッゴゴォオンッ 

 

「・・・・・・は?」

 

まず、学園の外壁の一部が大きく外れた。まるで瞬間接着剤でくっつけていたプラモデルのパーツのように、最初からそこに切れ目が入っていたんじゃないかっていうくらいに呆気無く幾つかのパーツとなって外れた。そして外れた外壁は一緒にある窓とともに不協和音を鳴らしながら飴細工のように大きくその形を歪めていく。

 

---ガコンッ!ボゴンッ!ベキベキベキベキッ ボゴォンッ!!

 

そして変化はそれだけではなかった。それ以外の学園という建物を構成する部分も同じように耳障りな音を奏でながら姿形を変え、あるいはどこからともなくそれらと全く関係のないオブジェクトも生えてきたり、あるいは姿を変えていく学園の中から突き出たりしてどんどん異様な形へと変わっていく。

やがてそれらのパーツ全てが天に向かって、他のものよりもより早く駆け上がらんとしているかのように上へ上へとどんどん形を変えながら伸びていき・・・・

 

---ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・ゴォォオオオンッ・・・・

 

見入っているうちに気が付けば、あの時の巨大な、奇怪な図形やガラクタが積み重なってできているかのような、空に輝く月に届かんばかりの長い長い一本の塔が出来上がっていた。

 

「・・・・・・・・・」( ゚д゚)

 

えぇ・・・なぁにこれぇ・・・元の学校どこ行った?というかいったい何がどうなったらこんなことになるわけよ・・・?

 

「ぷくく・・・すっげぇ顔ww」

「・・・・・というかお前知ってやがったのか矢島・・・」

「まあな。とはいっても俺も知ったのはついさっきなんだけどさ。」

 

笑みの種類が思いもよらない出来事に唖然としている俺の醜態を笑うものから、何とも言えないといった感じの苦笑に変わり、矢島は肩を竦めながらそう答える。

 

「さっき見てたドローンの回収したデータの中に、この塔が形成されるシーンが入ってたんだよ。こうして実際に見ると改めて驚かされたけどさ・・・いや、それ以上にお前の驚く顔の面白いのなんの・・・プププww傑作ww」

 

こ、こいつ・・・・・はぁ、まあいい。

 

(アライブ。)

 

自分の隣にアライブを出し、空中にシャドーボクシングを行わせたり、時間停止を行わせたりなどの軽い運動でどの程度動けるかを確かめる。

 

(・・・・・・あれ?思っていたよりも悪くはないな。)

 

結果は思っていたよりも良好で、前に来た時よりも性能のダウンは小さく、時間停止も今現在出来る7秒弱から5秒とちょっとくらいまで落ちている程度だった。

・・・・やっぱりあれか?去年の悪魔騒動で俺もレベルが上がったからだろうか・・・

・・・まあいい。今はこの事実を前向きに考えていくとしよう。実際俺にとっては、今間違いなくプラスに働いているのだから。

 

「まあ特に問題ないのは分かった。ここで突っ立ってても始まらないし、早く行こう。」

「そ、そうだな。行くか。」

 

必要なチェックが終わったところで未だにどこか表情がにやけている矢島を急かし、俺はこいつと共に警戒しながら地面から生えてきた塔の門前まで歩いていく。

 

「GUNDAM、スキャニング開始。」

『了解いたしました。しばしお待ちを・・・・・・・・・・・スキャン終了、この先に敵らしき存在はありません。』

「おk。手伝え、開けるぞ。」

「よし来た。」

 

矢島は門の左側の戸を、俺は門の右側の戸に触れる。

 

---ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・

 

門はその重厚な見た目と違って思っていたよりも軽く、俺達がそれぞれ両手でそこそこ強く押すと鈍い音を立てながら開いた。

内部は明かりがついているのか外よりも割と明るく、視界の心配は特にいらないようである。

 

「・・・視界、クリアー。問題なさそうだな。」

「よし。」

 

門を開けた瞬間どこからともなく敵が湧いて出てくるということもなさそうなので、矢島を先頭に俺達は躊躇うことなく中へと入っていく。

 

「・・・ここは広間みたいだな・・・」

 

扉を抜けた先にあったのは、エントランスと思われる広い大広間だった。扉から部屋の中心にかけての通り道には、両側にギリシャの神殿とかにありそうな巨大な彫刻の柱が左右対称にいくつか存在し、天井を支えているように見える。

さらにこちらから見てその奥には少し長めの階段のようなものがあって、その一番上には直径一メートルほどの金と白の配色をした時計が3つ中心を囲う様に付いた、直径十メートルほどの巨大なローマ数字で表記された時計状のオブジェクトが存在していた。

よく見ればその時計の中心軸の丁度下には、成人くらいなら普通に通れるくらいの大きさの抜け道が存在していることがわかる。

俺達は周りの様子に気を付けながら、まずは部屋の真ん中に向かって歩いていく。

 

「・・・・・・」

「{キョロキョロ}・・・ここまで入っても特に異常はないみたいだな。エネミーセンサーにも依然反応なし、と・・・」

 

矢島の言う通り、特に何の障害もなく一応部屋の中心までは来れた。

・・・どうでもいいことかもしれないが、部屋内の光が行き届いていない周囲の壁際と思われるところがうすぼんやりと緑色に光っていて、その中をローマのコロッセオの外壁みたいな模様が動いているのが若干不気味だな。

 

「そうだな・・・多分この様子だと、そこの扉を超えた先が本番なんだろ。」

 

くだらない思考を頭の隅に追いやり、階段の上にある扉を見ながら、俺は矢島にそう告げる。

俺が最初に来た時は、確か階段を2回くらい上った後窓から高さを確認した時40~50メートルくらいの位置だったから・・・ざっと地上から20~30メートルくらいの位置からスタートしていたと思われる。

ここの天井の高さから考えて、多分2か3階からスタートしていたと思われるから・・・恐らく最初の何階かくらいは俺の知っている間取りだと思う。

 

「矢島、一応聞いておくけどここから先の情報とかは?」

「お前から聞いた事と今体験している範囲以上の事はないな。どうもエントランスとか開いてる窓とかからの侵入は出来たみたいだが、入っていったドローンが軒並み壊されたせいで大した情報が入ってこなかったらしい。」

「そうか、そりゃ残念だ。」

 

途中でリタイアしたせいで情報に不安があったから聞いてみたが、そういう事なら仕方が無いだろう。まあここから先は予定通り足で情報を集めるわけだ。

 

「じゃあとりあえず先に行くか。」

「だな。一応その時計の先から敵の反応が出てるから気を付けとけよ。」

「了解。」

 

矢島を先頭に、俺達は階段を上がって時計に開いた抜け道にライトを照らしながら入っていく。

抜け道の先はどうやらまた階段になっているらしく、俺達は一段一段慎重に上へと進む。

 

「ライトで照らしているのに1、2メートルくらいしか先が見通せないってどうなっているんですかねぇ・・・」

「つべこべ言わずはよ行け。」

「へーへ―・・・・・・・お、明かりが見えてきた・・・」

 

二十秒くらい上がり続けると、矢島の言う通り扉の形をした光が十メートルくらい先に見えてくる。

それに向かって歩いていき、そこに矢島が足を踏み出すと・・・・・

 

「「・・・お。」」

 

何時の間にか、薄暗い白黒の廊下のような場所に俺達は踏み込んでいた。

周囲はどこから光が入っているのかはわからないが、外の月光のような緑色の光がうすぼんやりと俺達のいる場所の構造を浮き彫りにしている。

 

「ここが件のダンジョンか・・・エネミーセンサーがビンビンに反応してやがるぜ・・・」

「・・・・退路は無し、か。改めて気が引き締まるな・・・」

 

後ろを振り返ると、さっき自分達が入ってきたはずの階段がいつの間にか消えてなくなっていた。

退路がなくなったことに内心で舌打ちするも、いざとなればクリームで壁を刳り貫いて外に出ればいいと結論付ける。

考えてみたら普段よりも難易度は断然低いし。

 

「まあよっぽどのことが無ければ大丈夫だろ。それよりも敵を見つけようぜ敵!調査のためにいくつかサンプリングしなきゃ(使命感)」

「ははっ、それもそうだな。」

「ここから少し進んだところにいるみたいだ。反応は弱めだけど見てみようぜ。」

 

矢島の先導の元、俺達は薄暗い廊下を歩き始め、探索を開始する。

分かれ道を無視して道なりに20メートルくらい進んでいくと、矢島の言う通り仮面をつけた真っ黒のスライムみたいな奴が見つかる。

あれは確か、俺が戦った中でも一番弱い奴だったな。確か氷結系の魔法を使ってきたはずだ。

 

「よしよしよし。さっそくアナライズしましてっと・・・・・・なんだレベル2か、雑魚め・・・ん?」

「どうかしたのか?」

「いや、なんか種族の部分がシャドウって書かれてて・・・悪魔の種類って天使とか堕天使とか、妖精とか邪鬼で分類されてたよな?」

「・・・まあ、そうだな・・・」

「・・・なんだ、この種族【シャドウ】ってのは・・・新種?」

「?悪いけど俺も聞いたことないな…なんだそりゃ・・・」

 

女神転生における悪魔の分類は作品によって若干異なることもあるが、基本的に神族、鬼神族、魔族、飛天族、龍族、鳥族、獣族、鬼族、精霊、邪霊、外道、人、マシンといった大種族と、それぞれに当てはまる約39種類の種族で分類されている。

少なくともシャドウなんて分類は無かったはずなんだが・・・ん?シャドウ?

 

「・・・・・・」

 

・・・・・・そういえばペルソナ2の罪罰でそんな単語があったような・・・確か人類の普遍的無意識の悪性や負性の象徴であるニャルラトホテプが具現化させた主人公達の心の影的な物がそういう名前だった気がする・・・え?まさかだよね?だってここ珠閒瑠(すまる)市じゃねえし、悪魔が出る噂どころかこんなものがあるって噂すらないんだけど・・・

 

「それに・・・なんだこの属性:魔術師って・・・」

「本当になんなんだろうな・・・・・・まあ今日はそういうのも含めて調べに来たわけなんだし、とりあえずあれをキャプチャーしてみたらどうだ?弱いけどサンプルにはなるだろ。」

「・・・まあそれもそうだな。じゃ、ちゃっちゃとやっちゃいますか。あれなら弱らせるまでもなく捕まえられそうだし。」

 

お互いに腑に落ちない感覚を覚えながらも、とりあえず矢島は納得した様子を見せて自分のデバイスに魔力を集中させる。

俺も今は取りあえず思考を打ち切り、矢島の作業を横から眺める。

 

「GUNDAM、捕獲用結界起動。あれを捕まえろ。」

『了解いたしました。』

 

GUNDAMがそう返答すると、次の瞬間に蒼色の光の立方体が目の前の化け物を囲むように何重にも出現する。

突然の事態に驚いた様子の化け物だが抵抗のアクションを見せる前に立方体があっという間に縮んでいき・・・

 

「転送。」

『転送開始。』

 

一センチ四方のサイズにまでなったあたりで矢島のその言葉とともにその場から消え去ってしまった。

 

『転送終了いたしました。保存状態は良好のようです。』

「・・・・・・・・・なあ矢島。」

「なんだ?」

「次からそれやる時に結!滅!って言ってみてくんない?」

「ブフッ!」

 

咄嗟に思い付いた言葉を発したら矢島が突然噴出した。

いやだって、わりと結構似てたんだもん・・・絶対似合うって。

 

「結界師とかまた懐かしいものを・・・・ささ、この調子でどんどんキャプチャーしていこうぜ。サンプルは多いに越したことはないしな。」

「だな。」

 

 

 

その後10分くらい時間をかけて探索し、俺達は見つけた敵を10体くらい捕まえたり途中で見つけたアタッシュケースのような物体から傷薬、マッスルドリンコ、投げるとマハジオが使える石などを拾い、次の階である3フロア目に移動、同じ調子で其処も全部調べまわった後軽々と4フロア目に突入していた。

そしてこの階を探索しているうちに、俺はふとあることが頭を過る。

 

「・・・・・ん~~~?」

「どうした梶原?腹イタか?」

「ちゃうわい。矢島、今地上何メートルだ?」

「50メートルだ。どうかしたか?」

「・・・おかしいな、前に来た時はこんな構造じゃなかったはずだ。」

 

そう、それくらいの高さならもうそろそろ知っている階層のはずなのに、どういうわけか構造が前回来た時と違っていることに気が付く。

ひょっとしたら勘違いで当初の階層の予測が間違っていたとかの理由があったとしても、少なくとももう去年に足を踏み込んだ階層にとっくに踏み込んでいてもおかしくはないはずだ。

なのに実際は去年と違っている・・・

 

「・・・・・・まさか、前と内部の構造が変わっているのか?それとも内部の空間が歪んでいる?」

「アリスも自分の構築した異界の内部構造を好きに弄ることが出来てたし、あり得ない話じゃないな。けど空間の歪みならこっちのセンサー類を見る限りそこまでのものじゃないと思うぞ?ここまでのことを考えると少なくとも入る度に全く出鱈目な場所に飛ばされるとかの類じゃないはずだ。」

「そうか・・・」

 

まいったな、まさかここの内部が不思議のダンジョン方式だったとは・・・これじゃあ俺のダンジョンのようにどんなにマッピングをしても意味がない訳だ。

まあそれはこの際気にしても仕方が無い。そういう事なら俺も慣れたものだし、とにかく探索を続行していかないと。

 

「矢島、後ろ頼む。」

「分かってるよっと。」

 

---ボォンッ!!

 

矢島が後ろに手を翳してシールドを張った瞬間、そのシールドの向こう側が突然炎上する。

火が収まると、7、8メートルくらい離れた位置に頭上のデカい冠と赤い仮面が特徴の宙を浮く生首みたいなやつが4体ほどいた。

案の定そいつらは発見と同時に即座に矢島の捕獲用結界によって捕らえられ、一センチ四方まで縮められて他の化け物同様どこかへと飛ばされていったが。

 

「馬鹿な奴ら、前に出なければやられずに済んだものを・・・」

「まあ俺達より遥かに弱いしな、こいつら。」

「正にそれな。ふむ・・・・・・・」

「?どうした?」

「いや・・・・・・・・・・・・・・・こうして体験しておいてなんだけど、改めて考えても異常な事態だと思っててな・・・正直こんな大規模の異界がいまだに残っているってのがちょっと俄かに信じがたいというか・・・」

「・・・確かにな。あのアリスのところでさえ、加減してたのかもしれないけど規模自体は廃棄されたビル一棟分とそれほどのものじゃなかったし、俺らの所の市内全体が異界化した時と比べてやっとどっこいどっこいってところだよな、ここは・・・」

「まあ向こうは活性化しすぎて日常全てが異界に飲み込まれたのに対して、こっちはこの一日と一日の狭間の時間のみ、しかも一般人は謎の棺桶状のオブジェクトになっていて被害らしい被害が見当たらないことを考えれば今のところこっちのほうがまだましだけどな。棺桶になった一般人もこの状況が終わると同時に元に戻ってるらしいし、唯一といっていい被害も直接的には人死にが出るわけでもないし・・・」

「唯一の被害?」

「ああ、偶にここの怪物がこの世界に人間をそのまま引き込むことがあるらしくてな・・・襲われた人間はまるで生きる気力を吸い尽されたような状態で放逐されるんだよ。まあ被害に遭った人間の生命反応そのものにはそこまで異常があったわけじゃなく、いうなればただものすごく無気力な状態になったってだけで時間さえかければ復帰できる程度のものだったけどな。ドローンのデータにあった被害者は大体朝通り掛かった人の通報で病院に搬送されてたし、ちょいと入院が必要な点に目をつぶればそこまででもない。ネットを使って似た症例の人間がいるかどうか検索してみたけど、個人差はあるが殆どが時間をかけて社会復帰することが出来ているらしい。」

「・・・・・・その話、俺もネットで少し見たことがある気がするな。確か巷だと単なる無気力症って話だったけど・・・なるほど、納得出来る話だ。」

 

曰く、他の日本の都市に比べてこのあたりに住んでいる人間は重度の無気力症にかかる奴が多くて、症状も一般的な物と比べるとかなり深刻らしい。この地域で無気力症にかかった人間は殆ど例外なく、何の前触れもなく日常生活に大きな支障を来すほどの無気力状態になってしまうという話だ。

確かこの症状の患者はその無気力からくる周囲への不注意から、交通事故などの被害によく遭うらしい。そのせいもあってか交通事故の件数も周辺の地域より若干多いそうだ。

ただ、俺の地域で起きた異界関連の行方不明者や被害者の数と比べてあまりにも少ない。ぶっちゃけ去年のことがなければ今まで俺達の目には絶対に留まらなかったと言えるくらいには。

まあだからと言って別に放置しても構わないというわけでもないが。今こうしていても全貌が何一つ見えていないという不気味さが非常に気がかりではあるし・・・

 

「話を戻すぞ。これまでのデータからわかっていることだけど、異界の維持って言うのはその規模や現実との乖離度に応じて必要なマグネタイトの量が決まってくる。で、正直今俺達が把握し続けている範囲だけでも相当な量が必要だ。正直どうやってこんな規模のものを維持し続けているのか見当がつかねえ。」

「無気力症にした人間から奪った分じゃ足りないんだよな?」

「言うまでもねえな。この都市一帯の人間がこの現象のことを噂とか怪談程度の認識でもいいから恐れるなりなんなりしていて、そのせいでマグネタイトが恒常的にここに供給されているってくらいならまた話は変わるんだが・・・どうも掲示板とか見てるとそういう空気でもねえんだよなぁ~~。ん~~~~~・・・やっぱいろいろとデータが足りてねえのかな・・・」

 

眉間に人差し指を当てながら矢島はう~う~と呻く。

多分頭の中では、俺よりもよっぽど専門的な思考が繰り広げられているのだろう・・・俺は戦術的なことしか胸を張って出来る事がないからこういう時は素直に歯痒いな。

 

「・・・いずれにしても、こんな規模の異界・・・いったいどんな経緯があれば出来るんだろうな・・・それに何がここを維持し続けているかも非常に興味深い。これからの最大の課題だな。」

「後でこの土地で起こったことを調べてみれば、前者くらいは分かってくるかもな・・・」

「その辺はお前に任せたわ。」

「任されたわ。」

 

とりあえず明日の昼にでも、オーバーヘブンでこっちに来てみるのもいいかもしれないな。録画機器とかいろいろと準備していかねば。

 

「うし、じゃあ話もそろそろ終わっていくか。この先にさっきまでの奴よりも強めの敵がいそうだから注意していこうぜ。」

「了解。」

 

話を締めて、俺達は引き続き薄暗い廊下を歩いていく。

 

「あれだ。」

 

矢島を先頭に何度か廊下の角を曲がっていくと、仮面を被った黒っぽい巨大な鷲のような存在が三匹飛んでいるのが見つかる。

確かにさっきまでの奴らよりは強そうだな・・・正直今の俺達の敵ではないだろうが。

 

「アナライズ・・・完了。ヴィーナスイーグル、火炎吸収、疾風無効・・・・・貫通弱点?物理攻撃の分類みたいだけど、まあ俺達にはあんまり関係ないな。えっと・・・ガルとマハガル・・・これは突風を吹かせる魔法か。梶原、一応動きを止めるために奇襲よろしく。出来るだけ手加減ありで。」

「OKだ。」

 

アライブの口からリボルバーを取り出し、物陰から一番近い奴の両翼に狙いを定める。

 

---ドゥッ!!

 

「!?!」

 

二つの銃口から同時に放たれた銃弾が、狙い通りに敵の両翼を根元から捥ぎ取る。

飛行手段を絶たれた一匹はその場に倒れこみ、残る二匹は攻撃の出所を探るために飛び上がりながら周囲に目を光らせ始めた。

 

「行けドラグーン。」

 

その敵のそれぞれの真上と真下に、矢島が転移させたドラグーンの突撃砲が二門ずつ砲口を光らせながら二匹の両翼を捉え青色のビームで見事に捥ぎ取る。

飛行手段を奪われた残りの二匹も、無様にもがきながら最初の奴と同じように床に落ちた。

 

「よし、キャプチャー開始!」

 

矢島のその言葉とともに三匹を取り囲むように立方体の結界が張られ、今までの敵と同じように収縮し消え去ていった。

よし、予想通りこれも楽勝だったな・・・

 

 

 

 

 

 

 

---・・・ゾワァッ!

 

「「!!?」」

 

こ、この唐突な寒気・・・もしかして・・・・

 

「・・・あ、あの梶原君?なんかいきなり俺寒くなってきたんだけど・・・俺のバリアジャケットの中、温度管理機能がついてるはずなのに・・・・それに急にエネミーセンサーが猛烈なレッドアラートを鳴らし始めたんだけど・・・」

「・・・矢島、次の階段の位置は?」

「ここから25メートル先だ。後ろの十字路を左に行ったところにある・・・・それと・・・」

 

---ジャラ・・・ジャラ・・・

 

「・・・その十字路の奥40メートルから滅茶苦茶激しい反応が・・・」

 

この金属音…!確認しなくてもわかる、奴だ!!

 

「ワープは?」

「何故か無理・・・」

「離れてろ!ちょっと仕留めてくる!」

「わ、わかった!」

 

矢島が出来ないと言った直後に小声で怒鳴りながら倉庫からクリームとキラークイーンとストレイ・キャットのディスクを取り出して装備する。

 

『ウシャアーーッ!』

 

巻き込まない様に矢島から離れながらクリームの口の中へと飛び込み、いつでも暗黒空間に潜れるようにしてからクリームの隣にキラークイーンを出す。

そして金属音を出しながらこちらに向かってくる影に対し、キラークイーンの腹部格納スペースに何時の間にか収まっていたストレイ・キャットの空気弾を着弾点火弾に変えて、それを廊下の横幅と同じ長さの棒状の形に変形させてから飛ばす。

 

---ジャラ・・・ジャラ・・・ジャラジャラジャラジャラジャラッ!

 

「気づかれたか!GUNDAM!カートリッジロード!」

 

---ガションガションガションガション!

---カチャッ ドンドンドン!

 

GUNDAMのカートリッジがロードし終わると同時に影が両手の銃を構えて撃ち出す。

 

---ガギンッ!ガギンガギンッ!

 

「つぅ!?おっも・・・」

 

前方に張られたシールドの重厚な音と、矢島の苦悶の声がほぼ同時に廊下内に響いた。

どうやら何とか防御は成功したらしい・・・しかしこのままではいかんな。

 

「後ろに下がるぞ矢島!あいつが十字路の真ん中に来た段階で教えろ!」

「合点合点{ガキィンッ}ぐぅっ!?マジでおもてえ!!」

 

シールドの後ろに隠れながら、矢島とともに後ろに下がっていく。

あの敵はそんな俺達にそのハンドキャノンサイズの拳銃をぶっぱなしながら高速で向かってきている。

 

---ピキッピキピキピキ・・・

 

カートリッジで強化したはずの魔力シールドは、6発目の弾丸が当たったあたりから一気に大きく罅割れた。

 

「やばいやばいやばいやばい!カートリッジロード!」

 

---ガションガションガションガションッ!

 

慌てて矢島が再度カートリッジを4つ使って何とかシールドが元通りになるが、こんなことをいつまでも続けていればいつか持たなくなる!早く、早く来い・・・!

 

「・・・っ!梶原!奴が十字路を通過した、ぐうぅっ!」

 

矢島が呻きながらそう言った直後、銃撃が突如として止んで何かに引っかかったかように敵が体を捩らせていた。

 

「よしかかった!点火!」

 

その姿を確認し、キラークイーンに命じて起爆のスイッチを押す。

 

---バグォオオオオオオオオオオンッ!!!!

 

その瞬間、奴の体は一瞬膨れ上がった後爆炎と爆音を撒き散らしながら跡形もなく消し飛んだ。

 

「・・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・・・・・・・・やっべぇ、久々に生きた心地しなかった・・・あれが話に聞いた死神みたいな敵か・・・」

「そうだ・・・どうだ?感想は。」

「カートリッジ4つ分のシールドが六回食らっただけでお釈迦になるところだった・・・なにあれ怖い・・・こっちのことがばれた瞬間、脊髄にツララを直接突き立てられたって言われても信じそうなくらいゾッとしたぞ・・・なんなんだよあれ、マジでシャレにならねえ・・・・・・」

「だよなぁ・・・因みにあれ、全部通常攻撃だ。」

「止めてくれよ・・・」

 

ガンダムフェイスで表情は分からないが、矢島がかなり憔悴しているであろうことが声の調子から手に取るように分かる。

俺も額や掌から出る汗の状態から、今の一戦でかなり自分が疲労していることがわかった。

・・・やはりとんでもないな、あれは・・・・・

 

「とりあえず戦利品が残ってないか確認しに行ってくるわ・・・」

「おう、頼む・・・俺はちょっと息を整えてから行くわ・・・」

 

クリームの口から出て、深呼吸する矢島に手を振りながら俺は奴が吹き飛んだ後へと歩いていく。

・・・奴が吹き飛んだ後には、最初に倒した時と同じように二丁の拳銃と血のようなものに濡れた一つのボタンが落ちていた。

まあストックが出来たと思ってこれらももらっておくことにしようか。

 

「お待たせ―、なんかあったか?」

 

矢島は休憩が終わったのか、宙を飛んで俺の隣へと移動してきた。

俺は矢島に、手に入れた拳銃と血に濡れたボタンを見せる。

 

「おう、これな。」

「・・・あれ?これお前の持ってる拳銃に似てない?」

「そりゃそうだ。前に同じ奴を倒して手に入れたのが俺の使ってる拳銃だもん。」

「・・・やっぱすげえなお前・・・」

「俺じゃなくてキラークイーンが強すぎるだけだと思うけどな・・・」

 

実際破壊力ではこれを上回るスタンドってそうそうないし・・・

 

「・・・まあいいや。取りあえずこれ、俺に預けてくんない?サンプルは出来るだけ多く欲しいからな。」

「おk、よろしく。」

 

そう言って矢島に手に入れたアイテムを渡す。

 

「・・・・・・さて、それじゃあお次行ってみるか。」

「・・・そだな・・・・・やべえなぁ、今更だけど凄い気が引き締まったわ・・・」

「本当に今更だな。そんなんでこの先大丈夫か?」

「大丈夫じゃない、問題だ。」(゜Д゜lll)

「駄目なのかよ・・・」(;^ω^)

 

軽口を叩いてなるべく気を紛らわせようとしながら、俺達は次の階層へと向かった・・・・・・・・・あれがもう二度と出てこないことを心底祈りながら・・・

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