デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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第六十五話

『そういえばマスター、少し伝えそびれていた事があるのですが。』

「ん?どうしたGUNDAM。」

 

次の第六階層に向かっている途中で、ふと思い出したと言わんばかりにGUNDAMから話が出される。

 

『実はさきほどの戦闘の間にあの悪魔のアナライズを済ませておいたのですが、よろしければ今のうちに確認しておくのはいかがでしょうか?また今後出てきた時の参考になるかと思われますが?』

「お!良いね!そいつは助かる!」

「GUNDAMグッジョブ。」

 

マジか、オートでアナライズしてくれていたとかGUNDAM優秀だな。

まだ次まで少し掛かりそうだし、そういう事なら軽く目を通しておこうか。

 

「じゃあ早速見てみようぜ。対策を立てられるに越したことはない。」

「おk、GUNDAM、表示よろしく。」

『了解いたしました、マスター。』

 

GUNDUMの機械音声の後、俺達の目の前にホログラムが投影される。

左側にはさっきのあの死神の3Dモデル、右側には奴のステータスが記されているようだ。どれどれ・・・

 

 

 

【シャドウ 刈り取る者】

 

・Lv.??  ????-????

 

種族:シャドウ

属性:死神

 

・HP:4444

・SP:9999

 

 力-?? 知-?? 魔-?? 体-?? 速-?? 運-??

 物-f12#%go)'  銃-)#%KFLAQ=$  火-  氷-  電-  衝-  破-無  呪-無

 

【スキル】

アギダイン

ブフダイン

ジオダイン

ガルダイン

マハラギダイン

マハブフダイン

マハジオダイン

マハガルダイン

コンセントレイト

チャージ

刹那五月雨撃

マッドアサルト

メギドラオン

吸血

吸魔

空間殺法

ムドオン

ハマオン

ガードキル(各属性)

マハンマオン

マハムドオン

 

 

 

 

「「・・・・・・うわぁ・・・・」」

 

ステータス欄を最後まで見たタイミングが同じだったのか、二人してドン引きした。

 

「矢島君矢島君。」

「なにかね?」

「色々言いたいことはあるけど取りあえず、レベルの計測結果がハテナマークな件について。」

「現状のアナライズ機能だと、現実世界で存在出来るであろう悪魔のレベルの理論上最大値、つまりレベル99を超えると計測が不可能になります。ぶっちゃけあいつ、カンストしております。」

「ファーwwwww」

 

いや、全然笑ってる場合じゃないんだけどね。

マジで色々言いたいことはあるけれど・・・・・ほんと、なんだよこれ?

レベルは少なくとも、初期の頃でさえギリギリ計測できていたアリスよりも上。自分には弱点属性は一切なく、各属性の最高呪文は全部揃い踏みで必ずどれか弱点を刺せる上、特にマハムドオンは完全に俺達にとって鬼門といっていいものだ。

女神転生じゃ人間は基本破魔無効(一部例外あり)だけど、呪殺は確率にもよるが対策していないと決まればばっちり一撃で死ねるからな・・・万が一奇襲されるような事態で一発目がこれだと軽く逝けるぞ俺等。

一応、バステ系スキルやデバフ系スキルが無いのがせめてもの救いか・・・いや、こいつの場合そんな小細工そのものに意味がないのかもしれないな・・・前回にしても今回にしても、やる気ならただひたすら力技だけで蹂躙することが出来るんだろう。

・・・あと何やら物理属性と銃属性の表記に妙なバグがあるのは一体何なのだろうか?

 

「・・・・・ま、まあ取りあえず何に気を付けたらいいのかはよくわかったよな・・・うん・・・」

「・・・そ、そうだな・・・」

 

・・・・・しっかしこんなのどうやって対策すればいいんだろうか?唯一意味がありそうなのは呪殺位のものだろうが、そんなことが出来るアイテムや装備なんて持っていないし・・・いや、オーバーヘブンで自分に耐性を付与できる可能性がワンチャンあるな。

帰ったら絶対に呪殺無効を習得できるか試してみこう。後序でにそれで耐性付与が可能だったら、これから必要になってくるであろうバステを無効化できるスキルも身に着けるのもいいかもしれない。

CARD状態からの火炎魔法然り、BOMB状態からの火炎魔法然り、STONE状態からの衝撃魔法然り、睡眠状態からの永眠の誘い然り、恐怖状態からの亡者の嘆き然り・・・・・・あの企業のRPGにおいて、バフやデバフの重要性はもちろんの事、バックスタブ、即死魔法、バステはマジで一度でも嵌れば命に関わるケースが多い。

あのジョジョのダンジョンにしたって、ハイエロファントのディスクを装備していなかった時に何度デス13に眠らされて殺されたか・・・磁石状態にされた時に階段に入るのが間に合わず、何度飛んできた車に押し潰されたことか・・・

バステは舐めてはいけない、絶対に!

 

「お、着いたぞ。」

「ん?あ、ああ。」

 

そんなことを考えて内心熱くなっている内に、いつの間にか次の第六階層についていたらしい。

周囲は相変わらず、緑色の光がぼんやりと照らす薄暗い廊下のままだ。

 

---キラッ

 

「「ん?」」

 

辺りを見渡していると、視界の左端で何かが光るのを感じて二人してそちらを注視する。

なにかこう、この場に似合わない金色の反射光だったような気がするが・・・

 

「矢島、そこに何かいるか?」

「いるな、なんかさっきの刈り取る者?とはまた違った特殊な反応を持つ奴がいるみたいだ・・・追いかけてみようぜ。」

「了解。」

 

矢島の誘導に従い、ここに来てから10メートルほど廊下を道なりに進んでT字路を右折、その後25メートルほど進んだ先で左に曲がる角に身を隠しながら確認すると・・・

 

「なんだありゃ?金色の手?」

 

その先に、手首の辺りに仮面が付いた頭のある全身金ぴかの右手のような化け物が3体ほどいて、その指先を床について器用に徘徊していた。

シルエットはここより下の階層で見たマジックハンドとかいうのに似ているが、ありゃいったい・・・

 

「なんかえらく成金ぽいっていうか、豪華そうな奴が徘徊してんな・・・えっとアナライズアナライズ・・・・・・・・・・・・よし出た。」

「どうだ?」

「(・・・あれ?また物理耐性と銃耐性の欄だけバグってやがる。さっきからちょくちょくプログラムチェックしてるのに・・・プログラム自体がここの敵に対応していないのかもな。後でヴァージョンアップする必要があるか。)宝物の手、レベルはマーヤよりも弱い最弱の1・・・・・まあ魔法がほとんど通らないみたいだけど俺達にはあまり関係ないな。脅威になるような魔法もないみたいだし楽に捕まえられそうだ。」

「そうか・・・まあ一応逃げられないように向こう側に回り込んでおくぞ。」

「おk、よろしく。」

 

矢島の返事を聞き、奴らに見えないように自分の目の前と奴らのいる場所から15メートル奥の天井付近をゲートで繋ぎ、ゲートに入ったらすぐに天井に張り付いて少しづつ距離を詰めていく。

 

---キュゥンッ!!

 

「!?」バッ

 

俺が距離を十メートルまで詰めた瞬間、矢島の捕縛用結界が敵の周囲を覆いにかかった。

しかし、敵の内一体が何かに気が付いたようにかなりのスピードで一瞬早く横っ飛びしたことで、完全に囲まれる前に結界の補足範囲から抜け出てしまった。

避けた敵は着地と同時に矢島がいる方の角に背を向け、逃走を図る。

 

「シッ!」

 

---バッ!

 

その避けた敵を狙い、俺は天井を蹴って肉薄し・・・

 

『ギルァッ!!』

 

---ガシィッ

 

飛び掛かる俺を避けようとした方向へとアライブを向かわせて敵を掴み上げる。

 

「矢島ァッ!!」

「上に投げ捨てろ!」

 

アライブの手から逃れようとジタバタのた打ち回る敵を指示通り上に投げ捨てさせる。

 

---キュゥンッ!!

 

宙に浮いて身動きが取れなくなった敵は、バタバタともがきながら立方体の結界に包まれて消えていった。

俺はそれを見届けたら一息つき、向こうから歩いてくる矢島に親指をつきあげながら労う。

 

「お疲れ、上手くいったな。」

「おう、そっちこそ。思いの外相手が速くてびっくりしたわ・・・次からはもうちょい大きめに結界を張るか。」

「そのほうがいいだろうな、あれ、見た目からは想像もつかない素早さだったし。」

 

魔力の節約なのかは知らんが、どの敵にも結構入るか入らないかのギリギリのサイズの結界で対処してたからな。

まあ今回は上手くいったし、次から生かしていってもらうとしよう。

 

「じゃ、次行くか。」

「あいよ。」

 

周囲を確認した後、俺達は再び探索を開始する。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

===14階層===

 

「順調だな・・・」

「だな、途中でまた中ボスみたいなのが出てきたけどアナライズしてたおかげで対策立てるのは簡単だったし。」

 

あの成金染みた金ぴかの手以降、特に大した敵もトラップもなく階層探索は進んでいた。

時にアタッシュケースを見つけては中身を漁り、時には出てくる敵を捕獲したり・・・10階層目にダンシングハンドとかいうマジックハンドの強化版みたいな奴が三体ほど出てきたが、そいつ等も他よりは少し手強いというレベルでどうということはなかった。けど一応アナライズの結果テンタラフー(対象を混乱状態にする魔法)を使ってくる恐れがあったため、矢島が遠距離からドラグーンを展開して真面に動けなくなるほど撃った後、楽々と捕獲した次第だ。

そしてそれからここまでも、特に何事もなく進むことが出来ており・・・

 

「お、アタッシュケース見っけ。これも金ピカだな。」

 

今、この目の前のアタッシュケースを見つけたことで階段前を除いたこの階層の全てを探索し終わった。これの中身を回収し終われば、もうここにも用は無いだろう。

 

「スキャンしたところミミックみたいなものでもなさそうだし、早速開けてみようぜ・・・・・けど大丈夫かなぁ?さっき見つけた金色のアタッシュケースにはなんか変な物が入ってたし、これも案外がっかりな物が入ってたりして・・・」

「あれか・・・」

 

ここに来るまでに見つけてきた金色のアタッシュケースから出てきたものを思い浮かべ、俺は少し苦笑いをする。

いやまあ、確かにフィジカルミラー(使った対象に物理反射効果を付与する鏡)とか良いものもあるにはあったのだが、7階と12階で手に入ったのがちょっとな・・・・

確か7階層目では「お!これはレアアイテムの気配!」とか二人で騒ぎながら開けたらシンプルな下駄が一足分出てきたために二人して「えぇ・・・」と呆気にとられ、次の12階層では「こ、今度こそ・・・」と思いながら開けたら丁寧に折り畳まれた甚平が一枚入っていただけだったから「ふざけんな!」と思わず叫びながら地面に叩きつけたはずだ。

なお、甚兵衛を床に叩きつけた後叫び声を聞いて寄ってきた敵はきっちり全員捕獲させてもらった。

 

 

閑話休題

 

 

「まあここの途中でだって反魂香とか手に入ったし、一応良い物かも知れないんだから開けてみようじゃねえの。」

 

ぶっちゃけ矢島に下駄と甚平をそれぞれアナライズしてもらった結果、対悪魔用防具として優秀なことが分かったしね。

その時は、二人してまた唖然としたものだわ。

 

「ま、まあそれもそうだよな・・・」

「そうそう。というわけで、いざ・・・」

 

回想も程々に、ケースにライトを当てながらロックを外して蓋を開ける。

 

「これは・・・刀だな。」

 

中に入っていたのは、鞘に収まった一振りの日本刀だった。

全体的な大きさからして、分類で言えば太刀だろうか・・・漸くそれらしいものが出てきてまずは一安心といったところだが、はてさて・・・

 

「よいしょ・・・{スラァッ}おお~~・・・」

 

鞘を右手に持ち、左手で柄を持って刃を抜く。

刃長は大体83~84cm、反りはおよそ3cm、先幅は2cm、刃紋は直刃と言ったところか・・・歪みが全くと言っていいほど見られないその刀身は、まるでついさっき手入れを終えたばかりのように、周囲の僅かな光を静かな水面の如く反射していた。

普段自前の武器以外の刀剣類はあまり見ることがないため刀の種類にはそれほど詳しくはないが、これは・・・恐らくかなり質の良い刀なのではないだろうか?

 

「矢島、スタンドに一寸素振りさせてみてもいいか?」

「おう、別に構いやしねえよ。」

 

矢島に確認を取り、俺達から6メートルほど距離を開けた状態でアライブに素振りをさせてみる。

 

『シャッ!』

 

アライブの掛け声とともに、高速で振るわれる太刀。

音を容易く置き去りにするほどの勢いと速度で振るわれる刀は、大気を切り裂く度に一瞬遅れて甲高い音を放って俺たちの耳を響かせ、太刀筋を残光として俺達の目に残す。

 

「よし、こんなもんでいいか・・・」

 

十度ほど振るった後、刀身を再び鞘に納める。

 

「どうだ?感想は?」

「ああ、間違いなく良い刀だよこれは。正直またキワモノが出てくるんじゃないかと思ってたけどこれは素直に拾ってよかったと言えるわ。」

 

ウチのムラサマや閻魔刀と比べるとかなり劣ることは否めないが、それでもこれは相当な業物だ。

先の二振りとアヌビス神以外に触れる機会がないから余り含蓄のあることは言えないが、値を付けるとしたらかなりの金額になるのではないだろうか?まあこういったものを売る伝手なんて俺達にはないから実際に売ることなんざ出来ないだろうが・・・

 

「一応これにもアナライズしとくか。えぇ~~っと・・・・・数珠丸恒次?この刀の名前か?まあ確かに見たところ良い武器ではあるようだな。おまけに持っていると少しだけ体力を底上げしてくれる効果もあるみたいだぞ。」

「なるほどなるほど・・・よし、それじゃあ次行くとしますか。刀の転送よろしく。」

「ん、おk。」

 

矢島に手に入れた刀を渡し、次の階段へと歩いていく。

階段は元来た道を戻って途中の十字路を向かって左に行けばあったはずだ。

 

 

・・・それにしてもこの塔、後どれくらい登ることになるんだろうな?ここまでで俺達は150メートル以上は登ってきている。外から見た時の感じだと、軽く雲に届くくらいの高さはあるんじゃないかと思ったが・・・・一巡後の世界を歩く時と違って果てがある分マシだがそれでも気が遠くなりそうだ・・・

 

---ザワッ

 

「・・・!後ろに跳べ矢島!何か来る!」

「え?」

『エネミーを感知!ショートワープを開始します!』

 

階段まで後数メートルの位置で、突然背すじに悪寒が走り、俺は後ろに飛び退いた。

同時にGUNDAMの機械音とともに矢島が一瞬光り、俺の飛び退こうとしていた20メートル前に先にワープしていた。

 

---ドォーーーンッ!!

 

そしてその次の瞬間、俺達が下がる前にいた位置の2メートルほど前にどこからともなく巨大な何かが音を立てて落ちてきた。

 

「{ザッ}新手の敵か!」

「みたいだな!」

 

---ギギギギギ・・・

 

矢島のいる位置まで下がった後、動き始めた何かの姿を二人で注視する。

パッと見は全身を灰色を基調とした装甲で身に纏った全長5mほどの巨大な絡繰人形だった。頭部は黄色い無機質な仮面をつけており、両腕は肩の根元から突撃槍が取り付けられている。

下半身はそれぞれ膝の曲がった足が三つ並んで出来たような円盤状のものが脚部となっていてその重厚そうな巨躯を支えていた。

しかもよく見るとその足は、見た目に反して人間の足のような柔軟な動きをしているように見える。

 

---ギギギギ・・・ギュラララッ!!

 

こちらが観察をしているうちに体勢を整えた敵が脚部を回転させ、こちらへと狙いを定めて行動を開始した。

 

「矢島!アナライズを頼む!俺はこいつを引き付けておくから!」

「ラジャー!」

 

俺達も自分の武器を構え、状況を開始した。

矢島はブースターを吹かして後ろに下がり、俺はアライブを側に出して武器を構えながら上に飛び上がる。

 

(この見た目、恐らくだが物理攻撃に耐性がありそうだな。反射か無効か、軽減なのかはまだわからないがまあまずは足止めからだ。)

「アライブ!」

『オオオオオオオオオオオオ!!』

 

---ガクンッ ビキビキビキビキッ!

 

アライブの叫び声とともに、まずは十倍の重力が敵にかかる。

それにより敵の脚部の回転が急速に鈍くなり、足がついている床が徐々に罅割れて陥没していく。

 

「矢島!結果はどうだ?!」

(クソ!また物理と銃の項目がバグってやがる!こうなったらアナライズのデータを直接脳に送ってシミュレーションと連動させて・・・・よし出た!)

「出たぞ!敵名称【バスタードライブ】!レベルは20、攻撃手段は物理攻撃をいくつかと雷の魔法があるようだ!耐性は電撃が弱点で・・・・・取りあえず斬撃と貫通する類の物理攻撃を無効化するらしい!」

「なんだそりゃ!?」

「俺も何とも言えん!とにかく斬撃と貫通する類の攻撃は無意味だから注意しろよ!」

 

なにやら意味不明な情報があったが、まあ仕方が無い。

一応耐性の種類を確認するために、反撃に注意しながら敵に近づく。

 

---グググ・・・カッ!

 

「おっと!」

 

5mほどまで距離を詰めた途端、敵の黄色い仮面がこちらを鋭く睨み付けたような気がしてアライブに回転させた鉄球を前に出し、螺旋状の重力場を発生させる。

 

---ドォンッ!!

 

予感が的中したようで、頭上が突然光ったと思ったら電流が降り注いできたが発生した重力場に阻まれて俺の周囲に散っていく。

 

「危ない危ない・・・それじゃあまずは軽くジャブでもしておきますか。」

『ギルァッ!!』

 

---ドゴッ!

 

鉄球を空中に放り投げ、瞬く間に距離を詰めたアライブのジャブが敵・・・バスタードライブの地面についている方の左足に打ち込まれる。

拳が当たった足には罅が入り、俺には何も起こらない。

 

(特殊な耐性があるらしいから試しにやったが・・・なるほど、打撃は通じるのか。)

 

---ギギギ・・・ギュルンッ!

 

「おっと危ない。」

『ギルァララララララララララァッ!!』

 

観察しているうちにバスタードライブが両脚部の回転とともに自らを回転させて、勢いが付いた左側の突撃槍を俺にぶつけに来る。

物理反射じゃないことが分かったから、今度は遠慮なくアライブのラッシュを向かってくる突撃槍目掛けて放った。

 

---ドゴドゴドゴドゴ バキャァッ!!

 

槍は拳が叩き込まれる度にどんどん罅割れて、十発もいかないうちにあっさりと真ん中からへし折れてしまった。

同時にそのせいでバランスが崩れたのか、バスタードライブは若干だが体勢を崩しかける。

その隙を突いて腰から抜いたムラサマで切りかかる。

 

---カァンッ!

 

ムラサマの刃はアライブの拳が当たった時と違い、敵の装甲に全く傷を負わせられずに乾いた音を立てて弾かれてしまった。

 

(矢島の言う通り斬撃は無意味・・・妙な耐性もあるもんだな・・・)

「下がれ梶原!行くぞお前ら!」

「OKだホ!アギラオ!」

「ブフーラ!」

 

---バグォォンッ! ピキーンッ! カァンッ!

 

ムラサマが弾かれた直後に矢島の叫び声が聞こえたため、咄嗟に後ろに下がると、次の瞬間に敵の頭が突然発生した爆炎で包まれ、両脚部がものすごいスピードで凍り付き、飛来したいくつものビームが奴の胴体に衝突した瞬間鋼鉄の塊に小石がぶつかったような軽い音を立てながらビームは容易く弾かれた。

追撃を食らって完全にバランスを崩したバスタードライブは、大きな音を立てながら無様に地面に倒れ伏した。

矢島がどうなっているか気になって後ろを振り返ると、ジャックブラザーズと一緒に平然と銃を構えている姿を確認する事が出来た。

 

(ビームは跳ね返らず、かつ敵自体にダメージらしきものはなかった。銃も無効・・・・・・けどそれならなんで矢島は敢えてあんな言い方で耐性の説明をしたんだ?アナライズ機能の故障か?思えばあの死神も銃と物理の表記にバグが存在した。いったいなにがどうなっているのやら・・・)

 

「梶原!とりあえずそいつの残った腕と足を破壊してくれ!そしたら捕まえても問題ないくらいになるはずだ!」

「・・・・・・分かった!ちょっと待ってろ!」

 

色々と考えることが増えたが、とりあえず今は詮無き事と思考を打ち切る。

どうせ矢島がこれから捕まえた悪魔を使って調べてくれるんだ、どうとでもなるだろう。

一先ずは、自分にかかる十倍の重力に抗って何とか起き上がろうと脚部を回すバスタードライブに向き直り、矢島に言われた通り捕獲に必要な作業を行うことにした。

 

 

 

 

 

「よし、これで完了。」

 

矢島はバスタードライブを覆う捕獲結界を転移し、作業が無事終了した。

 

「ふう、流石にちょっと疲れてきたな・・・」

 

一仕事終わって額から落ちそうになる汗を拭う。

体力的にも精神力的にもまだまだいけないこともないが、どこまで行くことになるかわからない以上こまめな休息は必要だろう。

もう少ししたら、適当なところで休憩を挟んでもいいかもしれない。

 

「うーん・・・・・これはやっぱり・・・・」ブツブツブツ・・・

「・・・・どうした矢島?もしかしてさっきのアナライズの件か?」

 

それはそれとして、何か考え込んでいるように下を向いて顎に右手を当てたまま何かを呟いている矢島に声をかける。

正直そのままでいられると絵面的に若干怖いからな。

 

「・・・まあな。今までのアナライズを見てはっきり分かったけど、どうもここの悪魔相手だと俺の使ってるプログラムは若干対応してないみたいだ。基本四属性と破魔、呪殺の魔法は正常に判定出来ているみたいだけど・・・すまん、ここから先は物理の方は期待せんでくれ。」

 

頭を下げながら、申し訳なさそうにそう言う矢島。

まあ不測の事態なんてどれだけ注意してても常に有り得ることだし、本当に無いと困る局面で問題が露呈しなかったんだからいいんだけどね、俺は。

そもそも今までの戦いでもそういう可能性も注意して行動してるし、それでどうにもなからなかったらそれはそれでしゃあなし。

 

「まあこういう事も偶にはあるだろ・・・次に来る時までに今日捕まえた連中を使って何とか対応させておいてくれよ。マジで耐性の判定は重要だからな。」

「おう!その辺は心配されなくてもきっちりやってやるさ。」

 

親指を突き立てて元通り元気よく返答する矢島。

うん・・・マジで頼むぞ。能力的にはそこまで強くない敵でも、耐性やスキル次第であっさり形勢を逆転されるのは女神転生での様式美だからな。耐性の偉大さを最悪の局面で改めて思い知らされるのは御免だ。

・・・・・・・というか本当に今更なのだが、無気力症が流行り始めたのが爆発事故があった3、4年位前からだった事を考えると、あの悪魔事件が起こる前からずっとこの空間も塔も存在していたんだよな?ということはひょっとしてこの世界って、元から女神転生かペルソナシリーズの世界観もクロスしていたのではなかろうか?こう、正史ではないけどパラレルワールド的な感じで・・・改めて背筋が寒くなってきやがったぜ。この分だと他のやばい作品とのクロスもあり得るぞ。

 

「はぁ~~・・・・・いったい今日だけでいくつ仕事や懸念材料が増えるのやら・・・」

「なに梶原?心配事が増えて疲れる?梶原、それは問題が【増えるもの】だと考えるからだよ。逆に考えるんだ、元々あった問題が浮き彫りになっただけなのさ、と考えるんだよ。」

「なんでお前がジョースター卿の名言を使いこなしてんだよ。ていうかそれ何の解決にもならないじゃないですか―ヤダ―。」

「諦めて進むしかないホ。何事もまずはチャレンジだホ。」

「ヒホヒホ。」

「おっしゃる通りだよこの野郎・・・」

 

明らかにあの名言にアレンジをかけたと思われる台詞に苦笑してしまい、有り難い御言葉をくれたジャックフロストの頭を帽子の上からワシャワシャと撫でる。

フゥ・・・・・まあいいや。とりあえずここが終わったら、この塔の事と並行してメシア教とガイア教が噂レベルでも存在しないかどうか、今度調べておくべきだろう。いやでもその二つがあるのなら葛葉とかの霊的国防機関もありそうなもんだが・・・どうなんだろうかそのあたりは?

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

---カツン・・・カツン・・・カツン・・・カツン・・・カツン・・・カツン・・・カツン・・・

 

「・・・・ん?」

「お?」

 

特に何事もなく15階の探索も終わらせ、更に階段を上がりきって辿り着いた次の階層、16階・・・今まで巡ってきた迷宮のような下の階とは打って変わって、そこは割とシンプルな、しかしこれもまた明らかに異常と言わざるを得ない物だった。

まず俺達は、横に15~16メートル、縦に20~25メートルほどの広さの、血のような赤い水が滴っている長方形の床に立っている。

そして階段を上ってきてすぐ前方には、一つだけポツンと存在しているアタッシュケースとここに来る前に何度か見た、(矢島曰く)テレポート装置と思われる機械、それと今までと同じように上の階へと続く一つの階段が存在していた。ただし階段は周囲を机や椅子で作られた緑色のエネルギーフィールドを纏うバリケードのようなもので囲まれ、見るからに踏み込める気がしないが。

其れを視界から外して周囲を見渡すと、どうやら俺達の立っている床は、四隅にそれぞれある四本の灰色の柱によって天井の見えない遥か上空から支えられているという事がわかる。

なぜならその床の端から外は・・・・・・下を見れば俺達のいる場所と同じような、遥か上から赤い水が流れ落ちている構造物以外は暗い闇ばかりで全く見通せず、上を見ても同じく全く見通せない、横はかろうじで数百メートルほど離れた所に壁らしきものが窺えるという、今まで上がってきた階段の段数とか迷宮の構造を考えても明らかに奇妙と言わざるを得ない広さの巨大な空洞であったからだ。

本当にここの構造はどうなっているのやら・・・

 

「周辺のサーチ終了、この辺りには完全に敵がいないようだ・・・・・よし、丁度良いしここいらで一旦休憩だな。」

「そうだな。ずっと歩き尽くめってのも流石にちょい疲れる・・・」

「あ、それじゃあついでに梶原、俺はあのフィールドについて一度調べてみるからお前はその間アタッシュケースの中身でも検めといてくれ。其れもミミック的な物じゃねえから。」

「了解、頼んだぜ。」

 

矢島は真っ直ぐバリケードの方へと歩いていき、俺は落ちているアタッシュケースに近寄って中身を確認する。

入っているのは・・・なんだこれ、紙の束?何かワープロで打った物らしき文字が書いてあるが・・・見出しは【人工島計画文書】?えぇ~~~っと・・・ぬ?

 

【電源の増設完了の報。だが明らかに供給量が異常値だ。ただ学園があるだけのこの島に、どうしてこれほどの電力が必要なのだろうか・・・】

「これは・・・誰かの手記か?」

 

幾つかの専門用語や電力設備、その他機器や道具について書かれていると思われる文書を流し読みしていると、個人的な日記のような物が目に留まった。

年代は・・・1998年、今から大体3~4年前の物か。電源の増設・・・異常な供給量・・・断片的でわからない所が多々あるが、内容的にこの島のどこかの施設に関する物だと思われる。しかしなんだってこんな場所にこんな場違い感極まる重要そうな物が・・・・

 

「・・・まあいい、これはこれで何かの役に立つかもしれないしな・・・」

 

一先ず見つけた書類を倉庫に仕舞い込み、赤い水の無い所で座って休憩することにする。

さっきのバリケードの方を見ると、矢島はバリケードの前で空中にホログラムを幾つも出し、それらに指示を出して操作をしている。

特に出来る事もなくなったため、周囲に注意を払うのを忘れないようにしながら俺はその後ろ姿を眺めることにした。

 

 

「ん~~~~~・・・・・・・・・・・・・・・・うん、だめだこりゃ!」

 

14、5分ほど経過した後、降伏したかのように両手を上げて叫んだ矢島は投影していたホログラム映像を全て消した後、俺の方に溜息を付きながら歩いてきた。

 

「梶原、そろそろ外に出るぞ。ここから先には行きようがない。」

「?バリケードの向こうに行くだけなら出来ないようには見えないが?」

 

そう言うと矢島は首を横に振り・・・

 

「それだけ出来ても無駄だ。あの階段の先はあらゆる意味でに存在が確立されていない、虚数空間になっている。下手に踏み込めばそのまま帰ってこられなくなるぞ。それより今日は一旦帰って、明日から手に入った情報を纏めた方が分かることも多いと思うんだが。」

「(虚数空間・・・ああ、プレシアの城で見たあれか。)・・・まあそういう事なら仕方が無いか。わかった、今日は帰ろう。」

「おう。」

 

返事の後、矢島は転送装置の側に行って何度か触った後操作する。

すると操作された装置が起動したようで、一人だけ乗れそうな台座の部分が白く光り出した。

 

「台座に一度乗ればそれだけで装置が起動して、一気に一階まで降りられる。じゃ、お先に失礼。念の為に後ろ向いて目を瞑っとけよ。」

「ああ、また後でな。」

 

バリアジャケットを解除し、矢島は先に台座の上に乗る。

そして俺が後ろを向いて目を瞑った直後、強い光とキュインッ!という音が鳴り・・・光が収まると矢島の姿は消えていた。

 

「次は俺の番か。」

 

・・・・・・・・・・・・なんとなく後ろを振り返って、バリケードに囲われた階段をまた見る。

 

(・・・・・・・・進めないのはまあ、別に良い。仕方が無いことだ。けど仮にこの先に進めるようになったとして・・・・・そうなるのは本当に正しい事か?・・・嫌な予感がする。ここから先どうしようもない何かが待っているんじゃないかと・・・何となくだが思えてならない・・・)

「・・・まあ、考えても仕方が無いか。矢島も待ってるしさっさと行こう。」

 

階段を視界から外し、台座に乗って目を閉じる。

 

 

その後若干の浮遊感とともに矢島が言った通り一階に転移し、俺は矢島とともに異界から脱出し、それぞれの家に帰宅することとなった・・・

 

 

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