デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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今まで私の小説を待っていらっしゃった皆さん(おりましたら)大変お待たせいたしました。
2年ぶりの投下、どうぞ。


第六十七話

===AM08:37 梶原家===

 

---パンッパンッ

 

「うっし、こんなもんか。」

 

雲一つない晴れ空から降り注ぐ太陽光の中、物干し竿に最後のバスタオルを干し、皺を伸ばして一息つく。

朝食を食べ終え、母さんに頼まれていた家事はこれで一通り完了だ。

後はこれからまた昼頃まで波紋法を維持しながらの体力トレーニング、剣術や鉄球の訓練をして・・・・

 

「これだな。」

 

母さんが見ていないことを確認しながら、倉庫からあるものを取り出す。

 

---【人工島計画文書】

 

昨日、巌戸台のあの塔から取って来たこの書類。これに書かれている内容、どっかで見たような覚えがあると思って飯の最中に【The book】で思い出していたら、計画の年月日がポートアイランドにあった研究所の爆発事故に結構近いんだよね。

去年、研究所の爆破事故が原因であんなものが出来たんじゃないかって憶測立ててたけど、ここにきてこの書類が出てきて、かなりその説に信憑性が出てきてしまった。

塔そのものや悪魔達の研究は矢島がさっそくしてくれているだろうから、俺は俺で今夜あたりちょいと、研究所とその元締めの方から情報を集める必要がありそうだと思っている。

とりあえず、さっきのダンジョンアタックでついでに俺が用意出来る物は用意してきた。後はちょっとそれなりの数の撮影機器が欲しいんだが・・・・生憎と俺もそんなに手持ちがあるわけじゃない。精々転生特典のスマホと、前の人生で使っていた最新のタブレットPCが数台とビデオカメラくらいのものだ

・・・・・・申し訳ないが、矢島にはもう一働きしてもらおう。今回の土産は何がいいだろうか?

 

 

 

「あら?泰寛。これから出かけるの?」

 

善は急げと、書類を倉庫に仕舞いカバンを肩に背負って電話の前に移動しているところを母さんに見つかり、声を掛けられた。

 

「うん、友達の家に電話してから遊びに行こうかなって。あ、それと洗濯物干し終わったから。」

「うん、ありがと。車とかには気を付けていくようにね。」

「あいよー。」

 

俺にいつも通りの注意をした後、母さんはリビングのほうへと歩いていく。その姿から目を逸らし、俺は矢島の家に電話をかける。

4回くらい受話器から呼び出し音が鳴り響いた後、向こうで誰かが電話に出た。

 

「あ、もしもし。矢島さんのお宅でしょうか?梶原泰寛です。」

『お、梶原か。どうした、こんな時間に。』

 

どうやら出てくれたのはお目当ての本人だったようだ。

 

「や、ちょっと今晩また巌戸台に行こうと思っててさ。よかったらちょっと人払いが出来る道具と、ビデオカメラみたいな記録機器を貸してほしいなぁと。」

『ビデオカメラ?・・・まあいいけど、何に使うんだよ。異界内部なら量産してるドローンが毎日データを集めてるからお前が行く意味ないだろ。』

「いやそっちじゃなくて、前にプレシアのこと調べた時みたいにアンダー・ワールドであの異界が出来た経緯を調べようと。」

『あぁーーそっちか。わかった、一人で大丈夫か?』

「おう。(寧ろ今晩はそのほうが都合がいいしな)その代わりちょっと機材の方を・・・そうだな、31台用意してほしいんだけどいいか?」

『なんか微妙に半端な数だな・・・というかそんなに持って行ってどう使うんだよ。』

「群体型のスタンドに持たせて数の暴力で攻めようかと。」

『・・・・・・お前そんなスタンド持ってたっけ?ちょい前にアニメのジョジョのデータお前から貰ってそれ一気見したことがあるけど、群体型のスタンドって見た感じどれもビデオカメラ使っての綿密な調査と相性が良い様に思えねえんだけど。』

「ダイジョーブダイジョーブ、チャントモッテルヨー」

 

厳密には全く別物なんだが、まあこれは詳しく言うとドン引きされるからな。絵面もそうだけど内容が・・・うん、流石に言えない。

 

『(なぜに棒読み?)まあいいや。とりあえず今すぐには無理だけど夕方辺りまでには渡せるようにするから、その時にこっちから連絡するぞ?』

「OK、受け取りの時は俺がそっちに行くからまたよろしく。」

 

その後、受話器のスピーカーから通話の切れる音がして、俺は一息つきながら受話器を元の位置に戻す。

後は普段波紋の修行場に使っている海岸に行って呼吸を維持しながらの1km水泳、足場の悪い岩場をフル装備で駆け抜ける特訓、剣術の特訓、鉄球の回転で岩を思い通りに破壊したり加工したりするトレーニングを昼までみっちりやってから、一応矢島の連絡があるまで俺が出来る範囲での今晩に向けての準備をする予定だ。

ある実験をやった後でだが。

 

「これで夕方まではよし・・・じゃあ母さん!俺そろそろ出かけるわ!」

「いってらっしゃーい。」

 

一先ず母さんに出かけの挨拶をして家を出る・・・・と見せかけて、音をたてないように靴を脱いでから自分の部屋に静かに戻る。

 

「・・・・・よし、こっちに来る気配はないな。」

 

聞き耳を立てて母さんが部屋に来る様子がないことを確認し、軽く息を吐く。

・・・実の所、ここ最近のトレーニングとThe bookのお蔭で、中途半端だったチリ・ペッパーの扱いもばっちり勘を取り戻せてきた。

他の扱いが難しいスタンドの感覚を思い出すので後回しになっていたが、長距離の移動が頻繁になるであろう今こそ『あの使い方』も出来るように自信をつけておくべきだ。

これから先、巌戸台へ行き来する機会が増えていくだろう。

オーバーヘブンが何かしらの事情で使えなくなるケースも想定して、今までよりも更に移動方法の幅を広げる意味で、この機会に是非とも試しておきたい!

・・・しかしThe bookがあるとは言え実際にやるのはかなり久々だ。昔は最終的にちゃんと上手くできるようになったが、思いついた当初は只の物はまだしも生物相手だとどっかしらが焼け焦げることがしょっちゅうあった。今はブランクが開き過ぎてて自分の制御能力にも若干不安がある。

安全性という面ではいつもやっているゲートワープや最近手に入れたオーバーヘブンに比べて心配も欠点もいくつかあるし、ぶっつけ本番で自分に試すってのも万が一を考えると危ないから先にちょっと実験はしておかないとな。

 

「アライブ、倉庫に行かせてくれ。」

『ハイハイ、了解。』

 

アライブの能力でまた倉庫へと入り、保管してあるエニグマの紙のうち一枚を取り出してその中からスタンドディスクを4枚取り出し、装備する。

そして装備したディスクのスタンド・・・ヘブンズ・ドアー、レッド・ホット・チリペッパー、ゴールド・エクスペリエンス、The Bookを其々側に出したら、朝食前の特訓でついでに拾ってきた天国プッチの一人と通常のジョルノ、仗助を一体ホルマジオの瓶から出す。

・・・大して広くない子供の部屋に170cmオーバーのガタイのいい野郎が3人もいると、流石に圧迫感が凄いな。

 

「・・・さて、実験開始だ。」

 

準備が整ったところでまずはヘブンズ・ドアーで自分、ジョルノ、仗助を記事にして、それぞれに命令を書き込んでいく。

 

―俺には『完全に集中した状態で実験前と実験後のプッチの状態を生命エネルギーからそれぞれ読み取り、記憶する。実行のタイミングは自分の意志で決める。』

―仗助には『万が一実験後に梶原泰寛に異常が起こったらクレイジー・ダイヤモンドで泰寛を治す。異常の判断はジョルノに委ねる』

―ジョルノには『梶原泰寛の生命エネルギーの状態から現在の健康状態を把握し、実験後と比べて異常が見られた場合には即座に仗助にそのことを伝える』

 

といった具合だ。

書き込みが終わり、記事を閉じるとジョルノは俺の手を取り、ゴールドエクスペリエンスの腕のビジョンが重なって数秒ほどそのまま意識を集中させる。

 

「・・・・終わりました、こちらはいつでも問題ありません。」

 

ジョルノはそういうと手から手を放した。

俺はそれに頷いて返答した後、一呼吸入れて集中力を高める。

ヘブンズ・ドアーの暗示によって、書き込まれた命令を実行するために自身の意識の全てが統一されているのを把握し、ジョルノと同じようにプッチ神父の生命エネルギーを感じ取る。

全身を巡る血の流れ、神経伝達、呼吸、筋肉の微妙な震え・・・それらの一切が、ゴールド・エクスペリエンスを通して生命エネルギーの脈動として俺に伝わってくる。

これで、感じ取ったエネルギーの感覚はThe Bookによってどのタイミングでも100%の鮮度で思い出せるから後で記憶違いが起こる事はなくなる。まず第一段階は終了だ。

 

「次は・・・てやっべ!このままだと音が漏れるじゃねえか。」

 

本題に入ろうとする直前で一番大事なことを忘れていたことに気が付き、慌てて倉庫からもう一枚ディスクを取り出す。

 

「出番だ、ソフト・アンド・ウェット。」

 

出番が終了したヘブンズ・ドアーを一旦外し、装備した【ソフト・アンド・ウェット】が俺の体に重なるように現れて、指先から星型の模様が浮かんだシャボン玉を放つ。

シャボン玉はフヨフヨと空気抵抗を受けながら空中を漂い・・・自室の壁に衝突すると同時にパチンっ!と小さく音を立てて弾けた。

俺はその一連の流れを見届けた後、右足を踵が脛の真ん中あたりに来るところまで上げて・・・普段なら下まで響くような大きな音が出る程度に、強めに床を蹴る。

 

「・・・・・・・・・よし、OK。」

 

耳を澄ませる素振りをして音が全く鳴らなかった事を確認し、「ホッ」と溜息をつく。

実験中はそこそこ音が出るからな。これやっとかないと下にいる母さんに怪しまれてしまう。

 

「危ない危ない。危うく母さんにばれるところだったわ・・・・ついでに隣の部屋の音も消しとこ。」

 

防音確認が終わったので、序に実験に必要なもう一部屋の防音もしておく。

 

「・・・・よし、こっちもOK、じゃあやってみますか。」

 

改めて準備が出来たところで、レッド・ホット・チリペッパーを出して直立したまま待機しているプッチの腕を掴ませる。

そしてそのまま能力を使うと、チリペッパーがバチバチと放電する音とともに徐々にプッチを電気に変換していき、電光が最大になった瞬間壁のコンセントにプッチと一緒に入っていった。

それを見届けた後、俺は自分の視界をチリペッパーと共有する。

視界には予定通り、さっき消音した隣の部屋にチリペッパーがコンセントを伝って、プッチを掴んだ状態で出現している姿が見えた。

もう一度同じことをさせて今度は自室に呼び出し、The bookを開いてプッチの状態をゴールド・エクスペリエンスで確認し、さっきの記憶と状態を比較する。

・・・・先程と比べても、生命反応にこれといった異常はなさそうだ。一応電気に変換する前後で、感電はもちろん何か他に異常をきたす様な事がなかった事が伝わってくる生命エネルギーからよく分かる。

念の為にゴールド・エクスペリエンスをパールジャムと入れ替え、両手の状態から体調を確認してみるが特に問題らしい問題も見られない。

 

「プッチ、今の移動の前後で特に体に異常とかは感じるか?」

「いや、特にこれといったものはないな。」

 

質疑応答も問題なし、か。この分ならいけるか・・・いや、前の人生でも同じようにしてなんだかんだ上手くいってたんだし、これなら多分出来る筈だ。

一応お役御免になったプッチ神父を瓶詰にして、一旦深呼吸をして精神状態を整える。

 

「・・・よし、やるか。」

 

腹を括り、チリペッパーに自分の体を抱えさせてから能力を発動する。

少しだけピリピリと静電気が走る感覚が全身に起こり、俺の体はさっきのプッチの様に、電気エネルギーに変換されていく・・・

 

「ッ!」

 

次の瞬間、バチッ!と一際大きな放電による衝撃が大気を震わせ、チリペッパーとともに壁のコンセントに吸い込まれる。

一瞬のブラックアウトを感じた直後、俺の体はさっきプッチを送った隣の部屋にチリペッパーに掴まれた状態で浮いていた。

 

「よし次。ジョルノ、チェック頼む。」

 

すぐさま自分の部屋に戻ってジョルノに状態を確認してもらう。

 

「・・・・特に変化や異常は見られませんね。」

「・・・まあいいか、一応成功で。」

 

数秒ほどで、ジョルノから異常無しの判定が出た。とりあえず俺自身も特に異常は感じられないし現状実験は成功ということでいいだろう。

移動手段がまた一つ確立されたことに、無言でガッツポーズをする。

アライブのゲートワープやオーバーヘブンと比べて、移動中の視界不良のために事前に経路と出先の様子をチェックしておく必要があり、配電設備の整っていない田舎等ではあまり使えず、雨の日の使用は物体から電気或いはその逆への変換の最中に自分が感電する危険性有り等のデメリットはあるが、スピードや移動範囲は引けを取らないしスタンドパワーの消耗も電気を吸収していくらでもパワーの補給はできるから実質ノーコストみたいなものだ。

先の二つと違って遠隔操作型の特徴である広範囲の射程距離を持ち合わせているため、向かう先の状況を事前に先行させて確認することも出来るから移動先で人に見られました、なんて危険性が低いのもベネ。

・・・・なのはみたいに悪魔関係に触れてスタンドが見えるようになった人間が万が一いるとちと面倒だが、まあそこは移動前にアクトゥン・ベイビーで透明になるなりリトル・フィートで見えないくらい小さくなるなりすればいいだろう。

 

「クケケケ、ビデオカメラの引き取り序にこれで矢島の家に行って驚かせてやろう。」

 

コンセントから現れる俺を見た矢島のリアクションを想像して窓ガラスに自分の悪い笑顔が反射しているのを見ながら、早速チリペッパーを先行させ、出先に人がいないことを確認してから戻ってきたチリペッパーとともにコンセントの中へと消えた。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

あの後、俺は予定通り13時までの間に海で波紋の呼吸を維持しながら1km泳ぎ切ったり、フル装備で岩場を走り込んで体感を鍛えたり、回転を加えた鉄球で岩を思い通りの形に破壊をするなどのトレーニングを行った。

約4時間ぶっ通しで文字通り足腰立たなくなるまでやり続けた訓練の疲労で、正直終わった後すぐにでもぶっ倒れたい気持ちだったが、新たな脅威が明確になっている現状において俺に時間を無駄にしている暇は残念ながらない。

いつも通り、動けない自分の代わりにアライブに担いでもらい、倉庫内の風呂で体を介助されながら清め、爆睡したい欲求を抑えつつパール・ジャムを使った料理をアライブにアーンされながら食し、心身両方の回復した。

・・・しょうがないんだけどナンカウレシクネェ

ゴホンッ!その後は矢島からの連絡が来るまで自分で出来る今晩に向けての準備を進めていた。

今はとりあえず、ホワイトスネイクを使って自分のスタンドパワーで命令用のディスクを拵えている。今晩までに最低でも、矢島に頼んだ俺が使う分以外の30台分のディスクを作っておかないといけないわけだが・・・

 

---キュルルルルッ

 

「う、もう腹が減ってきた・・・17時か、そろそろ母さん達が晩飯の準備をしてるだろうなぁ。」

 

腹から空腹を告げる音が鳴り、気が付けば夕飯時になっていることに気が付く。

とりあえずディスクの方は、ここまでで27枚出来上がっている。書きこむ命令の数がそこそこ多く複雑なせいで意外と時間がかかったが後少し時間があればこの作業も終わるだろう。

他は矢島からの連絡を待つのみなんだが・・・あいつまだかかるのだろうか。

別に一日二日待っていても問題はないと思うが親に心配をかける時間に呼ばれても動き辛いんだよな・・・いやまあその時は尋ねる日取りをずらせばいいとは思うが、やっぱりこういうことはなるべく早めに行動に移したいのが人情というか・・・

 

---トゥルルルルルルッ トゥルルルルルルッ

 

「ぬ、やっと出来たか?」

 

とかなんとか考えているうちに、机の上に置いておいたスマホの呼び出し音がようやく倉庫の中で鳴り響いた。

俺は倉庫の中で行っていた作業を一時中断し、スマホを手に取って通話ボタンを押す。

 

「もしもし?」

『梶原か。ついに出来上がったぞ、今取りに来れるか?』

 

いかにも成し遂げたぜ!ってノリだった矢島の声がスマホのスピーカーから響く。

俺は内心でグッド!と思いながらそれに返答する。

 

「おう、やっとか。じゃあ今から取りに行かせてもらうよ。」

『おう、待ってるわ!じゃあまた後で!』

「おう、また後で。」

 

ピッ、という音とともに通話が切れる。

 

 

 

 

「さぁて、ドッキリのお時間と行こうじゃないか・・・!」

 

にやにやと笑いながらチリ・ペッパーを装備し、外に誰もいない事を確認してから倉庫からチリ・ペッパーを外に出す。

出た場所のすぐ側にある電信柱の電線からチリ・ペッパーを先行させ、矢島家の内部の様子を窺わせる。

・・・・・丁度良いことに、今は矢島一人だけで親はまだ帰ってきていないようだ。肝心の矢島本人も、今はヴァーチャルスペースや研究室に籠らずに自室で何か飲み物を飲みながら寛いでいる。

チャンスだ。

矢島のいる位置とドッキリに丁度良い位置のコンセントの場所を探らせ、そこから俺の電柱までのルートを確認しつつ戻す。

深呼吸をして出現と同時に言うセリフの確認。

両手で【ドッキリ】と書かれた看板を持って、チリ・ペッパーに俺を担がせ、自分毎電気に変換して確認したルートを走る。

覚悟しろ矢島ぁッ!!

 

「こんにちわぁああああドッキリのお時間でございまぁあ「曲者がああああああっ!!」ぶぎゃあああああああ!!?」

 

視界が元に戻った瞬間、看板を抱えながら叫んだ俺の目の前にどこかで見たビームライフルの銃口が一瞬見えたその直後、俺の意識は強い衝撃と光に塗り潰された。

な・・・何故ばれた・・・?

 

 

 

 

「死ぬかと思った・・・・・大丈夫?俺首なくなってない?もしくはどっかオバケみたいに透けてない?」

「何やってんだお前は。」

 

数秒ほど気絶した後起きた俺は、矢島に見降ろされ、呆れられながら撃ち抜かれた自分の顔を撫でる。

頭が消し飛んだと錯覚するような衝撃と痛みを感じたはずなのにそれによるショック死することはなく、こうして傷一つない。

 

『知ってるか梶原?非殺傷設定って、どんなに痛みや衝撃があっても絶対にやられた側が傷ついたり、ちょっとやそっとのストレスじゃ死んだりしないようになってるんだよ。これってさ、使い方次第じゃ拷問の技術としてもかなり使えるんじゃねえかなぁ?』

 

・・・・なんでだろう、前に矢島がプログラム組んでる時に雑談でぽろっとこぼしたあのえげつない言葉を今になって思い出してしまった。

確かにこうして食らってみると、あの言葉の意味が心でわかる。さっきは一瞬だったから問題もそんなにねえけど、あれが延々続くと思うと・・・うん、やばいわ。

 

「お前さぁ~、妙なエネルギー反応がこそこそと動き回ってるからてっきり敵襲かと思ったじゃねえか。後ここマンションなんだから騒いだら近所迷惑だろうが。」

「いや、確かに大声出しちゃったけどあれはお前が俺の顔面を打ち抜いたのが原因であってドッキリだって言った時は割と小声だった「あん?」正直すんませんでした。」

 

まあ確かに、そろそろここ以外の人たちも家でくつろいだり夕飯を食べたりしている時間だったしもうちょい時と場合は考えるべきだったな。矢島も疲れているのかちょっとカリカリしてるし、反省反省。次からは時間と矢島の状態を考えてからリトルフィートも使ってこよう。

 

「いやすまんすまん、新しい移動手段が出来たからちょっとあくよゲフンゲフン!!奇襲の練習序にお邪魔しちゃったぜ!」

「本音も建前も碌なもんじゃなかった件について。」

「ていうか俺、来るのなんでばれてたのよ?」

「来たのがお前かどうかまでは分からなかったけど、コンセントが急にバチバチなり出したら流石に何かおかしいのはわかるわ。後その前にこっちのレーダーが妙なエネルギー反応を検知してたし。」

「あぁ、そういう。」

 

苦笑いしながらそう言う矢島に、微妙な笑顔で返す。

そう言われればその通りだ。チリペッパーが出現する場所は事前に多少なりとも放電現象が起こる。全く知らない奴なら逆にそれで驚かせられるだろうが、独自の探知システムで事前に何かおかしなものが来ていると察知し、警戒していた矢島の不意を突くにはちょっと工夫が足りなかったわな。

 

「それで矢島、頼んでたものはどこよ?」

「おお、そうだったそうだった。これ見ろよ梶原。」

 

矢島が押し入れの方に向き、ごそごそと何かを取り出す。

頼んでおいた撮影機器かと思っていたが、突きつけられたのはいつものこいつのデバイスであるGUNDAM。

何かと思っていたらデバイスからホログラムが投射され、【DEVIL ANALYZER ver3.2】という文字が魔方陣を背景に出現する。

 

「じゃーん!新しいアナライズシステムだ!これであの塔の中の悪魔共をちゃんとサーチできるようになったぜ!よかったら向こうに行く時に使い心地を確かめてきてくんない?」

「お、おう。まあいいけど・・・・いやなんでこの短時間で早くもバージョンアップが完了してんだよ。」

「フッ・・・ここが違うのよ、ここが。」

 

いつもの調子が戻って来たのか、頭を右の人差し指でトントンと叩きながらかっこつける矢島。

調子を狂わされながらも、取り敢えずGUNDAMとスマホ間の無線接続を行ってデータのダウンロードとインストールを始める。

 

「まあいいや、で、記録機器のほうは?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・????」

「・・・・・・・コォオオオオオオオオッ」

「冗談だよ!ゴッドフィンガーの構えはよせって・・・あれ?ちょっと本当にそれっぽくてかっこいい?よくない?」

 

練り上げた波紋エネルギーで翳した左手が山吹色に光り始めたのを見て、『待った』のポーズをしながらそう言い、急いで再び押し入れの方をゴソゴソと漁って31台分のビデオカメラと思わしき機械、それから手のひらサイズの円盤状の機械を置いていく矢島。

 

「ほい、こっちが注文の品。説明書はこれな。」

「脅かすなよお前・・・」

「まあまあさっきの意趣返しってことで。」

「というか大丈夫なんだろうな?頼んでた道具とアナライザーの制作並行してやってたんだろ?」

「問題ねえよ。前者はGUNDAMのセンサー系をコピペして適当に作った奴だから。『雑に』じゃなくて『適当』な?これ間違えないように。」

「・・・まあ問題ないならいいや。」

 

わざわざ念押しするってことは、本当の意味で『適当』な仕上がりになっているんだろう。というかこんなことで今更手を抜くような奴じゃないのは分かってるし疑っても意味ねえか。

 

「じゃ、後は頑張れよ。それと律儀に靴脱いできたからもういいけど次からはちゃんと玄関から来いよ。」

「その件につきましては本社に持ち帰った上で、十分な検討をした後に前向きに善処させていただき{ジャコンッ}ジョークジョーク!いろいろとありがとな。土産はここに置いていくぜ。」

 

倉庫に借りた機械類を収納した後、カートリッジを使おうとする矢島の前に持ってきていた土産をいくつか置いて、逃げるようにチリペッパーに自分を電気化させて矢島家を後にする。

その後は適当なところで実体化し、家路についてポートアイランドの情報とやるべきことの再確認、撮影機器や円盤状の機械(説明書によると人払い用の結界装置らしい)の使い方の確認や飯、風呂を済ませながら予定時刻まで時間を過ごしていった。

 

 

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