デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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自分の予想以上に、待ってくれている人が多くてびっくりしました。
もう2年近く更新が止まっていたのに…皆さん、本当にありがとうございます。


第六十八話

===PM9:50 辰巳ポートアイランド街外れ===

 

「う~~~~んやっぱり暗い、おまけに滅茶苦茶静かですっげぇ不気味じゃないの・・・」

 

父さんと母さんが明日の仕事の為に寝静まった直後、俺は自宅から辰巳ポートアイランドの、矢島が設置したデータ収集装置がある街外れの廃墟まで来ていた。

もちろん移動手段は、今日使えるようになったチリペッパーの電線移動だ。ホワイトアルバムで高速を利用したら5時間は絶対にかかる道程も、これなら経路を確認しながら少しずつ移動しても10分ほどで到着出来た。取り敢えず暫くは、能力の上達のために練習がてらこれとオーバーヘブンで毎回来ることにしていくつもりだ。

・・・それはそうとして、今日はこの辺りは曇りだったようで、空が雲に覆われているために月光が満足に地上に届かず、見渡す限りほぼ真っ暗で何も見えない状況だった。静まり返った廃墟の真っただ中で頼りとなる光源は、今俺が今しがた取り出した手回し充電式のランタン型ライトのみとなっている。

これはちょいやらかしちゃったなぁ・・・来る前にちょっとだけ興味本位で見てしまった呪怨のプレイ動画の恐怖が再燃してしまって、間違いなく自分以外周りに何の気配もないはずなのにこの場の雰囲気で恐怖と不安が助長されている。

これがマジで敵が出てくるような状況なら、一瞬で思考が戦闘仕様に切り替わって並大抵の不安感なぞ吹っ飛んでくれるんだが・・・

 

(あそこの角の影とか、ひょっとしたら何かいるんじゃって変に気になっちまう。俺にとっては大事な感覚なんだけど、やっぱやだねぇ~いくつになってもこういうのが怖いってのは・・・よし、さっさと終わらせて自宅に帰るとしよう。)

 

頼みのランタンを自分の足元に置いて、さっそく準備を開始する。

 

「{カチャカチャカチャ・・・・ポチッ}これでよし。」

 

まずは日中の内に矢島の家に行って借りてきた、掌に乗るサイズの円盤型結界装置を地面に置いて起動。

キュイーーンッ、という高い音が鳴り響くとともに装置の中心部に存在する平たい凸状のガラス部分が光り輝き、周囲の雰囲気が何となく変わったような気がする。矢島曰く、これでこの辺り一帯を俺以外の知性体の意識から切り離すことが出来るそうだ。後監視カメラなどの映像の誤魔化しも出来るとか。

これで人払いが出来たととりあえず安心して、次に左手で倉庫から取り出したアンダー・ワールドを頭に刺し込む。

 

(まずは爆発事故の少し前あたりからスタートしてみるか。)

 

プレシアの減刑のために証拠集めしていた時を思い出すな。俺のやり方だとまず最初に、終盤あたりの時間から集め始めた方がデータが粗方纏まっていて効率が良いんだよね。

無論途中で何らかのトラブルとかが起きていていくらかの情報が隠蔽されている可能性などもあるが、それらも研究所の中の人間の記録がよく知っているだろうからその情報を元に時間をかければいつか確実に見つけられることだろう。

さて、確か爆発事故が起こったのが1999年の9月・・・・・21日だったよな?

事件について書かれた新聞によると発生時刻が深夜0時のころだったらしいから、今日はその2時間前・・・・・・いや、余裕をもって3時間前の9時頃の記録を掘り起こし、今日中に引き抜けるだけの情報を全て引き抜かせてもらう。

調査が長引いて爆発事故の時間がきてしまったらそのまま巻き込まれるしな。

その時間の出来事が今のこの土地の異界に与える影響とかも現状わからんし下手なことは出来ん。

 

「アンダー・ワールド、記憶を掘り起こせ。」

 

---ズァッ ザシュザシュザシュザシュザシュッ

 

というわけで、早速体から出てきたアンダー・ワールドに地面を高速で掘り進めさせていく。

手掘りとは到底思えないほどの速さで見る見るうちにランタンライトでも照らせないほどに深くなっていく縦穴の様子を横目で見つつ、俺はその傍らで倉庫に準備しておいた品々を取り出していく。

 

「よいしょ・・・と。」ゴトッゴトッゴトッゴトッゴトッ

 

まずはこれ、人型の群体型スタンドを使ってデータ収集をすると矢島を説得して作ってもらったビデオカメラ型記録装置一式。見た目は俺でも普通に持てるサイズのハンディカメラだが、説明書によると搭載されているカメラ機能とレーダー機能により半径最大100メートル以内の物質の組成や電磁場、重力場、放射線、マグネタイト力場の乱れ、その他あらゆる状況や環境の変化を観測、計測、解析することが出来るそうだ。

側面には液晶画面に見せかけたホログラム投影スクリーンもあり、音声入力で空中にこれまで撮り貯めたデータを他のカメラのデータも含めて複数同時に投影し、閲覧することが出来る。

また各カメラ間による音声通信、コンピューターへの簡単なハッキング・クラッキングによる情報の抜き取り機能等々の数多くの機能があるらしい。さらにカメラの収集したデータは逐一昨日廃墟の屋上に置いたデータ収集装置に送信され、ある程度分かりやすいように処理した後矢島の自宅のハードディスクに送られるそうだ。

俺が声をかけてから半日程度で矢島には、本当にありがとうしか感謝の言葉が見つからない。悪戯で驚かしに行っちゃったけど。

・・・・・今思う事じゃないかもしれないけど、俺も少しくらいは勉強してみるべきかな、こういう技術的なこと。流石に矢島のように何でもかんでも作れるレベルとなると設備とか俺自身の能力的な意味で出来ないかもしれないが、悪魔召喚プログラムの改良とか状況に応じた新しいアプリの作成などが出来れば凄く便利だと思うし・・・・・・後、フリーゲームに新しいダンジョンと敵とアイテムも組み込みたいし。

中学生までの勉強なんて真面にやってりゃ基本的に暇な時の方が多いのだし、ゲームとかの遊びの時間を詰めれば出来なくはねえよな。最悪ホワイト・スネイクやヘブンズ・ドアーの暗示、The bookを使えば・・・・と、このことはまた後で考えるとするか。

 

「えぇ~っと次は・・・よし、あった。」

 

お次に取り出すのは、今朝の修業の傍らでこの時の為に新しく集めた、各10体ずつ天国仕様プッチ神父部隊(ヘブンズ・ドアーにより傀儡化済み)が入っているホルマジオの瓶を3つ。

後は矢島の家に行く前にホワイトスネイクの能力で作った命令用ディスク27枚に記録機器の操作方法を加えたものと、追加で作った三枚、とホルマジオの瓶の容量を減らさないためのリトル・フィートのディスクを一枚、あとついでにもう一枚スタンドディスクを取り出した。

命令用ディスクには録画装置の使い方から始まり、遭遇した職員の個人情報や今までの仕事の内容、ここで行われている実験の内容及び過去の実験の記録とその閲覧および入手方法、使われている機械や道具類、資材に関する質問や見つけた資材、資料及びこれから起こる爆発事故の結果何が起こるかについての質問等々、掘り起こした研究所の記録内での行動を細かく設定してある。

これを集めた連中に使えば、一人でやるよりも遥かに効率よく情報が集まることだろう。

え?群体型云々はどうしたのかって?こうしてしまえばこいつらもある意味スタンドみたいなものですから(ゲスの笑み)。さすがに他の奴がいたらよっぽどのことがないと気まずくて使えないが、今回はそう言った心配はないから思う存分活用することにする。異論は認める。

 

「こっちもよしっと・・・じゃあ行くか。」

 

カメラの準備が終わった数秒後、記憶の掘り起こしが済んだと言わんばかりに穴の中からアンダー・ワールドが再び目の前に姿を現した。

俺は出てきたアンダー・ワールドを戻してリトル・フィートともう一つのディスクを装備し、二つの瓶の蓋を開けて中身を全て開放する。

中から出てきたミクロサイズのプッチたちは、空中でリトル・フィートの能力が解除された時のように文字通り一瞬で元の大きさへと戻って、全員が一斉に着地した後俺に体の前面を向けて待機した。

その光景と連中の空虚な眼差しに、相変わらず微妙な気持ちにさせられながら傀儡化に問題がないことを改めて確認し、全員に命令用ディスクをそれぞれ差し込んでいく。

 

---シュンッシュシュシュンッシュンッシュンッ・・・・・

 

頭にディスクを差し込まれたプッチ達は、順番に自分の時間を加速させて目にも止まらないほどの速さでカメラを手に取り、穴の中に消えていった。

最後の奴にディスクを差し込み、全員が穴の中に飛び込んだのを確認したところで俺も最後に残った一台を手に取り、起動させて下に誰もいないことを耳を澄ませて確認してから一思いに穴の中に飛び込む。

 

---ザッ

 

穴の中に入ると内部は白いコンクリートで固められた壁と天井、床はタイルが敷き詰められている、機能性に重きを置きた作りの通路に降り立った。

この世界における、世界的大企業である桐条グループ・・・・その企業がかつてこの土地で保有していた研究所、【桐条エルゴノミクス研究所】の内部だ。

・・・・既に過去の記録とはいえ、有名大企業の研究所に侵入してると思うとちょっとだけドキドキするな。

まあそれはそれとして、フム・・・・通路は明かりに満ちていて、少し離れたところにある廊下の角から白衣を着た研究員と思わしき人物が4、5人程現れて通路を歩いていく様子が目視出来る。

先行したプッチ達が彼らの相手をしていないのは、命令用ディスクのプログラム通り人間からの情報収集よりも先に研究所内部の資料や機材等の調査を優先しているからだろう。

 

---ピッピピピッ ピピピッ ピッ ブゥンッ

 

カメラを操作し、空中にプッチ達が集積した情報と彼らの位置情報から組み立てられた研究所の見取り図を投影する。

見取り図は俺の2メートルほど前に3D映像として映し出され・・・・・・・・そのマップ上に移るプッチ達を示すポインター全てがビデオの早回しでもしているかのように高速で絶えず動き続けていた。

中には彼らの位置情報を示す人型マークの位置がワープでもしているかのようにずれることもある。

処理落ちでもしているのか?もう少し倍速を落とすべきだったか・・・まああいつらはカメラごと時間を加速させているはずだから、この現象は単純に集積装置の処理が追い付いていないだけだろう、多分。現に今、マップや仕入れた情報は後からちゃんと更新されているみたいだし。

とりあえず施設の情報は予定通り入ってきているようだから、俺も俺でやるべきことを開始しよう。

 

「あのー、すみません。ちょっとお話を伺いたいんですが。」

 

まずはすぐそこにいる研究員らしき男性に声をかけ、インタビューを行うことにした。

記録を掘り起こしている時は大体そこで何が起こったのかくらいはわかるが、細かい部分は自分で調査しないとわからないからな。

 

「ん?私か」

「ヘブンズ・ドアーッ!!」

 

---バサササァッ ドシャァアンッ

 

「えぇ~~っと、この人は・・・」

 

重ねて言うがインタビューである(強弁)

まあ冗談はさて置いて、【本】になったことで床に倒れこんだ研究員の前にしゃがんで、ページの余白部分に『エルゴ研に関する記述のあるページを、一番古いものから順に梶原泰寛に見せる』と書き込む。

書き込みが終わると同時にページが勝手に捲られていき、目的のページと思われるところで止まる。

それにカメラを向け、内容を記録、次のページを開いて内容を記録、また次のページを開いて記録・・・・これを何度も繰り返していく。

時間は大体1秒で見開き1ページといったペースで記録作業はスムーズに進んでいき・・・・・

 

「・・・よし、これでまずは一人。」

 

作業開始から凡そ10分そこらで一人分の読み込み作業が完了する。

流石に一々どのページが必要か精査している時間はないから適当に全部コピーしているが、それでもやっぱり時間がそこそこかかってしまうな。プッチ達がインタビューに参加し始めれば作業効率がもっと上がるんだろうけど、果たして今日中にどれだけ収集できるだろうか・・・

 

「さあ次だ次。まだまだ調べなくちゃいけないことは山ほどあるんだ・・・・あ、そこの人すみませーん。ちょっとお時間よろしいですかー?」

 

研究員の記録にかけていたヘブンズ・ドアーを解除し、収集済みの印に胸元ににこちゃんマークのシールを張り、立ち上がって周囲を見渡しているとちょうどいいタイミングで3人組の白衣を着た研究員達が通りかかってくれた。

そのチャンスを見逃すことなく、気軽に声をかけた俺は次のえもn・・・・情報源に向かって軽い足取りで接触を試みることにした・・・・・・・

 

 

------------------------------------------

 

「・・・・・・・・・なんだこれ?」

 

7人目の記憶の転写が終わり、次のえも・・・情報源を求めて歩いていたら妙なものを発見してしまった。

そこは他の部屋の扉とは違って、大銀行の金庫とかに匹敵するようないかにも頑丈そうな金属製の自動扉に閉ざされた場所で、入口のすぐ上に【魔術師タイプ管理室】という記載がある銀色のプレートが存在していた。

見た目からして間違いなく重要なものが保管されているだろうと考えて、興味本位で扉を含めたいくつかのセキュリティをスティッキー・フィンガーズで強引に突破して中に入る。

行き着いた先では、1人の男と2人の女がそれぞれ部屋に内蔵された計器やコンピューターの画像をチェックしたり、部屋にはまっている厚さ50センチはあろうかというガラスの覗き窓の奥を確認していた。

今は一人の男がガラスを覗いており、俺も同じようにそのガラスの奥を見てみると・・・・

 

「・・・オイオイ、あれもシャドウか?」

 

驚くべき物が見つかった。ガラスの向こう側は、大体一辺が10メートルほどの立方体上の空間になっており、その内部には電磁結界のようなものと拘束具で厳重に動きを封じられた大型のシャドウが一体存在していた。

結界の中でそれぞれ互いに全く接していない真っ黒い腕がいくつも絡み合ったようなそのシャドウは、それぞれの手のいくつかに両刃の剣を携え、額の部分にギリシャ文字で【Ⅰ】と書かれた不気味な青い仮面を時々ピクリっと震わせ、解き放たれる機会を待っているかのように鎮座している。

 

「・・・・・まだ少し時間はあるか。本当は収集作業が最優先だけど・・・・」

 

時刻を確認してまだ多少余裕があるのを把握し、口に手を当てて少しの間思案する。

ここまでの収集作業で録画に集中していてなんとなくでしか俺自身はここでの情報を分かっていない。見開き一ページを1秒だと所々の単語しか把握できないんだよね…

異界がいつ何かしらの異変を見せるかはわからない。

けど異変が起こるのが今日明日なら、集めた情報がどのくらい生かせるかなんてわからないし、それなら今ここで、俺もある程度知っておいて損はない・・・?

 

「・・・・・・まあ、いいか。」

 

結論が出たところで、先に女二人の記憶を転写した後シャドウの状態を確認していた男をヘブンズ・ドアーで本にして、記録を行いながらシャドウに関する記述を探しだしその部分を速読していく。

えぇ~~っと・・・この記述はこの時間のこの職員の活動だな。どうやら爆発事故が起こる原因となった実験をするためにこいつを別の場所に移送する準備を行っていたらしい・・・ぬ、これはシャドウの製造方法だな。

なになに?・・・・・・ああ、うん・・・ざっくり言うと、ここで管理されていたシャドウはある時月から地表に落下してきたらしい【黄昏の羽】と呼ばれる物質の持つエネルギーを利用して、人間の精神から抽出・分離したものなんだそうだ。

記述を見る限り、抽出方法がどんなものだったのか、された人間がどんなふうになるのか、殆どが反吐が出るほど禄でもないものだったようらしい・・・・・・ハァ・・・ま、これは俺が今更どうこう言ったところで仕方がないからおいておこう。

今まで取った記録の中で見えた情報から考えて、当人たちもどうやら相応のしっぺ返しはもらったみたいだしな。

その尻拭いを俺達がやってるのは気に入らないがなッ!!

気に入らないがなッ!!!!

・・・・・よし、そろそろ続けよう。黄昏の羽・・・まあこれに関してはこの研究所内のどこかには保管されているだろうし、そのあたりを散策しているプッチたちが見つけてくれるとして・・・ふん、これはそこに保管されている大型シャドウの記述か。

記述によるとシャドウには大きく分けて12種類の属性(という名の種族)が存在していて、そこでおとなしくしている魔術師タイプを含む大型シャドウは同じ属性のシャドウを大量に合体・融合させた結果誕生したものらしい。

なお、爆発事故の原因となった実験では12種類の大型シャドウ全てを一度に合体させ、結果全ての生命を滅ぼす力を持った最強のシャドウが誕生したと記載がある。

また世界の危機か、壊れるなぁ・・・(震え声)

というかなんでそんなものを作る研究をしてるんですかねぇ?

 

「・・・・・・・・・・あれ、ちょっと待て?その化け物いったいどこに行った?」

 

これを見る限り、当時研究所には緊急事態に備えて対シャドウ用の兵器をいくつか開発、所持していたそうだがどれも誕生したシャドウを抑えられるほどではないと記載がある。

そんな奴が世に解き放たれたのに、なんでいまだに人間社会が無事で済んでいるのか・・・何かしらのラッキーパンチでそのシャドウを打倒できたのか?

それとも・・・・・・そのシャドウが【ナニカ】した結果があの塔と異界なのか?

いずれにしても興味が尽きないな。この辺りもまた後で調べておかないと。

 

「・・・・・・よし、今日のところはこんなもんでいいだろう。」

 

しばらく読み耽っているうちに、ふと時計を見ると11時50分を示していた。時間帯と俺の睡眠時間を考えれば、今日のところはこいつで最後にしておいたほうがいいだろう。

この後は一応、新しく貰ったアナライズシステムの点検もあるし。

 

「途中からプッチたちもインタビューに加わってたはずだけど、そっちはどうなっているかな・・・・」カチカチカチッ

 

持っているビデオカメラを操作して、調査が終わった職員の目録を探してみる。

 

「えぇ~~っと・・・・・・・・お、大分出来てるじゃねえの。」

 

目録を見つけ、それにざっと目を通すと、ここまでの時間で命令していた分のインタビューを全員分終わらせたようだ。

プッチ達たちのインタビューは俺がヘブンズ・ドアーで行っているのとは違ってガチガチに思考を縛っているせいで元々プログラムしておいた命令以上のことは率先して聞いてくれないのが欠点だが、それでも時間をかけて作ったディスクのおかげで結構な情報が揃った様だ。

このペースならば、手に入れた職員名簿の残りの人員を次かその次の時くらいには片付けることが出来るだろう。

 

「OK、とっとと支度して次行くか。」

 

ビデオカメラのホログラム画面を空中に投影し、それを操作して全カメラに帰還命令を出す。

これで俺が穴から出るころには全員外で揃っているだろう、そう考えながら俺も元来た道を辿って入ってきた穴目指して歩き出す。

フゥーーーー・・・いやほんと、人出が多いって素晴らしいわ!どこぞの宇宙世紀の中将も言っているが、数の暴力というやつは使い方次第で良くも悪くも生半可な個の力なんて容易く凌駕する。

無論質の方もある程度伴っていなければ、ドム13機をガンダムに撃滅されたような状態になるが・・・

・・・・・・今ふと思ったんだが、カーズ様をダンジョンから何十人単位で連れてきてヘブンズ・ドアーで手下にすれば俺でも矢島並の技術や頭脳面でのカバーが出来るようになるのでは?

マンガの描写的にかなりの実験を繰り返していたと思われるが、それでも原始時代に石仮面なんてものを生み出したマジモンの天才だし・・・一応検討しておくか。

 

シュンッシュシュンッシュンッ

 

「うおぁっ!?プッチか、びっくりした・・・」

 

考え事をしているうちに、道の角から突然加速状態のプッチが同時に複数表れて、当たらないことは頭で理解していたはずが反射的に足を止めてしまう。

そんな俺に対し、連中は見向きもせずそれぞれのメイド・イン・ヘブンのヴィジョンとともに瞬間移動のような速さで横を通り過ぎていく。

俺は少しの間、そのプッチ達が廊下の向こうに消えていく姿を見届けてからまた出口へ向かって歩き始め、数分ほどかかって入ってきた穴に到着した後でそこから外に出る。

 

「よし、全員ちゃんと揃ってるな。」

 

外では予想通り、送り出したプッチ達が全員列に並んで待機していた。最前列の前には、使われていたビデオカメラが集めて置かれている。

俺はまずビデオカメラを回収し、次にホルマジオの瓶をまた取り出してプッチ達を収容していく。

全員の収容を確認したら、装備していたディスク3枚をオーバーヘブンに装備を切り替えて、証拠隠滅のために掘った穴を埋め直す。

 

「こんなもんか。後は矢島に今日のことをメールで報告して・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うし、これで思い残しはねえ!」

 

埋め立て作業とメールの転送が終了し、心残りが完全になくなったことを確認したら、いつもの完全武装を身に纏って骸骨の意匠があるフルフェイスマスクを被る。

異界の時間まであと五分・・・一番近い電線に向かって歩きながら、最近あんまり使っていなかったペーズリーパークを装備し、塔付近で監視カメラの死角になる場所を調べ、その場所に向かってチリペッパーを使い移動する。

 

後・・・10秒。

 

「9,8,8,7,6,5,4,3,2,1,0。」

 

学校につけられた大型時計が0時を指し示した瞬間、街を照らす人口の光源全てが消え去り、今晩は曇り空の為に辺りが完全な闇に閉ざされた。

そして轟音を鳴らしながら、闇の中で目の前の校舎がどんどん変形していき、最終的に雲を貫いて一本の塔が出来上がる。

塔の出現が完了したのを確認したら校門を開き、昨日と同じようにダンジョンへと侵入して手頃な敵を見つけてはアナライズを行い、用済みになった奴を排除しながら上へ上へと昇っていく。

 

「・・・・・・ん?あれは・・・」

 

しばらく探索していると、昨日と同じ階層に昨日倒したはずのヴィーナスイーグルが3体また階段前を占拠してやがる。

あのレベルの敵も日を跨ぐと又出現するのか。まったく厄介な・・・まあいい、今日はデータの収集が目的だし、さっさとアナライズして先に進もう。

取り敢えず見つからないようにメタリカ、キラークイーン、ストレイキャットのディスクを装備し、全身に纏った鉄分で周囲の景色と同化してアナライズが可能な場所まで少しずつ距離を詰め、有効な距離まで近づいたらすかさずアナライズを開始する。

・・・・・・・よし、データは取れた。明日も早めに起きてトレーニングしたいしさっさと行こう。

 

「「「・・・・・????」」」

 

阿保みたいに首を振り、周囲を突然確認するような仕草をするシャドウ三体に少しだけ焦りを感じながら、さっさと素通りして次の階へと足を進める。

その後は、あの刈り取る者やレアっぽい金色の奴が表れるといったことはなかったものの、途中でバスタードライブが昨日と同じ階層でまた上から落ちてきたために戦闘になり、最後にそいつからアナライズのデータだけ取って窓をドロップキックで蹴破って塔から離脱。何考えてるかさっぱりわからない無機質な仮面をこちらに向けて見下ろす奴の姿を最後に異界を脱出して、俺は今日も無事に家路についたのだった・・・・

 

 

 

 

===翌日|矢島家===

 

『マスター、お食事中のところ大変申し訳ございません。』

『ん~?急にどうした?』

 

朝の8時、御袋に叩き起こされて眼をショボショボさせながら目刺しと白米の旨味を口の中で噛み締めていたところで、不意にGUNDAMから呼びかけられ、俺はソファーで朝のニュースを眺めている御袋に聞こえないように念話で返答する。

 

『巌戸台に設置していた記録装置から、先日梶原様にお渡ししたカメラのデータが大量に送信されておりました。相当な量がありましたので、よろしければこの後確認されてみるといいかと。』

『・・・・マジで?昨日の今日で?具体的にはどれくらい?』

『マスターのペースでも全て確認するだけで丸一日、もしくは二日はかかるほどかと・・・』

 

GUNDAMの話に、「えぇ~~・・・」と思わず口に出しそうになる。あいつ仕事が早すぎじゃない?昨日渡したばっかりだぞ?

 

『それと梶原様からメールも届いております。マスターが寝ている時間でしたのでその時は伝えることが出来ませんでしたが・・・確認されますか?』

『{チラッ}・・・一応頼む。』

 

御袋の方を確認してからGUNDAMにそう命令すると、『畏まりました。』と返答したGUNDAMが机の上に文章を投影する。

内容自体はいたって簡潔で、「今日のうちに収集出来るだけの情報は一通り記録しておいたから、そっちでなるべく早く内容の確認と分析よろしく。」といったものだ。

いや、確かにそこそこ作って渡しておいたけど・・・・・序盤からいきなり飛ばし過ぎじゃないっすか梶原君よ。

 

『・・・・・・・しょうがねえなぁ~、じゃあ飯食ってからちょいと見てみるか。』

 

そう結論し、さっさと残った飯を口の中にかきこんでいく。

今日も新しい武器の設計とか開発とか、いろいろあったんだけどなぁ~。まあさっさと来たデータを見終わって続きを再開させるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アカン。」

 

数日後俺は、そんなお気楽気分で調査結果を見たことを心の底から後悔することになった。

 

 

 

 

 

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