デッドマンズN・A:『取り戻した』者の転生録   作:enigma

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第七十話

===PM21:53 梶原家自室===

 

「・・・さて、今日も元気にお仕事しますか。」

 

衝撃の事実がまた一つ明らかにされたあの後、何時も通りの入浴や食事、家族との交流の一時が終わり、資料整理をしている内に漸く両親が床に就いた。

二人が明日に備えて熟睡中なのを確認し、俺も俺でいつも通り出かける準備を済ませて、現在は自室のコンセントの前で今日の予定や必要な情報をチェックしている。

その中にはもちろん、矢島から夕飯前に送られてきた俺達以外の探索者達の情報も載っている。

現状確認できている人員は、3月9日に塔に来ていた十人程度の黒服の男性、白衣を着ている科学者らしきおっさん、そして、探索者たちの中で唯一シャドウとの戦闘が成立していた俺達と同年代くらいの少女が一人だけだ。この少女以外の人員は、塔の一階ロビーで通信機や様々な機械を使ってそいつのアシストをしていたらしい。

あ、ちなみに後で連中が塔に来ていた時の自分の記憶と記録映像を振り返ってみたんだけど、鉢合わせなかった訳がわかったわ。

というのもあの日俺はうっかり情報収集に夢中になってしまっていて、塔の異界に巻き込まれるまで時間経過に全く注意が向いてなかったのよ。

それで異界に巻き込まれた後「あ、ヤベ、そろそろ今日の分のノルマをこなさないと」ってなって慌てて塔に向かって・・・・その、なんだ、その時はなぜかいちいち入り口から入っていくのが面倒だって考えて、クリームで無理矢理15階あたりから入ったんだよね。こう、ガオンッ!て。

だから普段なら門から何気なく入って、おっさんどもと冷や汗流しながらこんにちはしていたはずが、その日は運よく合わなかったわけだ。

・・・・・因みに塔に入った後、建物への破壊を感じ取ったのか俺が亜空間から出た直後にいきなり刈り取る者が目の前の壁から生えてきて、こっちを見るや否やノータイムでメギドラオンをぶっぱしてきやがる事態が発生したのはここだけの話だ。

あの時はさすがに焦った・・・直感に従って亜空間に入り直してなかったら死んでたかもしれん。

 

「まあそれはいいや、結果的にこれからの情報収集の切欠もできたしな・・・アライブ、いつものやつ頼む。」

『ハイドウゾ{ズブズブ}ソッチノ資料ハ預カットキマスネ。』

「おう、ありがとう。」

 

アライブがいつものディスクのセットを俺の頭に差し込み、代わりに俺が見ていたスマホを持って倉庫の中に消えていく。

 

(そんじゃまあ、行きますか。)

 

部屋の壁にソフト・アンド・ウェットのシャボン玉を当てて音を奪い、その間に自分の体をチリ・ペッパーの能力で電気に変えてコンセントの中に侵入する。

事前に確認しておいた、ここから高速道路の配電設備を通って巌戸台へ行くルートをなぞり・・・一分と経たずに矢島の設置した機械に一番近い場所の電線に到達し、周囲の安全確認を行ってからコンクリートの道路に音を立てず着地する。

 

(最初の頃は、途中何度か電線から出て位置座標をスマホで確認しながら、10分くらいかけて来てたのが進歩したよなぁ・・・おっといかんいかん、仕事仕事。)

 

雑念を頭の片隅に置き、アクトゥン・ベイビーの能力で体を透明にしてさらにメモリー・オブ・ジェットの能力で自分の存在感を完全に消す。

使い終わったチリ・ペッパーは一旦外し、ムーディーブルースのディスクを代わりに差し込んだら、早速塔があった場所・・・今は月光館学園がある場所に移動する。

 

「さあ頼むぜ、ムーディーブルース。」

 

学園前に到着し、ムーディーブルースの能力を利用する。

スタンドの額のデジタル時計が高速で時間を巻き戻していき・・・・・5日前の0時10分42秒を指し示すと同時にその姿が変わっていく。

 

「よし、成功。」

 

全身をラバースーツで包み込んだ全長188㎝の異形は、矢島の資料で見た探索者の一人・・・俺達と同年代くらいの年頃の、赤毛のドリルツインテールの髪形、若干の釣り目、シミ一つないキリっと気の引き締まった表情、派手ではないが上流階級が着るようなかなり質の高い服と、腰に携えた細身の刺突剣というかなり印象的(場違い的な意味)な外観の美少女へとあっという間にその姿を変えた。

 

「ええ、わかりました。すぐに向かいます。」

 

再生リプレイが開始され、少女の姿になったムーディーブルースが、まるで誰かがそこにいるかのように虚空に向かってそう言い放ち、校門の外へと向かって動き出す。

俺はその動きを追跡していき・・・学園前から少し離れた歩道でリプレイ中のムーディーブルースが何かに乗り込むような動作をし始め、目に見えない何かに乗っているかのように空中で座り込んだのを確認する。

 

「自動車か・・・・・・・・・・・・・・いや、うん、ここからはホワイトアルバムも使って追跡するか。」

 

一瞬、無駄にスタンドを使うのもあれだからアライブにリプレイ中のムーディブルースへしがみ付かせて一緒に移動しようかとも考えたが、絵面とかリプレイされている人間の尊厳とか、そういうのが頭を過ってすぐに頭の片隅に追いやった。

いや、誰も見てないしばれなきゃなんてことはないけどさ、やっぱりこう、なんというか、ねぇ?

 

「あ、ヤベ、移動し始めた。」

 

そんなバカなことを考えている間にムーディーブルースが動き出してしまう。急いで氷の装甲を透明化を使いながら身に纏い、路上を滑って後を追う。

・・・・・それにしても、さっき推察した理由を考慮しても、今考えてみるとなかなか言葉に困る話だよな。俺も矢島もなんだかんだ3月に入ってからこの二週間ほぼ毎日どっちかは異界に足を運んでいたはずなんだが、今日までこいつらにまったく遭遇することがなかったって・・・

まあここ二週間という範囲だけで見ると、こいつらがここに踏み込んだのはこの日だけだからある意味当たり前ではあるが。それに探索者連中の戦力は、おそらく数はともかく質は俺達の足元どころか影すら踏めないレベルのはずだ。

唯一の実動員であるこの赤毛の少女も、俺のスタンド能力に似た異形を召喚する能力があるものの出せる異形はどうやら一体だけらしく、アナライズで出たレベルも現状一桁の階層の雑魚相手が関の山だろうと思える程度だ。

実際映像記録では、その少女は出来るだけ戦闘を避け、俺達なら単独で撃破できるはずのヴィーナスイーグル3体が待ち構える5階で探索を断念して、転送装置から脱出していた。・・・・・・強いて気になる点を挙げるとするなら、彼女が異形を召喚する際の動作、拳銃のような道具を自分の頭に向けて撃つという動作になぜか嫌な意味で引っ掛かりを覚えたくらいか。具体的になぜそんな感情を抱いたかは今のところ判断がつかないが・・・まあ今はいいだろう。

正直な話、入れる大人がいるのならそいつらにも火器弾薬を持たせて一緒に戦わせられないのかと思ったが、矢島曰く、シャドウ達は通常の悪魔とは違って覚醒していない人間や特殊な加工を施した武器じゃないと重火器担いだ軍人だろうと有効打を与えることはできず、逆にシャドウの餌になるしかないらしい。なんて面倒な仕様だろうか・・・

 

 

「・・・ぬ?そろそろ着くな。」

 

そんなことを考えている内に追跡開始から約40分程時間が経過し、途中から入り込んだ高級住宅街を通って辿り着いた場所は・・・・・

 

「うわぁ・・・」

 

率直に言って豪邸だった。前行ったすずかやアリサの家と同等かそれ以上に立派なお屋敷がそこには構えられていた。走行中、玄関横にある表札を遠目から確認すると、そこにはもはや見慣れたあの【桐条】の二文字が・・・・

 

「まずい!ムーディーブルースが中に入る!リプレイ中止!」

 

呆気にとられている内にリプレイ中のムーディーブルースがそのまま屋敷の敷地に入ろうとしていたため、能力を解除してスタンドを戻し透明化や存在感はそのままにしながら遠目から再度表札や、屋敷の様子を窺う。

・・・・・・やっぱりというかなんというか、未だにあれと関わってたのかあの企業!探索者連中の身なりや使ってた装置から何となくそんな予感はあったけども!

この状況や少女のから考えて、あの少女って多分現総帥の血縁者かなにかだろ?あんな子供まで利用して本当に懲りねえな・・・・いや、ひょっとしたら俺達と同じように、あの異界と塔を消し去る方法を模索してるかもしれないけども・・・でも子供ってお前・・・

 

「まあそんなことを言ってもしょうがねえ。とにかく身元ははっきりしたし、後はここから情報を洗っていくか。」

 

未だ明かりのついている屋敷前から立ち去り、一度記録装置の置いてある廃墟地まで戻ってアンダーワールドであの少女の記録・・・ではなく、矢島のデータで彼女のサポートをしていた博士の記録を掘り起こす。(さすがに女性のプライベートも覗きそうなのは問題だからな)

それにヘブンズ・ドアーの能力を使って本に変え、その中身を確認しながら矢島の録画機器を使って一ページ一ページ捲って保存していく。

・・・・・桐条グループ総帥の代替わり、それに伴って異界や塔を研究し消し去る方法を探すプロジェクトができたこと・・・・・・・

 

こ、と・・・・・・・・・・

 

(;゚Д゚)

 

(;つД⊂)ゴシゴシ

 

(;゚Д゚)

 

(゚Д゚)え?

 

・・・・・・・・おk、OK、ちょっと待とうか。流し読みのスピードが速すぎてひょっとしたら単なる見間違いだったかもしれない。落ち着いて今のところのページをもう一度見直そうじゃあないか。

 

(;つД⊂)ゴシゴシ

 

(;>ω・)つペラリ

 

(;゚Д゚)・・・・・・・・

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・スゥ~~~~~~~~~~~~~~~~~~・・・・」

 

「ふざけんじゃねぇぇえええええええええええええええええええ!!」

 

倉庫の中に顔を突っ込み、この瞬間抱いた感情の全てを怒声に変換して放った。

 

「畜生!!嫌な予感はしてたんだ!!悪魔事件を起こしたクソアマがいる前からすでにあんなものがあった事実!出てくる悪魔どもにどいつもこいつもシャドウの種族名が付いてた事実!そしてここにきて出てきた名前が【ペルソナ】だぁあああ!?!ペルソナってお前・・・ペルソナってお前・・・!!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

 

倉庫内に収まりきらなかった喉から血を吐かんばかりの絶叫の一部が、入り口の隙間から漏れて深夜の廃墟に空しく木霊した気がした・・・

 

 

 

 

 

「ゼェーー、ハァーー、ゼェーー、ハァーー・・・・・・・ハァーーーーーーーー。」

 

あれから約15分、その場で吐き出せる限りの愚痴と罵声をぶつける相手もいないまま吐き出し続け、ようやく気持ちが落ち着いて(というか疲れてそれどころじゃなくなっただけだが)、とりあえず呼吸を整えながらクールダウンを行っていた。

・・・・・・・・・・この世に転生する前に引いた、行き先を決める籤引き・・・・・今思い返してみれば碌な行先は何一つなかったな。

アライブを使ったズルで中身を確認し、確認できたものはいずれもポストアポカリプスから日常に致死レベルのものが平然と潜むものまで、最悪極まるクソゲー染みた選択肢ばかり。そんな中で、アライブが比較的ましなものを引いてきてくれたかと思いきや・・・

 

「これだもんなぁ・・・・・・ほんと嫌になるぜ・・・あの少女の能力や召喚方法に嫌な予感が過る訳だわ畜生が。」

 

さっきまでは何か引っかかりを感じる程度だが、今は間違いなくどこかで見た覚えがあると言える。具体的に何だったかは覚えていないが・・・・ペルソナシリーズは罰までしかやってないからはっきりと出てこないんだよね。また後でthe bookで思い出さないと。

それにしても、愛と夢と希望に満ちた魔法少女の世界観の皮を被ったペルソナシリーズとかタチ悪すぎる引っ掛けだろ、俺をここに送ったあの女神を名乗るナニカ。

ペルソナの存在が成立するということは、同時にペルソナ1・2のあの普遍的無意識の化身2体の存在も同時に成立するということで・・・やばい、ディ・モールト非常にヤバイ。

大本の女神転生もそうだが、気が付けば逃れられない世界の滅亡が起こっている、ということが平然とまかり通るんだぞあの世界観は。いや、あの塔と異界がもうその逃れられない破滅の一つなんだろう、矢島があの塔のことで今日口を閉ざした理由もこれで説明できる。大方俺たちの対処が間に合わなかった未来でもシミュレートで垣間見えたとかそんなオチだろう。

断言できる、これで持てるのが剣二本とスマホだけとかぜってぇ割に合わん。

 

「・・・・・なんにせよ、これでもうリスクだのなんだのとごちゃごちゃ言ってられなくなっちまった。どんな手を使ってでも、備えられること全てに備えなければならないことが今ここではっきりした。帰ったら早速計画を練らねえと・・・」

 

新たな決意を胸に、ひとまず目の前の情報源からの収集を再開していく。

えっと・・・・・・嘘だろっ!?あの少女、現総帥の実の娘かよ!?てっきり親戚筋の誰かかと思ってたがまさか時期後継者かもしれんやつをあんな前線に立たせるとか、いったいどんな事情があればそんなことになるのやら。一応、この研究員の記述を見る限り家族仲が悪いというわけではなさそうなんだけどな・・・・・・・

他には・・・異界そのものの名称を影時間、塔をタルタロスとそれぞれ呼称しているのか。前の人生で似たような用語がなかったかまた後で思い返しておかないと・・・後は、事故で壊れたエルゴ研から残ったものを引き継ぎ、新しい責任者を擁立して新しく創設されたシャドウやペルソナを研究する施設、そこで行われる孤児やあの少女をモルモットにした人口ペルソナ使いを生み出す研究、拳銃型にすることで人間の生存本能を刺激し、内部に仕込まれた黄昏の羽の作用でペルソナの召喚を補助する召喚器、黄昏の羽を組み込んだ異界内でも使用可能な機械類、その他諸々・・・

スピード優先の流し読みな為情報の内容は部分的にしか拾えていないが、とりあえず頭が変わって方向性がある程度変わっても実際に実行する手段が相変わらず禄でもないことがこの記述を見ているとよくわかる。よく読んでみると、実験体の孤児のうち何人かは廃人になるか絶命してるらしいし・・・

余談だがこの研究員、昔総帥とあの少女と一緒に入った際、少女がペルソナ能力に目覚めて狂喜乱舞していたのを現総帥に窘められているな。それも狂喜の理由が異界や塔をどうにかできるからではなく、(極端な言い方だが)単に自分の知的好奇心を満たす切欠になるという理由で。

 

「・・・・とりあえずこいつからとれる情報はこれで終わりか。後は情報にあった他の研究施設から抜き取ることにしよう。」

 

粗方の情報を抜き取った後、能力を解除して博士の記録を消し、記述にあったここから一番近い研究施設の10分前の記録を施設丸ごとアンダー・ワールドで掘り起こす。

それが終わったらここ2週間ですっかり手慣れた手順を踏んで瓶から出したプッチ神父達に命令し、記録機器を持たせて内部の調査に向かわせる。

俺も同じように機材をもって内部に侵入し、さっきの博士の記事にあった【幾月 修司】という男を探す。

記事によると、この男はエルゴ研の爆発事故の生き残りであり、現在はその兼ね合いと本人の手腕もあって現総帥の右腕のような立場でこの研究所の所長兼シャドウ研究の最高責任者の地位にいるらしい。

前の事故の顛末を知る上でも、この研究の現状を知る上でも一番うってつけの存在だ。情報によると奴さんはこの時間、所長室で研究員達の纏めた報告書に目を通しているとのことだが・・・

 

---ガチャンッ

 

「あ。」

「ん?」

 

探索から十分ほどの時間をかけて見つけ出した所長室から、丁度良いことに目的の人物(記録)が扉を開けて呑気に姿を現した。

 

「ヘブンズ・ドアー!!」

「えっちょっと!?」

 

すかさずヘブンズ・ドアで全身を記事にし、気絶させてその内容を記録しながら読み上げていく。

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

---パタン

 

「あ、こいつやべー奴だ。」

 

記事の内容に大体目を通してとりあえず思ったことは・・・・予想以上の成果に喜びたいという思い以上に、心から溢れんばかりの逃避願望だった。

なんかもう、いろいろな意味でひどすぎてコメントに困るので簡単な説明になるが、こいつ、言ってしまうと前総帥【桐条鴻悦】の思想の信奉者ともいえる人間だった。

この男、長い研究者生活で自分が思っていたような実績を上げることがなかなか出来ず、その結果希望しているような評価を得られない状態がずっと続いていたらしい。

人間ならどの年代でも大体抱えているであろう、自分の中の理想と実際の現実とのギャップに対し無意識に鬱屈とした感情が徐々に溜まり続け、それがやがて前総帥の掲げる破滅願望に塗れた思想と見事に共鳴してしまい、さらに今回の爆発事故で生き残った末に待っていた責任追及やバッシングの影響でその拗らせた考え方は決定的なものになったらしい。

今では「この世界は(自分にとって)絶望に満ちた世界だから、一旦すべてを滅ぼして新しい世界を作り直すしかない。そのためにデス(十三番目のシャドウの呼称)から分かたれた、今は眠っている12体のシャドウ達を倒し、7人の生贄をタルタロスで捧げることでデスを復活を復活させ、全てが滅びた世界で自分を新世界の覇者である【闇の皇子】にしてもらう」という正直何一つとして訳の分からない妄想に憑りつかれ、デスを復活させるために自分の内心を隠しながら、エルゴ研の遺産の中で自分に都合の悪いものを隠したり改竄したりしつつ表向きは必死に異界や塔の解決に乗り出していくことで現総帥の心を掴み、現在の地位に上り詰めて暗躍しているらしい。

因みにエルゴ研の遺産の中には岳羽詠一朗さんが爆発事故の際に残したビデオ記録があり、「散らばった12体の大型シャドウ達を倒してしまうとそれがどこかで眠っているデスの不完全体の元に戻ってしまい、デスが完全復活して今度こそ世界が終わる」という情報を後世の人達の為に残していたのだが、この男あろうことかそれを自分の都合の良いように改竄し、「12体の大型シャドウを倒せば塔も異界も消えてなくなる」という風にし、それを現総帥含む異界に関わる人間に見せてそれを上手いこと信じ込ませたそうだ。

・・・・・なにこれ?せっかく命がけで世界滅亡を食い止めた岳羽詠一郎さん、草葉の陰で絶叫してるよこれ?

 

「ハァ~~~~~~~~~~~~・・・・・もういやだ、今日これで何度目の溜息だろ?」

 

あまりにもあんまりな現実の酷さに、シャドウとか関係なくやる気を削がれ過ぎて無気力症になってしまいそうになる。

・・・・・・・・・・よし、これに関しては近々この野郎に現総帥の真ん前で全てをぶちまけてしまう刑に処すことで考えることをやめよう。いくら思考を巡らせても何にもならねえわ、これに関しては。

それよりも成果だ成果。一応予想していた通り、いや下手をすればそれ以上の成果はあった。こいつからすっぱ抜いた、今現在存在する他のシャドウやペルソナの研究機関、ここを含めたその人員、研究内容とそれにアクセスする方法、こいつが知る爆発事故の顛末、事故の後に残った物資・・・そしてこれが何よりも大事なことだが、事故当時に発生してどこかに消えた十三体の大型シャドウの行方の手掛かりと思わしきものが実は残っていたらしい。

前にも少し触れたが、エルゴ研にはシャドウが暴走して危害を加えてきた時の対抗策として、「対シャドウ特別制圧兵装」というものが製造されていた。

記事の情報によると、事故当時に実験の失敗によって生まれた十三番目のシャドウ【デス】に対するカウンターとして、その開発された兵器が討伐にあたっていたそうだが、ラストナンバーの一機以外の全てが大破されるのと引き換えになんとかデスを封印することに成功したらしい。

だが困ったことにその封印されたデスは現在もなお行方知れず、その何とか残った一機は現在何をしても起動はしないわ記憶領域への干渉は出来ないわで手の打ちようがなく、仕方がないので現在は屋久島にある研究施設の保管場所で眠らせているらしい。

幸い、ヘブンズ・ドアーがあれば昏睡中の人間だろうとフライドチキンだろうと本にして中身を読み取れるし、万が一無理でも矢島に任せれば何とかなるはずだ。機会があれば、桐条が現在所持している黄昏の羽共々戴いてしまいたいと思う。

 

「・・・・ん?もうこんな時間か。」

 

ふとスマホの時間表示に目を向けてみれば、既に時間は11時50分を示していた。

 

「流石に今日はもう異界に入りたい気分じゃないからな・・・さっさと帰り支度をしねえと。」

 

幾月の記録に使っていたヘブンズ・ドアーを解除し、元来た道を辿って掘った穴から地上に出る。

先に送り出していたプッチ達は命令通り録画機器は一か所に集め、整列して待っていた。

相変わらず何とも言えない光景だと感じながら、そいつらをホルマジオの瓶に詰め直し、影時間に入門する前に俺は巌戸台を後にした。

 

 

 

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