人形指揮官・閑話集   作:セレンディ

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キッチンにラーメンの袋が転がっていまして。


ラーメン

 ラーメン食いてえ。それも中華麺とかそういうのじゃなくて、ジャパナイズされたラーメン。インスタント乾麺でもいい。

 

 唐突に私はそう思った。

 まあよくある転生者特有のじゃぱにーずふーどが食べたくなるアレである。だが悲しいかな、私が作れるのはヌードルカップであり、ダイヤモンドシティの旧ピッチャーマウンド付近(多分)の屋台でタカハシから『ナニニシマスカ?』『ハイ』というやり取りを経て多少のCAPSと引き換えに渡されるアレである。お世辞にも美味いメニューではない。さらに悲しいことに、私はラーメンの麺を打つことはできないし、材料も覚えていない。なんだっけか、かんすいとやらが重要らしい? ということをなんとなく覚えているぐらいで、いまさら調べても出てくるのだろうか?

 ……出てこなかった。まあ、旧ジャパニーズのサーバーとか全滅だろうからなあ……。ホスティングサーバーとかもサーバーはだいたいカナダとかシンガポールとか……全滅ですやん。

 そんなこんなで、唐突に現れたラーメン欲を私は持て余すこととなった。

 

「で? 次の任務が、旧食品工場に巣食ったテロリストの排除?」

「はい。すぐに影響が出るわけではないとはいえ、放射能汚染が少し強めの地域なので、今まで我々からもテロリストたちからも難民からも、あるいは鉄血からも無価値とみなされて放置されていた地域なのですが、どうもここにテロリストが住み着いたという報告がありました」

 

 そのラーメン欲を持て余すこと数日、どうしようもなく悶々としていたところに新しい任務が届いた。カリーニンが概要を読み上げ、推定地形図をホログラフディスプレイに映して眺める。

 

「……なんで? 放射線量が低くないんでしょ?」

「ドローンによる偵察では、どうも地下シェルターがあるらしく、ゲートの開閉音が記録されています」

「……長持ちするとは思えないけど、地下帝国ができてしまっている可能性があると? どうやってゲートの開閉コードを手に入れたのかしら……」

 

 推定地形図の一点にピンが立てられ、そこが地下への入り口だそうだ。めんどくさいことに、どうやら食品工場のセキュリティを掌握しているようで、それ以上調べる前にドローンは撃墜されたそうな。いやまて、ドローンを撃墜する食品工場のセキュリティってなんだ、多分テロリストの軽火器に撃ち落とされただけだろうに。

 

「ちなみに、食品工場のメーカーは?」

「外装の文字はNI○○INだそうです。……指揮官? 急に、その……急に目をギラつかせて、どうなさいました……?」

 

 ……ラーメン……あるかも。

 

 

「らーめんんんんんんんんんっ!」

 

 AA-12達のシールドの影で、シェルターのゲートコンソールを蹂躙する。時折RAD-AWAYを打ちつつ飲みつつ、タレットから打ち出される銃弾の雨の中PDAを叩く。やはりある程度内部事情に詳しいエンジニアがいるようで、こちらの操作に抵抗してくるがその程度で抵抗しようなど片腹痛い。まあこちらの侵入に気づいた点は褒めてやってもいいが、コンソールからの警報ではなく、コンソールを弄っているのを監視カメラで視覚的に気づいたようだ。ちょっと雑な仕事をしてしまったな!

 まあいい、私はとっととここを片付けて戦利品のラーメンを持って返って食べたいのだ!

 フーハハハハハハハ、ゲートの操作はもはや私の設定したパスコードを打ち込んだ上でゲート内外双方にあるコンソールのレバーを直接降ろさねばならぬ。シェルター内に踏み込みゲートを閉める。もはや私を殺すことは連中にはできないのだ! だって閉じ込められるからな。永遠に。

 

「さっきから指揮官がつぶやいてるラーメンって何だ……?」

「食堂にあるあのヌードルカップじゃだめなの?」

「ダメらしいよ、なんか、あれはヤーパンヌードルじゃないって。私は具材のザワークラウトが美味しいと思うんだけど」

 

 人形たちがヒソヒソ話しているが、あれは断じてラーメンではない。味付けとソーセージが浮いているのはまだ許すとして、パスタ用の麺の流用だし、具材にゃザワークラウト。チャーシューじゃなくてアイスバインが載っている。あれは違う。断じて違う。しかも高いメニューだし。なんでドイツ系なんだドイツ系。

 それはさておき内部制圧に移る。

 さっきから、そして今も天井のタレットがこちらを狙っていて、AA-12のシールドに跳ね返されてガキゴキ音を立て続けていて非常にやかましい。なので、まずはこれを止める。適当に近くのコンソールをハックして、内部管理システムにアクセス、そして掌握。天井のタレットを全て止めて、設定変更できないようにロック。ついでに内部の見取り図もダウンロード。

 このシェルターは、食品工場の持ち主が自分で避難するために作ったもののようだ。肝心の第三次世界大戦の時には、多分ここに逃げ込むことができなかったようだが。なにせ、周囲に経年劣化以外に使い込んだ様子が最近まで無い。何らかの理由で放射能を押してまでここを探索したテロリストが、日記かなにかからゲートの解除コードを見つけたか? しかし、シェルター内部までタレットを用意しておくとは、工場の持ち主はよほどの偏執狂かなにかだったようだ。終の棲家ではなかったのでここには日記はないだろうが。

 内部はそう広くない。ゲートのある部分はガレージも兼ねているようで、だだっ広く、そこからまずは地下へ通路が。その先にエントランス。そこからさらに三方向に別れており、一つが監視所、一つが居住区、一つが倉庫へとつながっているようだ。監視所を抑えれば制圧したも同然かな?

 通路を進むが、このような狭くて階段のように曲がったりしているところはAA-12のようなSG人形が猛威を振るう。正面からの銃撃は全てシールドが防ぐし、たまに飛んでくる手榴弾は私が撃ち落とす。撃ち落とした瞬間、AA-12はシールドを構えたしゃがみ態勢、残りは伏せることで爆発衝撃をやり過ごす。

 

「らーめん!」

 

 お返しにフラググレを投げ込んでやると、どぉんと強い衝撃が走って下が静かになる。

 

「指揮官、指揮官のグレネードは威力がありすぎね。崩落しちゃうわ」

「らーめん……」

 

 Five-seveNの指摘を受けて、私の爆発物は自重となった。Demolition Expartも考えものだな……。

 なので、スタングレネード、閃光音響爆弾を投げる。エントランスから轟音と悲鳴が聞こえて静かになった。制圧完了。

 エントランスに転がるテロリストを始末し、監視所も制圧。専用ディスプレイによる内部状況を表示させ、残存敵数ゼロを確認、制圧完了を確認。

 テロリストの駆除ついでに現地を探索しておくことにする。まさにバンカー探索なので気分もノリノリ……だがその前に、RAD-AWAYの副作用でトイレに行きたいので用を足しておこう。

 ……なぜテロリストはああもトイレを雑に扱うのだろうか。汚れたら臭いし詰まるし、最終的に困るのは使用者自身なのだが……まあいい。

 

「指揮官! 大変!」

「らーめん?」

 

 トイレから出ると、SPP-1が慌てた様子で走ってきた。

 

「倉庫、その、危険なものが!」

「……らーめん?」

 

 人形が取り乱すほどに危険なものは何か、と疑問に思いつつ、倉庫フロアに行ってみると。テロリストに食われた保存食がそこかしこに転がる中、奥の厳重なタイプのロッカーが開いて中身を見せていた。ついでに開くガイガーカウンターのカリカリ音警報。

 

Q.なにこれ?

A.状態の悪い核地雷

 

Q.爆発する?

A.起爆不能。ただしシールが破れているようで放射能汚染を周囲に撒き散らしている。

 

 というわけで解体。ただの鉄とプラスチックと電子基板と少量の貴金属及び核物質にしてしまえばもはや安全である。イエローバレルとて解体してしまえば資源用の核物質になるのと一緒だ。

 

「……お嬢のデタラメ加減がありがたいと思ったのは初めてだよ」

「私もだな」

「あたしも」

「私も」

「らーめん?」

 

 とりあえず、居住区もすでに荒らされていて、いざという時のシェルターとして役に立つかは疑問であるが。

 もはやここには元々あった保存食がわずかに残るばかりであり、後は休憩できるスペースがあるだけの場所である。

 ……らーめんはなかった。

 ので、人形達の反対を押し切って地上の工場跡を10分だけという制限をつけて探索。素晴らしいことに袋入インスタントラーメンを三つ発見。

 汚染度合いはウェイストランドグルメと似たり寄ったりだったので、持ち帰って食べることにした。

 鉄1個から作った今回使い捨て用の鍋を屋外で焚き火に掛け、茹でる。M1895が興味深そうに見ていたので、もう一つ鍋を作って追加で茹でた。

 

「なるほどのう、これがヤーパンのラーメン。食堂のものとは大違いじゃな。なんじゃ、あれは創作料理扱いかの?」

「そのレベルだと思うわ、私。あれは大違いだもの」

 

 とりあえず今回の出撃メンバー+私+M1895には希釈していないRAD-AWAYを一つずつ飲ませておく。

 カリーニンが今回の行動ログから報告書を作ろうとして絶叫し、報告書を読んだヘリアントスもさらに絶叫したらしい。

 近場に核兵器が転がっていたことがそんな意外かね?

 

「異常です!」

『異常だとも!』




職場の食堂のラーメン、クッソまずいんですよね……。
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