Aのカミングアウトを聞いて、女子たちは悲鳴を上げた。
「何それ!!!」
「きも――――――――い!!!!」
「もう本当にこの学校から出てってよ!!!」
女子生徒達はドン引きしていた。飛鳥はAの体を拘束したままである。
「で…園田さんをずっと狙っていたのは、彼女が本妻だと?」
「お、お前には関係…ぐああああああああああ!!!! そ、そうだよ!! 海未をオレのものにして、あの綺麗な髪の自由に触ったり、においを嗅いだり吸ったりして、慎ましい胸もオレ好みに…」
(マ、マジか…)
Aの言葉に女子生徒達は青ざめた。飛鳥もげんなりしていた。
「一丈字くん!! その変態もっとやっちゃって!!」
「もう腕折って!!」
「警察警察!!!」
「コラー!!! 何やってるんだお前達!!」
「!!」
山田がやってきた。
山田「い、一丈字…」
山田がショックを受けているが、飛鳥の態度は変わらない。するとAがわざとらしく、
「せ、先生!! 助けてください!!! 一丈字くんが急に暴れ出して…!!!」
「いいぞもっとやれ!!!」
「先生!! それはダメです!!!(大汗)」
山田からのゴーサインが出て、飛鳥が突っ込んだ。
「はぁ!!? 何言ってんのよ!!」
「アンタが高坂さん達を襲おうとしたんでしょうが!!」
「しかも変態的な事も言ってただろーが!! 髪を触りたいとか、おっぱい揉みたいとか、脇の匂いを嗅ぎたいとかよぉ!!」
「脇は言ってない!!!(大汗)」
しかし、これで山田に変態発言をした事を認めてしまった。
「言いたい事はよく分かった。一丈字、やめろ」
「はい」
飛鳥がAを解放した。
「お前は私と一緒に来い。理由はどうであれ暴力は良くないな」
「…申し訳ございません」
飛鳥が頭を下げると、Aは勝ち誇った顔をしていた。
「職員室まで来い」
「分かりました…」
「ちょ、ちょっと待ってよ!! こいつは!?」
「お前達で何とかしろ」
「えええええええええええ!!!?」
そう言って、山田は飛鳥は連れて行き、Aと女子生徒達が取り残された。
「様子を見るぞ」
「はい」
と、陰から1組の教室の様子をじっと見ていた。
「ふぅー…まあ、さっきのは冗談だとして」
「何が冗談よ!!! さっきのがアンタの本音じゃない!!」
「出てって!!! この変態!!!」
「金輪際園田さんには近づけさせないから!!!」
と、1組の女子達がAにものを投げ始めた。しかし、穂乃果達にもあたっていた。
「あのっ!! 穂乃果達にもあたってるんだけど!!! ちょ、痛いってば!!!」
「いや~ん!!! いた~い!!」
「あのっ!! 庇ってくれるのは嬉しいんですけど、せめてコントロールを…いたたたたたたた!!」
「あの、ちょっと理由を…」
「「「「「出てけー!!!!!!」」」」」」
A「うわああああああああああ!!!!」
Aは追い出され、どこかに去っていった。もう1組の女子がAを好く事はないだろう…。
「余程の事をしでかしたようですね…」
「ああ…もうヤダ…」
飛鳥と山田が呆れるのもつかの間、無実を証明しようと山田は1組の生徒達に顔を出した。飛鳥も後に続いて顔を出す。
「大丈夫ですか?」
「あれ!? 飛鳥くん!?」
「山田先生と一芝居打って、私が連れ出された後、どう出るか試してたんですよ」
「もうあいつはクロだ。これから審議にかける。一丈字が証拠を掴んだ。園田、もう心配いらん」
「先生…」
海未が飛鳥を見ると、飛鳥が口角を上げた。
「山田先生もこう仰ってますから、大丈夫ですよ」
「一丈字さん…」
海未が飛鳥をじーっと見つめる。
「あ、私ちょっと用事があるから席を外しますね」
飛鳥が教室を去っていった。
「くそっ…!!! こんな筈じゃなかったのに…!!!」
人気のいない校舎裏でAが憤っていた。
「くそぉ!! 何もかもあいつのせいだ!! あいつさえいなくなれば海未もμ’sも…」
「オレのもの。って所か?」
「!」
Aの前に神様が現れた。
「お、お前は!」
「随分派手にやってくれたな」
神様は険しい表情でAを見つめた。
「そ、そうだ!! お前!! あいつに何かチート能力を与えてるのか!!? ズルしてんじゃねぇよ!!」
Aが文句を言うが、神様は何も言わずにAを睨み続ける。その気迫にAは後ずさりした。
「な、何だよ」
「そう思うだろう。だが、残念ながら彼には何も与えていない。自前だ」
「そ、そんな事がある訳ねぇだろ!! あんな能力が自前である訳がない!! そんな事よりも能力よこせよ!! 一丈字をぶっ殺す力をよぉ!!」
「もうお前に能力は与えない」
「えっ!!?」
「これまで自分が何してきたか分かっているのか? 分かっていないだろうな」
「何言ってんだ。オレは今まで沢山の世界を救って、ヒロイン達も虜にした勇者だぞ!」
と、鼻息を荒くして神様に怒鳴るA。何とも無様だろうか…。
「それは自分の力ではない。我々神が与えたアトラクション用の力だ。遂に妄想と現実の区別がつかなくなったか」
「だからどうした!! さっさと能力よこせよぉ!!! 一丈字をぶっ殺して、μ’sをオレのものにするんだよぉ!!!」
Aが地団駄を踏んだ。正直みっともないったらありゃしない。この男、生前は冴えない男で、女とは全く縁がない生活を送っていた。ある日、運悪く死んでしまいあの世の生活を余儀なくされた所、転生センターに出会い、今ではこの様である。
あの世でも人間関係は続いており、勿論嫌な事もある。その場合は、家に引き籠ってればいいのだが、この男の場合は転生センターに味を占めてしまい、女に対する欲望があふれ出してしまった。女に触れたい、女と交わりあいたい、女を侍らせたい。今まで胸の中にしまい込んでいた煩悩が、彼を変えてしまったのだ…。
今となってはもう遅い話なのだが…。
「妙な下心を持たなければ、夢は実現できたものを…」
「うるせぇうるせぇ!!! さっさとよこせ!! この無能がぁ!!!」
神様がため息をついた。
「分かった。お前に能力を与えるか」
「分かればいいんだ。さっさと…」
「はっ!!!」
神様が手を突き出して念じたが、Aの姿はとてつもなく醜くなった。
「え…?」
「あらまあ、私が無能だったばかりにお前を元の姿に戻してしまった。済まないな。もう私が出来る事がなさそうだ」
元の姿に戻ったことに、転生者Aは青ざめた。
「ふ、ふざけるな…今すぐ元の姿に戻せぇ!!! こんな姿じゃ…」
「おやまあ、今までいくつもの世界を救っても、容姿には自信がないのか? 随分無様なもんだ。それこそお前の今までの実績が幻だと言うもんだ。では、さらばだ」
「ま、待てよぉ!!」
Aが神様を掴もうとしたが、神様が消えた。
「あ…あぁ…!!!!」
Aが膝から崩れ落ちた。
A「びぇえええええええ~~~~~~~~~~~~~~~~~ん!!!!!」
と、泣き叫んだ。その様子を上空から飛鳥と神様が見つめていた。
「はー…ちょっとだけすかっとしたわい」
「そ、そうですか…」
「ちなみに次回には元に戻す」
「え?」
神様が黒い笑みを浮かべた。
「まだまだわしの気がスマンし、見せしめにならんじゃろう…!!」
(神様がしたらいけない悪い顔になってる…(汗))
神様の悪い笑みに、飛鳥は心の底からAに同情した。
つづく