その日の放課後、飛鳥は絵里、希、にこの3年生組と、穂乃果、ことり、海未の2年生組を引き合わせた。
「…という訳で、2年生からも被害者が出てしまったので、本日から一緒に帰って頂きます」
「そ、園田海未です…」
「あ、うん…宜しくね…? あ、えっと…絢瀬絵里です」
「絵里ちは知っとうやろ。生徒会長なんやし。まあええわ。うちも自己紹介するな。東條希。生徒会副会長や。よろしゅうな」
「は、はい…」
すると希は飛鳥を見た。
「話は聞いたでー。君、ホンマに凄いなー」
「いえ…」
飛鳥が視線を逸らした。半分は出来レースみたいなものなので、素直に喜べなかった。もし事が知られたら、あの3人と同じ運命をたどることだってあり得なくない。今はせめて、あの3人から穂乃果達を守る事に専念する事にした。
「これがいつかは、お前がいるとトラブルが起きると言われる運命ですから…」
「気持ちは分かるで。まあ、ウチもおるし大丈夫やろ。で、そっちは?」
「高坂穂乃果です!」
「み、南ことりです!」
穂乃果とことりが自己紹介した。
「そうかいな。よろしゅうな」
「私は矢澤にこよ」
と、にこもついでに自己紹介した。
『…神様、原作の展開と違う気がするんですけど』
『あのバカ共が好き勝手やったからな。まあ、最終的にはハッピーエンドになるから安心しろ』
『バッドエンドになっても責任取れませんよ…』
飛鳥が肩を落とした。もう原作と随分かけ離れてしまったので、完全オリジナルでお送りする事となってしまった。大丈夫だろうか…。
『大丈夫じゃない』
飛鳥はナレーションに突っ込んだ。
登下校中。飛鳥とμ’s3年生組、2年生組と下校していた。傍から見たら、飛鳥はハーレム状態だった。これがA達の望んでいた姿なのだろう…。
「最近調子は如何ですか? 絢瀬先輩」
「ま、まあ…Bくんが近づこうとすると皆がガードしてくれるから、今は何ともないわ」
(ていうかちゃんと学校に来てるんだな…)
何回か校内で目撃していたが、あのような事があっても普通に登校しているメンタルの強さは飛鳥も感心していた。褒められたものではないが
「おーい!! 一丈字せんぱーい!!!」
「?」
後ろから真姫、凛、花陽が追いかけてきた。
「あれ? 貴方達は確か…」
「間に合って良かったにゃー」
「つ、疲れた…」
「全くもう…この私をここまで走らせるなんてどういうつもり!?」
穂乃果達は少し驚いていた。
「だから言ったにゃ。真姫ちゃんは残ってていいって」
「それも嫌なのよ! 今日もCにジロジロ見られたし…」
「え、そうなんですか?」
「凛も見たにゃ。アレはもう完全に真姫ちゃんを自分の女になる事は決まってるんだって顔してたにゃ」
飛鳥は真顔になったので、花陽が様子を聞いた。
「ど、どうしたんですか…?」
「いえ…それを聞いたら、私も音ノ木坂を去らなければいけないかなと」
「な、何で!!?」
穂乃果達が慌てる。
「んー…。AさんやBさん、Cさんがそういう事をされるのであれば、他の方も私に対していいイメージは抱かないでしょうし、追い出されるのは時間の問題でしょう」
「そ、そんな事ないよ!」
「そうだよ! 海未ちゃんや絢瀬先輩を助けてくれた事、皆分かってるから…」
穂乃果、ことりが必死に引き留める。
「もし仮に」
「?」
飛鳥がことりを見た。
「もし仮に私が過ちを起こしてしまったら?」
そう言うと希が飛鳥を見つめる。
「起こす予定あるん?」
「無いですけど」
「無いんかい!!!」
あからさまに過ちを起こしてそうな雰囲気だったので、結局起こす気がないと言ったので、思わず突っ込んだ。
「色んな先生から「最後の希望」って言われてますから、過ちを犯す気なんてないですけど、嵌められたり、誤って女子更衣室や女子トイレに入ってしまう可能性だって考えられるので…」
「あ、ああ…そっちか…」
絵里が苦笑いした。すると希がニヤリとからかうように笑いながら飛鳥を見た。
「心配せんでええで。飛鳥くん顔が女の子っぽいから違和感あらへんし、寧ろからかいたい子が多いで♪」
「それ…喜んでいいのでしょうか」
「怒って良いわよ」
希のからかいに飛鳥が突っ込むと、にこが困惑しながら更に突っ込んだ。
「そんな事言うんだったら、どうして一丈字先輩はこの学校に来たにゃ?」
「中学卒業した後、高校行かないで働いてたんですけど、社長からやっぱり学校に行けって言われて、この学校を紹介されたんですよ」
ちなみにこの世界での設定は、中学までは元にいた世界と同じという設定である。本来の飛鳥は広島の高校に進学しているが、本作では事情が変わっている。ちなみに第1話に出てきた古堂和哉と古堂孫も一応この世界には存在しているが、あくまで別の世界の2人であり、このラブライブでの絡みは一切ない。
「働いてたの!?」
「ええ」
働いていたことに対して、穂乃果達は驚いた。
「あ、そうだ飛鳥くん」
「何でしょう」
「そろそろ敬語止めて。穂乃果達同級生でしょ?」
「いや、Aさん達の怒りをさらに強めるので…」
「いーの! ほら!」
と、穂乃果が強引に敬語を辞めさせた。飛鳥としてはどちらでも良かったので、従う事にした。
「家族でも敬語にゃ?」
「いや、普通にしゃべるよ」
「仲のいいお友達とかは?」
「ため口」
と、凛や花陽と普通に喋っていた。すると飛鳥は海未を見た。
「そういや園田さんは落ち着いた?」
「え?」
飛鳥が海未を見つめると、海未は困惑した。
「今日の事。まだ時間がかかりそう?」
「え、ええ…それは…」
「私と一緒にいるのが辛いなら、山田先生に言って変えて貰ってもいいからね」
「そんな事ないよ」
穂乃果がそう言うと、飛鳥が穂乃果を見つめた。
「そう思ってないとしても、そういう気遣いって必要だよ。社会人になると…絢瀬先輩も」
「う、うん…」
飛鳥が横を向いた。
「さて…この光景をAさんやBさんが見たら発狂しそうだな」
「あー…少なくともBくんは絵里ちの事、まだ自分の女とか言うとるからな」
「何それ、キモチワル」
真姫が口元を抑える。それを聞いて凛は驚いていた。
「という事はCくんも同じ事考えてるにゃ!?」
「冗談じゃないわよ!!」
「それはそうと…後ろからつけとる人がCくんちゃう?」
「え」
希がある方向を向きながら言うと、それ以外のメンバーも同じ方向を向いた。確かにCがいた。真姫は嫌悪感丸出しにする。
「あっ!!?」
「や、やっぱり…」
「何なのよ!! 人を付け回したりして!!」
「いえ、偶然見つけたもので…何をしてるのですか?」
転生者Cとしては逃さない手はない。何しろμ’s全員が揃っているのだから。ここで飛鳥を消せば、μ’sを独り占めできるチャンスだと思っていたからだった。
希「♪」
そんな中、希はある事を考えて、真姫の方を向いた。
「あっ!! 真姫ちゃん危なーい!!!」
「ひゃっ!!」
「わっ」
希が思いっきり真姫を押すと、飛鳥の腕の中にすっぽり入った。真姫の顔は飛鳥の胸にうずまり、顔を真っ赤にした。そしてCはその姿を見てショックを受ける。
「こら希!! 転んだらどうするの!!!///////」
絵里が希を怒鳴ったが、突然のラブコメチックな展開に頬を染めていた。μ’sのメンバーほぼ全員がドギマギしながら見ていた。海未に至っては小声で「破廉恥です…」とつぶやいていた。
「ごめーん。うちの勘違いやったわ」
「西木野さん、大丈夫ですか?」
「……//////」
真姫は飛鳥の顔を見て、更に顔を真っ赤にした。凛と花陽はそんな真姫の事を可愛いと思っていた…。
つづく