ダシマ式ラブライブ!「転生者・一丈字飛鳥」   作:ダシマ

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第19話「それぞれの苦悩」

 

 

 その夜。飛鳥と神様は、飛鳥の部屋で会話をしていた。

 

「今日も大活躍だったな」

「…ありがとうございます」

 

 飛鳥は自分の部屋にいたが、テンションが低めだった。

 

「言いたい事は分かる」

「結構好き勝手やってますね…。本当に神様の力で何とかした方が良いですよ」

「まあ、Aは締め上げたが、まだ退学には出来ん」

「まだダメなんですか…?」

「他の神たちから連絡があったが、今君達が転生しているこの世界に入りたがっている輩が多数いる」

「え?」

 

 飛鳥が神様を見つめた。

 

「そういう人気のある作品って何個かスロットを用意してるもんじゃないんですか?」

「相手は既に転生者がいようがお構いなしの連中だぞ」

「あ、そうでしたね…」

 

 本当に面倒な事になったと感じる飛鳥。この世界は本当にどうなるのか不安で仕方なかった。

 

「それに、もう今後は同じことを起こさないように、見せしめをしないといけないからな。もうこれで最後にしたい」

「そ、そうですね…」

「にしても…君程現実を見てる子はいない。アニメの女の子に興味がないのか?」

「そうですねー…やっぱりアニメの登場人物同士、くっついて欲しいと思います」

「そうか…。それだったらハーレムもあまり意味がないな」

「ええ」

 

 飛鳥が腕を組んで頷いていた。実は同世代の女子とそれなりに接する機会もある為、特にハーレムへの憧れは無かった。

 

「だが、ハーレムを作る事が奴らにとって、一番の制裁にもなるからな」

「いやいや、神様の力で作ったって…」

「何を言っているんだ? ハーレムに関しては、私は何も関与していないぞ。全部君の力だ」

 

 神様の言葉に飛鳥が絶句した。

 

「いや、あれてっきり神様の力かと…」

「君なら必要ないと、和哉くんが言っていたぞ。だからあえて与えずに様子を見たら、予想通りだ」

「要するに嵌められたと」

「そうなるな」

「ハァー…」

 

 飛鳥が深いため息をついた。正直今でも信じたくない気持ちでいっぱいだった。

 

「本当にどうなるんだ…」

「それ何回も聞いたぞ」

「誰のせいだと思ってるんですか!!!(激怒)」

 

 

 数時間後、天界。

 

「全く、あそこまで怒る事ないじゃろ…ブツブツ…」

 

 と、神様が飛鳥に対して文句をつぶやきながら、自分の書斎で仕事をしていた。飛鳥の監視だけではなく、ちゃんと天界での仕事をしていた。

 

 その時、ノックする音がした。

 

「入れ」

 

 一人の青年が現れた。白いロングヘア―の青年である。

 

「ザキラか」

「夜分遅くにすみません。羅城丸様。少しお話が…」

「転生センターの件なら心配いらん」

「!」

 

 神様はザキラの顔を見ずに言い放った。

 

「…しかし!!」

「お主ら護衛隊には別の仕事が与えられているはずじゃ。そちらの仕事に専念しろ」

「…わ、分かりました」

 

 ザキラが俯いた。

 

「羅城丸様。お言葉ですが一言だけ申し上げたい事がございます」

「…話は聞こう」

 

 ザキラが羅城丸を見つめた。

 

「羅城丸様が派遣している人間は…本当に信用できるのですか?」

「出来る」

「何を根拠に…」

「直感じゃよ」

「…直感ですって!?」

 

 羅城丸が正面を見つめた。

 

「今はそれしか言えん」

「……」

 

 ザキラは俯いた。

 

「分かりました…。失礼します」

「うむ。ゆっくり体を休めよ」

 

 と、ザキラは去っていった。

 

「ふぅ…」

 

 神様の部屋を去った後、ザキラはこぶしを握り締めて、歯ぎしりした。

 

「何故私ではダメなのだ…!!!」

 

 

 

 翌朝、1時間目は全体で自習となり、大会議室で臨時の職員会議が行われていた。

 

 

「これより、緊急の職員会議を始めます」

 

 南がそう言い放つと、そこにはどんよりした面持ちの教師陣がいた。南もげんなりした。

 

「えーと…まずは山内先生……現状の報告をお願いします」

「はい…」

 

 真姫たちの担任である山内はもう泣きそうだった。

 

「1学年に転入したCくんは昨日、道の真ん中で女子生徒と2年生の転入者に一方的に言いがかりをつけて、そのまま大暴れしました。その後、転入者の子に取り押さえられて救急車に……。居合わせた女子生徒からも一般市民からも苦情が来ていました。報告は以上です」

「…はぁ」

 

報告をし終えた1学年の担任教師、山内奈々子は心底疲れた表情を見せていた。南はにこ達の担任、笹原京子に視線を移した。笹原も同じく疲れた表情を見せていた。

 

「笹原先生……報告をお願いします」

 

「はい。3学年に転入してきたBくんですが…。転入初日に女子生徒を尾行。それとアイドル研究部の部室で聞き耳を立てている奇怪な行動もしていました。更に転入2日目の朝に電柱の物陰でニヤニヤと笑っていたり、路上で泣き叫んでいると一般市民から苦情の電話がありました。ましてや夜道に…女子生徒を自宅までストーカーしてました…報告は以上です」

「…誰か頭痛薬と胃薬を持ってませんか?」

笹原の報告に雛子は目頭と胃を押さえ始めた。他の教師達も頭を抱えたり、額を押さえながら溜め息を吐いたりと、心底疲れた表情を見せていた。

 

「山田先生の方はどうでしょうか?」

 

 山田も嫌そうにしていた。

 

「転入生のAは、既に女子生徒達から気味悪がられてますよ。何かぶつくさと独り言を呟いてますね。オレの能力とか、ハーレムがとか……隣の席の生徒が話してました。更に女子生徒を物陰から見ていたり、変な顔でもう1人の転入生を睨んだりの問題行動ばかり起こしてます。あ、そういや此間もう1人の転入生を殴ってました」

 

「……共学化は失敗だったようね」

「もう失敗ってレベルじゃないっすよこれ…」

 

2学年の担任教師、山田博子の報告により、南の精神は完全に磨り減ってしまった。共学化は完全に失敗に終わってしまったかと、雛子は何回吐いたか忘れてしまった溜め息を再び吐いた。というかもう物理で吐きそうだった。

 

「もう1人の転入生……一丈字飛鳥くんは大丈夫? 深山先生」

「全く問題ありません!(笑)」

「はっ倒すぞこのアマァ!!!(激怒)」

 

 飛鳥の担任である深山がにこやかに宣言すると、山田と笹原が突っ込んだ。山田、笹原、山内は本当に限界寸前だった。もう山内に至っては自信を無くし始めていた。

 

「うちのクラスの子達もよく口にしてるわよ。一丈字くんがうちのクラスに転入してくれたら良かったのにって。深山先生。うちの問題児と一丈字くんを交換しない? ていうかしてください」

「学年が違うから無理ですよ」

「それアタシが言いたかったのに!!」

 

 深山が苦笑いして言うと、山田が指をさして突っ込んだ。

 

「あの…Cくんと交換しませんか?」

「だから無理ですってば」

笹原と山内は、現在の担任である深山に飛鳥と自分が受け持ってしまった問題児と交換しようと持ちかけるも、深山は断固拒否した。学年が違う時点で無理な話ではあるが。2人はこの5日間で何回か授業で飛鳥と話をしたことがあるが、絵里や真姫を助けた事も知っている上に、元の印象も良いので大変気に入っていた。

 

(皆んな嬉しそうな表情で一丈字くんの事を話してるわね。ことりの言っている事は間違っていなかったみたい)

 南が口角を上げたが…

 

(配属するクラス間違えた…(泣))

 

 南は涙した。もし、ことりのクラスにAではなく飛鳥を配属していれば、母親として心配する事は何一つなかったのに、この状況である。正直もう凛々しい理事長のプライドを捨てて、旦那に泣きつきたい気持ちでいっぱいだった。

 

「皆さん。この緊急会議を開いたのは他でもなく……廃校の件についてです」

 

雛子の言葉に、教師陣達は一斉に視線を雛子に移した。全員予想はしていたらしく、驚く者は誰1人としていなかった。

 

「娘や皆さんの話を聞く限り、一丈字くんはとても良い子だということがわかりました。とても素晴らしい生徒が転入してくれた事を、私は嬉しく思っています。しかし……他の転入生達が起こしている問題を無視することはできません。一般の方々から苦情の連絡がきたということは、既に音ノ木坂周辺では噂が飛び交っていると思われます」

 

「……」

 

 すると南はこう言った。

 

「ですが、有難いことに入学希望者は一定の人数を超えたので、廃校は見送ります!」

 

 

 

つづく

 

 

 


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