ダシマ式ラブライブ!「転生者・一丈字飛鳥」   作:ダシマ

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第21話「人として」

 

 放課後、飛鳥は1人屋上にいたが、テレパシーで神様と会話をしている。

 

『本当に良かったのか? μ’sをほっぽり出して』

『今は1人になりたい気分なんですよ』

 

 しかし、屋上に来るまでに何人かに見られていた。そりゃそうだ。絵里や海未、真姫を助けたのだから、見てもおかしくはないだろう。

 

『結構見られましたね…』

『そりゃそうだ。何度も痴漢から少女を助けてるんだ。見るだろう』

 

 飛鳥は口角を下げて、真剣な顔をした。

 

『神様』

『何だ』

 

『あの3人以外にも、フォーがこの世界にいる可能性があるのでしょうか』

『運が悪ければな』

『そうですか…』

 

 飛鳥が空を見上げた。出来ればこのままの状況であってほしいのだが、残念ながらそうはいきそうにないと飛鳥は感じていた。

 

『まあ、仮に勝てないとしても、最終的に止めないといけないから私が手を下す』

『ありがとうございます』

『だが、それまでは君が頑張ってほしい。これからの地球の為にも、君自身の為にもな』

『分かりました』

 

 飛鳥が返事をしたその時だった。遠くに黒い煙が立っているのが見えた。

 

『!!?』

『火事じゃ!! あそこは…』

 

 飛鳥と神様も気づいた。

 

『矢澤にこが住んでいるマンションじゃ!! 行くぞ飛鳥!!』

『は、はい!!』

 

 

 神様に言われた通りに、飛鳥は火事現場まで瞬間移動した。

 

「!!!」

 飛鳥が現場に駆け付けると、マンションが燃えていた。

 

『思ったんですけど…神様が何とかするって事は出来ないんですか?』

『出来るが、不自然すぎるだろう。それよりも君が無謀に突っ込んで、助けた方が良いだろう。私のやる事は、君や中に取り残されてるかもしれない輩が死なないようにする事だ』

 

 その時、ベランダから2人の女の子が顔を出した。

 

「たすけてー!!!」

「!?」

 飛鳥が女の子を見る。

 

「あついよー!!!」

「ケホッ…ケホッ…」

 

 女の子たちはせき込んでいた。恐らく煙を吸ったものだと思われる。

 

「……!」

『助けに行かないとあの子達が死ぬぞ』

「消防車は…」

 

 飛鳥が消防車を確認しようとしたその時だった、観衆がざわざわしていた。

 

「消防車はまだ来ないのか!!?」

「はぁ!!? 飲酒運転の車と衝突事故を起こしたぁ!!?」

 

 と、消防車は来る様子が無かった。そしてまた…。

 

「離せよ!!!」

 

「!!?」

 と、A、B、Cが揉めていた。

 

「オレが助けに行くんだよ!!!」

「でしゃばんな!!! 同じ3年なんだからオレなんだよ!!」

「非合理的です。僕が行くべきです」

 

 と、手柄の奪うために小競り合いをして、助ける様子もなかった。

 

 

「行ってきます!!!」

 

 悟った飛鳥は、超能力で悟られないようにして、中に突入していった。

 

 火事が起きているのは4階だった。

 

(凄い火だ…!!)

 

 飛鳥が扉を開くと、煙が充満していた。

 

(まあ、地道に消していくのが良いんだろうけど…時間もない)

 

 飛鳥が両手を突き出した。

 

飛鳥「はっ!!!!」

 

 飛鳥が気合を入れると、両手の前に黒い空間が発生して、煙や炎を吸い込んでいった。

そして火や煙をある程度消すと中に進んでいった。

 

「おーい!!!」

「!?」

 

 飛鳥が子供達と合流した。

 

「大丈夫!?」

「あれ!? ひは!?」

「話は後だ! それよりもここを出るぞ!」

「は、はい!」

「あ、まって!! 虎太郎が!!」

 

 虎太郎と呼ばれる少年は意識を失って倒れていた。飛鳥はすぐに虎太郎を抱きかかえる。

「その子はオレに任せて。あっちから脱出しよう」

「……」

 

 2人の少女が怖がる。

 

「大丈夫」

「?」

 飛鳥が口角を上げる。

 

「おじさんが一緒にいる」

「……!」

「さあ、行くぞ!」

 

 地上

「先程から火が燃え上がってまいりましたが、突如火の勢いが弱まりました! 取り残されている人の安否が気遣われております!」

 

 マンションの外でキャスターが実況をしていた。

 

「う、うちのマンション…」

 

 にこは膝から崩れ落ちていた。希と絵里も同行している。

 

「原因は火のついたライターをゴミ箱に捨てたのが原因みたいやな…」

「はっ!! そういや今日こころ達ずっと家にいるじゃない!!」

 

 希の呟きに対し、にこは思い出したように自分の弟妹達を思い出した。そして走り出した。

 

「こころ!! ここあ!!! 虎太郎!!!」

 

 にこがマンションに行こうとしたが、希と絵里に止められる。

 

「アカン!!」

「危険よ!!!」

「離して!!! 離してぇ!!! うちの妹達がー!!!!」

 

 にこが泣き叫ぶと、マンションの出口から飛鳥とこころ達が現れた。

 

「!!!」

「ハァ…ハァ…」

 

 虎太郎を抱きかかえている飛鳥を見て、にこは目を大きく開けた。

 

「人が出てきたぞ!!」

 

「こころ!! ここあ!! 虎太郎!!!」

 

 にこが希と絵里を振り切り、こころ達に近づいた。

 

「おねーさま!!」

「おねーちゃーん!!!」

 

 にことこころとここあが抱き合った。

 

「うえ~~~~ん!!!!!」

「こわかったよ~~~~!!!!!!」

「よしよし…怖かったねぇ…! もう大丈夫よ!」

 

 にこがこころとここあを抱きしめて頭をなでると、目に涙を浮かべた。すると希と絵里が飛鳥と虎太郎を見た。

 

「それはそうと、飛鳥くん大丈夫!!!?」

「どうしてあなたが!!?」

「様子を見に来たんですよ。そしたらあの子達が助けを求めてて…」

 

 にこが飛鳥を見つめた。

 

「も、もしかしてアンタが助けてくれたの!?」

「そうです!」

「このおねーちゃんがたすけてくれたんだよ!!」

「おじさんだよ」

 

 飛鳥が困惑しながらも、虎太郎を地面に置いた。

 

「あ、おねーさま! 虎太郎が!」

「え!?」

 

 にこがこころとここあから離れて、虎太郎の様子を見た。

「虎太郎!!!」

「少し煙を吸って気を失っていますが、命に別状はございません。脈はあります」

 

 ちなみに飛鳥が超能力で呼吸器をある程度正常に戻している。

 

にこ「……!」

 にこの涙腺が緩くなると、

 

「おーい!! 消防車と救急車が来たぞー!!!」

 消防車と救急車がやって来た。そしてフォー達も来た。

 

 飛鳥が安心したその時、突如Bに殴られた。

 

「!!?」

 

 飛鳥はぶっ飛ばされた。

「飛鳥くん!!!」

「!!?」

 

 すると3人が飛鳥に詰め寄った。

 

「……!?」

 

「何でこんな無茶したんだ!!!」

 

 と、Bが怒鳴った。

 

「そうだ!! お前が無茶する事は無かったんだ!!」

「その通りです。無茶としかいいようがありませんね」

 

 と、AとCも怒鳴った。周りの人間は「なんだこいつら…」と思っていた。飛鳥は正論を言われているので、苦笑いするしかなかった。

 

「何ヘラヘラしてんだよ!!」

「そうですね。すみません」

 

 その時、にこ達が駆け寄った。

 

「大丈夫!? あんた!!」

「!」

 

 にこ達が飛鳥に話しかけたので、A達が驚いた。

 

「ほっとこ。あんな奴ら」

「そうね」

 

 と、飛鳥を避難させようとするが、A達は後を追いかける。

 

「ちょ、ちょっと待てよ!!」

「オレ達はただそいつの事を考えてだな…」

「待ちなさい!!」

 

 その時だった。

 

「しつこいわね!!!」

 

 にこがBにビンタすると、静寂が起きた。

 

「あんた達って本当にサイッテー!!! どうせヒーローになる為にあの中に入ろうとしたけど、こいつに邪魔されたから怒ってるだけでしょ!!!」

 

 にこの怒鳴り声にA達は固まった。

 

「そうだそうだ!!」

「!!?」

 

 ギャラリーの中にいた男性が叫んだ。

 

「お前ら、自分が助けに行くって言ってずっとあそこでもめてただろうが!!!」

「そうよ!! こういう時は協力しなさいよ!!!」

「てか、その子怪我してるのに殴るとか馬鹿じゃないの!!?」

「しかも子供達も近くにいるのに危ないじゃない!!!」

 

 と、避難轟々だった。A達は立ちすくんでいる。

 

「ふん!! 行きましょ!!」

「あ、救急車…」

「じゃあそれに乗りましょ!!」

 

 と、飛鳥が虎太郎を抱きかかえて、にこ達と一緒に移動した。

 

「べーだ!!!」

「ここあ。めをあわせちゃだめです」

 

 と、にこの妹であるここあがA達に向かって舌を出すと、ここあの姉であるこころが制した。冷静に見えるが、A達を軽蔑していた。

 

 そして飛鳥達が救急車に乗り込むと、A達は呆然と立ち尽くした。

 

 

『コングラチュレーションじゃ。飛鳥』

『あ、ありがとうございます…』

 

 

 つづく

 


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