ダシマ式ラブライブ!「転生者・一丈字飛鳥」   作:ダシマ

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第23話「三人寄っても馬鹿の知恵」

第23話

 

 にこの家が火事になって翌日…。この日は全校集会や張り紙で廃校が発表され、ラブライブの本格な物語が始まる筈だった…。

 

 通学路。A、B、Cが同盟を結んで早速行動を共にしていた。傍から見ていた女性生徒は「汚物が集結した」などと、酷い言い様だったが、3人は我慢していた。

 

「いよいよだな……ラブライブの本格的な物語が始まるのは」

「この後、穂乃果はショックを受けて気絶する筈だ」

「気絶して倒れた瞬間に、僕達の能力を最大にして接し、一丈字の能力を無効化して、穂乃果達に好意的に接してもらえる筈です」

 

神の手によって停学が終わった3人は、昨日立てた作戦を実行する為に身なりを整え始めた。3人の力…ニコポ(笑)を重ねがけした、自分達のオリジナル能力を発動する為である。昨日の深夜までAのマンションで予行練習を念入りに行った3人は、必ずこの能力はμ'sに効果があると確信しニヤニヤと笑っていた。当然傍から見ていた女子生徒達は吐き気を催していた。

 

 

「能力名は、一丈字ブレイク。我ながら素晴らしいネーミングを考えたものだ。一丈字……オレの海未達を返してもらうぞ」

「今度はお前がヒロイン達から冷たくされる番だ。俺と絵里達がイチャイチャしてる姿を見せつけてやるからな」

「今まで優しくしてくれたμ'sが嘘のように、アナタを拒絶するんだ。覚悟しなさい一丈字…お前の泣き叫ぶ姿が目に浮かびます」

 

自分達の能力を重ねがけし……飛鳥のμ'sを誘惑する能力を無効化し、自分達の最も憎むべきライバルの飛鳥がμ'sに冷たくされ、自分達がμ'sとイチャイチャしている姿を見て泣いている姿をニヤニヤと馬鹿みたいな顔をして想像している愚かな転生者達…どうやら自分達が数々のアニメの世界で好き放題に問題を起こした罪人という自覚は無く、自分達は無敵の転生だと、勘違いをしていた3人の姿はお笑いだったぜぇ?

 

『何で事あるごとにパ○ガス入って来るんだよ…』

『癖になる独特のイントネーションだからな』

 

コマの外から飛鳥と神様が突っ込んでいた。

 

 正門前、何やらテレビ局の面々が来ていて、A達はおどろいていた。

 

「な、何だ…?」

「テレビ取材…どう考えてもおかしいぞ」

「いや、待てよ。もしテレビに映る事になったとして、印象良くすれば真姫達の印象も良くなるかもしれないぞ」

「お前天才か」

 

 そうと決めた3人はテレビ局のインタビューに答えてもいいように、愛想よく振る舞って歩いたが、テレビ局のクルーは面々をスルーした。

 

(え)

 

 ちなみにそれを見ていた女子生徒達には鼻で笑われていた。

 

「ど、どういう事だよ! 何でテレビクルーはオレ達を無視したんだよ!」

「オレが知るか! こいつに聞け!」

「オレのせいにするな! 必ずインタビューされるなんて言ってない!」

 

 と、フォー達が責任転嫁しあっていると、テレビクルーの一人が首を傾げた。

 

「うーん…中々来ないなー。もう来たんじゃないか?」

 

 と、テレビクルーの一人が口を開いたのを3人は聞いた。

 

「もうやめましょうよ。この学校の理事長にも取材断られたじゃないですか…」

「バカやろう! 高校生がたった一人で火事現場から子供達を救ったんだぞ! これを伝えないでどうするんだ!」

 

 3人の表情が歪んだ。忌々しい思い出である。今まで沢山世界と女を救った自分達が、ヒロインにビンタされて、大勢の前で恥をかかされた。何もかも一丈字のせいだ。一丈字絶対殺すと考えていた。

 

「それにしても凄いですよねー、その子。自分も怖かっただろうに…」

「ホントにそれだな」

 

 飛鳥を称賛するテレビクルーに、A達は嫉妬していた。

 

「くそう…」

「ああ…。間違いなく奴しかいねぇ…」

「おのれ…!! 売名行為しやがって…!!」

 

 するとテレビクルーの面々はA達を見た。

「あのー、君達」

「や、やべっ!」

「今の事聞かれたか?」

「いや、待ってください。これは奴に関する情報を詳しく聞かせて欲しいってパターンです」

 

「さっきの発言について、ちょっと聞かせて貰えるかな」

「同じ学校の仲間が人助けしたのに、それは無いんじゃないの?」

 

 そんな筈が無かった。しっかり聞かれていて、また自分達の評判が下がった。そして×が悪くなったのか、A達は逃げ出した。

 

 

「ハァ…噂は本当だったみたいですね。音ノ木坂にはとてつもない程の問題児がいると」

「それだ!」

「え」

 

 

 そして飛鳥が学校にやって来た。

 

「ハァ…」

『腹括れ』

 

 飛鳥は休もうか考えていたが、朝に学校から電話があり、登校後すぐに理事長室に来るように言われてしまった。

 

(何かテレビクルーも来てるし…)

 

 飛鳥が超能力で存在感を消して、そのまま通り過ぎていった。

 

 理事長室。飛鳥は理事長の前に立っていた。

 

「ご心配をおかけしました」

「え、ええ…。無茶はダメよ?」

 

 南は苦笑いした。正直無茶をしてほしくない気持ちはあったが、病院からもし救出が遅れていたら、助からなかったと言われていた為、これ以上は何とも言えなかった。

 

「…電話で話したけど、本日あなたの事でテレビ取材が来ます。アナタが表彰されている所と、インタビューにも答えて頂きますので…」

 

 理事長は額を抑えていた。

(あの転生者達の事をダシにされたのか…)

 

 飛鳥は責任を感じ、毅然とした態度で承諾した。

 

「承知しました」

「引き受けてくれるの?」

「はい。ですが、一つお願いがございます」

「何?」

「時間が来るまで、ここにいても宜しいでしょうか…。他の生徒と出くわすとアレなので」

「わ、分かったわ…。こっちも無茶なお願いしてるからそれくらいは…」

 

 こうして飛鳥は、時間が来るまで理事長室にいる事にした。

 

 にこ・希・絵里の教室。にこの家の火事で持ちきりになっていた。まだにこは来ていない。

 

「矢澤さん…大丈夫かしら」

「うん…人が死ななくて良かったね」

 

 こんな形で注目を浴びるのは本人も望んではいないだろう。教室にはBもいるが、完全に空気だった。作戦の為、大人しくしていたが…。

 

「暫くは親戚の家に泊まるとかいうとったけど…大丈夫やろか」

「そうね…」

 

 するとにこがやってきた。

 

「矢澤さん!」

「何よ。幽霊を見るような顔で」

 

 にこが呆れた。

 

「その…えっと…」

「大丈夫よ。確かに家は全部燃えたけど、何とかなってるから」

「そう…」

「それよりも…あいつの所に行ってくるわね」

「あいつ?」

「ああ…あの子の所な。うちも行くで」

「誰?」

「2年生の一丈字くん。あの子やで、にこっちの兄弟助けたん」

「えええっ!!!?」

 

 驚く女子生徒達に対し、Bは歯軋りをした。

 

(いい気になるなよ一丈字…。お前の天下も今日までだ…!!)

 

 2年2組教室

 

「ええっ!!? 飛鳥くんが!!?」

 

 穂乃果、ことり、海未が驚いた。

 

「うん…3年生の矢澤さんの妹さん達を火事から助けたんだって」

 

 穂乃果・ことり・海未が顔を合わせた。

 

 1年生教室

 

「マ、マジで…」

「す、凄すぎるにゃ…」

「うん…」

 

 真姫たちも穂乃果達と同様に驚いていた。

 

 理事長室。理事長は飛鳥をずっと見ていた。

 

「あの…何でしょうか…」

「あ! いや、何でもないのよ!?」

 

 理事長が慌てる。

 

「…ですが、アナタは本当に不思議な子ね」

(よく言われる。ホントに)

 

 飛鳥が困惑する。超能力者だからなのか、それとも…。

 

「学校でも何度も女子生徒を助け、外でも人を助けるなんて…」

「え、私の行く所行く所トラブルが起きるなって話ですか?」

「違うわよ! あなたのやった事は立派ですから、もうちょっと胸を張りなさい!」

「あ、はい…」

 

 飛鳥が困惑した。原因は自分達にもあるようなものなので、何とも喜べない状態だった。

 

「…何かあったの?」

「いえ、ここまで来るともう私が仕組んでるんじゃないかって疑われそうで」

「実際そうなの?」

「いいえ?」

 

 飛鳥は首を横に振った。寧ろそんなの勘弁してくれと思うばかりだった。

 

 

つづく

 


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