ダシマ式ラブライブ!「転生者・一丈字飛鳥」   作:ダシマ

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第24話「勝者と敗者」

 

 

 全校集会

「そういう訳で、廃校の件は以上です」

 理事長が廃校の話をした。μ’sは勿論、女子生徒は一安心していた。転生者達に至っては…。

 

(どういう事だよ!!! 廃校にならないって!!)

(ストーリーが成り立たないじゃないか!!!)

(僕が気絶しそうです…!!)

 

 

 すると理事長がマイクを見直して、正面を向いた。

 

「続きまして、当初は予定にありませんでしたが、表彰授与に移りたいと思います」

 

 テレビクルーが生徒達を撮影していた。

 

「昨日、音ノ木坂の生徒が火災現場から子供達を救助したという報告を受け、その生徒の承諾を得て表彰致します。2年1組、一丈字飛鳥くん。こちらへ」

 

 すると、飛鳥が舞台袖から出てきた。

 

「飛鳥くん!!」

 

 他のメンバーも反応した。2年生組、1年生組は驚いて、3年生組は感慨深そうにしていた。フォー達は嫉妬で怒り狂っていたが…。

 

「感謝状、音ノ木坂学院 一丈字飛鳥殿…」

 

理事長が読み上げるが、飛鳥は特にテンパる様子もなく、普通に表彰状を受け取っていた。

 

 全校集会が終わって、飛鳥はインタビューにも答えた。

 

「どうして助けに行こうと思ったんですか?」

「本当は迷ったんですけど、消防車や救急車が来ないって聞いて、これはもう行くしかないなと。子供達も小さいですから待ってる時間も限られていました」

「そ、そうですか…」

 

 高校生とは思えない落ち着いた態度にテレビクルーも困惑した。それを遠くからA達は嫉妬した目で飛鳥を睨んでいた。

 

 そして1組の教室に帰って来ると…

 

「飛鳥くん!!!」

「一丈字くん!!」

 

 女子生徒達が飛鳥に詰め寄った。飛鳥はある程度覚悟はしていたが、やっぱり女子生徒が詰め寄ってくると少し辟易する。

 

「聞いたよ! 火事から子供を助けたんだって!!?」

「凄い!! ホントに凄い!!」

「怪我とかしてない!!?」

「あ、大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます…」

 

 飛鳥が苦笑いすると、Aが陰で面白くなさそうに歯軋りした。

 

(いい気になるなよ一丈字…お前の天下も今日までだ!!)

 

 

 ある休憩時間

「邪魔するわよ!!」

 にこ・絵里・希の3人がやって来た。

 

「一丈字くんおる?」

「あ、はい」

 

 飛鳥が反応して立ち上がると、にこが飛鳥に近づいた。

 

「ちょっと来なさい」

「あ、はい…」

 と、にこが飛鳥を連れて行った。希と絵里もついていく。

 

 廊下

「そういや…あれから、妹さん達は大丈夫ですか?」

「大丈夫よ。一番下の子もすっかり元気になったわ」

「そうですか。それは良かった」

 

 飛鳥が口角を上げる。

 

「その…お母さんがね。今度お礼が言いたいって」

「お気遣いはいりませんよ」

「気が済まないの! ママもにこも!」

「!」

 

 にこが飛鳥を見つめると、チャイムが鳴った。

 

「にこっち、もう時間や」

「う…分かってるわよ!」

 

 にこが飛鳥を見つめる。

 

「いい!!? 分かったわね!?」

「あ、はい…」

「それから今日のお昼!」

「?」

 

 にこが頬を染めて、飛鳥に指をさした。

 

「昼、空けときなさいよ!」

「あ、ごめんなさい。ちょっと昼は理事長室に呼ばれてて…」

「それじゃ明日!」

「本当にお気遣いは結構ですよ。妹さん達が無事ならそれで。それでは、失礼します!」

 

 そう言って飛鳥は去っていった。

 

「ホンマに不思議な子やな。もしかしたら…」

「うん…」

 

 と、にこ達は飛鳥の背中をずっと見ていた。

 

 

 次の授業。1組と2組の合同授業だったが、自習となった。

 

「何かあった!?」

「ありがとうって言われたよ」

 

 穂乃果の問いに、飛鳥が苦笑いした。

 

「あ、そう言えば今日は自習だって!」

「あ、そうなんですか…」

 

 穂乃果が飛鳥に言うと、飛鳥は適当に返事した。するとヒデコ、フミコ、ミカのヒフミトリオが飛鳥に詰め寄った。他の2組の女子も興味津々である。

 

「ねえねえ! 一丈字くんの事、もっと知りたいな!」

「教えて教えてー!!」

 

 と、ヒデコとミカが言う。飛鳥は苦笑いし、Aはぐっとこらえていた。

 

(それが一番マズいんだよな…どうしよう)

『いいじゃないか。私が上手い事誤魔化してあげよう』

 

 その時、山田がやって来た。

「お前ら。自習の時間だ。席付け」

(あ、助かった…)

 

 2組の生徒が残念そうにしながら、自分の席へとついた。

 

 自習時間。飛鳥は普通に自習していたが、隣に座っていたことりが横で飛鳥をじーっと見ていた。

 

飛鳥「何?」

ことり「ぴっ!?」

 

 飛鳥が急に話しかけてきたため、ことりは驚いて声を上げた。

 

「どうした、南」

「い、いえ! 何でもありませんっ!!」

 

 ことりが慌てていた。

 

「どうしたの? ことりちゃん」

「ち、違うの! あ、飛鳥くんこそ急になに!?」

(いいぞ。そのまま嫌われろ!)

 

 飛鳥が自分から墓穴を掘ったと思い、Aはニヤニヤしていたが、周りの生徒は露骨に嫌そうにしていた。ちなみに座席はくじ引きである。

 

「いえ、何か見られてた気がしたから…。分からない所があるの?」

「えっ…」

 

 ことりが驚いた。

 

「あ、違った? ゴメンね」

「え、えっと…」

 ことりが迷うと、テキストを手に持って、ぱらぱらとページをめくり、問題を飛鳥に見せた。

 

ことり「その…ここの問題の解き方が分かんないんだけど…」

飛鳥「あ、これ?」

ことり「う、うん…」

 

 飛鳥は一瞬ことりを見ると、すぐにプリントに視線を移した。

 

「メモの用意して。教えるから」

「えっ?」

「やり方さえ分かれば、すぐに解けるよ」

 

 飛鳥に言われた通り、ことりがメモの準備をした。

「これはね…」

 

 飛鳥はことりに問題の解き方を教えた。最初は分からなさそうにすることりだったが、飛鳥が例などを紹介すると、頭の中に入ったようだった。

 

「あ! こうなった!」

「そう。それが正解だ。分かったかな?」

「う、うん! ありがとう!」

「いえ」

 

 飛鳥がそう言うと、ことりと目が合った。ことりは恥ずかしそうに頬を染めた。

 

「あ、ご、ごめんなさい!!////////」

 

 と、照れて目をそらしてしまった。

 

(一丈字の野郎…! ことりに色目を使っているのか!? よし!)

 

 するとAが立ち上がった。

 

「一丈字くん。今は授業中だし、南さんに色目を使うのは良くないなぁ」

 

 と、気障な感じで言い放つと、周りにいた女子生徒達が殺気立てた。もう喋るだけで殺意が湧いてくるんだよ。喋るなと言わんばかりだったが、Aにとっては今日が飛鳥の命日だと思い込んでるため、気にしていなかった。

 

「ああ、すみません」

 

 飛鳥が謝ったので皆が驚いていた。

 

「ぴっ!!?////////」

「ええっ!!? あ、飛鳥くんってことりちゃんに気があったの!?」

「え、えっと…えっと…///////」

 

 ことりは顔を真っ赤にしてプルプル震えている。

 

「は、破廉恥です!///////」

「あ、そうじゃなくて、今朝理事長から色々お話を伺ったんですよ」

「お母さんに!?」

 

 ことりが驚いたような顔で飛鳥を見た。

 

「話してた通りの子だなーって思っただけだよ」

「な、何て話をしてたの…?」

「えーっと…」

 

 飛鳥が理事長と会話した内容を思い出す。

 

 ― 回想 ―

 

「うちの娘を、お嫁さんにする気ない? 内気だけど家事は得意だから…」

「……」

 

 

 回想が終わり、飛鳥が口角を上げた。

 

「やっぱりやめよう。忘れて」

「ホントに何話したの!!!?(大汗)」

「ほら、山田先生もあそこにいるから…ね?」

「ね? じゃないよ! 教えてってばあー!!/////////」

 

 ことりが飛鳥に詰め寄って、まさにイチャイチャしていた。

 

 

(そうやってイチャイチャしてろ一丈字…!! あと数時間後にそうなっているのはオレだ…!!!(激怒))

 

 と、転生者Aは醜い顔で飛鳥達を睨みつけていた。周りの生徒はげんなりしていた。

 

「むー…///////」

「……」

 

 ことりが頬を染めてジト目で睨むのに対し、飛鳥は視線をそらして自習をしていた。

 

 

 

つづく

 


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