飛鳥がA-RISEを助け出してから一晩が過ぎた。飛鳥は知られていない事を願いながら、音ノ木坂学院に向かう。
(こういう時に限って神様はいないし…。今日は長い一日になりそうだ…)
と、どんよりしていた。あれだけ大騒ぎになっていて、顔も知られたわけだ。何も起こらない筈がない。と、飛鳥はそう思っていたら、転生者トリオが目の前に立ちはだかった。
(いるよー。早速いるよー。そして、何かあったか全部わかってるって顔してるなこれ)
A、B、Cがニヤニヤした様子で飛鳥を見ていた。下手をすればこれをいいことに、自分を変態のレッテルを押し付けて、μ’sを横取りしようって寸法だろう。作戦としてはありなのかもしれないが、神様の介入がある今、果たして本当に上手く行くのかどうか、飛鳥はそっちが気になっていた。
「やあ、一丈字くん」
「あ、おはようございます…」
Aが機嫌よく挨拶すると、3人が同時に囲もうとしたが、飛鳥は瞬時に逃げた。
「あ、逃げるなコラァ!!!!」
「待ちなさい!!!」
と、3人が追いかけてくる。女にモテる事以外はチート能力を持ったままだったなので、簡単に追いつかれる。
(成程。これも修業って奴か…)
飛鳥はそう解釈した。
「おい、逃げんじゃねぇよ」
「聞いたぞ? A-RISEを助けたんだってな」
「ですが、それと同時に裸体も見たと」
すると
「え!? そんなに知りたいんですか!!?」
と、飛鳥がわざとらしく叫んだ。
「ちょ、バカ! 声がでけぇよ!!」
「何考えてるんですか!! あの人たちは今傷ついてるんですよ!!? 気持ちは分からなくはなりませんが、もう少しその辺考えなさい!!!」
わざと怒鳴ると、周りにいた女子生徒達が何事かとB達を見ていた。
「く、くそぉ!! 行くぞ!!」
「ただでは済ませませんからね!!」
と、B達は去っていった。ちなみに記憶を消す能力はあるのかだが、無い。とにかく敵を無双する力しかもっていない為、補助系の技はあまり持ち合わせていなかった…。
「ふぅ…」
飛鳥が一息ついた。人気の多い場所であり、時間帯も時間帯で女子生徒達の一人はいるだろうと踏み、ハッタリで叫んでみたが、案の定女子生徒達がいたので助かった。最も、女子生徒達がどう思ったのかは、今の段階では分からないが…。
「……」
飛鳥は凛とした表情で女子生徒達を見つめた。
「お騒がせしました。失礼します」
そう言って飛鳥は女子生徒達に頭を下げて、その場を去っていった。
音ノ木坂学院
「飛鳥くん聞いたよ!! A-RISEを助けたんだって!?!」
「……」
穂乃果が1組にやってきて、飛鳥に詰め寄った。ことりと海未も同席している。
「うん。事実だよ」
「どうして一人で向かったの!?」
「いや、警察にはちゃんと通報した…」
「そうじゃないよ!! もし飛鳥くんの身に何かあったら…」
と、ことりが胸を締め付けられる表情をすると、飛鳥は「ゴメン」一言だけ謝った。
「…ですが」
「!」
海未が口を開いた。
「もし飛鳥さんが来なければ、綺羅さん達は性的被害を受けていたと伺っています。ですが!! このような無茶は…」
「それじゃ聞くけど園田さん」
「!」
「もし、今度あのような状況にあったら、どうすれば宜しいですか?」
飛鳥が海未を見つめた。
「このような事態を起こしておいて言うのもアレだけど、対策が見つからないんだ。他の人の意見も聞きたくてね。園田さんはどうすればいいと思う?」
「そ、それは…」
海未が視線を逸らすと、穂乃果が机をたたいた。
「今度からは穂乃果にも話して!!」
「話してどうなるの?」
「その…。な、何か出来る事があるかもしれないよ!!」
「……」
飛鳥が目を閉じた。
「…分かった。それじゃ一先ずそれで考えるよ。それと…」
「!」
飛鳥が穂乃果達を見つめた。
「高坂さん達も気を付けて。決して他人事じゃない。深山先生か理事長からも話があると思うから、その指示に従って」
「……」
「本当にいつも迷惑をかけてすまない。けど…この通りだ」
飛鳥が頭を下げた。
「……」
穂乃果達が困ったが、
「ホンマにしょうがないなぁ。飛鳥くんは」
「!!」
「東條先輩!! それに、生徒会長も!!」
「ちょっと!! にこもいるんだけど!!」
と、廊下から希、絵里、にこが現れた。
「まあ、なんやかんや言うても、肝心な時に女の子を守れんようじゃアカンしな」
「飛鳥くん。出来ることがあったら何でも言って頂戴。いつもあなたに助けられてるから…」
「にこも。アンタのその態度はちょっと納得いかないけど…妹たちも助けてもらったから」
飛鳥が驚いた。
「私達もいるわ」
「そうにゃ!」
と、真姫、凛、花陽も現れた。
「そういう事だから飛鳥くん!」
「……!」
穂乃果が口角を上げた。
「穂乃果達は、飛鳥くんの味方だから! 大丈夫!」
「!」
飛鳥は穂乃果の顔を見て、中学時代の同級生を思い出した。超能力者であるが故に、悩みやトラブルも多く、同級生たちとも何度か対立しては、拒絶したこともあった。しかし、ぶつかりあいながらもいつも助けてくれ、今では親友になった。
そして確信した。自分は大丈夫だと。
「高坂さん…皆さん…」
飛鳥が口角を上げた。
「ありがとう」
ところがどっこい、昼休憩
「大丈夫なわけねーだろうがぁ!!」
と、空気をぶち壊すようにA、B、Cが飛鳥の前に立ちはだかった。
(ですよねー…)
飛鳥は渋い顔をした。そりゃそうだ。今日は自分で「長い一日になりそう」と言ったのだ。ここで災難が終わるはずなどない。
「おい! A-RISEの裸を見といて、何μ’sと一緒にいるんだよ!」
と、Aがいちゃもんをつけてきた。
「そうだそうだ!! 離れろこの変態野郎!!」
「皆さん。そのような痴漢と一緒にいてはなりません。こっちに来るのです」
その時だった。
「あのさ」
「!」
穂乃果が睨みつけた。
「いい加減にしてよ。どうして綺羅さん達を助けたのに、そんな事しか言えないの?」
「!!」
「バカね」
にこが前に出た。
「本当は自分達がヒーローになりたかったのよ。もし自分がこいつと同じ立場だったら、自分はツバサちゃん達を助けたんだ!! 何でそんな事言われなきゃいけないんだよ!! って、鼻息荒くして怒るわよ」
「何それ。意味わかんない」
と、他のメンバーもA達を軽蔑する。
さて次回はお待ちかねのμ’s VS フォートリオの全面戦争だ!!!
(お待ちかねはしてないと思います!!!(大汗))
飛鳥は心の中で突っ込んだ。
つづく