こんにちは。一丈字飛鳥です。以前にもこちらのハーメルンでお世話になりました。またよろしくお願いいたします。
さて、私は今転生の神様・羅城丸様に連れられて…あの世にいます。
「お主がこれるのはワシの部屋と、このゲームセンターだけじゃ」
「ここが…」
神様と飛鳥は転生できるゲームセンターの前に立っていた。見た目はただのゲームセンターとなんら変わりはなかったが、とても大きかった。
「とても大きいですね…」
「ああ…。ここが例の転生できる装置がたくさんあるからのう…。見てみろ。沢山並んでいるだろう」
神様が横を見ると、飛鳥も横を見た。そこには長蛇の列が出来ていた。
「中にはちゃんとしたユーザーもおるんじゃがのう…。そんなに楽してモテたいか」
「ほっとけ!!(激怒)」
参列者が怒涛の突っ込みをしてきた。それを見て飛鳥が困惑した。本当に大丈夫なのだろうかと…。
「まあ良い。中についてきなさい」
「は、はい…」
転生ルーム・ポット
「このポットの中から転生が出来る」
「あの、神様」
「分かっておる。そんなにマナーを守らないなら、強制退去すればいいんじゃないか。じゃろ?」
「あ、はい…」
言おうとしていたことを神様に読み取られて困惑する飛鳥。
「言ったじゃろう。今からお主の力で現実を見せて…」
「いや、そうではなくて、私が来る前にそういうお考えは…」
「それも考えたんじゃが、上から猛反対されてな…。マナーのいい転生者もいるし、市民の反感を買うからじゃと…」
「あ、そうなんですか…」
「まあ、本当は自分達も使いたいからじゃし、お偉いさんの息子たちも使っているからじゃと。全くどういう教育をしてるんじゃか…」
「えぇぇぇ…」
私情が混ざっていたことに、飛鳥は驚きを隠せなかった。
「しかもその息子たち、不細工じゃぞ。女と手を繋いだことがなさそうな程の」
「そんな事言っていいんですか!?(大汗)」
そして神様がぶっちゃけたので、飛鳥は更に突っ込んだ。そして思った。本当に大丈夫なのかと。絶対大丈夫じゃないよねコレ、と。
「さて、お主はこのポットではなく、直接その世界に送る!」
「え、そんな事出来るんですか?」
「ワシは転送の神じゃからの」
「…え?」
飛鳥が困惑した。
「異世界に送ることが出来るのじゃ! それでは…えーい!!!」
「え、ちょ…うわぁああああああああああああああああああああ!!!!」
飛鳥は唐突にラブライブの世界に飛ばされた。
「ここは…」
ふと気づくと、飛鳥は部屋の中にいた。畳が敷いてある和室であり、障子もある。
「あれ? オレの部屋?」
『聞こえるか。飛鳥よ』
「!?」
どこからか神様の声がしたので、飛鳥が驚いた。
『聞こえていたら返事してくれ』
「あ、はい。聞こえますが…」
『無事にそちらの世界に行けたようじゃな』
「あ、はい…。えっと…」
『ああ。部屋はお主が今使っておる部屋をそっくりそのまま再現しておいた。その方がいいじゃろう』
「あ、ありがとうございます…」
『この世界に必要なものをテーブルの上に置いてある。見てみなさい』
と、神様に言われた通り、テーブルの上に置いてあるリュックサックを見て、中身を見た。
『まず、ワシと連絡が取れる連絡機』
「はい。スマホですね」
『お小遣いとか色々入ってる財布』
「100万!!?」
財布の中には1万円札が100枚入っていた。金額もそうだが、よく100枚も財布の中に入ったな…。と飛鳥は思っていた。
『生活費や交際費とかも込みじゃ。足りなくなったら渡すが…お主なら、分かるよな?』
「はい、節約します」
『フォーと対決するときは、遠慮なく貸すからの! 寧ろそれが肝じゃ!』
「は、はい」
『それから、音ノ木坂までの地図じゃ! まあ、すぐ近くにあるんじゃが、東京の地理は分からんじゃろうから、覚えといて損はないじゃろう』
「あ、ありがとうございます…」
飛鳥が地図を見る。地理は音ノ木坂学院など、ラブライブの世界にしかない土地があること以外は、現実の世界と変わらなかった。東京スカイツリーもあるし、雷門もある。もっと大げさに言うと、大阪も現実のままである。
「で、いつから行けば宜しいでしょうか」
『明日からじゃ!』
「早っ!! 私そんなに詳しくないんですよ!?」
『大丈夫! スマホを見てみなさい。ナビをしてくれるアプリをつけておいた!』
飛鳥がスマホを見ると、確かにそれっぽいアプリがあり、それを押した。確かに何をすればよいかしっかり記載されている。
「『明日、学校に行きなさい』…。至ってシンプルだな」
『分かりやすいじゃろ?』
「ええ、とても。ありがとうございます」
『うむ! それでは素敵なスクールライフを過ごすのじゃ…あ、そうじゃ。言い忘れておった』
「何ですか?」
すると、神様が急に現れた。
「うおっ!!!」
飛鳥は思わず驚いた。
「何じゃ、これくらいで驚くんじゃない」
「いや、急にびっくりしますよ。今までテレパシーで話をしてたのに…」
「ふーむ…。うちの若手もそういう事を言うのじゃ…」
「いや、絶対若手だけではないと思います…」
飛鳥が困惑した。自分がされたらどんな気持ちになるのか考えた事があるのかこの人は…。とも思っている。
「まあ良い。で、肝心のフォーなのじゃが…」
「!」
「基本的に転生の世界は1人までじゃ。稀に友達と楽しむために数人で来ることもある」
「確かに冒険の世界ではありそうですね…」
「じゃが、フォーは他人が転生している世界でも容赦なく割り込んで、ヒロインを横取りするのじゃ!」
「え、何でそんな事を…」
「そりゃあ、ヒロインを自分一人のものにしたいからじゃろう。そして、何よりも自分より弱い奴を許さんのじゃ。まあ、早い話が自己顕示欲が強すぎるのじゃ。それゆえに、他人への思いやりを忘れ、地獄にいる連中と何ら変わらんことをする。ゲームの世界だというのをいい事に、他の転生者や主人公を殺したりな」
「他の転生者を殺す?」
飛鳥が怪訝そうにする。
「どういう事ですか?」
「転生の世界にも一応生死は存在してな。転生の世界で死んだ場合は、強制終了となり、転生ポットから出される。で、転生者の記録が更新されてしまうという訳じゃ」
「そ、そうですか…。で、私がフォーを追い出すことで…」
「その通りじゃ。転生チートでもどうにもならないという、現実を見せつけてやめさせるという大作戦でもあるのじゃ!」
そんなプレッシャーのかかる作戦に何故、自分が選ばれたのかよく分からないまま、飛鳥は明日からの生活に備えて、眠りについた…。
「寝れん」
つづく