圧倒的な殺意で、フォー達を退けた飛鳥。この後、教師たちがやってきて事情聴取を受ける。
「申し訳ございませんでした」
飛鳥が担任である深山と他の先生達に頭を下げて謝った。
「一丈字くん…」
深山が飛鳥を見て口角を上げた。
「顔を上げて頂戴」
「深山先生…」
飛鳥が苦笑いをした。
「ありがとう!! あそこまでギタギタにしてくれて!」
「え」
教師としてまさかの発言に飛鳥が驚いた。
「教師としてこんな事を言うのはあれだが…スカッとしたよ。ありがとう」
「ええ。いい気味です」
(ゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑゑ!!!?(大汗))
山田と笹原がにこやかに言ったのに対し、飛鳥は辟易した。確かに彼らに対してストレスが溜まっている事は分かっていたし、もし自分が同じ立場だったら、そう思っていたかもしれないかもしれないけど、教師としてその発言はどうなんだと思っていた。ましてや生徒に堂々と言うなんて…飛鳥は神様の仕業であってほしいと思っていた。
そうでなければ、これこそ転生世界であまり好まれない「改悪」である。自分、転生者が活躍するために、元のキャラの能力や人間性を下げる事を「改悪」と呼ぶのだが、今の状態がまさにそうだ。これでは説得力が無くなるじゃないかと飛鳥は考えていたが、余計な事は言わない事にした。
そんな中…
「……」
山内だけ元気がなかった。飛鳥もそれに気づいていて、心配そうにしながら話しかけた。
「あの、山内先生…」
「あ、だ、大丈夫ですよ一丈字くん! よく言ってくれましたね!」
と、笑って誤魔化す山内だったが、これ以上ここで何も言うまいと飛鳥は何も言わなかった。これがラノベの主人公であれば、何でもないって言った時に半ば強引に聞き出して、ときめかせるのだが、この世界はラノベとはちょっと違うし、飛鳥自身も空気の読めない男ではない。ここはそっとしておくのが一番だろうと考えていた。
「…分かりました」
しかし、飛鳥の嫌な予感はすぐに的中した。それは、飛鳥が放課後に校舎裏に向かった時の事だった。
「ぐすっ…ぐすっ…」
山内が一人で体育座りして泣いていたのだった。時折かけている眼鏡を取って、手の甲で涙をぬぐい、またふさぎ込んでいた。
「……(大汗)」
この様子を見て、飛鳥は居たたまれない気持ちになった。そりゃそうだ。自分達が早く解決させれば、山内にあんな思いをさせずに済んだのだ。
放課後、飛鳥は河川敷で黄昏てた。芝生の上で体育座りをして、夕日を見つめていた。泣いている山内の姿を思い出していた。
(何だこの気持ちは。どうすればいいの。本当にどうすればいいの)
本当に罪悪感しか生まれなくなってしまった飛鳥。もう今すぐにでもあのフォー3人を倒して、元に戻してやりたいと考えていた。WONDER BOYの仕事として引き受けたが、こんなにも辛いと思わなかった飛鳥であった。
(ていうか、オレ達にも原因あるやん…)
飛鳥は肩を落とした。
その夜だった。
「あーあ…。顔合わせづらいなぁ」
飛鳥は一人ベランダで黄昏ていた。結果的に穂乃果達と顔を合わせず、そのまま帰ってきてしまったのだ。
「明日なんて説明しよう…」
その時、数㎞先で巨大な光の柱が発生した。それはとても見た事のないような神々しい光だった。
「!!?」
飛鳥はそれに気づいてはっとした。もしかしたら最悪の事態が考えられると。
「な、なんだあの光は!!」
飛鳥はすぐさま光の方に向かった。
「……!!」
光の柱に近づいたが、周りの人間は誰もおらず、飛鳥一人だった。
「おかしいな…。もしかして、フォーの罠か?」
飛鳥がきょろきょろ見渡したその時、
「!!」
光の矢が数本飛鳥に向かって飛んできて、飛鳥はバク転した。
「ほう、私の矢を避けるとは、羅城丸様が推薦するだけの事はあるな」
「……!!?」
「よくここまで来たな。この光は私が放ったのだ。貴様をおびき寄せる為にな」
飛鳥の目の前に、ザキラが現れたのだ。ザキラは宙を舞っている。
「誰だ!!?」
「私はザキラ。天界の戦士だ」
「!!?」
「一丈字飛鳥。貴様の事は聞いている。羅城丸様の命令で、この世界でフォー退治をしているそうだな」
「え、ええ…」
「だが、私としては納得していない」
「……!?」
ザキラが飛鳥に襲い掛かり、剣で飛鳥を切ろうとしたが、飛鳥も超能力で剣を作り出し、応戦した。
(なんて力だ…!!)
「貴様が本当にフォー退治をするにふさわしいか…今ここで私が見極める!!!」
その頃…
「…飛鳥くん」
穂乃果は自分の部屋で考えていた。A達に激怒してそのまま背を向けて去ってしまった飛鳥の事を…。
「……」
穂乃果は持っていた抱き枕を抱きしめていた。
そしてまた飛鳥とザキラに戻る。二人は河川敷で戦っていた。所々砂煙が起きている。
「少しはやるようだな…!!」
飛鳥は剣を消して、格闘技でザキラに応戦する事にした。
「甘い!!」
ザキラも剣だけではなく、剣を持っていない左手を突き出して掌から、光の矢を放った。飛鳥は走って避け、飛鳥は手裏剣を投げた。
「そんなもので…!!」
そして瞬時に飛鳥はザキラに近づいて蹴りを入れたが、ザキラがガードした。
「!!」
「それで勝ったつもりか!! ホーリーフィールド!!!」
と、ザキラの周りに白いバリアが張り出され、飛鳥はぶっ飛ばされた。
「ホーリーアロー!!」
ザキラがまた左手から光の矢を飛鳥に向けてはなった。
「くっ…!! 闇穴(ダークホール)…」
飛鳥が右手を出そうとしたその時、対応が間に合わず、矢が飛鳥の体を貫いた。そして飛鳥はそのまま体制を崩した。
「……」
ザキラは口角を下げていた。
「閃光四方手裏剣!!!」
と、金色に輝く四つの巨大な手裏剣がザキラに襲い掛かった。
「やはり砂煙の間に分身を作っていたか!!」
ザキラが手裏剣をかわして、本体の飛鳥に襲い掛かろうとしたが、動けなかった。
「!!?」
ザキラが後ろを振り返ると、飛鳥が口角を上げていた。そして手裏剣の一つが上空でずっと回っていて、飛鳥とザキラの周りを照らしていた。
「影縛りの術…成功!!!」
飛鳥のザキラの影がくっつき、そのままザキラの動きを止めた。
つづく