夕方
「それでは、私は東京に戻ります」
「はい。本当に今日一日付き合って頂いて、有難うございました」
高海三姉妹に見送られて、飛鳥は東京に帰ろうとしていた。
「それでは千歌さん。来週楽しみにしてるから」
「あ、はい…」
千歌が寂しそうにする。
「ほら、ちゃんと挨拶しろ!」
「わ、分かってるよぉ!」
「飛鳥くん。こんな妹だけど、宜しく頼むねー。奥手だから」
「はぁ…」
「み、美渡姉!!!!//////」
美渡の冷やかしに千歌が顔を真っ赤にした。それを見て飛鳥は苦笑いした。
「それでは、私は行きますね」
「あ、帰り…分かりますか?」
「ええ」
飛鳥が口角を上げた。
「千歌。折角だから駅まで送ってあげなさい」
「いえ、それは結構です」
「何よ。不満?」
千歌も少しショックを受けていた。
「ど、どうしてですか?」
「帰る時に一人になりますし、この距離だと暗くなると思うんです。その、今回の事があるので危険です。あ、千歌さん。何かあるか分からないので、極力一人で帰らないようにしてください」
「わ、分かりました…」
「ま、そういうんじゃ仕方ないわね。諦めなさい」
美渡の言葉に千歌が残念そうに俯く。
「それでは、失礼します」
「お気をつけてー」
そう言って飛鳥は去っていった。
「…ホントに不思議な子ね。一丈字くんって」
「う、うん…」
「……」
美渡の言葉に千歌が返事するが、志満が心配そうに見つめた。
「志満姉?」
「…本当に良かったのかしら。あんな無茶なお願いして」
「大丈夫だよ志満姉」
「!」
「私だっているから!」
千歌が口角を上げた。
「だから心配なのよ。無茶なお願いした上に、アンタがいるから」
「な、何でよ!!」
「それなら来週頑張りなさいね。美渡に認めてほしかったら」
千歌と美渡が志満を見た。
「何かしら?」ニコリ…
「いえ! 滅相もありません!!(大汗)」
志満の謎の圧力に美渡と千歌は慌てふためいた。
「だったら宿の掃除とかお願いね!?」
「は、はいっ!!!」
(ずいぶん遅くなったな…)
飛鳥が急いで帰ろうとすると、二人の女子生徒が立ちはだかった。
「!!」
「……」
二人の女子生徒に飛鳥は警戒をしていた。
「…何ですかアナタ達は。ハニートラップを仕掛けに来たんですか?」
「違います!!!(汗)」
二人が突っ込んだ。
飛鳥「それでは何か御用ですか?」
「…その」
灰色の髪の少女が言いにくそうにする。
「…渡辺曜さんですね」
「えっ?」
飛鳥が灰色の少女の名前を言い当てた。
「お間違いないですか?」
「は、はい…」
「で、そちらの方は桜内梨子さん。お間違いないですか?」
「は、はい…」
梨子も俯いた。
「千歌さんからお話は伺っていますよ。それから…ずっと私と千歌さんを付け回していたことも存じ上げています」
「ごめんなさい!!」
二人が頭を下げた。
「…時間がありませんが、何故そういう事をしたか、ご説明頂けますか?」
「そ、それは…」
曜が事情を説明した。
「そうですか。スクールアイドルを始めた事に対して「出来る訳がない」って言って、そのまま大喧嘩に発展したと」
「そうなんです…」
「それで、梨子さんは千歌さんから作曲を依頼されたけど、断った上にひどい言葉を」
「……」
梨子が俯いた。
「それで、千歌さんと話をしていた私が来るのをここで待っていたと」
「はい…」
飛鳥が一息ついた。
「渡辺さんと桜内さんは…高海さんに謝りたいんですよね?」
「はい…。流石にちょっと言い過ぎたと思ったので…」
曜が俯いた。
「それで、千歌ちゃんが私達の事について何か言ってなかったか聞きたくて…」
「喫茶店で少しだけお話ししたので気になったと」
曜と梨子が俯いた。
「謝るのは今からでも良いと思いますけど、来週の日曜日に高海さん、遠泳の大会に出る事になってるんですよ」
「え?」
飛鳥が曜を見た。
「もし時間があれば、高海さんの姿を見ていてくれませんか? 絶対に完泳させてみせますから」
飛鳥が真剣な顔で曜と梨子を見た。
「それは勿論!!」
「うん」
「そうですか…」
飛鳥が口角を上げたその時、何かを感知して目を大きく開いた。
「…どうしたんですか?」
「そういや、お二人さんの家ってどちらですか?」
「えっと…私の家、千歌ちゃんの隣…」
「私はあっち…」
「そうですか…」
飛鳥が真剣な顔をした。
「どうしたんですか?」
「一旦高海さんの家に行きましょう。付けられてます」
「えっ!?」
その時だった。
「おい! お前!!!」
「!?」
怪しい太った男が現れた。
「!!!」
「い、Eくん!!」
曜と梨子が青ざめた。
「……」
飛鳥が感知した。
『神様…』
『間違いない。フォーじゃ!!』
飛鳥がEを睨みつけた。
「お前ぇ…何僕の梨子たんと曜ちゃんに手を出してるんだよぉ」
Eが鼻息を荒立てて近づく。
「渡辺さん、桜内さん。私の傍から離れないでください」
「う、うん!」
「わ、分かった!」
「今のうちに警察を」
「分かりました」
飛鳥と梨子がぼそぼそと話をしていた。
「アナタですか。浦の星女学院で、女子生徒を付け回している方は」
「そ、それがどうしたぁ!! お前には関係ないだろぉ!! それより、誰に断って好き勝手やってるんだぁ!! ここは僕の縄張りだぞぉ!!?」
素っ頓狂な声を上げるE。顔はそれなりに良いが、中身はとても不細工である。
(こんな所で遭うなんて…コナン君になった気分だよ。全く…)
飛鳥が辟易する。
「梨子たんと曜ちゃんを離せぇ!! このストーカー!!」
「それはアナタでしょ!!」
「一丈字さん!! あいつがストーカーです!!」
「うん、見たら分かる。相当ヤバいね。離さなかったらどうなるんだ!」
「この僕の正義の拳で…お前をケチョンケチョンにしてやるぅぅぅぅぅぅ!!!」
飛鳥がさっと構えた。
「な、何だ」
「ケチョンケチョンにすんだろ? だったらさっさとかかってこいよ!!」
「な、生意気なぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
Eが両手にスタンガンを持って、襲い掛かって来た。
「きゃあああああああああああああああ!!!!
飛鳥が瞬時に隙を見抜いて、Eの顔に蹴りを入れた。
「ぶひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」
Eは岩壁に叩きつけられた。
「桜内さん! 渡辺さん!! 今のうちに逃げますよ!!」
「は、はい!!」
「……!!」
曜と梨子を連れて、飛鳥は千歌の家の元に向かった。
千歌の宿
「そ、そんな事が…!!!」
「……!!」
飛鳥から事情を聴いた志満と美渡が衝撃を受けた。志満はショックを受けているのに対し、美渡は怒り狂っていた。
「怖かった…」
「ひっく…ひっく…」
梨子と曜は怖がって泣いていた。
「どうしたのー…って飛鳥さん!! それに曜ちゃんに梨子ちゃん!!?」
千歌が驚いた。
「高海さん…」
「な、何があったんですか…!?」
飛鳥が事情を説明した。
「…うそ」
千歌がショックを受けた。
「という訳で、桜内さんと渡辺さんをこちらに避難させたんです」
「…許せない」
「……」
千歌が握り拳を握った。
「梨子ちゃんや曜ちゃんにもそんなひどい事をするなんて…!!!」
千歌の表情は怒りに満ちていた。
「くっ!!!」
美渡が壁を殴った。
「どいつよ…」
「?」
「どいつよ!!! そんな馬鹿な事をするクズは!!! 今度こそ殺してやる!!!」
「落ち着きなさい。美渡、千歌」
「…あの、どういう事ですか? 今度こそって…?」
志満が飛鳥を見た。
「…ゴメンなさい飛鳥さん。あなたにお話ししてない事があったんです」
「え?」
千歌が俯く。
「千歌も…前に男子生徒に性的な嫌がらせをされかけた事があるんです」
「!!?」
飛鳥が驚いた。
「恐らく、千歌が相手にしなかった事で、梨子ちゃんや曜ちゃんに標的を変えたのかも…」
飛鳥が困った顔をする。
「そうなんだ…」
「!」
「私のせいで曜ちゃんや梨子ちゃんが…!!」
千歌が涙を流した。
「そんな事ないよ高海さん。君のせいじゃない。悪いのはあいつらだ」
飛鳥が千歌をなだめると、志満を見た。
「志満さん」
「な、何ですか?」
「渡辺さんのお家に電話をかけてください。出なければ渡辺さんをここに泊めてください。非常事態です」
「わ、分かったわ!」
飛鳥が千歌を見た。
「千歌さん。もう泣かないで。大丈夫だから」
「…はい」
「千歌ちゃん…」
「?」
曜と梨子が話しかけた。
「曜ちゃん…梨子ちゃん…」
「その…本当にゴメン!!」
「ゴメンなさい!!!」
曜と梨子が頭を下げた。
「え? ど、どうして…」
「言い過ぎたと思ったの!! 本当に酷い事を言ってゴメン!!」
「私も!! 千歌ちゃんがそこまで真剣に取り組んでたなんて分かってなかった! 本当にゴメンなさい!!」
「ようちゃん…りこちゃん…」
千歌の目からまた涙が溢れる。
「ごめんなさい…」
「……」
「わたしも…ほんとうにごめんなさい…いっぱいめいわくかけたり…ひっく…ごういんなことしてほんとうにごめんなさい…」
「ちかちゃん…ちかちゃあああああああああああん!!!!!」
「うえ~ん!!!」
曜が千歌に抱き着いた。そして梨子も2人に抱き着いて、そのまま泣いた。
(…まあ、これでひと段落だな。それにしても)
(……)
(神様…?)
(久しぶりだな)
(え?)
神様は怒りに満ちていた。
(次元の壁を破るだけではなく、色々好き勝手やりおって…ここまで私を怒らせたのは久しぶりだぞ…!!!)
(…それだったら早く何とかしてくださいよ)
(出来るならそうしたいが、事を収めるには、次元の壁を元に戻す必要があり、フォーを消滅させる必要がある。ただ、次元の壁を元に戻すにはかなり時間がかかる。神の力を持ってしてもな)
(そ、それじゃ…)
(ああ…それまでは君に頑張ってもらう必要がある。こうなると私だけの力じゃどうにもならん)
飛鳥が歯軋りをした。
「曜ちゃん」
「?」
「は、はい?」
志満が困った顔をしながら、曜に話しかけた。
「おうちの方…今誰もいないわ。今日は泊まっていきなさい。代金はいらないから」
「えっ、で、でも…」
「しょうがないよ。そうだ、そのバカに請求してやろうかしら…」
曜が申し訳なさそうにした。
「梨子ちゃんはどうする? 家が隣だけど…」
「あ、私は…」
すると電話が鳴った。
「はい、こちら…あ、桜内さん?」
梨子が反応した。
「はい…はい…分かりました」
志満が電話を切った。
「梨子ちゃん。あなたも今日泊まっていきなさい。ちょっと色々あって家を空けるから、一緒にいなさいって」
「わ、分かりました…」
「これなら一先ずは安心ですね」
飛鳥が口角を上げた。
「あ、そういや飛鳥くんは…」
「私はこのまま帰ります。電車あるかな…」
「タクシー拾ってあげるから、それで帰りなさい」
「……」
飛鳥が困惑した。
「何? その顔」
「いや、タクシーって結構金かかるんで…」
「しょうがない。それじゃお姉さんがバイクで送ってあげようか?」
「タクシーで帰ります」
「アタシじゃ嫌?」
「いえ、美渡さんが帰り道危ないので、ここにいてください」
「ありがと。流石紳士ね」
そして飛鳥は今度こそ東京に帰る事になった。
「お世話になりました」
「今度こっちに戻ってきたら、泊まっていきなさいね」
「金取るけどね…ぐえっ!!!」
志満が美渡の脇腹に裏拳をお見舞いした。
「…そうならない事を願ってます」
飛鳥も辟易した。
「……」
千歌、曜、梨子が心配そうに飛鳥を見つめた。
「それじゃ3人共、またね」
「は、はい…」
「本当にありがとうございました!」
曜と梨子が頭を下げた。
「仲良くね。あ、もしよかったら千歌さんのスクールアイドル活動、協力してあげてね」
「は、はい!」
そしてタクシーがやって来た。
「あ、飛鳥さん」
「?」
千歌が話しかけた。
「あの、本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫」
飛鳥はすぐに言い放った。
「今までもこういう事しょっちゅうあったけど、乗り越えてきたから」
「……!!」
「それじゃ!」
こうして飛鳥はタクシー乗り込んで、東京に帰っていった。
同じ頃
「…くそ!!」
Eが面白くなさそうにしていた。
「どうしたんだよ」
「あんな所で寝ちゃってさ。誰かにやられた?」
ワイルドな風貌な男Fと、小柄で可愛らしい少年Gがいた。
「転生者だ…」
「?」
「転生者を見つけたぞ! あいつを殺せば…μ’sもAqoursも僕達のものだ!!」
つづく