一丈字です。ありのままに起こったことをお話ししましょう。高坂さん達が私のクラスに来て、高坂さんが何故私が別のクラスなのかと残念がっていました。
あの、すいません。初対面ですよね?
「あの、すいません…」
「なに?」
飛鳥が困った様子で穂乃果に話しかけた。
「どなたですか?」
飛鳥がわざと穂乃果に名前を聞いていた。穂乃果は少し瞬きをすると、あははははははと笑い出した。
「あーそうだった! 自己紹介まだだった! 私、高坂穂乃果! で、こっちは友達の南ことりちゃんと、園田海未ちゃん!」
「み、南ことりです」
「園田海未です」
「あ、宜しくお願いします…」
飛鳥が苦笑いしながら、自己紹介をした。
「…で、何故私の事を?」
「あ、えっと…。ことりちゃんのお母さんから聞いたんだ! あ、ことりちゃんのお母さん理事長なんだよ! 知ってた?」
「あ、いや。知りませんでした…」
事前は神様からラブライブに関する情報が書かれている資料を見せてもらい、そこで親子だという事を知った為、本当は知っているが、事が事なので言えなかった。まあ、仮に神様から教えてもらいましたなんて言っても、信じて貰えるわけがない。というか飛鳥自身も言えるはずがなかった。
「ふーん…。まあいっか!」
穂乃果はアニメと同じキャラに戻った。
「これから仲良くしよーね!」
「え、あ、はい…。その前に高坂さん。質問があるんですけど」
「何かな?」
穂乃果は飛鳥の顔をじっと見つめる。
「どうして私じゃなくて残念だって言ったんですか? 初対面なのに…」
「あー…」
穂乃果が困惑した。飛鳥としてははぐらかしても、超能力で考えている事を読み取れればいいのだが、ここは穂乃果の善意を信じてあえてしない事にした。
「あのね、転校してくる人たちの情報は事前に知ってるんだ。理事長に見せて貰ったの」
「!?」
飛鳥が片眉を上げた。友達が理事長の娘とはいえ、普通そんな事をするのだろうか。神様が前話で穂乃果だけ自分に興味があるようにしておいたと話していたが、念のため本人からも聞くことにしたのだった。
「それでねー…。同じクラスのAくんはちょっと話しかけづらいかなーって。で、飛鳥くんなんだけど、真面目そうだし何かいいなーって」
「は、はあ…」
理由が抽象的過ぎて、少し理解に苦しんだが、目的は穂乃果達と仲良くなって、フォーから守る事であるので、飛鳥としてはもうこれ以上聞くことはしなかった。
「そうですか…。分かりました」
「あ、そうだ! お昼ご飯一緒に食べない!?」
穂乃果が飛鳥にぐいっと顔を近づけた。普通の男子ならドギマギして、ろれつが回らなくなるところだが…。
「近いです」
飛鳥に至っては平然としていた。職業柄、色んな人と話をする為、同じくらいの女子高生と話しても何の問題もなかったのだ。
「ほ、穂乃果ちゃん!!///////」
「近いです!!/////// は、破廉恥です!!!////////」
と、ことりと海未が頬を染めて穂乃果をいさめた。
「お気持ちは有難いのですが」
「なに?」
「ちょっとばかし、用事があるんですよ。また次の機会にして頂けないでしょうか」
と、飛鳥が苦笑いした。
「そ、そうなんだ…。約束だからね!」
「はい」
すると、チャイムが鳴って穂乃果達が自分の教室に戻っていった。
「……」
そして穂乃果達は自分の教室に戻ろうとしたが、Aがずっとその様子を見ていたらしく、不機嫌そうにしていた。
(何故だ…!!? 何故オレじゃなくてあの眼鏡に穂乃果達が…!!!)
Aが表情を歪めたが、穂乃果は平然としていた。海未とことりはAを不審に思うだけだが…。
(まあいい。最後に勝つのはオレだ。ちょっとリードしたからっていい気になるなよ!!)
そして昼休憩。
「さて、行くか」
飛鳥が教室を出ていった。特に用事という訳ではないが、遠くから他の転生者の様子を見ようとしただけだった。
2年2組の教室では…。
「……」
穂乃果が口角を下げていた。
「ほ、穂乃果ちゃん。どうしたの?」
「あ、ごめんことりちゃん。海未ちゃん。ちょっと先にお昼ごはん食べてて」
「どうされたのですか?」
「やっぱり飛鳥くんが気になるから」
と、穂乃果が行こうとすると、Aが通せん坊した。
「一丈字なら理事長先生に呼び出されたみたいだよ」
「え?」
「そういう事だから、何も心配する事はない。オレと一緒に昼ご飯食べようぜ!」
Aが満面の笑みで穂乃果達に話しかけたが、穂乃果はもういなかった。
「あ、あれ!?」
「ま、待ってよ穂乃果ちゃ~ん!!!」
「待ちなさい穂乃果!!」
と、ことりと海未もAを無視して去って行ってしまった。そして取り残されるAとクラスメイト達。
(な、何でだ!!! 何でオレよりもアイツの事を…!!!)
と、またしても表情を歪めた。醜いったらありゃしない。そしてクラスメイト達もどんどんAに対する評価を下げていった。
(Aくんって、怒ると凄く不細工な顔するよね…)
(うん…)
(さっきの高坂さん達の態度もそうだけど…)
(もしかして顔だけなんじゃない…?)
食堂にやってきた飛鳥。
「でも小腹が空いてきたから、何か食べてからにするか…」
と、飛鳥が購買部でいつも飲んでるグ〇コのカフェオーレを買おうとしたその時、
そして…
「何なのよ! さっきからしつこいわね!」
「ホンマや。おイタが過ぎるんとちゃう?」
「ちょっと! 何でにこじゃないのよ! いや、今回はにこじゃなくても大丈夫か…」
「ちょっと待ってくれよ! 何かの間違いだ!!」
3人の女子生徒に縋りついている男は転生者B。Aと同じくフォーである。Aと同じく、他所の転生者がいる世界に割り込んで好き勝手やっていたが、それに加えBは他所の転生者の悪い噂を流して寝取るという卑劣極まりないものだった。
今までハーレム生活を送っていたので、今回も何もせずにヒロイン達は自分の事を好きになってくれて、自分を巡って取り合ってくれて、今までと同じようにいい思いが出来るだろうと思っていたが、Aと同様嫌われていた。今も絵里達にまとわりついてこの様である。
「……」
「奴はB。3年の教室に送り込んだが案の定だな。奴は他の転生者の悪い噂をでっち上げて、ヒロインを寝取った女の敵だ」
「そ、そうですか…」
もう寝取るのが当たり前というフォーを目の前で見て、飛鳥は引いた。そんなに人の女を取るのが好きなのかと、まるで獣を見るような目でBを見ていた。