『今はどうされますか? あのままほっといても靡くことはないんですよね…?』
『無い。そればかりか周りの女子を見てみろ。あまりにも無様すぎて引いてるぞ』
飛鳥と神様がテレパシーで作戦会議をしていた。周りの女子生徒はゴミを見る目で見ているか、まとわりつかれている少女達が可哀想と見ていた。ちなみに金髪の美女が絢瀬絵里、紫色の美女が東條希、黒髪のツインテールが矢澤にこである。
「ちょっと!! にこにも美女をつけなさいよ!!!」
「美女って言うより美少女の気が…」
「そ、そう…?」
(あ、機嫌直った)
矢澤にこがナレーションに突っ込み、更に飛鳥が話をするとにこが飛鳥を見た。そして絵里と希とも目が合った。Bとも目が合うのだが、飛鳥の顔を見るなり、表情を歪めた。
「何? お前」
お前が何なんだよ…とB以外の全員が思った。
「アナタが何なんですか」
(突っ込んだ!!)
飛鳥は負けじとBに噛みつく。自分の勝利が決まっているからではない。ごく自然に突っ込みを入れた。そう、彼は大阪府出身であり、関西人特有の突っ込み気質なのだ。
(いや、意味わかんないし、関西人全員がそうじゃないから)
飛鳥はまたしても突っ込みを入れた。
「言っておくがこの絵里はオレの女だ。手を出すなよ」
「あ、そうだったんですか」
「違うわよ!」
「違うって言ってるじゃないですか」
「違う違う。照れているだけだよ」
「え、えー…」
どうやったらそんな解釈が出来るんだ…と、飛鳥も引いた。Bは絵里の大ファンであり、それが変な方向まで行ってしまった。自己紹介して早々絵里にプロポーズまがいな発言をして、クラス全員の女子をドン引きさせた。確かに顔はイケメンだが、下心が丸出しだった為、仕方がないと言えば仕方がないのだが…。
「いい加減にしなさいよ! 転校初日だから黙ってあげようと思ってたけど、もう我慢できない! 何様のつもりよ!」
にこが激怒する。この時点では一緒にいることはないのだが…。まあ、細かい事は気にしないでおこう。
「…あの、何をされたんですか?」
「転校していきなり、馴れ馴れしく挨拶してきたのよ! 休憩時間もしつこく絡んでくるし、今だってこの2人が一緒にお昼を取るつもりなのに、一緒に食べようってしつこいのよ!! おまけに絵里に関しては自分の女だって言ってくるし! にこが止めに入っても聞かないのよ!!」
(あー…これもう手遅れってパターンか)
飛鳥はガチで引いていた。もう熱狂的になり過ぎて、妄想と現実の区別がつかなくなっているパターンだと確信したが、こうなってくると本人に何を言っても無駄である。警察にぶち込む他ない。もし自分が神様だったらそうしている。アニメのキャラクターとはいえ、女の子は女の子。やっぱり心配になってくる。
『さあ、助けに行くのだ。勇者よ』
『ほざきなさい』
飛鳥は思わず突っ込んだ。
「あの…嫌がってるのでしたら、やめてあげてください。彼女達にも選ぶ権利がありますよ」
「うるせぇ! 何でお前の指示に従わないといけねーんだ! オレよりも地味で貧弱そうな体しやがって!」
すると、ヒロインの一人である東條希が飛鳥に近づいた。彼女は何かしら掴みどころのない性格をしている。
「なっ!?」
「そうかー? うちはこの子の方が好みやで。可愛いし」
「アナタの方が可愛いですよ」
「やーん♥」
希がわざとらしく照れる。
「あ、美人さんって言ったほうが良いですかね」
「……///////////」
希はガチで照れた。
「なっ! 誑かすな!」
「誑かしてませんよ。この方が私の事を可愛いと仰ったので、可愛いって言い返しただけですよ。この方可愛…じゃなかった、美人ですか?」
「ああ! 美人だ…って、邪魔するな!」
「何? あれだけ絵里を自分の女って言ってた癖に、すぐに希に浮気? 最低」
B「!」
絵里が押しなのに、希を美人と言った事でにこが噛みついてきた。
「せやね。アンタに言われても嬉しゅうないし、絵里ちから浮気するなんて最低や」
(女子のネットワーク怖ぇー)
(いつの時代も、どこの世界でも女子は皆こうじゃ。刺されんようにの)
希の冷たい一言に飛鳥は冷や汗をかくと、神様も突っ込んできた。男性読者の皆さんも気をつけましょう。そして女性読者の皆さんは…お手柔らかにお願いします。勿論、A達のような屑にはどんどんやってしまってください。
「分かったらさっさと消えて頂戴! 貴方とお付き合いするなんて…認められないわぁ」
絵里が腰に手をあてて悪態をついた。そしてそれを皆で冷ややかな目で見ていた。
「絵里ち…。それ、ギャグでやっとるん?」
「すぐに忘れて貰ったら有り難いわ…はい、そこ!! 露骨に視線をそらさない!!」
絵里が飛鳥の方を指さして叫んだが、飛鳥は視線を逸らしたままだった。
「ワカリマシタ」
「いや、全然目を合わせないじゃない!! いや、ホントにほんのギャグなのよ!! ねえ!! ちょっとこのままだとポンコツな生徒会長のイメージがついちゃうからぁ!!」
「前々からついとんで。サンプルのチョコを本物を間違って食っとったし、他にも…」
「や―――――――め―――――――――――て―――――――――!!!!!///////」
と、自分の恥ずかしい秘密を暴露しようとする希を止める絵里。普段は御硬いが、かしこくて可愛いエリーチカとして通している絵里だが、若干天然ボケな所もあり、巷では「ポンコツ可愛いエリーチカ」とも言われている。ちなみに声優さんにも言われている。
「な、何だよお前はぁ!! オレの邪魔をするな!! 痛い目に遭いたいのか!?」
自分が置いてけぼりにされかけているので、怒鳴る事で注目を自分に集める。しかし、飛鳥の表情がおかしくなった。
「何だ? 逃げ腰になったのか? だったら絵里達を置いて…」
「いえ、痛い目に遭うのはアナタですよ。後ろをご覧ください」
「!?」
Bが後ろを振り向くと、担任の笹原京子がいた。とても険しい顔をしており、Bは青ざめていた。
「Bくん」
「ち、違うんです!! こいつが…」
「どういう事か説明してくれるかしら?」
「だからこいつが…」
Bが飛鳥に罪を擦り付けようとしたが、誰が悪いのか一目瞭然だった。
「先生―! こいつが絢瀬さんに言い寄って来るんですけど、とってもしつこいんです!」
「しかも私の事、勝手に自分の女とか言ってくるんです!」
「しかもうちら3人に話しかけとるから、このままやとうち等、人気のない所に連れ込まれてスッポンポンにされて、セ×××させられそうやー。どないしましょー」
(えげつねェ!!!!(大汗))
改めて女子怖いと思った飛鳥だった。笹原は卑猥な言葉が出て頬を赤らめた。
「ゴ、ゴホン!! どういう事? Bくん」
強姦しようとしていたと聞いて、笹原はBを更に睨みつける。
「ち、違うんです先生! こいつが絢瀬さんを…」
「犯人はBくんです!!」
「この子はただ通りかかっただけなんですよ!」
「私達、みーんな見てました!!」
(ああ…。これでオレが犯人ですなんて言われたら、おしまいだわ)
飛鳥が頭をかいたと同時に、Bは激しく責められて涙目だった。
「泣くな!!」
「?」
女子生徒が叫んだ。
「泣きたいのは絵里ちゃん達の方よ!」
「被害者面してんじゃないわよ!!」
「泣く前に謝りなさいよ!!」
「ただでさえ受験でイライラしてんのに…」
と、避難轟々だった。確かに3年生は受験勉強を始めてもおかしくはなく、本当にイライラしている状態だった。Bはどうしたら良いか分からない状態だった。
「…ああ、これならもう大丈夫そうですね。もう行っても宜しいでしょうか」
「あ、それから君は…2年生の一丈字くんね」
「あ、はい…」
「放課後、職員室に来て頂戴」
「…分かりました」
事情聴取か何かだろうと思い、余計な事は言わずに飛鳥は承諾した。
「それじゃ、行ってもいいわ」
「ありがとうございます。それでは、失礼します」
そう言って飛鳥は笹原に頭を下げて、その場を去ろうとした。
「あ、ちょっと!」
「私の事はお気になさらずに!」
にこが呼び止めたが、飛鳥は去っていった。
つづく