先生のおかげで人類が何故産まれ、そして潜在的ホモが産まれたのか分かった気がします!
サンキュー聖4文字!!!!サンキューブッダ!!!サンキュー空飛ぶスパゲッティ・モンスターの福音書!!!!!!
それから、彼女がこの大陸――『アルーダ大陸』に降り立って一年が経過していた。
世間では帝国統一百年祭の準備が推し進められており、この要塞都市『セイラン』の人々も迫る祭りの熱気に浮足立っている。
堅牢な巨岩から削り出したかのような複層構造の防壁の内側では、数え切れないほど多くの人々の喧騒が反響していた。
「東の村で採れたリンゴはいかがー!?」
「新食感!ラサールのもも串焼きだ!うまいぞぉ!」
「エンチャントが掛けられた骨細工はいかがー?」
石レンガの道路の上を、あっちへフラフラこっちへフラフラ。
五対の足はまるでコウモリのよう。右往左往、コツリコツリと地を踏み付けた。
アリシアは5つの視界を巧みに扱い、気になるアイテムをどんどんとリストアップする作業に勤しんでいる。
「むう、余り食事は必要ないんだけど、なんだかお腹が減ってきたな……」
「しかも全肉体でこれだもん。エンゲル係数がががが」
「ギルドで報告ついでに飯食うか……」
「あと森での活動用に保存食も買っておこう」
「500人の
この一年。
後半は非常にゆっくりとしたペースだったが、その数はおよそ5倍にまで増殖していた。
アリシアは増え続ける自分に少しばかり頭を悩ませていたが、
まあ拠点を拡張するにしても工具や薬剤は必要だし、時たま襲いかかる魔物から自己防衛を図るための武器なんかは仕入れる必要があるのだが。
けれど中規模の農村と同等レベルの人口を有するにしては、比べるには烏滸がましい程の費用対効果。
最初は開拓村(隠れ蓑)だったのが今では開拓村(ガチ勢)である。
開拓村のメイン名産品の薬草と奇っ怪な仏像は大人気。もう既に冒険者稼業なんて顔繋ぎだけで十分なレベルだ。
もう所持金だけで大抵の一般人にマウントを取れるぞ!!
最初の頃の採取依頼を森の肉体総動員で熟していた頃が懐かしい……。アリシアとしては昔は昔で……そう、あの不便な感じが趣深くて中々良いとも感じられた。
今は生活基盤がほぼ完全に整っているおかげでかつてのような手間は必要なくなったが、どこか味気なさをも覚えてしまう。
そんな森の内部では増え続ける肉体と共に木工や建築業などのスキルを程良く鍛えられ、新たに写本などで金銭を稼ぎ始めている。
何をするにも
まずは金がなくては何も始まらぬと、彼女は効率を重視して動き続けていた。
無論その効率を求める姿勢は冒険者としても発揮されており、今では等級を二つ格上げされ『幹』と呼ばれる中堅どころ一歩手前。
が、ぶっちゃけ戦闘能力そのものはあまり高くないので単純な魔物討伐は少しばかり下手っぴだ……しかし肉体運用技術のみの一点で他の粗をカバーし、結果的に言えばこの等級でも頭一つ飛び出た能力を有する。
つまりアリシアは多分強い!……はず。
「おし、この依頼を受ける!受付頼むわ!」
「かしこまりました。こちらの書類にサインを――」
「エールお待ち!」
「それでアイツはよ、なんて言ったと思う?」
ザワザワザワ。
アリシアがギルドのドアを潜った瞬間、多様な種族の多くの人々の喧騒に包まれた。
祭り気分はここまで浸透しているのか、どうも皆浮き足立ったように思える。
とりあえずそれっぽくカウンターに腰掛けた。
「マスター、いつもの」
「はいよ、いちごミルクね」
「おおー、これこれ……ってちゃうわ!俺達はエールを飲みに来たの!!」
「そうは言っても嬢ちゃん達。お前さん達は飲める程体が育ってねえだろ……」
「「「「「誰が貧乳じゃボケェ!!!」」」」」
「そこまでは言ってねえよ!?」
アリシアは激怒した。
アリシアには女心がわからぬ。
しかし、自身の身体的特徴に対する嘲りには人一倍敏感であった。
怒りのままにカップをグイッと煽り、いちごミルクを胃に流し込む。
「はぁー、ほんま使えんわ……はぁー」
「やめたら?この仕事」
「俺達だってこのギルドに中々貢献してんのにさ、ねぇ。この仕打ちですよ」
「はー!ほんま!はぁー!」
「詫びろ」
「すまんて。ほら、エール奢るから」
やったぜ。
木のテーブルにズラリと並んだ5つのエールを手に取り、グビリと一口。
あぁ^~!気持ちいい!
仕事するつもりでギルドに来たのに何故か酒飲んでるぅ^~!
何故こうなったのかアリシアには分からなかった。
分からなかったけどとにかく気持ちいいのでとりあえずオッケーです!!
「うわ、チョロ……っ」
マスターが小さく漏らした声も、エールで気持ちよくなっているアリシアの耳には届かなかった。
彼は運がいい。
いつだってそうだ。
ギャンブルに向かっては金を稼ぎ、遠出すると毎回間一髪で危機を回避し、妻に隠れてへそくりを隠すと絶対に見つからない。
今回もバレたら
エールを事前に奢っていたことが功を奏した。
「んお?おお、ウーラソーン姉妹!いまマスターがチョロいってよ!!ガハハ!!」
「「「「「きれそう」」」」」
でも二度目の判定は失敗しちゃいましたね……。
――それから数時間。
マスターの五体にしがみつく姉妹の姿が見受けられた。仕事の邪魔?ほら、マスターはお飾りで本体の調理員は彼の奥さんだから……。
ラサールの森の奥地。
実は最近、増殖のコントロールができるように成った――と言えれば嬉しかったのだが、未だにそれは叶っていない。
しかし申し訳程度になされた検証により、『アリシア』が多くいる場所に新たな肉体が増えると分かった。
それからというもののできる限り拠点内に多くの肉体を滞在させ、いそいそと木工や写本、料理に戦闘訓練など、増殖の方向性を制限しようと努力している。
そんな、文字通り『アリシア』の”心臓”とも言える拠点を守るため、日夜問わず多くの肉体を警備に当てていた。
「うん?なんだ、この木……」
「……爪痕、か?」
さて、そのアリシアの拠点から程近い巡回ルートの一つで、3体の警邏班が集まっているのはとある木の周辺。
彼女は簡素な革鎧とバックラー、鉄剣で武装して、決して警戒を怠ること無く
彼女は常時50体から70体が見回りを行っているが、その内の一組だろうか。
数に限りがある為に隙間なく、死角なくとは言えないのが辛い所。だから未だ見つけていない脅威があっても不思議じゃない。
もう少し人数を割くべきか?アリシアとしては、なんとなくそうしたほうが良い気がしてきた。
しかしその人数を割くということは労働力が減少することと直結するが……身の安全のためを思えば致し方なし……か?
頭を悩ませながらも、若木の近辺に落ちていた一房の灰色の毛を手にとった。
「こりゃ……ラサールじゃないな」
「けどこの近辺の魔物は小さいやつしかいない……」
「他の獣なんていない筈だ」
アリシアが巡回しているうちに踏み均された獣道には人間の匂いが染み付いており、この付近まで生物が近づくこと自体が稀だ。
拡張に拡張を重ねた拠点は凡そ1キロメートル四方に広がり、その文明の匂いから逃げる様に皆逃げ去っていった。
……その筈、だった。
「…………拠点の防備を固めるか」
「巡回ルート上にいる体で調査を――」
ガサガサガサ!!
背後にある茂みが蠢く。
大きな体が葉に擦れたのか、小さな緑を撒き散らすナニカが飛び出した。
「――はぁ!」
ギリ。
飛び出したナニカの最も近くにいる個体が、鞘を抑え剣を抜き付ける。
居合の要領で放たれた剣戟が宙を裂き、空を泳ぐソレに迫った。
「ルルルゥ!!」
パキィン!
「……は?」
硬質な音が木々の隙間を貫いた。
キラキラと銀色の破片が宙を舞う。
腑抜けた声と同じ色の眼を下ろす。
――折れた剣と、牙を剥いた灰色の狼が懐にある。
ガパァ、と。
その狼は大きな体に見合った口を開いた。
「シィ!!」
「死ねェ!!」
二条の鉛色が狼目掛けて飛び込んだ。
それは何ら不自然のない自己防衛。
最高の効率と最速の連携でもって行動を重ね、少なくとも接敵から今までの経緯に何ら間違いはなく、文字通り最善と言っても良いだろう。
――しかし、それでは不足である。
異世界の洗礼は容赦なく牙を剥く。
「あぇ?」
グチュリ。
水が滴る。
トン、と軽い音と共に飛び跳ね、狼は一足で10メートルもの距離を離した。
その口には、鮮やかな赤が溢れている。
「なん、だと……!」
食われた。
俺が食われた……!
四肢の末端から震えが走る。
――アリシアにとって、これが初めての負傷だ。
常に安全マージンを取り続け、負傷らしい負傷を徹底的に避けた故に痛みに耐性がない。
だって恐ろしい。
怖い。
存在すら嫌だ。
平穏な生活に慣れきった俺の魂にとって、苦しみこそが耐えられない恐怖の象徴。
……竦む足を押さえ付け、自身の総体を蹂躙するであろう痛みに―――じっと備える。
「…………あれ」
……しかし、想定していた苦しみは一向にやって来ない。
そこでアリシアは疑問に思った。
やつの口には俺の肉が詰まっている。
俺が食われた、筈なのに。
「なんで、痛くないんだ?」
――嫌な予感が脳裏を過る。
その直感のままにサッと振り返った。
ゼヒュッ。コヒュッ。
血を吐く出すように息を振り絞り、上体を木の幹に預けながら必死に呼吸を繰り返す
―――こいつ、誰だ?
血の気が引いた。
2つの顔が同時に青ざめ、少し離れた場所で此方の様子を窺う狼の存在さえ忘れて
「あ……ぁ……!」
腹部がごっそりと抉れ、テラテラと光る臓物が顔を覗かせている。
……どう贔屓目に見ても、致命傷だ。
そして同時に確信を得た。
「やっぱり……俺じゃ、ない?」
「どういう事だ……?」
その肉体は、アリシアの制御を外れていた。
あるはずの視界は閉ざされていて、伝わる筈の五感は何も無い。
……云うなれば、右腕のみが自分から切り離され勝手に動いているかのような異常事態。
「ど、どうしたら……」
「――う、うし……ろ!」
反射だった。
アリシアは一つの視界をもって
――ギシリ!
体を弓なりに反らす。
体幹をバネのように活かし、一瞬の内に超高密度の力を筋繊維に注ぎ込んだ。
ドン、と。
強く踏み込んだ右足の力を腰に伝え、肩に回し、腕へ繋いだ。
両手から放たれた銀閃は凄まじい速度でもって狼へ迫る。
臓腑を貫き、水風船のように弾けた血潮が森を濡らした。
されど魔物が魔物たる所以――まるで”死なず”が如き生命力を発揮し、弾けた腹部に構わず迫りくる。
「ふ――!」
剣を生やしたまま高速で駆ける狼に、アリシア自身から走り寄る。
戦の才はなく、身体能力も高くない。
けれど
ガシリ、と狼の首元にある柄を二対の手で掴み取る。
「ガアァァ!!」
「「いい加減に――くたばれ!」」
ザン!
体の内部から強引に引き裂き、返しの太刀で首を撥ねる。
飛び跳ねた首は小さく唸り声を響かせ――そうして漸く、その命を消し去った。
「ふっ……ふ……」
「……はぁ……ふっ……よし。そうだ、アイツは……!?」
振り向く。
相変わらず木に背を預け、アリシアから独立した自意識を有するであろう少女が血を流していた。
少女は、か細く呼気を吐いている。
アリシアが直ぐ側に膝を付くと、瞼を震わせ、赤い瞳を幽かに揺らした。
「もう、これじゃ……」
少女は死にかけだった。
そして、もうすぐ死ぬだろう。
人を看取る経験も、自分から死にかける経験もないアリシアでもそれが分かった。
きっと、彼女は長くない。
『アリシア』という総体から剥がれ落ちた彼女は、今この瞬間にも生の灯火を燃やし尽くす。
「あっ……あ……!」
震える手が、宙を泳ぐ。
何かを探すように、何かを求めるように。
――静かに手を取る。
二対の手で、しっかりと包み込んだ。
「あ、あぁ………ありが……と………」
息を吐く。
小さく、小さく。
そして、
「……まさか、こんな事が……」
酒場のカウンターでか細い声が響く。
しかし同じ建物にあるギルドや集会所から届く大きな喧騒に飲み込まれ、誰にも聞かれず消えていった。
今起きた出来事はアリシアに大きな衝撃を与えた。
森の中で産まれ、そして死んだ名もなき少女。
彼女という存在そのものがアリシアの心中に暗い影を落とす。
これまでは努めて考えないようにしていた
――一抹の不快感が胸に突き刺さった。
「うん?なんだぁ、随分と騒がしいじゃねえか」
「――あ、あぁ……そうだな、ちょっと見てくるよ」
マスターの声を口実に、机の上に硬貨を置いてギルドの方へ足を向ける。
板張りの床が段差なく続く先で、いつもの緑髪の受付嬢が声を張り上げていた。
早速彼女を中心に広がる輪の端に加わり話に耳を傾けた。
「―――繰り返します!!ラサールの森の表層部分で『
――気付けば、五対の瞳、五対の足を自然と建物の奥に向けていた。
この建物は非常に大きく、いくつもの設備を兼ね備えている。
それは酒場であったり、パーティー用の小型会議室であったり――今、集合場所に指定された百人程度は収容できる大会議室である。
生態系に対する影響を考えて、早期にあの畜生共を駆逐する必要があると言った。
その為に冒険者を集めていると言った。
……けれど、アリシアにとってそれらはどうでも良かった。
ただ、胸の内に澱んだドロドロとした感情さえ処理できれば、なんでも。
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