SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名 作:暁刀魚
:ここまでのまとめ
1位:アリシア
2位:カブ
3位:ルリナ
4位:キバナ
5位:ヤロー
6位:オニオン
7位:マクワ
8位:ビート
9位:マリィ
10位:サイトウ
11位:メロン
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:昨日までの時点でトップアリシアが確定か、本当に横並びだったけど、最後の最後で勝ち抜けたなー
:アリシアとルリナとカブのプロリーグだった。
:オニオンくんすごくね?
:オニオンくんも今年の成長株だと思う。
:メロンさん11位がなんか意外だ。
:今年はあんまり、いつもの勝ち星マシーンが機能しなかったからな……
:ビート、マリィ、マクワの三人が今日次第で動くかな。
:地味だけどヤローとキバナも動くぞ。ほかはほぼ確定。
アリシアと虫の花園:( ・´ー・`)どや
:アリシアァ!
:アリシアァ!
:アリシアァ!
アリシアと虫の花園:いやぁご称賛ありがとうございます! 今年もプロリーグトップのアリシア、アリシアバタフライです、いえー!
:一瞬にして待機場に油が注ぎ込まれて草。
:誰か着火しろ。
:アリシアさん開始三十分前ですけどいいんですか?
アリシアと虫の花園:今日は解説ですー! というわけで今日の公式チャンネル生中継はキバナ様とマリィちゃんの試合です。
:勝率的にはキバナ有利だなー。
:コンテストの件もあって、なんとか八位で滑り込んで誰にも何も言われずに挑みたいマリィちゃん次第か
:合宿前の覚醒草
:今回もかなり調子いいぞ、最終戦開始時点で十位だったからな……
:この最終戦に勝って、ビートがヤローに負けるとギリ八位か。
アリシアと虫の花園:何にしても運命の一戦です、楽しんでいきましょう! ではまた!
:はーい!
:はーい!
:はーい!
(三十分後)
「大変お待たせいたしました、本試合はプロリーグ最終戦、三日目、キバナ選手対マリィ選手の試合をお届けいたします。長かったプロリーグも、本試合とビート選手対ヤロー選手の試合が最終戦となります」
:始まった!
:始まった!
:始まった!
「本日の解説はアリシア選手とビート選手となります」
:いつものメンバーじゃねぇか!
「ボクはこれから最終戦という中で、忙しい合間を縫ってるのになんですか!?」
:断らないの?
「この試合は、アリシアさんの解説ありで見ておいたほうがいいと思いましたので、というわけでフェアリータイプジムリーダー、ビートです」
「どや」
:何かいるぞ
:変なたすきかけてる。
:世界1位って書いてある。
:もし、こいつが世界二位だとしても……?
:世界……1位です……
「1位です」
:草
「1位アリシアです。ガラル最強のー、ジムリーダーでええええす!!」
:盛大に煽ってきおる。
:お前それ全ジムリーダーの前で言えるの?
「いえまあああああああす!」
「でしょうね!!」
ビートが吠えた。実況はどこ吹く風で続ける。
「さて、今回のそれぞれの手持ちについて一言コメントを頂きたいのですが」
「キバナ様ドラゴン少ないですね」
「いつもどおりでしょう」
:ジェラルドンとフライゴンだけだから、最低限パターンだなぁ
:バンギラスもドラゴンでよくね?
「今回のキバナ様は完全に砂嵐ベースですね、ただどのポケモンもおそらく、ダイバーン等を所持しているので、やろうと思えばすべての天候にスイッチ可能なのはいつもどおりです」
「初手はバンギラスですかね」
「どうですかねー、オーロンゲがきついから初手ジュラルドンじゃないですか?」
:マリィちゃんの方はいつもどおりだな。
:ベストメンバーって感じだ。
「コメントの通り、マリィ選手は普段から使用率の高いメンバーが多いように感じられます、この辺りはどうでしょう」
「今季のキバナさんとの対戦を鑑みて、対策は無理だと判断したのでは? ボクたちと、上位五人の間には壁が大きいですからね」
「バンギラスとフライゴン、パーティの核になるポケモン相手に有効打となるオーロンゲの選出を強要されている手持ちになってますのね」
アリシアはそう告げると、両手を人差し指を立てて持ち上げる
「問題は、オーロンゲをどこで投入するか」
左手を持ち上げる。
「初手か」
左手を下げて、右手を上げる。
「後方か」
「鍵はオーロンゲだと?」
「はい」
そういいながら、人差し指同士をくっつけてVサインを作った。
:遊ぶな
:遊ぶな
:遊ぶな
「はい」
:オーロンゲ以外だと何が出そうかな。
「シザリガーが、キバナ様の対砂にどれだけ有効かどうかですねぇ」
「シザリガーなんですね、マニューラではなく」
「んー、こおりタイプがジェラルドンに有効じゃないので、おかしくはないんですが……」
「なにか違和感があると?」
ビートがそのまま続けて問いかける。アリシアは難しい顔だ。
「いえ、これは多分マリィちゃんの新戦術だと思います、使用率の高いポケモンで固めていますが、技構成はだいぶ違うかも」
:楽しみ
:負けるなマリィちゃーん!
「さて、ここで両者出揃いました!」
『よろしくおねがいします』
『相変わらず、スタジアムに立つと固くなるよな。あの兄の妹とは思えないぞ』
『そう……ですかね』
ポリポリと頬を書いたマリィは、すぐに気を取り直すと、所定の位置につく、キバナは一回不敵に笑った後、その後に続いた。
お互い、少し弛緩していた空気が、一瞬にして昂ぶっていく。
『泣いても笑っても、これが今年最後のプロリーグだ! 遠慮せずかかってきて、そしておれさまにまけてくれ!』
『最後だからこそ、最後まで、諦めたくない! アタシはマリィやけん!』
「バトル開始ィ――――!」
「初手は……」
マリィは、シザリガー。
キバナは、ジュラルドン。
「オーロンゲ警戒のジュラルドンですか」
「対して、マリィちゃんはシザリガー、相性上は特にどちらも有利、不利はないです」
:キバナのジュラルドンにはかみなりがある!
「キバナ様はかみなりですかねぇ」
「じゃあ……マリィは?」
「んー」
:インファイトか、ダイマックスでダイナックル!
:かみなりをまず耐えられねぇよ!
「今回のマリィちゃんの手持ちは、シザリガー、オーロンゲ、キリキザンだと思います」
「その心は?」
アリシアの言葉に、ビートがすかさず合いの手を入れると、アリシアはうなずいて、
「単純に、有効だからというのもありますが……ジュラルドンさえなんとかすれば、シザリガーがいなくても残り二匹でキバナ様のすべてのポケモンに有利が取れます」
「……ここでジュラルドンを落とすつもりか」
いくらなんでも、それは難しいだろう、とビートはマリィを見る。
:まさかかみなり外しに賭けてる?
「いえ……」
そして、戦況は動く。
ジュラルドンが先手をとり、かみなりで攻撃。一気にマリィのシザリガーは大打撃を受ける。……が、倒れない。
「きあいのタスキだー!」
「インファイトで落とせますね」
キバナが難しい顔をする、想定できる状況の中では、最悪だ。とはいえ、ここでかみなり以外の選択肢はなかった。はがねタイプではシザリガーはもとより、後ろに控えているであろうキリキザンにダメージは入らず、ドラゴンタイプは論外だ
「シザリガーのインファイトをどうにかしないと行けない関係上、後ろに下げれない状況でしたから、この手持ち、この状況でキバナさんはかみなりをするしかない……と」
「……それだけじゃないですよ」
「えっ?」
『……シザリガー、りゅうのまい!』
マリィが宣言する。キバナも、ここまで解っていて、今の状況をまずいと感じているのだ。
「このタイミングでりゅうのまい? 結構な博打では?」
:こだわりスカーフ巻いてたら先手とれなくね?
「このジュラルドン、先日の対戦で耐久用の調整してるのがバレてますから、スカーフでもシザリガーのほうが早いですよ」
「身もふたもないですね!?」
:メタ読み草。
「まぁそういうことなら、納得です。しかしとなると、これはかなりいいですね。この後出てくるであろうフライゴンにアクアジェットまでお見舞いできます」
「そういうことです」
三日間という短い期間、ポケモンの能力の調整ができるだけの時間的な余裕はない。故に、そういった状況を加味してのメタ読みは、プロリーグでは有効な手段だ。
「……なんというか、今回はお互い、選出タイミングから相性が悪いですね」
ビートがこぼした時、戦局が動く、マリィのシザリガーがインファイトでジュラルドンを撃破、さらに続いて出てきたフライゴンにアクアジェットを叩き込む。
「とはいえ、ここからですよ」
『フライゴン、りゅうのまい!』
キバナが宣言する。
:りゅうのまいだ!
:これで次がかなり楽になるな。
:オーロンゲを落としきれれば解らんかもしれん。
「これはキバナ様の読み勝ちですね」
「いやまぁ、そうですが。ここで博打を打つには、マリィさんはかなり状況的に有利ですよ」
「たられば、ではありますね」
そして次のフライゴンのフェイントで、シザリガーはついにダウンした。
続いてマリィが繰り出すのは、当然というべきか、オーロンゲだ。
「ここまでの状況は、マリィ選手が大きく有利。しかしどちらも選択にミスはなく、りゅうのまいをしたフライゴンが場にいる状況です!」
:ここでの選択が勝敗を分けるなー
:えっと、どっちにどれだけの選択肢があるんだ……?
「マリィちゃんは、ダイマックスからのダイフェアリー、ふいうち連打、りゅうのまい読みのちょうはつ」
「キバナさんはダイマックスからのダイアース、じしんからのフェイント、りゅうのまい連打かな」
互いに、この状況を打開する手段は無数にあり、そして交代はありえない状況だ。
「ここでダイマックスを切ってくるでしょうか」
実況の問に、二人はうなずく。
「キバナ様は十分切ってくる可能性はありますね。ここで何より怖いのは、ふいうち一発でフライゴンが倒れることです」
「逆にマリィさんは無いんじゃないですか? ふいうちをすててまでダイフェアリーが必要とは思えない。むしろなしでじゃれつくの方がありえます」
:お互い補助技に走る可能性は?
「ないです」
「ありえません」
アリシアとビートが、コメントの指摘を即座に否定した。
理由は単純。
「……性格的にないでしょう」
「あの二人にそんな玄人向きな選択肢を公式戦で切れというのは無理な話です」
結局、両者が選んだのは――
『フライゴン、ダイマックス!』
『オーロンゲ、ふいうち!』
オーロンゲがふいうちでフライゴンを攻撃、しかし倒しきれない。直後に、オーロンゲから何かが抜けていく気配。
「オーロンゲ、いのちのたまを利用したふいうちが決まるも、フライゴンを倒しきれずー!」
「一番無難な選択肢ですね!」
直後、フライゴンのダイアースをくらい、オーロンゲが倒れた。これで一気に形勢は逆転する。
『……今年最後のプロリーグ、負けられん……頼むけん、キリキザン!』
場には、ふいうちをキョダイマックスで耐えたものの、かなり危険な状態のフライゴンと、無傷のキリキザン。
「とはいえ、キリキザンのふいうちをどうにかする手段はフライゴンにはないので、ここは……」
『……もどりな、フライゴン!』
フライゴンのキョダイマックスが解除される。そして、最後の一匹、バンギラスが場に登場し、スタジアムは砂に覆われた。
「天候パーティのはずなのに、要のバンギラスが大トリとは」
やれやれとつぶやくビート。戦況はその間もうごき、キリキザンのふいうちが失敗に終わった。
:フライゴンを温存してきたな。
:バンギラスがこだわりアイテム持ってるんじゃね?
「そう思わせるため、ですね。多少賭けに出てでも、キバナ様はマリィちゃんを揺さぶりたかったんです」
「……ここまで、攻防自体は一進一退だけども、駆け引きはキバナさんが一歩上ですね」
:りゅうのまいも、この交代もなー
「経験の差は大きいですよ。逆に言えば、そこ以外はマリィちゃんも負けてません」
「どちらにせよ、マリィさんはダイマックスを残している……と」
:このまま押し切れー!
「なんというか……これは」
アリシアは、難しい顔をした。状況はどちらが勝ってもおかしくはないように見える、が……
「どうしたんですか?」
「……あのバンギラスさん、調整を変えてきてますよ」
:は?
:は??
「え?」
『これで……終わらせる!!』
アリシアの言葉で、放送が揺れる中、マリィがダイマックスを敢行。そして、ダイナックルでバンギラスを攻撃する! 効果は四倍、そうそうこれで落ちないはずはない……が。
『まってたぜ、そいつをなぁ!』
キバナが笑う。
果たしてバンギラスは、まだ立っていた。
同時に、バンギラスの瞳に力が宿る。
「た、耐えたー! バンギラス、かなり危ない状況ですが、攻撃を耐えているーーーーっ!」
「……完全に耐久に寄せているのか。この短時間で!」
「それだけがっつり読んできたってことですよ。この状況を。キバナ様、ここまでやりますか……」
:持ってるアイテムはじゃくてんほけんかな。
:明らかにバンギラスの攻撃のキレが凄いから、じゃくてんほけんっぽい。
『バンギラス、ばかぢから!』
ダイマックスしたキリキザンの巨体に、バンギラスの一撃が炸裂する。ゆっくりと、キリキザンの巨体が傾く。
『……すまん』
ぽつりと、マリィが顔を伏せてつぶやく。
そして、いよいよキリキザンが――
『……これしか、思いつかんかった』
――倒れることは、なかった。
:えっ
:えっ
:えっ
「た、耐えたーーーーーっ! マリィ選手のキリキザン、ギリギリのところで攻撃を耐えているーーーっ!」
会場に、歓声が満ちる。勝負は、これでわからなくなった――かに見えた。
「これは……どういう!? 明らかに耐えられる攻撃じゃなかったですよ!?」
ビートの問に、
「……きあいのハチマキ?」
いち早く状況を理解したアリシアがつぶやく。
――あ、と。その言葉に、しんと周囲が静まり返った。
:あ、あーー
:……そっかぁ。
『キバナさんが強いんはよーくわかっとる。だから、その予想を外さばいかんて、ずっと考えとった。……その方法が、これ。単なる運ゲーやけん。後でみっちり怒られると』
『…………』
『しかも、その上でキバナさんばうまかった。いや、完敗』
キリキザンの二発目のダイナックルで、バンギラスが沈黙する。それをキバナはボールに戻す。
「……これは、キバナさんの勝利……ですか?」
『ばってん、負けとうなかった! アタシは負けられん。メジャージムリーダーでいたか! やけん、そんためなら何でんする!』
出てくるのは、先程揺さぶりのために、あえてボールに戻したフライゴン。当然、このフライゴンは先制技のフェイントを習得しているうえに、速度はキリキザンより早い。
――ダイマックスしたキリキザンには、ふいうちという対抗手段はない。
『そうまでして、何にこだわってるってんだ。そんなにコンテストに憂いをなくしたかったのか?』
『……わからん、なんもわからん』
『なこと言われてもなぁ……ったくよぉ』
ガリガリと、頭をかくキバナ。その表情は、すなあらしと頭をかく二の腕に隠されて伺えない。しかし――
そんなマリィを、真剣に見つめる瞳が、あった。
……二対。二人の人間。
『……なに諦めてんだ?』
「なにをそこで諦めてるんですか、マリィちゃん」
:えっ
:いやどう考えても詰んで……
『そのはちまきは飾りかよ。チゲぇだろ? 耐えたじゃねぇか。次が耐えられない保証がどこにある?』
:無茶言うなよ!?
「無茶じゃないですよ、それが、マリィちゃん唯一の勝ち筋です」
「……その勝ち筋を引き込んだ以上、どれだけキバナさんが上手だろうと……マリィちゃんのバトルは、間違いじゃなかった。その選択は正解だった、と」
「運ゲーでいったら、最初のキバナ様のかみなりが外れている可能性だってあったんです」
だから、マリィは決して戦術が劣っていたわけでは、ない。
むしろ、キバナの戦術に食らいつき、細い、とても細い可能性だが、勝ち筋を残した。
故に、こう言える。
マリィの戦いは、決して間違いではなかった、と。
『……うん、ありがとうございます、キバナさん』
『よせよ、照れる。とはいえ……』
そして、キバナが手を離し、突きつける。その顔は、いつもの攻撃的なバトルのときの笑みだ。
『これで、終いだ。フライゴン、フェイント!』
『……次は!』
強く瞳を前に向け、マリィは叫ぶ。
その一撃は、キリキザンに突き刺さり――
――キリキザンは、倒れなかった。
「あっ」
「あっ」
:あっ
:あっ
:あっ
『次は!! 負け……あっ』
その場にいる、実況とキバナ以外の口から、声が漏れて……マリィは少しだけ申し訳無さそうな顔をすると――
『き、キリキザン……ダイアーク』
フライゴンを、仕留めきるのだった。
『そ、そういうのは……』
キバナが、頭を抱えて、叫ぶ。
『そういうのは、クソガキの役目だろーーーーー!?』
――その言葉に、アリシアが反応し。
……かくして、プロリーグ最終戦、キバナとマリィのバトルが幕を下ろすのだった。