SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名   作:暁刀魚

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謎のアリシア仮面その2

ダンデ これからもみんなをよろしくな!@DANDEONE

これは既に予定されているつぶやきだ! 俺がこれをつぶやいているとき、既にアリシア主導のキバナ荒療治作戦は始まっているはずだぜ! 今回は、俺の方から経緯について説明させてくれ!

 

ダンデ これからもみんなをよろしくな!@DANDEONE

話を持ちかけられたのは、去年のオフシーズンだった。アリシアから、「キバナが目標を失って迷走しかけている」という話を聞かされたんだ。俺自身、その時キバナに違和感を抱いていたから、それで歯車が噛み合うみたいにピンと来た。

 

ダンデ これからもみんなをよろしくな!@DANDEONE

そこで俺は考えた、キバナの本気のバトルを間近でみたい。本気っていうのは、公式戦のことだ。そして、俺が出ることができて、最も早く戦える機会は、ファイナルトーナメントだったんだ。このことはアリシアにはいっていなかったけどな!

 

ダンデ これからもみんなをよろしくな!@DANDEONE

そして、そこで狙い通り俺は本気のキバナと戦うことができた。ジムチャレンジに参加した理由は他にも色々あるんだけど、キバナと戦うことで、すべての目的が達成された感じだぜ。ただ本当は勝つつもりだったんだけどな、俺だって負けるためにキバナに挑んだわけじゃあないぞ!

 

ダンデ これからもみんなをよろしくな!@DANDEONE

結果として、キバナは今の不調が、アリシアやポプラさん以外にも解るくらい表面化してきた。俺としては、俺がなにか言えればよかったんだけどな。でも、俺だって人間だぜ、あの時、キバナが俺に勝った時、ちょっとそれどころじゃなかったんだ。

 

ダンデ これからもみんなをよろしくな!@DANDEONE

俺が目指すべき人が、また増えた。そのことは、今の俺にとって、何事にも変えがたい体験なんだぜ。

 

ダンデ これからもみんなをよろしくな!@DANDEONE

それに、あそこで俺がなにか言っても、むしろキバナにとっては逆効果だっただろうからな。今のキバナが自力で調子を取り戻す以外に、どうにかすることができるのはアリシアしかいない。それは俺も解っていたんだ。

 

ダンデ これからもみんなをよろしくな!@DANDEONE

結果、今のアリシアの荒療治作戦は始まったんだぜ。このことは、俺とアリシア、それからリーグ委員会の人たちだけのシークレットな作戦だった。とはいえ、気づく人は気づいてた。ポプラさんとか、メロンさんとかな。

 

ダンデ これからもみんなをよろしくな!@DANDEONE

そもそも、今のタイミングで荒療治をしてくれ、と言い出したのはメロンさんだ。本当はメロンさんとのバトルが終わった後に乱入する予定だったんだけどな。そうでないと不公平だ。でも、メロンさんは鋭かった。アリシアをうちに呼んで鍋パをしたのは、この荒療治作戦のことを聞くためだったそうだぜ。

 

ダンデ これからもみんなをよろしくな!@DANDEONE

最高の状態のキバナと戦いたい。メロンさんはそういった。なら、俺たちはそれに応えるしかないよな! ってわけで、このタイミングでの乱入になったんだぜ。

 

ダンデ これからもみんなをよろしくな!@DANDEONE

ここでもし、俺が説明してないことがあったなら、それはアリシアが自分で考えて実行したことだ! きっとそれが荒療治に必要なことなんだろうから、見守ってくれよな! 以上だ!

 

 

 

ネズ@Nezu061

クリスマスカップの時、おれはキバナに会ってたんだよね。ちょうど関係者通路で、偶然キバナとすれ違ったんだ。リアルで会うのは久しぶりで、俺の方から声をかけたんだよ。

 

ネズ@Nezu061

最初は軽い挨拶程度だったんだけどね、聞かないわけにはいかないから、キバナの不調についても踏み込んだんだ。そうしたら、キバナが言っているようなことが飛び出したわけ。そこまで根深いと思ってなかったから、びっくりしちゃったよね。

 

ネズ@Nezu061

ちょっとした……それこそ、アリシアくんみたいなレベルの不調だと、おれは勝手に思ってたんだけど、問題はもっと大きかった。聞いた時、これはカブさん級だな、って思わず口に出ちゃったよ。キバナはそれに言い返すでもなく、申し訳無さそうに笑ってた。

 

ネズ@Nezu061

あのキバナがだよ? といっても、根っこの真面目さを考えれば、あそこで口論になったりするタイプじゃないのは解るんだけどね。そういう意味では、アリシアくんはよくもまぁ、あそこまでキバナに激白させるような状況を作れたよね。

 

ネズ@Nezu061

とはいえ、おれには彼に何もしてやれなかった。おれの言葉は何も彼には届かなかった。だっておれ、満足したまま終わらせちゃった側だから、キバナみたいに、満足できずに終われないのとは、真逆の状況で、そんなおれが声をかけちゃだめですよ。

 

ネズ@Nezu061

クリスマスカップを楽しんでくれって、そういうしかなかったんです。ガラル一のアーティストとか、笑わせますよね、少しおれまで凹んじゃった。

 

ネズ@Nezu061

ただ、その状況をアリシアくんが見てたらしくてね、ぼくに声をかけてくれたんだ。本人はぼくにどっきりを仕掛けられたって言ってたけど、実際はぼくの方が数十倍どっきりしたわけだから、おあいこだよね。

 

ネズ@Nezu061

なんて声をかけられたかは、秘密。すぐに分かると思うけどね。だって多分、アリシアくんはおれと同じようにキバナにも声をかけるから。

 

ネズ@Nezu061

きっと、ガラルで今のキバナに答えを出せるのは、彼女だけだ。がんばって、がんばって、がんばって、どうにもならない。今のキバナはそこにいる。それって、本当にどうしようもないことで、おれたちには答えがない。

 

ネズ@Nezu061

だってそうだろう、ガラルの人間は、お祭り好きで、けれどどうしようもなく根っこは真面目だ。コンテストはその証明になった。おれたちはあのコンテストに、慣れないながらも全力で取り組んだ。それ以外のことをしなかった。

 

ネズ@Nezu061

奇策に出たり、逃げ出したりはしなかった。ガラルの気風ってそういうものなんですよ。お祭り好きのクソ真面目。だからスランプに陥った時、がんばる以外の選択肢がない。

 

ネズ@Nezu061

唯一の例外がアリシアくんだ。だって彼女は、ガラルの景色を、三ヶ月前まで、きちんと見たことはなかったのだから。

 

ネズ@Nezu061

彼女だけが、このガラルを別の目線で見ていたんだ。モノクロという、他の人よりハンデのある世界で。でも、だからこそ、彼女は違う。ガラルにあって、ガラルにはない気風を持っている。

 

 

ネズ@Nezu061

さぁ、どうするアリシアくん。君はキバナに、どんな答えを見せるんだい?

 

 

 会場中の、あらゆる注目は、アリシアに移りつつあった。

 ダンデはキバナの本音を引き出した。キバナはすべてを吐き出した。この場で、発言ができるのはあと一人、アリシアだけだ。

 

 全員が固唾を飲んで見守る。

 

 此処から先は、ポプラにすらも、読めない展開だ。

 

 アリシアは、

 

 そして、

 

 

「やったあああああああああああああああ! 勝ちましたあああああああああああああああ!!」

 

 

 本気で、そう言ってのけた。

 

「キバナ様引退! キバナ様引退! キバナ様いんたああああい! 言質は取りましたよ! 同意は得ましたよ! ひゃっほー! これで私がガラル最強のジムリーダー!!!」

 

 心の底から、笑みを浮かべて。

 

「んー!? どうしたんですかそんな暗い顔して! やっぱり引退が惜しいんですか!? 今更、い、ま、さ、らー!? 自分からもうなにもないって言っておいて!? この世の終わりみたいな発言をして!?」

 

 アリシアの言葉に、

 

「バカみたいですよね!? こんな試合で引退するとか! そもそも公式戦ですらないし! 妨害者に負けたチャンピオンじゃないんですよ!?」

 

 会場は、シン、と静まり返る。

 

「いやいやいや、ありえないでしょう。そのチャンピオンにしたって、そのあときっちり這い上がってチャンピオンの座奪還してるんですよ? 色々言われて、諦めそうになって! で、じゃあどうやったんですかって」

 

 あはははは、と笑いながら、アリシアは続けた。

 

「もう負けたとか、恥とか何も気にせずまたチャレンジャーとして再挑戦してもぎ取ったんですよ! 周りの声なんて気にもせず! 開き直って、平然と!!」

 

 かつて、ジムチャレンジシーズン中に、妨害者を止めるため、バトルを挑んだチャンピオンがいた。その時、チャンピオンは偶然にも妨害者に負けてしまい、バトルの腕を疑われ、チャンピオンを辞退した。

 結果、妨害者がチャンピオンに急遽就任したわけだが、次の年の防衛戦で、敗退、次代のチャンピオンに座を譲っている。

 

 そのときに勝ったのは、妨害者に負けてチャンピオンを辞退したトレーナーだった。

 

「貴方だってそうでしょう!? 不調にも関わらず、Poketterにはあいも変わらず自撮り写真を投稿して! そのバッシングなんて聞く耳もたないじゃあないですか。そんな貴方が目標を見失って悩む!? バカなんじゃないですか!? ばかですよね!」

 

 アリシアにバカと言われる。その衝撃に、ようやく周囲が再起動を始める。

 

「そんなんだから、こんな阿呆みたいな試合を流れで受けちゃうんでしょう? 負けたら引退しちゃってもいいかとか。頭をよぎっちゃったんでしょう!? とんでもない人ですねぇほんと! あははははははははは!」

 

 そ、れ、と、も、もったいぶった口調で、アリシアは呼びかけた。

 

「今更そんなのありえないっていうんですかー!? あ、ちなみに私が負けても、私はアリシア仮面なので、アリシア仮面が引退するだけですよ!! ま、どうでもいいですけどね!」

 

 ざわめくと周囲と、

 

「まさか、言っちゃうんですか!? 今更いうんですか!? 取り消したいなんていうんですかー!?」

 

 呆然とする、キバナを前にして。

 

「と、り、け、し、た、い、な、ん、て、い、う、ん、で、す、かーーーー!?」

 

 高らかに、そう言ってのけた。

 

「お、おま……おま……」

 

 キバナが、そこでようやく再起動を始める。

 その顔は、もはや笑みではなく、怒りを浮かべて。

 

「何いってんだ、てめぇ!!」

 

 そう、叫ぶ。

 

「いきなり現れて、引退を賭けてだなんて持ちかけて! 完璧にこっちをメタはって、ダンデまで使って色々言わせて、その結果がこれか!? ふざけんなよ!? バカにしてんのはそっちじゃねぇか! っつうかバカはそっちだ正気か!? こんなことして、ただ燃えるんじゃすまねぇぞ!?」

 

 会場すべての思いを代弁するように、キバナはアリシアに向かって吠える。

 

「それとも何か? 取り消したいってんなら、取り消してくれんのかよ!?」

 

 

「え? ――はい、そのとおりですけど?」

 

 

 こともなげに、アリシア仮面はそういった。

 

「は?」

 

『え?』

 

 それまで黙っていたダンデすら、それには驚いたような声を漏らした。そして気づいて、慌ててマイクを切る。んん、と咳払いをしてみせて、それからアリシアを見た。

 

「いやだって、去年今回みたいに引退を賭けて乱入してきたビートくんだって、そのあと引退して即座に再デビューしてたじゃないですか? 言っときますけど、ガラルの引退と撤回って、めちゃくちゃ軽い制度ですからね?」

 

「そうなのか?」

 

 思わずキバナが、現在のリーグ委員長であるダンデを見上げる。

 

『あ、いや、うん、それであってるぞ?』

 

 慌ててダンデが、マイクを入れ直して答えた。

 

「ほらー、そもそもポケモンバトルってやろうと思えば何十年もできるスポーツですからね、何かのきっかけに引退した人が戻ってきやすい制度になっているんです。その方が何かと都合がいいですから」

 

「いやいやいやいやいや、まてまてこれはそういう話じゃないぞ!?」

 

「そういえばそうですね。キバナ様が不調なんでしたっけ?」

 

「不調だからてめぇが乱入してきたんだろー!?」

 

 そういえばそうでした、と素で驚くアリシア。もはや状況は混乱しすぎて、アリシアに突っ込めるのは逆に冷静になったキバナだけだ。

 そう、キバナはここまでのやりとりで、一周回って冷静さを取り戻しつつあった。

 

「キバナ様の不調は、ちょっとした時間のズレみたいなものです。ココ最近の精神的な心情の変化で、キバナ様の時間は止まったり、進んだり、急な変化を繰り返しました」

 

 そこに、アリシアは淡々と言葉を重ねる。

 

「結果、本人はドツボにハマり、周りも声をかけづらくなり、いよいよ負のスパイラルは加速します。私の言葉や煽りだって、だんだん聞きすらしなくなっていったでしょう」

 

 これでも、声は前々からかけていたのだけども、とアリシアは唇を尖らせる。

 

「じゃあ、どうすればいいのかって、簡単です。なにもないなら、なにか新しいことでも始めてみればいいのでは? それこそコンテストとか、自撮りとか」

 

「いや、お前、そんな単純な――」

 

「単純なことなんです。今、考えてもみてくださいよ。この場で、冷静に、何をしたいのか。今なら考えられるでしょう?」

 

 そう言われて、キバナは少し考えた。

 

 今の自分がどうしたい?

 そんなこと――

 

 

「……考えてもみなかったな」

 

 

 そうだ、キバナは目標を失ったという過去にとらわれていた。だから、今のことに気をかけられなかった。不調の原因は時間のズレだとアリシアは言う。なら、きちんと時間を戻せば、不調は解決する。では、戻すべき時間とはいつだ?

 

 ――今、しかない。

 

「俺は……」

 

 こうして冷静になってみて、考えること。

 今、自分がしたいこと。そんなこと、一つしかない。

 

 

「とりあえず、目の前のアホみたいな煽りしてきやがったクソガキをぶっ潰す」

 

 

「ですよねー」

 

 アリシアは、そして観客は、思わずそれに笑ってしまった。

 がやがやと、会場に笑いとざわめきが漏れ始めた。

 

「でも残念でしたあああああ! 状況的にキバナ様は完全に詰んでます! こっから逆転はできませんよー!!」

 

「……てめぇ!? まさかこのために、この状況をつくりやがったか!?」

 

「当たり前じゃないですか!!!!」

 

 そこで、初めてアリシアにブーイングが飛んだ。

 

 あれだけ言葉を連ねて、さんざんキバナをこけにして。ブーイングが飛んだのは、そこだった。それくらい、あの時のキバナは見ていられなくて。

 そこで、煽りを入れるなんて発想は、ガラル中、どこにおいても、ありえなかった。

 

「いや、あるぜ――今回つれてきたフライゴンには、じわれを覚えさせてある」

 

「ダイマックスしてると効きませんけど……」

 

「オイオイオイ、忘れたのかてめぇ、今の俺は絶不調なんだぜ? じわれなんざ当たるわけねぇだろ」

 

 キバナは、スマホロトムを構えて、それを顔の前にかざした。

 

 そのまま、上に持ち上げて。

 

「――逃げるのか?」

 

 

 笑みを浮かべる。対戦時に、彼がいつも行う、豹変のパフォーマンスだ。

 

 

「……」

 

 アリシアはそれに少し固まって。

 

 笑みを浮かべて。

 

「やってやろうじゃないですかああああああああああ!!!!」

 

 

 そして、ドリュウズごとじわれにのみこまれた。

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