SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名   作:暁刀魚

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SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名

 冬が春へと移り変わる、隙間の季節。

 その日、アリシアの姿はとある大きな書店にあった。彼女がここにいる理由は簡単で、アリシアが座る席の後ろにはでかでかと「アリシア著作発売記念サイン会」と書かれていた。

 今日は、アリシアが出すこととなった本「SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名」の第一巻「ジムチャレンジの話」の発売日だ。

 

 そんな中、アリシアはまだ開演していない会場で、スマホロトムを非常に楽しげに眺めていた。いわゆるエゴサの最中である。

 

「……お」

 

 そして、気になるツイートを見つけたのか、アリシアは笑みを浮かべたまま手を止めた。

 

「メロン様……今はシンオウにいらっしゃるんですね」

 

メロン シンオウ探検中!@MELOM361

そういえば、今日はアリシアの本の発売日だったね。アタシはまだ買えないから、コメントだけになっちまうけど。おめでとう、アリシアのおかげでアタシは今ここにいる、って面もある。これからも、楽しいつぶやきでガラルを盛り上げてほしいね!

 

「なんで伝説のポケモンさんと一緒に写っているのでしょう……」

 

 メロンのつぶやきの直後に上げられた、謎の遺跡の前で一匹のポケモン、レジギガスとツーショットを決めるメロンは楽しげだが、そんな場合なのだろうか。大丈夫なのだろうか、アリシアに懸念がよぎる。

 まぁ大丈夫だろう、と気を取り直しつつ。

 

マクワ@Oriental_melon

@MELOM361

撮ってる場合ですか!? ああ、ボクからもアリシアくんにはお礼を言います。久しぶりに父と二人で水入らずの時間を過ごせています。うるさい人がいるとなかなか落ち着きませんからね! とはいえ、アリシアくんも大概なので、もう少し慎みを持つのがよろしいかと。

 

「余計なお世話です!」

 

 ついでに送られてきた、息子のマクワからのお礼にツッコミを入れつつ、アリシアは時計を見る。そろそろ丁度いい時間である、一旦スマホをしまって、お仕事開始だ。

 周囲のスタッフが呼びかけて、イベントはその少し後にスタートした。

 

「本日はお集まりいただき、ありがとうございます!」

 

 なんて挨拶を済ませてから、アリシアはやってきたファンを捌きはじめる。

 アリシアのファン層は主にジムチャレンジ前の若い子供とその親、青年男性、それから高齢の老人が主だ。とはいえ、母数が多いためあまり比率が気にならないのと、今日は平日であるため青年男性の姿は少なく、年齢層は比較的ばらけていると言える。

 

 差し出された本に一人ずつ、話をしながらサインをしていき、最後に握手をしてから送り出す。アリシアの対応は流石に手慣れたもので、とても丁寧でスムーズだ。

 数百人単位で集まった人々が、流れるように捌けていく。

 

 そして……

 

「どうも、来てあげましたよ」

 

「こ、こんにちは……」

 

 知った声が聞こえたアリシアは、はっと顔を挙げる。

 

「ビートくんに、オニオンくん。どうもありがとうございます」

 

 若干ニヒルな笑みを浮かべるビートと、あいも変わらず仮面を被ったオニオンのコンビだ。同年代の男子ということで、何かしら目的が同じ場合、この二人は共に行動することが多い。

 

「今日はホップくんは?」

 

「先約がありまして」

 

 もうひとり、ビートの同期のホップもここに加わる事が多いのだが、今日は不在だ。ということは、十中八九先約はもっと親しい間柄の人物だろう。

 つまりユウリとダンデである。

 

「えっと……おめでとうございます。帰ったら、すぐに読みます……」

 

「ありがとうございます、オニオンくん。オニオンくんとのこともバッチリ載っていますから、是非」

 

 そう言って、さっとサインを書いてから本を手渡す。オニオンがそれを抱えるように受け取ると、ガッチリと握手を交わした。周囲でカメラのシャッターが切られる音がきこえる。有名人同士なのだから、当然といえば当然だ。

 

「ボクからは……お祝いの代わりに、軽く発破でも」

 

「というと?」

 

「ボクもオニオンさんも、共に君と同じく来年はメジャークラスです。そして、来年は優秀な成績を残せると確信できるくらい、ボクは仕上がっています」

 

 きっと、オニオンさんもね? とビートはオニオンの方を見る。オニオンはびくっとしてから、少しだけ仮面の奥の瞳が鋭くなった。

 

「というわけですから、くれぐれも油断はなさらないように、ましてやセンチメンタルに陥って、スランプに逆戻りでは、現ガラル最強の名が泣きますよ?」

 

「もう、またその話ですか」

 

 苦笑しながらも、アリシアはビートと握手を交わす。あれはもう、一ヶ月以上前の話だというのに。未だに彼は当てこするのだ。

 

「それに、私だって常に進化しています。特に今年はアローラ旅行でバッチリ修行してきたんですから」

 

「自分で旅行って言っているじゃないですか」

 

 ビートのツッコミを無視して、二人を送り出す。はいはい、と呆れたビートがため息を付いてその場を後にし、そしてオニオンがそれに続く。

 そこで、

 

「あの――」

 

 オニオンが振り返った。

 

「なんです?」

 

「……優勝するのは、ボクです」

 

 最後に、そう力強く宣言して、オニオンは立ち去った。一緒に行動するビートも驚いたようにオニオンを見ている。アリシアも、少しポカンとして、

 周囲の歓声で我に返った。

 

 

 次にやってきたのは、見知った三色のトリオだ。

 カブ、ヤロー、ルリナの三名。全員、手にはアリシアの本を持っている。

 

「やあ、元気そうだね」

 

「来たわよ」

 

 カブとルリナが、それぞれ挨拶をする。一番手、ルリナの本にサインをしながら、アリシアは返す。

 

「皆様、今日はありがとうございます。お忙しい中だったと思うのですが……」

 

「いやいや、なんてことはない。ぼくらは今年はジムの移転がなかったからね、去年と違って大変ということはない」

 

「あはは、言われていますよルリナ様」

 

 カブの言葉に笑うアリシアと、それに唇を尖らせるルリナ。

 

「別にいいでしょう、ヤローもなにか言ってやって頂戴」

 

「ははは、まぁ、とりあえずアリシア、おめでとう」

 

「話をそらしたわね!?」

 

 三人は、常に数百人のジムトレーナーを抱える大きなジムのジムリーダーだ。彼らがジムの移転をあまりしないのは、少しでも負担を軽減するためであり、彼らが抱えるジムトレーナーのためでもあった。

 だから、そうでなかった去年は大変忙しかったのだが、それはそれ。

 

「まぁ、なにはともあれ、おめでとうアリシア。本を出した感想は?」

 

「思った以上に、いろいろな人に手に取っていただいて、本当にありがたい限りです。内容の感想はまぁこれからですが、そもそも内容はまぁあまり話題にはならない気もしますし」

 

「とはいえ、ぼくのように君のSNSでの武勇伝を見たことの無いものも多い。特に若い子はスマホロトムを必ずしももたせてもらえるわけではないしね」

 

 カブが言う通り、アリシアの本を買う者は、比較的幼い子供と高齢層が多い。当然といえば当然で、アリシアの本は既にSNSでつぶやかれたものをまとめたものであるから、青年層は初見で無い者が大半だ。

 

「そういえば“アレ”のあと、貴方すぐにアローラに行っていたから、会うのは久しぶりになるんだけど」

 

 と、ルリナも一ヶ月と少し前のあの出来事に言及する。

 あははと苦笑するアリシアに、カブが不思議そうに聞いてきた。

 

「何かあったのかい?」

 

「色々あったんだよ。まぁ、今は大丈夫そうだ」

 

 ヤローがそれに応える。アリシアとしてはあの一件は色々と自分から語りずらいので、ありがたい。

 

「まぁ、見ての通りですよ。詳しくは“最後の本でまとめます”ので。それで読んでみてください」

 

「わかった。ありがとう、楽しみにしているよ」

 

 そう、とルリナも納得して、二人は握手して帰っていく。最後にヤローとも握手をすると、ふとヤローは立ち止まり。

 

「……頑張ってね」

 

「あ……」

 

 ぽん、とアリシアの頭を撫でると、いつものように、草原のような笑顔を浮かべて去っていった。

 

「ありがとうございます!」

 

 何だか、未だに子供扱いだな、と思いつつも、嬉しさを顔ににじませて、アリシアは三人を送るのだった。

 

 

 そして、丸一日開催予定のサイン会は昼で一旦休憩となった。アリシアが一息付きながら、お弁当を食べている。ちなみに母のお手製だ。

 同時にPoketterをエゴサしていると、ポツポツと本の感想を見ることができた。

 

 それに顔をほころばせていると、ふと通知に気がつく。

 相手は……

 

キバナ 竜の穴は相変わらずだぜ@KIBANA_Galaxy

@Alicia_butterfly

よう、元気にしてるみたいだな。おれさまは今ジョウトの竜の穴にいて、直接会いに行ってやれねぇから、こうしてここでつぶやくぜ。お前なら昼頃にでもみんだろ。まずは本の出版おめでとう、これくらいは素直にいってやるぞ。

(竜の穴で自撮りするキバナ)

 

「相変わらずはどっちですか?」

 

 ツッコミを入れながら返信すると、すぐにリプが帰ってきた。

 

キバナ 竜の穴は相変わらずだぜ@KIBANA_Galaxy

@Alicia_butterfly

いいか? おれさまは去年より、一昨年より更に強くなる! この修業もそれの一環だ。お前がのんきに旅行先で自撮りしている間も、おれさまのドラゴンストリームは猛烈パワーアップだ! 今ならメガシンカもできそうな気がするぜ。

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

@KIBANA_Galaxy

何だかセンシティブな意味に聞こえますね!

 

キバナ 竜の穴は相変わらずだぜ@KIBANA_Galaxy

@Alicia_butterfly

やかましい。とにかく、俺から言いたいことは唯一つ。お前はお前だ、胸を張れ、そしておれさまのナックルジムを全力で盛り上げろ! そして最高潮のところで、おれさまが帰還する! そのためにな!

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

@KIBANA_Galaxy

絶対に嫌です!

 

 なんだかんだ、キバナもアリシアを気にしているようだ。アリシアに対して、素直な気遣いはしないだろうが、「気にするな」。その一言で彼の意図は重々に理解できる。

 

「……余計なお世話ですよ、もう」

 

 ただ、そう思われても仕方がなかったな、とあのときのPoketterでの錯乱具合を思い出して、アリシアは少しナーバスになった。

 とはいえ、過去の話だ。

 

 そしてもうひとり。

 

ネズ ワールドツアーinカロス@Nezu061

やあ、今日はアリシアくんの本が出る日だったね。ボクは名前の通りカロスにいるから買えないけど、マリィが買いに行くそうだから、そろそろ感想が聞けるかな? 他にも用事があるっていってたから、もう少しかかるかもしれないね。

 

 ネズも、メロン、キバナと同じく他地方に行っていて、今日直接来られないメンバーだ。だからか、こうしてPoketterで言及してくれている。きっと、ここならアリシアも見てくれるだろうから、と。

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

@Nezu061

ありがとうございます! と言いたいところですが唐突なエモ爆弾を食らってください!

(マリィ、ユウリが二人で自撮りをしているところに、アリシアが飛びかかる写真)

 

ネズ ワールドツアーinカロス@Nezu061

@Alicia_butterfly

おっと大ダメージだ。これはアリシアくんを吊るさな委員会を立ち上げないといけないね。

 

「怖い!」

 

 思わず声を上げてしまった、彼はあのエール団の長だ。やろうと思えば、アリシアが吊るされている画像くらいすぐにコラージュで用意できる。

 コラージュするまえに、検索サイトを漁ればでてくるのはここだけの秘密。

 

ネズ ワールドツアーinカロス@Nezu061

彼女は相変わらずですね、お土産に、楽しい話をいっぱい持っていけば、きっと喜んでここでつぶやいてくれるだろうから、今から楽しみだよ。

 

「ネズ様……」

 

 それは本当に楽しみだ。何だかんだ、お互いに謎のプロレスをしょっちゅう行う間柄なだけに、ツボ、というものを理解している。

 

「そういえば、今ガラルにいらっしゃらないのはもうひとり……」

 

 そういって、Poketterを見ると……

 

ポプラ 動画は毎日20時投稿だよ!@pinkmaster910

なに見てんだよ。

 

 と、トップに固定ツイートが貼り付けられていた。

 

「わ、解ってらっしゃる」

 

 今更自分から語ることはない、と言わんばかりのツイートだ。発言は今日の0時であることから、おそらく掲示は今日だけだろう。

 

「まぁでも解ってますよ、だいたいこういう日の動画はデレるんです。きっと私の本のレビューです」

 

 とはいえ、本の内容にまでデレるわけではないので、凄まじくボロクソに言われるのだろうが、それはそれ。ポプラ様はぶれないなぁ、と思いつつアリシアは昼食に舌鼓を打つのだった。

 

 

 

「来たけん!」

 

「こんにちは」

 

 午後、やってきた有名人はマリィとサイトウだ。ここにユウリ、アリシア、ルリナが加わらないのは、なかなか珍しい話である。マリィもサイトウも、どちらかといえば受け身なのだ。

 

「おやおや、今日はふたりでデートですか?」

 

「ちょ! 何いってんの!?」

 

 アリシアのからかいにマリィが慌てると、

 

「そうですが?」

 

 サイトウが真顔で肯定した。

 

「サイトウ!?」

 

「? デートと言ったのはマリィでは?」

 

「……それは言葉の綾やけん」

 

 うう、と赤くなる顔を隠しながら、アリシアが書いたサインを受け取るマリィ。そしてふとサインをみて、

 

「……なんで#マリィちゃんかわいいって書いてあると?」

 

 青筋を立てながら、笑顔でアリシアに問いかけた。

 

「私の方には#サイトウちゃんかわいい、と」

 

「事実を書いて何が悪いんですか!」

 

 アリシアは居直った。

 周囲から歓声が上がる。主に青年男性層。

 

「ああもう、こんバカ……」

 

 顔を赤くしながら、握手をしてマリィが一歩下がる。サイトウも握手をすると、

 

「私はよくわかりませんが……」

 

 ふと、サイトウが真面目な声音でいう。マリィも、アリシアも、あの件のことか、と意識を向けると……

 

「アリシアさんもカワイイのでは?」

 

 おもわず、二人揃ってぶっと吹き出した。

 キョトンとするサイトウに、二人で君はそれでいいんだよ、と言いつつ、マリィとアリシアは目線を合わせる。

 

「……まぁ、そうやね」

 

 ふと、マリィは思案して、

 

「あの時のアリシアは、何だかんだ珍しく可愛げがあったばい」

 

「珍しく!?」

 

 思わずアリシアが叫んでしまった。周囲からの笑い声を威嚇しつつ、アリシアは大きく息を吐いて。

 

「まぁ、今となっては笑い話ではありますけどね。ともかく、今日はありがとうございました」

 

「こちらこそ」

 

 サイトウがそう返して、一礼すると、二人はその場を後にするのだった。

 

 

 それから更に時間が経って、もうすぐイベントは終了という時間帯、人もだいぶまばらになってきて、少し一息つけそうだ、という頃だ。

 そろそろだろうな、と思っていたメンツが、思っていた通りの時間にやってきた。

 

「よう!」

 

「やっ!」

 

 やってきた4人のうち、二人が元気よく挨拶をする。見知った二人だ。

 

「ダンデ様、ユウリちゃん」

 

 ――ガラルの新旧チャンピオンが、揃い踏みだった。

 

「そちらのお二人は」

 

「こんにちわだぞ! こういうとこだとポケスロン以来になるかな、ホップだ。よろしく!」

 

「ええと……」

 

 一人は、ホップ。ユウリの幼馴染で、アリシアとは何度か面識があった。ユウリを始めとした同期組の4人が仲がいいので、そこにお邪魔すると、よく顔を合わせる。こうして、ひと目に付く場所であうのはポケスロン以来だ。

 もうひとりは……こちらも顔は知っている。

 

「あの、ファンでした……! じゃなくて……えっと、普通にやればいいのよね? ……ソニアよ。いつも楽しくSNSでのツイート、見させて貰ってるの」

 

「ええはい、ご存知ですよ。ちゃんとご挨拶するのは初めてになりますか。アリシアです、よろしくおねがいします」

 

 実際、ファンなのだろう。ソニアはかなり嬉しそうにアリシアと握手を交わすと、それから恥ずかしそうに、順番が逆だった、と恥ずかしそうにする。

 

「ははは、もう少しリラックスしてくれていいんだぜ、ソニア!」

 

「もう……貴方はいつだって自然体でいいわね、ダンデくん」

 

 ため息を付く、二人はいつもこんな感じなのだろうか、とアリシアが眺めていると、ダンデが一歩前に出た。

 

「まずは、おめでとう。こうして、新たな一歩を君が踏み出すことを、俺は嬉しく思う! コンテストのときもそうだったが、君はそうやって、新しいことに挑戦しているときが一番輝いて見えるぜ!」

 

「それは……ありがとう、ございます」

 

「ははは、新しいことを始めると、不安になるよな。みんながそれを受け入れてくれるのかって、俺だって解るぜ。バトルタワーは、かなり大掛かりな試みだった!」

 

 そういえば、バトルタワーは他の地方では珍しくないが、ガラルではダンデが運営を始めるまで存在しなかったのだ。これはかなり珍しい。

 アローラでだって、タワーに相当するバトルツリーの運用は最近の話だが、それ以前からバトルロイヤルの施設があったのだ。

 

「でも、それで臆さないことが大事なんだ。臆さず前に進んで、楽しめれば君の勝利だ! それは、きっと何処でだって変わらないと思う!」

 

 本当に、ダンデは眩しいな、と素直に思う。

 彼には常に挑戦的な、前向きエネルギーが満ち溢れている。いつだって子供っぽくて、いつだって前のめりだが、彼は怖気づかない。

 

 それが、ダンデというスタイルなのだから。

 

「少し長く話こんじゃったかな。ユウリ、なにか言っておくか?」

 

「私? 私は……そうだね、一言だけ」

 

 そう言って、ユウリがダンデに促されて、前に出る。

 

 現チャンピオン、ユウリ。ガラルで最も強い者。前に出て、ガラルを牽引する義務を背負う者。けれど、彼女の顔に恐怖はない。

 ただ、それを楽しんでいた。

 

 きっと、これまでも、そしてこれからも。

 彼女は、楽しんでいるからチャンピオンなのだ。

 

 

「――ね? 言ったとおりになったでしょ?」

 

 

 ただ一言。

 ユウリはアリシアに、勝利宣言とばかりに、笑顔で告げるのだった。

 

 

 

 

 

ユウリ@Juri_NEXT

@Alicia_butterfly

それは――

 

 

ユウリ@Juri_NEXT

SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー、だよ。

 

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

…………わ、私の本の名前じゃないですか!

 

ユウリ@Juri_NEXT

端的に、とは言ったけど、一言に、とは言ってないよね?

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

……詐欺です! 反則です!

 

ユウリ@Juri_NEXT

あはは、聞こえなーい。

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

で、でもですが、これで全てを内包しているとは……

 

ユウリ@Juri_NEXT

なんで? SNSでなら、炎上もするし、ガラルジムリーダーはそれだけでプロとしての能力を証明するよ? アリシアの上げた要素は、全部入ってる。

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

め、メガネ……

 

ユウリ@Juri_NEXT

この情報で、この世でメガネをかけているのはアリシアだけだ。メガネは自分の一部なんだよね? じゃあ、アリシアはイコールメガネ。はい、これで証明完了。

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

……い、いやいやいやいやいや

 

ユウリ@Juri_NEXT

でも

 

 

ユウリ@Juri_NEXT

これで、アリシアはガラルのジムリーダーだ。

 

 

ユウリ@Juri_NEXT

あ、アリシアのツイートが止んだ。じゃあ今のうちに、っと。

 

ユウリ@Juri_NEXT

アリシアは気にしすぎだよ。でも、それを気にしすぎって言っても、本人が納得できないよね。だから、言葉で示すしか無い。アリシアに必要だったのは、居場所。それも、ガラルでの居場所。Poketterはガラルにもあるけど、ガラル以外とも繋がれるから、ダメ。

 

ユウリ@Juri_NEXT

だから、アリシアがガラルでジムリーダーである、ということを言葉にする必要があったんだけど、自分で常に答えを右横に置いてあるんだから、わかりやすいよね。

 

ユウリ@Juri_NEXT

確かにガラルらしいって言葉は、「生真面目」とか「お祭り好き」ってことを要約してるけど、でもそれだけじゃあないもの。私には私の個性があるように、アリシアにはアリシアの、みんなにはみんなの個性がある。アリシアは、特別それが濃すぎただけ。

 

ユウリ@Juri_NEXT

でもさ、いいじゃん。それでいいじゃん。何も不思議なことはないでしょう?

 

ユウリ@Juri_NEXT

ジムリーダーには、ガラルには、色んな人がいるよ?

 

ユウリ@Juri_NEXT

ガラルジムリーダーなのに、優しすぎるジムリーダーがいる。

 

ユウリ@Juri_NEXT

感性が人と違って、孤高のカリスマとか言われるジムリーダーがいる。

 

ユウリ@Juri_NEXT

真面目だけど真面目すぎて、ちょっと変な方向に行っちゃうし、そもそもホウエン出身のジムリーダーもいる。

 

ユウリ@Juri_NEXT

いっつも仮面で素顔を隠しているけど、割と素直で普通のゴースト少年なジムリーダーがいる。

 

ユウリ@Juri_NEXT

格闘一直線だけど、可愛らしいところがいっぱいあるジムリーダーがいる。

 

ユウリ@Juri_NEXT

ピンクなジムリーダーがいる。

 

ユウリ@Juri_NEXT

自称エリートの影響されやすい道を踏み外しちゃったジムリーダーがいる。

 

ユウリ@Juri_NEXT

スパルタおかんなジムリーダーがいる。

 

ユウリ@Juri_NEXT

そんなおかんに反抗期なジムリーダーがいる。

 

ユウリ@Juri_NEXT

とってもかわいいジムリーダーがいる。

 

ユウリ@Juri_NEXT

とってもロックなジムリーダーがいる。

 

ユウリ@Juri_NEXT

おれさま系なようで、すごく面倒見が良くて優しい自撮りマニアのジムリーダーがいる。

 

ユウリ@Juri_NEXT

色んな人がいて、全員違うんだ。だったらさ、

 

 

ユウリ@Juri_NEXT

――そんな中に、SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダーがいてもいいじゃない。

 

 

ユウリ@Juri_NEXT

どうかな?

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

…………

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

はぁ……完敗です。

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

そうですよね、そうですよ……考えてみれば、私はたしかに輪の中にはいなかったかもしれません。他とは違うかも知れません。でも、ガラルの人々って、すごく個性的な人ばかり。私なんて、むしろ炎上しなければついていけない雑魚ですよ。

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

見失ってました。私はガラルが大好きで、私はここが大好きで、でもその中にいれるかが不安で。だとしても、そもそも私がガラルを大好きなのは、そこにいる人々が好きだったから。

 

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

――みんなが楽しそうだったから、私はそれが好きなんでした。

 

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

あー

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

あああああああ!

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

頬をパンッ! 二回! 三回! ヨシ!

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

言いますよ! 言っちゃいますよ! 恥ずかしげもなく! 惜しげもなく! 最後に、私は言うんです! いつだって、かわりなく、私の心の底から!

 

 

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

私は! ガラルが! 大好きです!!

 

 

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

だから――

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

ここまで、お読みいただきありがとうございました。「SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名」は、以上を持ちまして終了となります。長かったこの本も、読み終わっていることには、そこそこな時間が経っていることでしょう。

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

その中で、私は多くのことを感じ、多くのことを学びました。多くのことに挑戦し、そして成功や失敗を体験しました。それは、とってもかけがえのないことで、私の人生を切り取った時に、きっととても強く輝いている時間で。

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

私は幸せなんです。そのことを、この場に残すことができたのは。余りあるほどの幸運だったと思います。もう二度と、できないような経験だったと思います。

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

それを残せたのは、皆様がこうして、私と一緒に、ガラルを盛り上げてくれたからで。私が楽しんでいたガラルという場所を、皆様も楽しんでくれたからで。今は、その感謝以外に言葉はありません。

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

これからも、ガラルはきっと続いていきます。ずっとずっと、続いていきます。その中で、私も多くのことを経験すると思います。そのときに、この輝かしい時間を思い出し、糧にして、進んでいくのです。

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

どうか、皆様にもその時間が共有できるものでありますように。どうか、この幸福が皆様にとっても幸運でありますように。これを締めの言葉といたします。

 

 

アリシア SNSサイトにて、ツイ廃と化したガラルジムリーダー総勢一名@Alicia_butterfly

ここまでお読みいただき、まことにありがとうございました。また、どこかでお会いしましょう。




約二ヶ月間の毎日投稿、続けられたのは皆様の応援あってのものです。
長いようで短い時間、この作品をお読みいただきまことにありがとうございました。
またどこかで(もしかしたらこの作品で)お会いできれば光栄です。
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成り行き任せのポケモン世界(作者:バックパサー)(原作:ポケットモンスター)

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総合評価:8772/評価:8.03/連載:104話/更新日時:2026年05月09日(土) 18:00 小説情報


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