周囲120kmだと奥行き40kmと幅が全然違うんですよね。
―――― トブの大森林南部
俺はマーレとアウラと共に木材確保のためにトブの大森林南部に来ている。
大体エ・ランテル方面から森に入って2km程進んだくらいだ。
トブの大森林は南部だけでも大雑把に120*40=4800km²の広さを持つ。
これは現実世界にかつて存在した千葉県(5,100km²)よりやや小さいくらいだ。
トブの東部も西部も同じくらいの面積なので、トブの大森林全体でかつての四国地方(18,800 km²)よりやや小さい、大森林の名に相応しい森だ。
(よくよく考えると広すぎるにも程があるよな。地方丸ごと森って……。
マーレやマーレのシモベ達に管理を任せれば木材に困る事は永久的に無いだろうな。)
「やっぱり、ちょっと薄暗くてじめじめしてますねー。モモンガ様」
「そうだね、お姉ちゃん。木さんも密集してて互いに成長を阻害してるみたいだし」
「動物たちの生活にもちょっと良くないかも。」
やっぱりダークエルフだと着眼点が違うな、俺だと暗い森だな位しか思わないし。
「二人とも別の仕事があって忙しいところ済まないが、建築用の木材を手に入れたいのだ。手伝って欲しい。
私では適当に切ってしまって森にダメージを与えてしまいかねないからな。」
「いえ!モモンガ様のお手伝いが出来るのは嬉しいです。
あちらのお仕事はシズも手伝ってくれてるので、忙しくなる事もありませんし。ね、マーレ!」
「う、うん!ボクの方もソリュシャンさんが手伝ってくれていますし。」
「そうか、では今回もよろしく頼む。
ゆくゆくはアウラとマーレのシモベに仕事を移行していくが最初が肝心だからな。
アウラとマーレ以外に適任者が思いつかなかったのだ。」
トブの大森林を森に住むものの楽園にしたいし、木材も欲しい。
それに俺には判別が付かないが、このあたりにも貴重な薬草が山ほどあるらしい。
林道を整備すればギルドで採取の仕事も増えるだろうしな。
「モモンガ様に頼りにしてもらえて光栄です!!
ご期待に応えられる様、全身全霊で勅命にあたります!」
「ぼ、ボクもですっ!」
「あぁ。頼りにしているぞ」
元気に返事する二人の頭を撫でるとアウラとマーレは嬉しそうに目を細める。
アインズ時代は威厳を優先しすぎてこういうことも出来なかったな。
「そ、それじゃあ始めますねっ!」
マーレが
そして伐採する予定の木々に対して杖で目印を付けていく。
マーレの表情は非常に真剣で、彼はやはり男なのだと思わせる凛々しさが見て取れる。
「ああいうときのマーレってカッコイイですよね。」
「そうだな、とても頼もしいよ。」
後を追う俺とアウラの話し声が聞こえたのか、マーレが後ろを振り返る。
そうしつつも、目印をつけるのも森を駆けるのも忘れてはいない。
「え? 何か言った? お姉ちゃん。」
「マーレが頑張ってるな!ってモモンガ様と話してたの。」
「うんっ!」
元気に返事をしてマーレは間伐材の剪定作業に戻っていく。
その微笑ましい姿に俺とアウラは顔を見合わせて笑う。
そして2時間位経っただろうか、周囲1kmのチェックが終わり始めにいた所へ戻ってきた。
俺にはここが始めにいた場所かは分からないのだが、アウラとマーレが言うのだからそうなのだろう。
そして間伐材の本数は全体の木の1/4という結構な数に上った。
俺は10,000本を超えたあたりから数えるのをやめたので、大量の本数という感覚しかない。
「今回伐採するのは大体100,000本くらいですかね。」
「そ、そんなに切って大丈夫なのか?」
アウラの目算に対して流石に多すぎじゃないかと思い聞いてみるが
「全然大丈夫ですよ。ここは広葉樹が多いですからね、ある程度伐採しないとお互いを邪魔しちゃうんですよ。」
まぁプロが言うのならそれが正しいのだろう。
「ちなみにどういう基準で間伐材を選んだんだ? 後学の為に覚えておこうと思ってね。」
「えっとですね、これとこれなんですけど、幹の間が4mくらいしかないです。
上を見ると2本の木の枝が重なり合って日光が十分に得られなくなっちゃってるんです。
それに日光が地面に届かなくなって、低木や草木、動物と共存が出来なくなっちゃって……」
確かに上を見上げると木漏れ日なんてモノはないに等しい。
低木は殆どなく背の低い草やツタ・シダ植物に苔ばかりだ。
「これは木々が十分に成長できない。つまり森が健康な状況ではないという事か?」
「はい。暗いところを好む動植物も居るので全部切っちゃうのはダメですけど。
森全体がこういう状態なのは良くないですっ。」
森の中央部ならばこういう暗い状況もいいかもしれないが、確かに森に入って1,2km程度でこれは良くないのかもしれない。
元の世界では見る事のできなくなった大切な自然だ、しっかり護っていかないとな。
「ですから、こっちの印をつけた木は上手く育てなかった木なので森のために切っちゃうんです。」
「確かに幹も残す方より細いし、グネグネと曲がっているな。」
「はい。木にストレスが掛かっちゃって上手く育てなかったんです。」
「そうか……ちなみにこちらの木は? どちらも同じくらいに見えるが。」
「こっちはですね――――上を見てください、モモンガ様。」
俺は再度目線を上にあげると、木の
「なるほどな。こっちは切れない訳だ。」
「はいっ!」
「それでは伐採していくか。」
色々と聞いた後、そろそろ伐採を始める事にした。
たくさん切らなければならないのだ、あまり時間をかけるのもアウラ、マーレに悪いだろう。
「あ、ちょっと待ってくださいモモンガ様っ!
折角切るんですから、もう少し成長させたほうがいいかなって!」
「成程、確かにマーレの言うとおりだ。
という事は
「モモンガ様っ!ボクの使える魔法を覚えててくれたんですねっ!! 嬉しいです!!!」
「ハハハッ。マーレの魔法もアウラのスキルもちゃんと覚えているぞ。」
「ありがとうございます!モモンガ様! 嬉しいね!マーレ!」
「うんっ!」
無邪気にはしゃぐ二人の姿を見て俺の心もほっこりとした感じになる。
「でも
「補助系のスキルか魔法かな?」
「はいっ!
マーレがそう唱えると、緑色の光がマーレを中心に円状に広がっていく。
光はものすごい勢いで広がっていき、木々に遮られて光は見えなくなっていく。
マーレが唱えた
この世界ではフレーバーテキストにある、植物に対する成長補助も含んでいて大地の地力を回復・増加させる能力も備わっている。
「それから、
マーレが植物の成長を加速的に促進させる魔法を唱えると伐採予定の植物が見る見るうちに生長して行き、他の木より頭二つほど伸びていく。
大地の養分も
この魔法で森全体を成長させることも出来るが、マーレ的には出来るだけ自然に育てたいそうだ。
これだけ広ければ、無理に森を成長させなくてもいいだろう。
「じゃあアタシはマーレが育てた木を伐採していきますね。」
アウラは一緒に来ているカメレオン系クアドラシルと狼系フェンリルと共に木の伐採作業に取り掛かる。
クアドラシルの長い舌が木に絡み付いて、木を切っても倒れないように補助した後、フェンリルが鋭い爪で木を根元から切る。
そしてクアドラシルが舌を器用に動かして、アウラの背負う
勿論ランドセルカラーは赤だ。そしてマーレも黒のランドセルを背負っている。
昔は青とかピンクとか個性があったらしいが、今の時代そんな贅沢を許されるのは富裕層くらいだ。だから俺は見た事が無い。
二人とも
敢えて
何故かユグドラシル産の収容系アイテムに現地のものを入れるとユグドラシルにある似た物質に変換されるのだ。
トブの大森林の木材だと『オーク樫』という楢なのか樫なのか分からないアイテムに変化する。
しかも丸太状態に勝手になり、水分が飛んで直ぐに建材として使えるのだ。
いかにアイテム数が莫大なユグドラシルでも生木状態なんて区分を作らなかった事が原因だと思う。
「不思議ですよね~。幹の太さまで均一になるなんて。」
「そうだな、枝までしっかり切られているからな。恐らく総質量から等価の木材に変換されているのだろう。」
こういうときユグドラシルのシステムは便利だ。
流石にゲームでは現実ほど細かくはないからな。
「さて、私も手伝おうかな?」
俺はグレートソードを上位道具生成で作って木を切って、倒れる前に木を持ち上げる。
40mくらいに育った木でもLv100の俺ならば重いということはない。
まぁ、マーレは片手で引っこ抜いてるがな……
(マーレっ!恐ろしい子ッ!!)
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森を作り出して相手の視界や動線を遮る。
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植物系オブジェクトを強制的に成長させて相手の視界や動線を遮る。
森林創生の下位互換魔法。その分MP消費は低い
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一定時間植物系の魔法の効力が増加する設置型補助魔法。
効果範囲は半径1km。魔法効果範囲拡大化を使用時は2kmとなる。
この世界では植物の栄養源となる窒素・リン酸・カリウムが豊富な弱酸性土壌となる。
これは連作障害さえも無効化できる。
水曜日は投稿できるかわからんとです。
ストックがっ!