モモンガ式領地経営術   作:火焔+

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アゼルリシア山脈:地図を見る限りトブの大森林の1.5倍くらいですかね。
現実換算だと1~2周りデカくした奥羽山脈くらいですかね?(約25,500 km²)
でけぇ!!

ほとんど雪山だから標高は相当高そうですね。
季節風に関しては夏は王国側から冬は帝国側からですかね。王国側は土地が肥沃らしいので。
そこまで設定があればorそもそも季節風があるのか不明ですが……

※忘れてました。
 無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)はこの世界にてマジで無限になりました。
 ただ無限をゴリ押しして稼ぐ事はしませんのでご安心を。



03. 開拓村の建造(ダイジェスト:石材確保)

―――― アゼルリシア山脈最北端

 

 木材確保をアウラとマーレに任せて、次に石材確保へアゼルリシア山脈最北端へ向かった。

 そこにはアルベドとコキュートスが先に向かっているはずだ。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 転移でアゼルリシア山脈最北端に移動するとそこは断崖絶壁だった。

 

(うわー!これ刑事モノのサスペンスで犯人が追い詰められる場所だ!)

 

 崖の高さは目算200m下の方は波が崖にぶつかって水飛沫を上げていた。

 

(雰囲気あるな~。この体なら200mから落ちてもかすり傷一つ付かないけど、人化状態だと恐怖で意識手放しちゃいそう)

 

 

 最北端で石材確保するには理由がある。

 こちら側はアゼルリシア山脈が海まで繋がっているので交易ルートが存在しない。

 この岩山を削ってルート整備すれば物流が出来上がるわけだ。

 海上ルートは強力な魔物が生息しているため全く使われていない。

 

 といっても直ぐではなく、王国側に要塞を建てつつ休戦期間の5年以内に出来上がればという目論見だが。

 

 

 

「アルベド、コキュートス。調子はどうだ?」

 

「モモンガ様、ようこそいらっしゃいました。」

 

「モモンガ様、ゴ足労ヲオカケシマス」

 

 アルベドとコキュートスが手を止めて臣下の礼節を取ろうとするのを俺は手を出して不要だと留める。

 

「手を止める必要はない二人とも。」

 

 石材の切り出しは斬撃武器の心得がある二人、アルベドとコキュートスに任せている。

 こちらも最終的にはコキュートスのシモベが引き継ぐ予定ではあるが。

 

「「ハッ!!」」

 

 アルベドとコキュートスが作業に戻るのを見る。

 コキュートスは4本の手に伝説級の斬撃武器を持ち、器用に石を切り出していた。

 対してアルベドは対物体最強のワールドアイテム真なる無(ギンヌンガガプ)を斬撃形態に変化させて振るっている。

 アルベドが真なる無(ギンヌンガガプ)を振るうと何故か縦に振るったはずなのに立方体の岩石が切り出される。

 これは真なる無(ギンヌンガガプ)の能力らしく、物体を自分の思ったとおりに切る事が出来るらしい。

 

(縦に振るっただけで3次元的に刃が入るなんて便利だな。いや、こんな事にワールドアイテム使うのもどうかと思うが……だが、折角所持させているのだから使うのは間違ってはいないのか?)

 

 アルベドとコキュートスが切り出した石材の大きさを測ると一辺が1mで誤差は1mm未満だった。

 つまり精度は±0.1%ということになる。

 

「すごいな……。ここまで精度を出せるとは。」

 

「Lv100の戦士職であれば他愛ない事です。モモンガ様も完璧なる戦士(パーフェクト・ウォリアー)を御使用になれば容易いかと。」

 

「ふむ……。では、私もやってみるかな?」

 

 完璧なる戦士(パーフェクト・ウォリアー)で戦士職のクラスに再変換し、上位道具創造(クリエイト・グレーター・アイテム)で作成しておいたツーハンデッドソードを片手で持つ。

 

「わたくしが手取り足取り腰取りお教えいたしますわ!」

 

 バサバサと揺れるアルベドの腰の羽が下心丸出しである事を教えてくれる。

 

「アルベド。そういうのはいいから。」

 

「あぁ~ん! 御無体ですわ~。」

 

 シュンと凹むアルベドを見つつ、仕方ないと溜息をつく。

 

「守護者統括の名に恥じぬ振る舞いであるのであれば、アルベドに教えてもらおうかな?」

「喜んで!!」

 

 喰い気味に返答するアルベドが元気を取り戻したのを確認し「ちゃんと」教えてもらう。

 

「面白いな。斬撃で岩石がバターの様に切れていく。」

 

 本物のバターどころかマーガリンも見たことはないんだけど、こういう硬いものがスパスパと切れるときの例えらしい。

 1m³の石材を切り出して一辺の長さを計ると、いい精度の石材である事が確認できた。

 

「アルベド、ありがとう。お前のお陰で興味深い経験をする事が出来た。

 アルベドは中々モノを教えるのが上手いな。直ぐにできるようになったよ。」

 

「モモンガ様が愉しまれたのでしたら私にとっても幸福な事でございます。

 勿論モモンガ様がお望みならば『何時でも』『何でも』お教えいたしますわ!

 

 モモンガ様と『初めての共同作業』、一生忘れられない経験でございます!」

 

(はぁ……こういうところが無ければなぁ……)

 

 独りでトリップしているアルベドを見つつ、コキュートスが自分の存在を主張してしまう。

 

 

「ワタシモ居ルノダガ…………」

 

「あら? コキュートス居たの?」

 

「アア……」

 

「御免なさいね、全く気がつかなかったわ。

 それに今はモモンガ様の勅命を全うしている最中よ。

 あまり無駄口は叩かないようにしなさい。」

 

 どの口が言うんだとは思ったが、バカ正直に言うのは地雷を踏むだけだ。

 コキュートスも察したのだろう。

 

「スマナイ……。邪魔ヲシタヨウダ。」

 

「構わないわ。」

 

 

「何か……済まないな、コキュートス。」

 

「イエ、勿体無イオ言葉。」

 

 

「さて皆、そろそろ作業に戻ろうか。勿論アルベドもな。」

 

 俺達は尋常ではない速さで1m³の立方体を次々に切り出していく。

 重さ2トン(石の比重は2.2~3.0が多い)を超える石材がドンドン作り出されては無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)にしまわれていく。

 アルベドとコキュートスの無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)も二人専用にデザインが通常のものとは異なっている。

 アルベドは黒のショルダーポーチ、コキュートスは青白い登山用のリュックサック型だ。

 因みにデザインは俺の独断で決めさせて貰った。

 それがどうも好評らしく階層守護者全員とセバスの物を俺がデザインしている。

 

 

 

 こうやって俺達が切り出した石材と木材は開拓村で使うつもりだったのだが……

 

 

―――― バハルス帝国 皇都アーウィンタール

 

「これらの木材、石材を売ってほしいと?」

 

「はい。金額の方は勉強させていただきます。」

 

 俺が相対しているのは帝国貴族で建築、建材、道路系インフラの利権を持っているマイル卿とヤード卿だ。

 

 何故こんな事になったかというと、俺がアーウィンタールの屋敷にいるときに、パンドラズ・アクターが石材・木材の話をメイドたちにも聞こえるようにしたからだ。

 メイドたちは貴族令嬢で固められているため、こういう話をすると直ぐに宗家へと伝えられてこのような状況になった。

 

「これくらいで如何でしょうか? 勿論、資材の輸送はこちらが請け負います。」

 

「ふむ……。では、資材搬送をこちらで請け負うとしてこの金額は如何でしょう?」

 

 パンドラズ・アクターがマイル卿とヤード卿と金額のやり取りをしているのを俺は堂々とした様子で頷くだけだ。

 素人の俺が話しに入っても邪魔になるだけだし、パンドラズ・アクターはこのあたりはめっぽう強い。

 

「宜しいのですか? でしたら――――」

 

「なるほど、それならば――――。

 そういえば、卿の採石場で余剰の石材があると伺いましたが――――」

 

「そちらをお買い上げ頂けるのであれば――――」

 

「いいでしょう。ではそれで。」

 

「因みにこの特需は何時まで――――?」

 

「早ければ半年、遅くとも一年が目処でしょう。」

 

 

 

(さっぱり分からんが、終始パンドラズ・アクターがイニシアチブをとっていた事だけはわかる。)

 

 パンドラズ・アクターが商談の終了の合図となる目線をこちらに向けてきたので、俺は取りまとめを始める。

 

「マイル卿とヤード卿、良い商談が出来た様で何よりです。」

 

「こちらこそです。モモンガ大公閣下とはご縁を大切にさせて頂きたく。」

 

 

 

「パンドラズ・アクター、今回はどのくらい儲けたのだ?」

 

「1トンの売却で12トンの資材になりました。

 これは資材の輸送をこちらで請け負うからの価格ですね。輸送を半々とした場合は1:8でしたでしょう。」

 

「重量物だから輸送コストは大きいのだな。」

 

「はい。また、あちらの余剰資材を買い上げることで収まる範囲内での取引ですので、金銭のやり取りは最小限となります。

 つまりあちらとしての支出は最小限となります。なので更に2割分割り引いて貰いました。

 今回は物々交換という感じですね。」

 

「なるほど、普通に取引しただけだと1:6の割合、半分にしかならなかったわけだ。」

 

「はい。この世界は馬車での輸送が基本ですからね。輸送コストはバカにならないでしょう。

 それに余っていた資材が有力な商品になり、敢えて数を絞ることでプレミア価格で売るつもりでしょう。」

 

「ふむ。同じ格の貴族で隣だけ質の高い建材で立てられた屋敷ならば、もう一方の貴族は射幸心を大きく煽られるであろうな。

 私にも記憶がある。」

 

 そう、メンバーにシューティングスターを500円で引かれた時は羨ましすぎてボーナス全ぶっぱした位だ。

 

「御身ですらそうなのです。見得が時に武器にすらなる貴族ならば尚更でしょう。」

 

「因みに特需についての話は?」

 

「あちらも売れるのであれば石材の生産量を引き上げるでしょう。

 ただし、いつまでもそれは続かない。大体どれくらいで手を引くべきかの判断に使うのでしょうね。」

 

「なるほど、引き際は肝心だな。」

 

「開拓村の主要施設や建物の重要な部分には、ナザリックで採取した資材を使います。

 ただ、街道や重要でないところまで高級な資材を使えば反発を食らいますからね。

 スラム街の貧民が自分より明らかに良い家に住んでいたら。」

 

「確かにな。自分たちは今まで真面目に税金を納めてきたのに!と憤慨してもおかしくはない。」

 

「といっても我々のシモベが運営する施設の格が高いのは外聞にもなりますし、一般住宅の重要な基盤部分は外からは見えませんからね。

 そのあたりくらいなら、ナザリックの資材を使っても良いでしょう。」

 

「最後に、マイル卿、ヤード卿の両方と取引したのは?」

 

「こちらは、利益の独占を防ぐためですね。

 ジルクニフ陛下が同じ利権を最低でも2つの派閥に与えるのはそのためでしょう。

 利益の独占は通常であれば腐敗を生みますし、競争があればシェアを奪うために派閥内で利益を上げるための努力が為されるでしょう。

 腐敗が無いのはナザリックくらいでしょう。

 まぁ、蓄積されるノウハウや人脈で大きな力を持つのは遠くはないでしょうね。」

 

「それは悪いことなのか?」

 

「悪いことであるかは難しい判断ですね。

 必然的に貴族が力を持つことになるでしょう。しかも自分の国の外でも商売を行えますし。

 その分、外貨を得ることになり帝国の税収が増えるので帝国も富みます。

 ジルクニフ陛下の代であれば問題はないと思いますが、200年後どうなっているかは……」

 

「ふむ……。難しいものだな。だが――――」

 

「ふふふっ。国が富み、多様化してくれば、ナザリックの思うツボですね。

 そのために、アウラ殿、マーレ殿、コキュートス殿にあのような実験をさせているのでしょう?」

 

「流石に分かるか。」

 

「はい。」

 

「ハハハ……」

 

「フフフ……」

 

 

 俺とパンドラズ・アクターは「悪い顔っ!」という感じで笑った。

 

 

 

 




●各員の無限の背負い袋
アルベド:黒のショルダーポーチ
デミウルゴス:赤いストライプが斜めに入ったカジュアルよりのビジネスバック
アウラ:赤いランドセル
マーレ:黒いランドセル
コキュートス:青白い登山用のリュックサック
シャルティア:ドレス用の小さく赤い手提げポーチ
セバス:革素材のカッチリした黒いビジネスバック
パンドラズ・アクター:カーキー色の四角い革製トランクケース

「カジュアルよりのビジネスバック」とかでググれば大体のイメージはあってると思います。

●出来事
トブの大森林:森林整備、高級木材確保
アゼルリシア山脈:北部の岩山を切削中、高級石材確保
商談:マイル卿、ヤード卿(建材の取引)

現時点で高級なだけであって未来永劫ではありません。

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