そうそう、忘れてました。
年月の感覚が無いと時間感覚が分かり辛いとおもったので、本作品ではモモンガが転移した時点を【帝暦200年】とします
王国も建国は同時期なので同じく【王暦200年】とします。
同様に法国は【法暦600年】としておきます。
つまり、冬の戦争を終えた今は【帝暦201年の春~】という事になります。
―――― エ・ランテル西部
俺はエ・ランテルとエ・ペスペル間で行商をしている行商人だ。
基本的にはエ・ランテルで購入した帝国・法国の道具、またはトブの大森林で採取された質の良い薬草で作成したポーションをエ・ペスペルまで運んで商売している。
そして、エ・ペスペルからは日用品を仕入れて道中の村で売る。そして道中の村で購入した作物をエ・ランテルまで運ぶという販路で稼いでいる。
今までは帝国製品を法国産と偽って商売してきた。
そりゃあ王国で敵対している国の製品なんか売ったら因縁つけられて物資の没収がいいところだからな。
だが統治が『無血公』に変ってからは、そんな事に気をつける心配もなくなった。
ただ、帝国の一部になったから帝国製品が普通に流通するようになり、あまり旨味が無くなったかな。
しかしそれよりも助かっていることのほうが多い。
っと、もう宿に着いちまったな。
こんなに贅沢に
街で泊まっている宿はどちらかと言うと下級の宿で、まばらにランプが備え付けてあるだけだからな。
何でこんな所に高級宿がと思うだろう。入ってみれば分かるさ。
室内も
一階は酒場になっていて、既に食事や酒盛りをしている冒険者や
奥には宿屋の店主兼、酒場のマスターが居る。そこまでは普通なのだが、その人物(?)が尋常ではない。
俺も初めは混乱したが一週間で混乱はしなくなった。自分でも早いと思うがそれには理由がある。
店主の
アダマンタイト級冒険者。エ・ランテルに住む者なら誰もが知っている英雄の中の英雄『漆黒』モモンの師であるだけでも十分なのに、『無血公』と呼ばれる所以となった先の戦で、血を流さずに勝利を収めた聖者。
そんな御方が道中の安全を確保できるようにとこの宿屋を建てて、その店主に
そしてこのような宿屋がエ・ランテル、エ・ペスペル間に3軒もある。
殆ど毎日見る顔であり『無血公』の選んだ人物(?)だ。最初は『無血公』なら……と自分に言い聞かせていたが、一月以上何も無いと慣れて信用できると思ってくるわけだ。
俺がいつも通りカウンターへ行くと
「いらっしゃい。一人か?」
「あぁ。大部屋で頼む。あと荷物の預かりも。」
「大部屋は銅貨6枚、荷物の預かりは銅貨4枚。計銅貨10枚だ。」
俺は銅貨10枚を懐から取り出してカウンターに置く。
建てられたばかりだからというのもあるが、木材が真新しく一部は石材を使用している。街ならば中級の宿といった雰囲気なのに一泊は安宿とほぼ同じ。
しかも荷物は宿屋のカウンターから降りた地下で預かってくれて、
ただ言語能力は殆どないらしく、首を振ったり、頷いたりでコミュニケーションをとっている。
俺は荷物を預け、
街なら当たり前だが、こんなところでも酒を出してくれるなんて輸送が大変だろうに。
だから、あまり遅いと売切れてしまっている場合もある。
「酒を頼みたいんだが、まだ残っているか?」
「今日のワインとエールはカルネ村産だ。まだ十分に残っているぞ。
どちらもジョッキで銅貨2枚だ」
ワインやエールに産地なんて関係あるのかとは思うが、余計なことを言っても仕方ない。
「エールを。あと、飯も食べていくからスープも頼む。」
俺はエールと野菜スープを受け取り、空いている席に座った。
そして、野菜スープに持参した黒パンと塩漬け肉を浸す。
野菜スープは野菜の切れ端を煮込んで塩で味付けしただけだが、旅の最中に自分で用意せずに温かい食べ物が食えるのは有り難い。
しかも野菜スープは宿泊料に含まれて、朝と夜で両方付いて来る。
「よぉ、旦那!同席するぜ!」
4人の冒険者が俺と同じく野菜スープと酒の入った木製のジョッキを持って四角のテーブルに腰掛ける。
「ああ。座ってくれ。」
彼らは今回護衛に雇った鉄級の冒険者チームだ。
依頼料は金貨3枚。彼らの経費は自腹で払って貰っている。
ちなみに王国・帝国の一般市民の平均月給は金貨1枚だ。
だから都市の往復、およそ半月の行程で金貨3枚は割と支払いがいい方だ。
働こうが働くまいが、宿の料金は毎日掛かるんだからな。
「しかしよぉ。最近ちょっと依頼料安くねぇか?
今までは金貨6枚だったじゃないかよ。」
彼らのリーダー、短い金髪の戦士は俺に愚痴をこぼす。
「仕方ないだろ。大公街道のお陰で行程そのものが短くなったんだ。
オマケに
しかも盗賊もめっきり姿を見せなくなった。
極めつけに毎日野営していたのが宿になった。
仕事内容が楽になったんだから、依頼料が安くなるのも道理だと思うが?」
そう、大公街道のお陰で6日掛かっていたエ・ランテル~エ・エスペル間が4日になった。
そして相変わらず獣や魔獣は出るが、街道沿いには厄介なゴブリン、オーガなどの亜人の魔物そして盗賊が出なくなったのだ。
街道から1~2km外れるとまだまだ今まで通りらしいけど、街道を外れる事のない俺には関係のないことだ。
「そうだけどよぉ…………そうだ!
俺達も荷運びを手伝えば報酬を弾んでくれるか?」
「いいぞ。俺だけじゃ背負える荷物も限られているからな。
あんた達も運んでくれるなら運べる商品の量が増える。
俺と同じだけ運んでくれるなら、今までどおり金貨6枚だ。」
商品を卸すには商業ギルドに入っている必要がある。
よそ者が勝手しないためのルールがあり、そもそも俺の伝手がなければ彼らだけで荷運びしても闇市で買い叩かれるだけだ。
そういう意味ではwin-winなんだろう。
俺は商品が増えて儲かる。
彼らは護衛の仕事が楽になってしかも報酬は据え置き。
「よっしゃ!!
――――そういやさ、この宿って街道のど真ん中にあるにしては色々揃ってるよな。
井戸は勿論、このスープの野菜はどこから運んでいるのやら。サービスで出る割にはそれなりに量はあるし。」
「そうだな。俺が経営者だったら最低でも3倍は取るな。
そういう意味では採算度外視なんだろう。こんな領主は何処でも聞いた事が無い。」
騒がしくしなければ夜中まで酒場に居座っても怒られないし、何時着いても部屋があれば泊まらせてくれるらしいし。
24時間営業とか言っていたが本当なんだろうな。アンデッドは睡眠不要だと
しかも床で雑魚寝ではなくベッドがあり、編んだ藁の中に藁が入っていて寝心地は悪くない。
流石に布や麻布を使用してないあたりは街中の宿とは違うのだろう。
さらには値段は1.3倍くらいするが食事も摂る事が出来る。
黒パンや塩漬け肉や乾物などの旅の食料が買えるのだ。
だから、ここを根城にして近くの森や山で薬草などの素材を採取している冒険者も少しは居る。
俺からするとそいつらは先見の明があると踏んでいる。
此処を拠点にすれば街を拠点にするより行動範囲が広くなる。
つまりは手付かずの素材が眠っていると同義なのだ。
この宿に居る金~白金級の冒険者はきっとここを拠点に活動しているのだろう。
護衛ならば高くても銀級の冒険者で十分だからだ。
(エ・エスペルからエ・ランテルに戻る時に薬草などの素材を買い取ってもいいかもしれないな。
代わりに食料が売れるかもしれないし。)
急速に様変わりしていく大公領。
発想を変えれば幾らでも儲けのタネは転がっているのかもしれないな。
いつも通りの量になってた……
なんかスゲェ強いアンデッドだな。位です。
街にたくさん居すぎて伝説感の無いアンデッドと化してます
●酒の産地
地方に特色を持たせる感覚が無いので地球の様な●●産という概念はまだ無いです。
というか透明なワインじゃないので味もそれなりですし。
やった!UA10万突破しました!
皆様の応援あってのお陰です!
追伸:すみませんが明日は投稿無理そうです。