モモンガ式領地経営術   作:火焔+

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●メインキャスト
全員!

パラレルワールド的Somethingでお願いします!
大事な事なので2回いました。
此処で語られる事が本編で起こるとは限りません。



閑話 ナザリックのクリスマス

 

 

―――― ナザリック第9階層 パーティールーム

 

「メリークリスマス!!」

 

「「「「「メリークリスマス!!!!!」」」」」

 

 俺の乾杯の合図と共にクリスマスパーティーが始まる。

 パーティーは立食形式で、様々な料理がテーブルの上に並ぶ。

 

 エンシェント・フロスト・ドラゴン、エルダー・ブレイズ・ドラゴン、グランド・パンゲア・ドラゴン、ノーブル・アトモスフィア・ドラゴンなどの4属性ドラゴンとディープ・ワン・バイコーン、セイクリッド・ペガサスの正邪の二騎が肉料理のメインディッシュだ。

 水晶キャベツ、スター・クレソン、マグマ・ラディッシュ、オーロラ・レタスを使った前菜。

 そしてデザートはエンプレイス・ベリーとサンライト・アップルのアイス。

 

 どれも浄化されてしまう程に美味い。

 皆も好きな料理を皿に盛り、思い思いの時間を過ごしている。

 

 

「今日も美味いな! 料理長、副料理長。

 お前たちには毎日の料理、感謝しているぞ。」

 

「勿体無きお言葉!モモンガ様に料理を御作り出来る事が我々の幸せにございます」

 

 料理長と副料理長(ペッキー)は最敬礼で頭を下げる。

 

「本来であればお前たちにもパーティーに参加して欲しいところだが……」

 

「問題は御座いません。我々は料理を提供するものとしてクリスマスパーティーに参加させて頂いて居ります。」

 

 今日ばかりはNPC全員が出席し、ナザリックの警備はシモベ達が行っている。

 ただ、この様に提供する側として参加しているものもいる。

 セバスやエクレアなどは、自らそういう役を選んでいたりする。

 

 司書長ティトゥス、司書Jなどの食事が出来ないアンデッドも場の空気を楽しんでくれている。

 残念ではあるがグラント、餓食狐蟲王、紅蓮の様な自分の領域から出て来れない者達は後でこちらから出向く事にしている。

 

 

 

 

 

【コキュートス、ナーベラル、パンドラズ・アクター】

 

(おや、珍しいな。コキュートスとナーベラルか?)

 

 普段あまり見ない組み合わせに俺は気になって二人の元へと向かった。

 

「楽しんでいるかな?コキュートス、ナーベラル。」

 

「ハイ。コノ様ナ場バ初メテデハアリマスガ、楽シマセテ頂イテ居リマス」

 

「はい。楽しませて頂いてます。」

 

「そうか、それはよかった。

 ところでお前たち二人は前から仲が良かったのか?」

 

 俺は率直に聞いてみる事にした。

 下手に勘繰っても自爆するだけだろうと思ったからだ。

 

「ハイ。武人建御雷様ト弐式炎雷様ハ御友人デ在ラセラレタ様デスノデ、ナーベラルトハ自然ト友人ニ。」

 

「コキュートスとは姉妹以外で最も親しい友人です。」

 

(ん? 呼び捨て??)

 

「なんだ、呼び捨てにするほど仲が良かったのか。知らなかったよ。」

 

「え? いえ、ナザリックの使命を帯びていない時は――――」

 

 ナーベラル曰く、NPC同士はナザリックの任を帯びていない時は互いに呼び捨てをしているそうだ。

 ユリの様にどちらの場合でも敬称をつける場合もあるが。

 コキュートス曰く、ナーベラルは公私の使い分けはしっかり出来るらしい。

 

「誰モガ至高ノ御方ニヨッテ創造サレタ者デス。本来ソコニ序列ハ存在シマセン。

 ナザリックノ運営上、アルベドヲ統括トシタ、システムデ在ルベキト至高ノ御方々ニヨッテ運命(サダメ)ラレテイルノデ。」

 

「なるほどな。私達がそう在れと決めたから、仕事中は敬称をつけていると。」

 

 そうだったのか。

 言われてみれば、どのNPCも仲間達が作ったものだ。

 其処に優劣があるなんて事は決して無い。

 シクススなど一般メイドとアルベドで能力的な差はあれど、どちらも大切なナザリックの仲間なのだ。

 NPCにとってはそれが当たり前だったのだな。

 

 

 

「そうか――――それにしてはモモンの仲間として行動していた時は……」

 

「流石ニモモンガ様ヲ呼ビ捨テニスルノハ、我々デモ難シイカト……」

 

(なんと! モモンさーーーーんは、ナーベラルがポンコツというわけではなかったのか!?)

 

「ということは、パンドラズ・アクターと任務についているときは――――」

 

「ん? お呼びですかなモモンガ様。」

 

 俺の背後からパンドラズアクターがひょっこりと顔を出す。

 

「ああ、パンドラズ・アクターがモモンをしているときのナーベラルの様子はどうなのかとな」

 

「そうでしたか。ナーベラル嬢は上手くサポートしてくれていますよ。

 ただ――――」

 

「何か問題でも御座いましたか?」

 

(本当だ。仕事の話になった途端口調が変わった。

 雰囲気もクールな仕事モードになっているし。)

 

「そこでしょうかね。切り替えが上手すぎる所ですね。」

 

「え?」

 

「ナーベラル嬢は私と行動している時には切り替えが上手すぎる所でしょうか。

 モモンガ様と行動している時の違いが何れ綻びにならないかが心配ではあります。」

 

「た、確かにその通りです……」

 

「フム、改善スベキ点ガ分カッタノナラ直ス事ガ出来ル。

 ソレヲ成長ダト私ハ学ンダ。」

 

「そのとぉりです! ナーベラル嬢!

 トレーニングですよ!!

 モモンさーーーーん、ですよ!」

 

(あっ、ナーベラルのこめかみに青筋が…………)

 

 ナーベラルは澄ました表情だけど間違いなく怒っている。

 コキュートスも如何すれば……と挙動が不審になり始めている。

 

 

 

「えぇと……俺はさっき出てきた新しいメニューでも……と、とりに行こうかな……?」

 

「ワタシガ、行キマショウカ?」

 

「いや、自分でとりに行くのも醍醐味さ。」

 

(ゴメン、コキュートス……俺は逃げるよ……)

 

 

 

 

 

 

【セバス、エクレア、一般メイド】

 

(ふぅ……冷や汗をかいた。緊張したからな、喉が渇いちゃったよ)

 

「モモンガ様、こちらをどうぞ。」

 

 ふと声の元に視線を向けるとセバスが冷たいドリンクを持ってきてくれていた。

 

「ありがとうセバス。それでは頂こうか。」

 

 俺はジュースで喉を潤してからセバスに尋ねる。

 

「今は仕事の時間ではないのだ。心のままに楽しんでくれていてもいいのだぞ?

 メイド達にも今日は働かなくてもいいといったのだがな。」

 

「はい。私はハウス・スチュワードとして御創り頂きましたので、今、この時が気ままなのです。

 それに、メイド達も給仕をしつつも楽しんでおりますよ。」

 

 一般メイド達は時折、大皿料理を摘まみつつ給仕しているようだ。

 ホムンクルスだからな、お腹も空くのだろう。

 

「そうか、そういう楽しみ方もあるのだな。」

 

「はい。ご容赦頂ければ――――」

 

「構わないさ。楽しんでいるのなら、それが一番だ。」

 

 趣味を仕事に出来る者と出来ない者がいる。

 仕事にすると辛い時も離れたい時も、それが許されない。

 それすらも受け入れられる者ならば、趣味を仕事に出来るが……俺はどうだろうか?

 

(ユグドラシルの運営の仕事……?? やだなぁ……。

 運営には散々文句言ったし、なにより――――

 

 仲間達と未知の冒険に出られないんだもんな……)

 

 

「それは、甘い!カスタードクリームの様に甘い!!」

 

 蝶ネクタイをつけたイワトビペンギンのエクレアが覆面たちに運ばれてこちらにやってくる。

 

「一体如何したのだ? エクレア」

 

「ご機嫌麗しゅう御座います、モモンガ様。

 メイド達は甘いのです! 私達使用人はこのようなパーティーの影で輝くもの。

 これだけの機会を頂きながら、自分の優秀さをアピールできないとはっ!

 このような事では、このナザリックが私の手の内に入る日も遠くはないという事でしょう。

 

 ――――っは!! あんな所に糸クズが!

 申し訳御座いませんモモンガ様。私はこれで!!」

 

(喋るだけ喋って行ってしまった……)

 

「あれも楽しんでいるのか?」

 

「ええ、あれでも楽しんでいるのですよ。」

 

 まぁ、活き活きはしてるもんな。

 

「本当に楽しみ方は色々在るのだな。」

 

「はい。」

 

「セバス、私は他の場所にも回ろうと思う。

 それではな。」

 

「行ってらっしゃいませ、モモンガ様」

 

 

 

 

【デミウルゴス、シャルティア、ルプスレギナ、ソリュシャン】

 

 歩みを進める中、目に入ったテーブルは――――

 

(これは良からぬ内容を話しているメンバーだな。)

 

「これはモモンガ様。如何なさいましたか?」

 

 俺に背中を向けていたはずのデミウルゴスが、いの一番に気付く。

 会話のメンバーはデミウルゴス、シャルティア、ルプスレギナ、ソリュシャン。

 全員嗜虐嗜好であるため何の話か分かってしまう。

 

「何の話題か大体想像が付くが、一応確認しておこう。皆は何の話をしているんだ?」

 

「デミウルゴス牧場に居る、哀れな子羊共の話をしていんす。」

 

「デミウルゴスのお話は、私の様にゆっくり溶かして殺す場合にも、シャルティアの様に惨殺する場合にも非常に為になるお話ですので。」

 

「最高ッすよね~。前も拷問を受けている子羊を特等席で見せて貰ったッス!」

 

 そうそう、デミウルゴス牧場は現在は再稼動している。

 ただし、そこにいる者達は六腕の様に凶悪な犯罪者のみで、罪を償う為に牧場送りにしているのだ。

 散々奪い、殺し、陥れたのだから仕方ないだろう。

 それにヤツラの皮がスクロールに変わるのだから、罪を償いつつ社会に貢献し、尚かつ彼らの様な強い嗜虐性を持つシモベ達の娯楽にもなる。

 私も罪悪感を其処まで感じない連中だから気兼ねしない。

 

「以前に比べれば、羊の数も大分少なくなりましたが、寧ろそれでよかったのだと、このデミウルゴス実感しております。

 モモンガ様は私の成長を想ってくださったのですね。」

 

(ん? 新しい趣味を見つけたということかな?)

 

「あぁ。お前たちも、私もまだまだ成長できる。

 その一端でも感じてもらえたなら私は嬉しく思うぞデミウルゴス。」

 

「はい! ですので、私の学んだ成果をシャルティア、ソリュシャン、ルプスレギナにも教えてあげようと集まってもらったのです。」

 

(ん? なんかおかしいぞ?)

 

「真に素晴らしいでありんす。一人の人間を簡単に殺すのではなく、痛めつけて、心を抉って治して、破壊して、修理して。

 今までの私は勿体無い事ばかりしていんした。」

 

「えぇ。苦しめて溶かして終わり。なんてあまりにも勿体無い。」

 

「わたしは見る専門っすね~。自分で何かするより、デミウルゴスの拷問を相手の目の前でお茶を飲みながら見るのが最近の流行ッす。」

 

「ルプスレギナも面白いように子羊の感情を掻き乱してくれますからね、助かっていますよ。

 一匹の子羊でどれだけ楽しむ事が出来るのか。

 安堵などの正の感情、恐怖などの負の感情、その起伏を上手く利用してどれだけ楽しめるか。

 それすらも慣れた場合、どうやって心をニュートラルに戻すのか。

 まだまだ研究したい事ばかりです。」

 

 

(あぁ…………。これは、俺には合わないやつだ。)

 

「そうか、楽しそうでなによりだ。」

 

 俺はドン引きしている心境を隠して、可能な限り穏やかな表情と口調で答える。

 

「はい。如何でしょう? モモンガ様もお聞きになりますか?」

 

 デミウルゴスは本当に愉しそうな表情で俺を誘う。

 シャルティアもソリュシャンもルプスレギナも本当に愉しそうだ。

 

「お誘いは嬉しいのだがな、出来るだけ皆の所を回りたいのだ。

 また機会があればにしておくよ。」

 

「なるほど、皆に労いをかけて差し上げるのですね。

 でしたら引き止めるわけにも行きません。

 残念ですがまたの機会にさせて頂きます。」

 

「ああ。機会が『あれば』な。」

 

(いや~そんな機会は流石にあってほしくないなぁ~。デミウルゴスには悪いけど。)

 

「それではな。」

 

「行ってらっしゃいませでありんす~。」

 

「行ってらっしゃいッす~」

 

「モモンガ様、ごきげんよう。」

 

「行ってらっしゃいませ。モモンガ様」

 

 俺は足早に恐怖の会場を後にした。

 恐すぎるだろ……。

 

 

 

 

 

【ユリ、ペストーニャ、ニグレド】

 

(おや、あそこに居るのは――――)

 

 1つのテーブルに座ってのんびりとお茶を飲んでいるのは、ユリとペストーニャ、そしてニグレドだった。

 こっちもどんな話をしているのかが分かり易い集まりだ。

 

「やぁ、皆。楽しんでいるかな?」

 

「モモンガ様、ようこそいらっしゃいました。」

 

「宜しければお席に座ってくださいませ――――あ、わんっ」

 

「こんばんはモモンガ様、今日は妹がご迷惑をお掛けしました。」

 

「構わないさ。誰とて魔が差す事はある、つい感情的になってしまっただけだ。

 それで、3人は何の話をしていたのかな?」

 

 ニグレドが謝るような事でもないため、俺は話題を変えるために他の話題を振る。

 

「エ・ランテルでボク達にお任せ頂いた孤児院と学校の話をしておりました。」

 

 ユリもペストーニャもニグレドも孤児院の運営と学校の先生をしている。

 ペストーニャは信仰系魔法の先生で、ニグレドは情報系魔法の先生、ユリは体育教師をメインにオールマイティにやっている。

 みんなナザリックの仕事をこなしつつ、上手い事やっているものだ。

 

 ちなみに、偶にフールーダが来て魔法全般の講義をしていく事がある。

 その人気は絶大で、その為に学校に通う者達も多いそうだ。

 

 

「なるほど、ペストーニャとニグレドは現状の幻術に問題点はないか?」

 

「はい。問題ありませんわんっ!」

 

「ええ、問題がある予兆も御座いません」

 

 二人には常時、高位の幻覚が発動するマジックアイテムを渡している。

 ユリは兎も角、二人はそのまま人間の街に居るのは『今はまだ』難しいからな。

 

 三人の話を聞く限り、孤児院ではやんちゃもするが、学校ではちゃんと授業を受けているらしい。

 

「ふふっ、ちゃんとしないとユリ先生に怒られてしまいますものね――――わんっ」

 

「鉄拳のユリ先生ですものね。」

 

「ボ、ボクはそんなに怒りませんよ……!! 違いますからね! モモンガ様。」

 

 ペストーニャとニグレドがからかうと顔を真っ赤にしてユリが反論する。

 

「はははっ、私もユリの鉄拳で拳骨されないように気をつけなくてはな。」

 

「も~~~! モモンガ様まで!」

 

「「ふふふふっっ」」「ははははっっ」

 

 

 そんなこんなもありつつ、3人はあの子がどうだったとか、この子がイタズラしていたとか、孤児院を卒院した子が立派になって会いにきてくれたとか、孤児院の運営にあてて欲しいって寄付してくれた時は本当に嬉しかったとか、色々な話を聞けた。

 

 本当にやってみてよかった。

 

 

「っと、もうこんな時間か。すまないが、他のNPCの所にも顔を出しておきたいのでな。

 そろそろ失礼するよ。」

 

 俺は用意してくれた紅茶を飲み干して席を立つ。

 

「はい。今日はボク達の話を聞いて下さり有難う御座います。」

 

「私達の孤児院か学校にも顔を出して下さりますと嬉しいです――――わんっ!」

 

「私達に更なる幸せを与えてくださって、感謝の気持ちを言い表せないほどの経験をさせて頂いております。」

 

「喜んでくれているのなら、実施した甲斐があったよ。」

 

 席を離れる俺に、3人も席を立ち深々と頭を下げて俺を送ってくれた。

 

 

 

(デミウルゴス達みたく悪と言える事もやり、ユリ達みたく善といえる事もやる。

 清濁併せ呑んでこそ、本当の統治なのかもしれないな。)

 

 

 

 

【シズ、オーレオール】

 

 会場の隅の方にシズと末妹のオーレオールが居る事に俺は気が付いた。

 シャンデリアの光も十分には届かず、他の場所よりは少し薄暗い感じだ。

 

(どうしたのだろうか? 上手く溶け込めないのか?)

 

 気になったので俺はそちらに向かう。

 出来るだけみんなに楽しんで欲しいからな。

 

「やあ、シズ、オーレオール。ここで何かしているのかい?」

 

「モモンガ様…………こんばんは。」

 

「ご機嫌麗しゅう、モモンガ様。

 私はここで皆様を見ております。」

 

「私はお姉ちゃんだから、オーレオールについていてあげてる……」

 

「ふふっ、ありがとう。シズお姉様。」

 

「うん……お姉ちゃんだから当たり前」

 

 なるほど、敢えてここに居るみたいだ。

 ここからだと会場がよく見渡せる。

 皆が思い思いに談笑しているのがよく分かる。

 

「ここからだと、眺めがいいな。」

 

「はい。皆様の様子が見られてとても楽しいです。

 特にユリお姉さまのとこr……あら、何でも御座いませんわ。」

 

(? 何故言葉を濁すのだろうか? ユリとは姉妹なのだから構わないだろうに……。

 あぁ、シズが付いていてくれている手前、気を使っているのかな? 優しい娘だ)

 

 料理もしっかり食べているようだし、この場所が気に入って居るだけなのかもな。

 

「では私も少しの間だが御一緒してもいいかな?」

 

「はい、楽しい会話は出来ないかもしれませんが、努めさせて頂きます」

 

「私も……話題作りは……ニガテ」

 

「いや、私も少し静かな雰囲気に浸りたいのでな。

 気にしなくともよい。」

 

 接待させたいわけじゃないからな。

 二人が此処で何を感じているのか、欠片でもわかれば俺にとっては収穫だ。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 本当に特に会話もなく、食事しつつ皆を見ているだけだ。

 ただそれでも、視界に入る皆の笑顔を見ているだけで、それで十分な位だ。

 

(あぁ、イカンイカン。このままだと足に根がはってしまいそうだ。)

 

「シズ、オーレオール。私はそろそろ行くよ。このままでは足に根が張ってしまいそうだ。」

 

 俺は肩をすくめて楽しかったがやむを得ないという感じを出す。

 それを二人も分かってくれたようで。

 

「私もモモンガ様と同じ時を過ごせて楽しかったです。ね、シズお姉さま」

 

「うん……また、モモンガ様と一緒……」

 

「あぁ、そうだな。それでは、またな。」

 

 手を振って見送ってくれる二人――――

 

(ん?)

 

 オーレオールは普通に小さく手を振っているが、

 シズは肘を支点にメトロノームの様に手を振っていた。

 

(ふふっ、オートマトンの特性を活かした芸当だな。)

 

 シズは中々芸が細かいんだなと思いつつ、ラストの席へ向かう。

 

 

 

 

 

【アルベド、エントマ、ハムスケ、恐怖公】

 

「これはまた、珍しい組み合わせだな?」

 

「ようこそおいで下さいました。モモンガ様」

 

「モグモグモグ…………こんばんわですぅ~モモンガ様。カリカリカリ…………」

 

「もぐもぐ……殿ぉ~~!!! もの凄い美味しいでござる!! もぐもぐもぐ…………」

 

「これはこれはモモンガ様。ご機嫌麗しゅう御座います」

 

 アルベドはワインで口を湿らせつつ、今朝の事が嘘のように優雅な雰囲気だ。

 エントマと……ハムスケは…………よく食べてるな。エントマは、恐怖公の眷属も時折食べてないか??

 恐怖公は、やっぱりどうやって腰を曲げてるんだろうな?

 

 

「今行っておりますのは、アルベド嬢に淑女となるための特訓で――――」

 

(え? アルベドが!? あ、いや……普段はしっかりしてるからな。失礼失礼)

 

「はい。シャルティアに唆されたとは言え、はしたない事をしてしまい……」

 

「そうですよアルベド嬢。モモンガ様はお優しく誠実なお方。

 あのような失態を繰り返していては、貴女の思いが届く日は限りなく遠いでしょう。

 であるならば、貴女がモモンガ様に釣り合うような淑女にならなければいけません。

 今までの事から察するに、モモンガ様は馬乗りになって来るような超肉食系女子はタイプでは無いと見受けられます。」

 

「えぇ。わたくしは心を入れ替えましたわ。

 『じょしりょく』? なるモノを磨いて、いずれはバイコーンに乗れる様に……」

 

「そういう所がイケナイのですよ……アルベド嬢……」

 

 恐怖公は器用にこめかみを押さえる。

 たしか、バイコーンの騎乗条件は…………『非処女』だったはず…………。

 それに乗れるようにという事は…………そういうことなのだろう。

 やっぱりアルベドはアルベドだな。

 

 なんとなくだが少し安心した。

 

「殿ぉ~~美味しすぎてとまらないでござるよ~~!」

 

 ほお袋いっぱいに食べ物を詰め込んだハムスケは、非常に面白い顔になっていた。

 

「そんなに溜め込んでも、タネみたいな保存食じゃないからな?」

 

「大丈夫でござる! ほお袋に詰め込んでいるのは、保存食でござるよ!

 ――――と、殿ぉ! ほっぺた押さないで欲しいでござる! でちゃうでござるよ!」

 

(そういえば、ハムスケは――――)

 

「以前ナザリックで迷子になったときに恐怖公の眷属が道案内してくれたと言ってたな。ハムスケがここに居るのは、それ繋がりか?」

 

「そうでござるよ! あれ以来、恐怖公とも仲良しでござる!」

 

「ハムスケ嬢にも、もう少し落ち着きというものを兼ね備えて頂きたいものですが、これが中々に難しく。」

 

 ふぅ……と恐怖公は溜息をつく。

 

「わたしはぁ~、ここに居るとメイド達がいっぱい料理を運んでくれるからとぉ~。

 恐怖公の眷属をたべたいからですぅ~~。カリカリカリ…………」

 

(あぁ……やっぱり。)

 

 

「むほぉ……!! く、苦しいでござる……」

 

「どうした!? ハムスケ!」

 

 ごろんと仰向けになり、おなかを手で押さえようとするが届かない。

 

「た、食べ過ぎたでござるよ…………殿ぉ~~~」

 

「それだけ腹が膨らむほど食べれば、そりゃそうだろうな…………」

 

「仕方が御座いませんね、わたくしめがハムスケ嬢を医務室へお運びいたします。」

 

 恐怖公は眷属を呼び、ハムスケを担がせてパーティー会場から出て行く。

 眷族を食べながら、その後を追ってエントマも一緒に出て行く。

 

(食いしん坊かっ!!)

 

 

 

 

 必然、アルベドだけが残されるわけだが……。

 

「モモンガ様、少しお疲れでは御座いませんか?

 そうであるのでしたら、そちらのソファーで少し休まれては如何でしょうか。」

 

 アルベドが指す先には誰も座っていない大き目のソファーが用意されていた。

 疲れているわけではないが、折角の好意だと俺はアルベドの提案を受け入れる事にした。

 

「ほぅ。中々いい席だな。」

 

 オーレオール達が居た場所よりも、更に周りが見渡せて此処から全員の表情が分かる。

 

「はい。お気に召して頂けましたでしょうか?」

 

「ああ。実に気に入ったよ。」

 

 ふむ、流れ的にアルベドが用意させたものなのだろう。

 こういう気配りが出来るのも彼女のいいところだ。

 

 アルベドはソファーには座らず、俺の少し斜め右前に立って控えている。

 いつもなら後ろに控えているところだが、全員を視界に移したい俺の気持ちを汲んでいるのだろう。

 

 

(やっぱり、パーティを開催してよかったな。)

 

 

 皆が乗り気になってくれるか不安はあったが、杞憂ですんだし。

 なにより、いつも働きっ放しのNPC達に楽しい時間を過ごしてほしかった。

 それを見られる事がこれ程に幸せとはな。

 

 

 

「ふふっ、『皆も』メリークリスマスだ」

 

 

 

「? どうかなさいましたか?」

 

 優しい笑顔で振り返るアルベドに――――

 

「いや、なんでもないさ。」

 

 俺も笑って答える――――

 

 

 

 

 まだまだパーティーは続いていく――――

 

 

 

 

 




一部、出ないキャラが居るのは申し訳ない。
アウラ、マーレは昨日メインはっちゃいましたしね。
あと、時間がなかった……

ヴィクティムは――――スマン。

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