ユウトとデルビルは4番道路へ戻り、木々の間を走り抜ける。デルビルの表情とても険しく、その表情をみるユウトの額には冷たい汗が流れる。
(デルビル…一体なにがそんなにもお前を焦らせるんだ)
デルビルの跡を追うようにユウトは走っていくと、だんだん人が足を踏み入れないような、背の高い草の生えた道へと入っていった。それからしばらく、ズボンが所々緑色になりながら進むと、突然ひらけた場所に出る。大体100メートル四方か、その真ん中に大きな木が一本生えていた。
「ガルルル…ワンッッ!ワンワンワンッッッ!!」
「どうしたんだデルビ…」
デルビルとてつもない勢いで鳴くので、声をかけようとするとその木から大きな影がズズンと音を鳴らしながら自分たちの目の前へ降りてきた。白い毛並みにカミナリ模様の赤い毛がまじって、鋭い目と耳と爪を奮い立たせた一匹のポケモン。こちらからはあまり見えないがどうやら背中には大きな火傷があるみたいだ、肩にもその火傷の先端がみえるほどに。そのポケモンの爪は血に塗れていた。その血の臭いはとてもケモノ臭く、どうやら鼻の良いデルビルにとっては一体何者の血なのかがわかっているようだった。そう、そのポケモンの影に隠れ見えづらいがきっとあれは、こいつの、
「お母さん、か…」
そのヘルガーはピクリとも動かなくなっており、腹の部分ががっぽりと大きな穴が開いており、肋骨が露出していた。しかし、そのポケモン、ザングースの爪と、ヘルガーの毛についた血は乾ききっている。こちらからはたしかによく判断はできないが、きっともう息はないだろう。そんな姿を見てしまっているデルビルにはかなりの精神的苦痛だろう。そう思ったユウトはデルビルの顔を覗くと意外なことに、そのデルビルの目は一切濡れていなかった。むしろその目は冷静で、落ち着いており、そのポケモンから全く目を離さず、とはいいつつも、その奥底では黒い炎が燃えていた。ドス黒い色をしているクセに、澄んでいる。きっとこのデルビルにはこいつを倒すことしか頭にないんだろう。しかし、至って冷静で、しっかり周りを見れている。その証拠に、ザングースがもし奇襲をかけてもいいよう自分の周りにはなにもない状態を保ち、走っている時すら常に俺から10mは距離を保っていた。こいつは、。
「よし、デルビル。僕の名前はユウトだ、今日からお前のトレーナーだ。僕にとっての初めてのポケモンがおまえなんだ、そしてあのザングースとの闘いがデビュー戦だ。僕はある程度の命令は出すけども、正直初めてだから下手くそだと思う。だから、自分にとって今はまずい、できないと思ったら無視してくれ、自分の命を第一に、だ。よろしく頼むぞ!」
デルビルはこちらを向かない。だが、ちゃんと話は聞いてくれていたようだ。
「デルビル!こうそくいどう!!」
「ワオオォン!!」
雄叫びをあげながらデルビルはザングースの周りを駆ける。
「グゥゥゥウァウ!!!!」
ザングースはその大きな爪を振り回している。一見無闇に振り回しているようだが、戦いの慣れがこの結果なのか、常にデルビルが飛んできそうなあたりで振っており、デルビルが飛びついてくることを防いでいる。
「デルビル!かみつくだ!!」
デルビルは指示を出すコンマ何秒か前には飛び出していた。言う事を聞かなかったというよりは、どちらかというと考えが一致していたと言った感覚だった。しかし、ザングースはこの指示を聞き逃さなかった。とっさに飛んできたデルビルに爪を振りかざす。しかしこの指示を出す前のコンマが効いたようだ、噛みつくまではいかないもの、その鋭い牙がザングースの腕を切り裂き、そのまま走り抜けていく。
「グゥスゥゥゥゥゥウ!!!」
一瞬ザングースの足がもつれる。その一瞬をユウトは逃さなかった。
「左足に向かってでんこうせっか!!!」
デルビルは体をひねり返しザングースに向かって走ってゆく。頭についた骨のような部分がザングースの左足は目掛けてゆく。ザングースは爪を振りかざすが体勢が良くなかった。次の瞬間その爪は宙を切り裂いていた。デルビルがまたしてもザングースに速さ勝負で勝っていた。最初のこうそくいどうがパンプアップにでもなったのだろうか。ザングースは宙へ舞い、そのまま体を地面へ叩きつけることとなる。
「ガハッ?!」
「いまだ!かみくだく!!」
デルビルはザングースの右腕に噛み付いた。相当の痛みなのだろう。ザングースは口から血が出るほど大きな声で悲痛の鳴き声を出した。その次の瞬間。ザングースの爪がデルビルの左足を突き刺していた。
「デルビル!!!!」
「フキャァァァアッ!!!」
血飛沫をあげながらデルビルはザングースから距離をとった。ザングースもすぐに立ち上がったものの右腕を抑えながら膝をつく。どちらもかなりの重症となった。デルビルは先ほどかなり大きな鳴き声を出したくせにすました顔でいる。きっと、かなりの痛みのはずだがアドレナリンのようなものと、母を思う精神によってある程度痛みを和らげてるのだろう。だとしても、左足の感覚はないはずなのに、凛として立っている。
「お互いかなりのダメージ。一度の攻撃がこんなにもダメージを生むなんて。。次が最後だろう、。」
そう呟いた瞬間デルビルはまた走り回る。左足は地につくたび血をブシュブシュと音を立てながら噴出している。ザングースはその姿を見てとても怯んでいるようだ。
「デルビル…。デルビル!!!でんこうせっかァッ!」
デルビルはまたザングースの足元に向け走っていく。今回はやらせまいと、ザングースは爪を振りかぶり正面衝突のために身構えている。その瞬間ユウトはデルビルを信じ、大きな声である指示を出した。
「今だ!そいつの顔面にあびせてやるんだ!ひのこ!!!」
デルビルは体を反転してザングースの顔めがけて思い切り火を吹きかけた。その火、いや炎はひのこなんて代物ではなかった。まるで、赤き龍リザードンのかえんほうしゃのような。
「ぐぅぅぅぅがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
ザングースは大きな声をあげながら倒れ込んだ。それをみたデルビルはザングースにとどめをさそうとはしりこみ、もう一度食らわしてやると大きな口を開けた。
「やめろ!デルビル!!やめるんだ!落ち着け!!」
ユウトはデルビルにおおいかぶさるような形で止めに入った。デルビルは何故だと聞くように暴れる。ユウトは必死に止め続ける、落ち着け、落ち着けと何度も言い聞かせながら。デルビルは暴れ続けた。先程までとは違い母の仇を取れない事への苛立ちが、はたまた違うことを思っているのかわからないが、涙をボロボロと落としながら。
「デルビル落ち着くんだ…お前の気持ちはよくわかる。だが、ここでザングースを殺してしまうということは、お前の母を殺したザングースと全く同じ行動を取るということだぞ!憎しみや感情に任した殺害はただのわがままに過ぎない!!生きていくための摂取や、事故とかとは全く違うんだぞ!!!」
デルビルはどうやらその事を止められた時には気づいていたようだ。そのために自分の情けなさと、今の自分を母が見たらどう思うかと考えると涙が出てきてしまったようだった。次第にデルビルは暴れることをやめ、静かになった。ザングースは今のユウトの言葉を聞いていて、デルビルと似た感情を持ったようだった。ザングースの目にはもう自分を捨てたトレーナーへの憎しみが消えていた。…
程なくして、ユウトはザングースの手当てを終え、ヘルガーの埋葬も済ませていた。デルビルはヘルガーが埋まっている土へ頬擦りしていた。デルビルは母の温もりを最後の最後まで感じ取ろうとしているようだ。その側へユウトがしゃがみデルビルを抱きしめる。
「デルビル。お前は強いよ、ほんと。僕が君を抑え込んだ時、本当に敵討ちをやめれるなんて、君は本当に強いしえらい。ごめんな、こんなきついことさせてしまって。でも、もう済んでしまったことは心の奥底に仕舞い込むんだ。前に進むことしか生きているものは許されていない。だからデルビル、ザングースを許してやることはできないだろうか。あいつはかなり悪いことをしてきたが、どうやら殺してしまったのは君の母だけらしい。だからあいつに償いのチャンスを与えてやってくれないか。それをできるのは君だけなんだ。ザングースもとても酷い境遇の中生きてきたんだ。あの背中の火傷みただろう、。本当に悪いのはあんな心にしてしまったトレーナーなんだよ、。」
デルビルはどうやら許したわけではないが、ザングースのことも理解し、すでにザングースへの攻撃意識は消し去っていた。それはザングースも同じだった。
「ザングース。君はどんな境遇であれ、やってはいけないことをしてしまった。この罪は一生償っていかなくてはならない。君はこれからどうする?」
ザングースはどうするべきなのかわからないという顔をしていた。ユウトはザングースに問いかける。
「俺たちと、くるか?」
すいません、こんな長くなってしまって。。ほんと、区切りがつかなくて、こんな長く書いたのは本当に初めてで、。許してください、。