ARMORED CORE LOST for Tomorrow Answer   作:ダルマ

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Mission4-2 セレン式交渉術

 そんな葛野とローディーが同席する、CDGの将来がかかった大事な交渉が。

 通された会議室で、程なく開始された。

 

「それで、御社のご要望についてですが、事前に提出してくださいました資料の通りで間違いありませんか?」

 

「はい」

 

 まるで面接のような雰囲気の中始まった交渉。

 アスル達三人の対面に座るのは、GAアメリカ、ムラクモ、そしてBFFの人事や営業部署等の社員。そして、葛野とローディーの二人。

 まさにGAグループを形成する主要企業の社員達であった。

 

「資料には出資受け入れの他、必須項目として、シミュレーター及びネクスト用輸送機のリース代金の四割引きで契約、GAN01-SUNSHINE-L一式を六割引きで購入と書いてあるが?」

 

「余っているんだろ。なら、倉庫で埃をかぶせておくよりも、六割引きでもさばいた方が有意義だろう?」

 

 GAアメリカ社員からの言葉に、セレンがチクリと言葉を返す。

 すると、GAアメリカ社員の眉間にしわが寄る。

 

「ニューサンシャイン・プロジェクトのセクションR。現行の技術力で新型機にも対応できる旧型のSS及びSSL型の性能向上を目指した計画の一つ。性能としては概ね満足なようだが、肝心の売り上げが振るわんのではな」

 

 そんなGAアメリカ社員の眉間のしわを更に深くするかのように、セレンから畳み掛けるように言葉が飛び出す。

 

 ニューサンシャイン・プロジェクト、NSS計画とも呼ばれる同計画は、GA社がリンクス戦争後にAFの開発・製造と並行して進めている計画である。

 一般には新型ネクストの開発計画と思われているが、実際は新型ネクストは計画全体の一部に過ぎず。

 同計画は新型ネクストの開発セクションの他、新たなリンクスの発掘・育成、ネクストの新たな運用方法開拓等々。

 ソフト・ハードの各計画を各セクションごとに区分し進めている、巨大な計画なのである。

 

 そして、その内の一つ、セクションRことリジェネレーション計画は。

 GA社の旧式ネクスト、GAN01-SUNSHINE及びGAN01-SUNSHINE-Lを、現行の技術力でのアップデートを目的とした計画で。

 GA社側の宣伝によれば、同計画で近代化改修が行われたパーツは、近代化改修未実装のパーツと比較し、最大で一・五倍もの性能差があるらしい。

 

「ど、同パーツはまだ宣伝のほどが不足しており、今後、宣伝効果で売り上げは徐々に……」

 

「あの皮肉めいた宣伝の効果が絶大だとは思えんがな?」

 

 GAアメリカ社員の反論の弁を、セレンは一蹴する。

 

 彼女の言う皮肉めいた宣伝とは。

 売れ行きの芳しくないSS及びSSL型の購買促進の為、同型をモデルに擬人化した『GAマン』なる、どう見ても段ボール箱を被っただけの人にしか見えないキャラクターを用いた宣伝広告の事で。

 そのキャッチコピー、『GAマンも愛して!』は、まさに哀愁漂う皮肉めいた文言なのだ。

 

「そ、それは……」

 

「ごほん! セレン、君も、社の業務を担う者なら解るだろう。そう簡単に、赤字覚悟で放出できるものではないと?」

 

 咳払いをしたローディーは、萎縮したGAアメリカ社員に代わりセレンの相手を務め始める。

 だが、セレンの勢いは留まる所を知らない。

 

「だからこそだ。後になって七割八割引きで放出するよりも、六割引き程度でも"売れた"との"実績"を今の内に作っておいたほうが、何かと都合がいいだろう? これは、そちらの事情を汲んでの提案だ。それとも、GA社側としては、今後売れる目途が立っているのか?」

 

 セレンの返答に、ローディーの顔が少しばかり曇り始める。

 

「ローディー、お前ならよく分かっている筈だ。リンクス戦争からSUNSHINE-Eをベースとしたフィードバックを使用しているお前ならな」

 

「……よろしい。では、少し質問を変えよう、SSL型一式、君達は、どういう運用計画でこれを購入するんだ?」

 

 流石に社員のいる手前、ローディーもGA社の旧式ネクストについての評価は明言を避け、話を別のものへとすり替える。

 

「明言は避けるか、ま、いいだろう。SSL型一式の使い方についてだが、ハッキリ言って、本命のパーツ一式を手に入れるまでのつなぎ兼練習用だな」

 

 セレンの答えに、ローディーの眉がピクリと反応する。

 

「素直で大変結構だが。流石にそういう理由でSSL型が選ばれたとあっては、少々気分は良くはないな」

 

「だが、ローディーも嫌と言う程理解しているだろ? GA社製のパーツは少々手荒に扱っても壊れない程の頑丈さが売りだと」

 

「……」

 

「ま、答え辛いのなら答えなくて結構だ。兎に角、現在私達が考えているSSL型一式の運用計画は話したぞ? あぁ、因みに、外装はSSL型一式だが、内装に関してはムラクモ、BFF、更に武装等はGAグループのものを基本にするつもりだ」

 

 まさかここで自分達の会社の名が出てくるとは思わず、ムラクモ及びBFFの社員達は反応に困ったと言わんばかりの表情を見せる。

 

「あぁ、ありがとう。……所で、先ほど本命までのつなぎと言ったが、その本命とやらは、どんなものなのか、差し支えなければ教えて欲しいものだが?」

 

「細かくは言えんが、一応言っておくと、ムラクモのパーツを本命に考えている。よくご存知の通り、ムラクモのパーツは高性能だが、それに比例して、維持費も高価な事で知られている。故に、私達はSSL型でこいつ(アスル)を正式なリンクスとして一足先にデビューさせ、レイヴンより実入りの良いリンクスの依頼をこなして本命運用に必要な資金を貯めるつもりだ」

 

「成程。大変結構だ」

 

 セレンからの答えに一応納得したのか、ローディーは質問を切り上げる。

 

「そうだ、言っておくが、私達の提示した条件を飲み出資を行う事は、GAグループにとってやがて大きな財産となる筈だ。別に整備や輸送機用の人員まで差し出せとは言ってないんだ、人員はこちらで確保している。そちらは必要な資金と品物を提供するだけ、何をためらう事がある?」

 

「えっとセレンさん、それは(アスル)が、何れGAグループにとって切り札のような存在になり得るという事ですか?」

 

 セレンの言葉に、今度は葛野が反応を示す。

 

「そうだ。今回の投資、やがて大きな利益になるぞ。それこそ、"リンクス戦争の英雄"の時のようにな」

 

「あの方の様に、ですか、それはまた随分と大きく出ましたね」

 

「言っておくが、願望なのではないぞ。七割がたは確信している」

 

「先輩もそうお考えですか?」

 

「え? まぁ、うん。アスル君は優秀だから、多分僕が現役の頃よりも活躍してくれると思うよ」

 

「そういえば、資料によれば(アスル)はレイヴンなんですね。成程、あの方も確かに、リンクスになる以前は伝説とまで呼ばれた腕利きのレイヴンでしたね。そして、リンクスデビュー当初、あの方もSSL型のネクストを使用していた。……再来かどうかは別として、確かに似通ってますね」

 

 言い終わるとふと、葛野は先ほどから黙っているアスルに目を向ける。

 特に自身の出番がないと感じているのか、黙っていたアスルは、葛野の視線に気づくや、彼の目を真っ直ぐ見つめ返す。

 

「一つ、質問してもいいかな、アスル君?」

 

「あ!? はい!」

 

 そして不意に、葛野から尋ねられたアスルは、一瞬びくりとしたものの。

 直ぐに向き合い直すのであった。

 

「君は、どうしてリンクスになろうと思ったんだい?」

 

「……、俺を、俺を必要としてくれた人達の力になりたいからです!」

 

 葛野の目を真っ直ぐ見つめながら、アスルは、力強く答えた。

 

「……成程、答えてくれてありがとう。……もしかしたら、彼は我々の予想も出来ない程の、"イレギュラー"というものになるかも知れませんね。……いや、もしかしたら、既にそうなのかも」

 

 そして、葛野は再び視線をアスルからセレンへと変更すると、意味深な感想を漏らすのであった。

 

「何れにしても、先輩とセレンさんが見出した候補生ですから。ここは、貢献して下さった先輩の顔を立てて、ね、どうでしょう?」

 

 葛野はムラクモ社員達に是非を問うと、暫し社員同士でアイコンタクトを取った後、一人のムラクモ社員が声をあげた。

 

「当社といたしましては、御社への出資に関しては賛成の立場です。それと、シミュレーターの件ですが……」

 

 と、ムラクモ社員は目線を葛野へと向ける。

 

「私の中古でよければ、先輩方に半額でリースしますけど? どうです?」

 

 すると、ムラクモ社員からバトンを渡された葛野が話を引き継ぐ。

 

「半額は魅力的だが、中古か……」

 

「セレンさん、一応データは最新のものですし、なんでしたら、機材もお渡しする前にオーバーホールしますよ」

 

「ほぉ、それは太っ腹だな。いいだろう」

 

 こうして、ムラクモとの間で交渉が成立すると。

 

「我々BFFといたしましても、出資に関しては賛成を表明します。また、ネクスト用輸送機のリースに関しましても、そちらのご要望通り、四割引きでの契約で構いません」

 

「すばらしいな」

 

 続いてBFFとの交渉も成立し。

 残るは、GAアメリカのみとなる。

 

「さて、残るはGAのみだが、最終的な結論は?」

 

「少し、外で話してきてもいいかな?」

 

「あぁ、構わん、が、手短にな」

 

 すると、ローディーがGAアメリカの社員達を引き連れ、一旦会議室から退室する。

 おそらく、廊下で最終的な結論を話し合っているのだろう。

 

 数分後。

 退室していた面々が、再び会議室内に戻って、着席するや、ローディーが口火を切った。

 

「話し合った結果、そちらの要求通り、SSL型一式を六割引きで販売しよう。それから、パーツに関してはメンテナンスを実行してから渡そう」

 

「いいだろう、では、交渉成立だな。今後とも、いいお付き合いが出来そうだ」

 

「こちらこそ、な」

 

 セレンから差し出された手を、ローディーは握り返し握手を交わす。

 

 こうして、その後必要な書類や手続きのやり取り等を終え、この日の交渉はすべて終了。

 大満足な表情を浮かべたセレンを先頭に、三人は会議室から退室していった。

 

 

 

 

 

 そして、会社へと戻る道中の車内。

 途中、祝杯様にとマイアミ市内の店で幾つかの酒類を購入し、更に機嫌のいいセレンが、思い出したかのようにアスルに話しかけていた。

 

「アスル、分かっているとは思うが、これから忙しくなるぞ」

 

「はい」

 

「ネクストを降りてから大分間が空いているからな、これから、私がみっちりと、昔の勘を取り戻させてやるから、覚悟しておけ」

 

「分かりました!」

 

「が、先ずは帰って祝杯だ! 飲むぞ!!」

 

 その後、会社に戻ったアスル達は、宣言通りシーラやエド等、他の社員も含めて祝杯を挙げた。

 その際、アスルはセレンの酒癖の悪さを再び目の当たりにすると同時に、何気に武蔵の酒豪ぶりを目にすることになるのだが、それはまた、別のお話。

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