ARMORED CORE LOST for Tomorrow Answer   作:ダルマ

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Mission5-2 特訓

 一方その頃。

 皆が期待を寄せているアスル自身は何をしていたのかと言えば。

 新たな事務所に隣接し、移動も楽なように通路で事務所と繋がっている真新しい建物内に設けられた、シミュレータールームにて。

 

 現在、社長の武蔵と対ネクスト戦を想定した特訓を行っていた。

 

 ムラクモから定価の半額でリースしたシミュレーターは、ムラクモ側の好意もあって二基も受け取る事が出来た。

 この為、プログラムのみならず、リアルタイムでの一対一の対戦形式での使用も可能であった。

 

「っ! 流石!」

 

 そんなシミュレーターが作り出した仮想空間上。

 砂漠の中に墓標の如く佇む廃墟群が哀愁を誘うそんな場所、旧ピースシティと呼ばれるアラビア半島に存在する同名の場所をモデルとした場所を。

 アスルはハイエンドノーマル時同様、黒を基調としたSSL型こと、ネクスト・レナトゥスを操り駆けていた。

 

 しかし、その姿は、勇ましく攻め立てていると言うよりも、被弾しない様に機体を動かしながら立ち回っている様に見える。

 

 バックブースターと呼ばれる補助ブースターを噴射し、廃墟群の間を滑る様に移動するレナトゥス。

 そんなレナトゥス目掛け、幾つもの弾丸が飛来する。

 全てを避け切れず、幾つかが見た目通り頑丈な装甲を叩いた刹那、耳を劈かんばかりの轟音と共に、弾丸が音速の数倍とも思える速さでレナトゥス目掛けて飛来する。

 

「っ!」

 

 それはもはや、脳を介さず体が勝手に反応したかの如く反応速度で、アスルは、とあるブースターを作動させる。

 刹那、レナトゥスがその鈍重な見た目からは想像も出来ぬ程の速さで、左へと移動する。

 それこそネクストのみが有する特殊推進機構、クイックブースト(QB)だ。

 

 しかし、音速すらも叩き出す速さのQBをしても、その数倍の速さを誇る弾丸を余裕をもって回避ことは出来ず。

 弾丸は、レナトゥスが纏うPAを貫きながら、レナトゥスの右肩をかすめると、後方の廃墟を幾つか貫通して彼方へと消えていった。

 

 こうしてギリギリの所で攻撃を回避し安堵するアスルの耳に、直後、聞き慣れた声が飛び込んでくる。

 

「どうしたんだい? 逃げてばかりじゃ勝てないよ?」

 

 声の主は、言わずもがな、武蔵。

 そして、彼は先ほどの攻撃の犯人でもあった。

 

「でも、流石だね、アスル君。幾らか攻撃は受けているものの、致命傷となる攻撃は全て回避してる。それも、始めて使うSSL型をもう手足の様に使いこなして。……正直、ここまで凄いとは思わなかったよ」

 

 直線距離にして六〇〇、廃墟の間に佇む、一体の赤い巨人の姿を、レナトゥスの巨大な単眼メインカメラが捉える。

 手足の流線形が美しさを醸し出し、コアの直線が力強さを醸し出す。

 赤と黒で塗装されたそのフレームの名は、JMM-AKATUKI()

 

 右腕にムラクモ社製のレールガン、他社製よりも射程は劣るものの、消費エネルギーの低さと装弾数の多さが特徴のJMM-HR01-IKAZUTIを装備し。

 左腕にムラクモ社製のマシンガン、他社製よりもマガジン装弾数が多く、良好な集弾性を誇るJMM-MG01-ARASIOを装備。

 右背部にはムラクモ傘下の有力企業の一つ、主にエネルギー兵器開発をグループ内で先導するキサラギ・マトリクス社。

 同社が開発・製造するパルスキャノン、他社製よりも高い連射力と射撃精度を誇るが、同系兵装の宿命というべきエネルギー管理は難しいMYOJOを装備。

 左背部にはムラクモ社製の二連装チェインガン、低負担に高い射撃精度を誇るJMM-CG01-NOWAKIを装備。

 

 肩武装は装備していないものの、左腕には、通称収納と呼ばれる予備火力として、キサラギ社製のレーザーブレード、SENDENを装着している。

 

 そして、内装などもムラクモグループの品々で固められた。

 そんなアセンブルに組まれたネクストこそ、かつてムラクモの最高戦力とされたリンクス、ヤマトタケルこと武蔵が操る、ネクスト・ツルギであった。

 

「武蔵さんも、ブランクがあるとは、思えない程、強いですね」

 

「そうかな。これでも、自分自身じゃ結構衰えたと思ってるけど?」

 

「なら現役の頃は、もっと強かったんですね」

 

「アスル君、何だが嬉しそう? 声が弾んで聞こえたけど?」

 

「昔、教官から教わった言葉を思い出したんです。立ちはだかる壁は、高ければ高い程、超えた先には素晴らしい景色が待っている。……最初はどんな意味なのか、まだ子供だったから理解できませんでしたけど。今なら、解ります」

 

「そっか、なら、更に素晴らしい景色にする為にも、僕ももっと高い壁にならないとね!」

 

 暫し言葉を交わし終えた刹那、武蔵が再び攻撃を再開する。

 左背部の二連装チェインガン(JMM-CG01-NOWAKI)の砲口が火を噴き、レナトゥス目掛けて嵐のような弾丸の雨を降り注がせる。

 

 バックブースターとQBを駆使し、廃墟を盾としつつ被弾を可能な限り抑えながら、アスルも反撃を試みる。

 レナトゥスの右腕に装備しているBFF製ライフル、047ANNRを使用し、ツルギのAPを削りにかかる。

 

 しかし、ツルギは巧みなQBで自らを狙う弾丸を避けていく。

 

 だが、アスルとしてはそれが狙いだった。

 ツルギからの放たれる絶え間ない二連装チェインガン(JMM-CG01-NOWAKI)の攻撃、それを一瞬でも止める事こそ、アスルの狙い。

 ツルギが廃墟の影に姿を隠し攻撃が止んだ刹那、アスルはレナトゥスの右背部に装備しているMSAC社製ミサイル、PLATTE01を起動する。

 

 そして、一拍置いた後、再び姿を現したツルギ目掛け、PLATTE01のハッチが開口し弾頭が露わとなった搭載ミサイルを放つ。

 更に間髪入れず、後続のミサイルを発射していく。

 

 複数のミサイルが自機に飛来する事に警告音で気付いた武蔵は、再び二連装チェインガン(JMM-CG01-NOWAKI)を発砲し始める。

 だが、今回のターゲットはレナトゥスではなく、自機に迫る複数のミサイルだ。

 空中に幾つもの爆発と黒煙の花が咲き乱れる。

 程なくして、最後の一発を撃ち落としたその時、武蔵の体を衝撃が襲う。

 

「っ!?」

 

 自機の機体状況を示す表示には、脚部に被弾したとの表示。

 そして、ツルギのメインカメラには、視界を遮るかの如く、爆煙と砂煙が立ち込めている。おそらく足元付近での爆発で巻き上がったのだろう。

 これ程視界を遮る状況を作りだせる武装は、レナトゥスが装備している中で一つしかない。

 レナトゥスの左腕に装備しているGA社製のバズーカ、GAN01-SS-WBだ。

 

(ミサイルの迎撃に気を取られている隙にバズーカを当てる、流石だね。……さ、次はどう出る?)

 

 武蔵がアスルの次なる出方を伺っていた刹那。

 警告音と共に、爆煙と砂煙の右上方から、黒いSSL型が飛び出す。

 その両手に装備した銃口と発射口をツルギにしっかりと向けて。

 

「面白い!」

 

 刹那、武蔵は瞬時に左腕のマシンガン(JMM-MG01-ARASIO)と右背部のパルスキャノン(MYOJO)を起動させると、その銃口と砲口を、右上方を飛ぶレナトゥスへと向ける。

 そして、互いに放った火線が交錯する。

 

「っ!」

 

「く!」

 

 連射力では優れる兵装を有し、またSSL型にとっては相性の悪いエネルギー兵器を有したツルギ。

 如何に強固な装甲を有しているSSL型とは言え、遮蔽物の無い空中で実弾とエネルギー弾の弾幕をかわしきる事はできない。

 QBを使用し、ツルギからの弾幕を最低限の被弾に抑えつつ、上方からの攻撃を続けるレナトゥス。

 

 しかしツルギも、簡単にレナトゥスからの攻撃を受けてやることなく、バックブースターとQBを駆使し、レナトゥスから繰り出される攻撃を避けていく。

 

(まだか……)

 

 アスルは、レナトゥスのエネルギー残量、PAの減衰率。

 そして、機体の装甲耐久値を搭乗者に認識し易く視覚化すべく数値化した、アーマーポイント、通称APの残り残量に目をやりながら、その時が訪れるのを待った。

 

 実弾攻撃と異なり、エネルギー攻撃であるパルスキャノン(MYOJO)のダメージは、相性の悪さからAPの減りが多い。

 国家解体戦争時から、GA社製のパーツは総じてエネルギー兵器に対する防御力が低い事で知られている。

 最新のパーツでは多少の向上が図られているが、やはりそれでもエネルギー兵器に対する愛称の悪さは変わっていない。

 

 だが、実戦を想定すると、相手がこちらの都合を考慮してくれる事などある筈がなく。

 また、どんなに環境が悪くとも、戦わなければならない場合もある。

 

 故に、アスルはレナトゥスの残りAPに気を使いながら、耐え忍んだ。

 

(来た!)

 

 そんなアスルの忍耐が、実を結ぶ瞬間が訪れる。

 それは、パルスキャノン(MYOJO)を始めとしたエネルギー兵装の宿命、エネルギーの管理を要因とした。

 機体の稼働や戦闘機動等により使用するエネルギー消費と、兵装使用に伴うエネルギー消費。

 二つの消費を管理し、如何に戦闘中にエネルギー不足を起こさせないか、それも、リンクスとしての腕の見せどころである。

 

 そして武蔵は、そんなエネルギー管理を疎かにはしなかった。

 

 戦闘中、特に撃ち合いの最中、エネルギー不足で動きを止めればどうなるか、それは考えるまでもない。

 故に、一時弾幕を薄くしても、エネルギー消費の激しいパルスキャノン(MYOJO)の使用を一時中断し、インターバルを設ける。

 それが、武蔵の出した答えであった。

 

 が、それこそ、アスルの待ち望んでいた瞬間でもあった。

 

「そこ!!」

 

 狙いを定めたレナトゥスの右腕のライフル(047ANNR)が、火を噴く。

 刹那、マシンガン(JMM-MG01-ARASIO)の弾丸の雨の中を突き進み、飛来したライフル(047ANNR)の弾丸は、ツルギが使用を中断し光りを放つのを止めた、パルスキャノン(MYOJO)の砲口に、吸い寄せられるように飛び込んだ。

 

「何!!?」

 

 次の瞬間、武蔵は驚きの声をあげた。

 爆発と共に伝わる小さな振動の後、パルスキャノン(MYOJO)使用不能の表示が現れたからだ。

 

「エネルギー管理の為に、インターバルを設けた一瞬の隙を狙ってパルスキャノン(MYOJO)を破壊した……。本当に、流石だよ、アスル君」

 

 使い物にならなくなったパルスキャノン(MYOJO)をパージしつつ。

 武蔵は、ツルギから距離を取り、ようやく地に足を付けたレナトゥスを操るアスルに対して、感心を示す」

 

「もしかして、開始直後からさっきの反撃に転じるまでの間防御に徹していたのって? もしかして、さっきのチャンスを伺ってたって所かな?」

 

「えぇ、まぁ」

 

(僕が簡単に背後を取らせないと悟って、正面からでも射抜けるチャンスが訪れるのを待つ。状況の分析能力に忍耐力、更に咄嗟の機転。……これは本当に、並のリンクス以上だよ)

 

 不意に、武蔵の口角がつり上がる。

 

「でも、ツルギにはまだエネルギー兵器が残ってるよ!」

 

「っ!?」

 

 刹那、武蔵の操作に従い、ツルギはまだ残弾の残っている左腕のマシンガン(JMM-MG01-ARASIO)を手放した。

 砂の地面に落ちるマシンガン(JMM-MG01-ARASIO)を他所に、ツルギのFCSは新たな左腕武装としてレーザーブレード(SENDEN)を認識すると、コントロールを切り替える。

 

 そして、ツルギはこれ見よがしに、レーザーブレード(SENDEN)の光の刃を一度展開させてみせた。

 

「さぁ、次はどう来る?」

 

「……なら!」

 

 次の瞬間、レナトゥスの背部に光が収縮し、刹那、爆ぜた。

 QB同様に、鈍重なレナトゥスの外見からは想像もできないスピードで、ツルギ目掛けて突撃する。

 

「な!?」

 

 中距離での撃ち合いにでも再び持ち込むかと思っていた武蔵は、アスルのこの行動に一瞬驚愕する。

 近接戦闘用の兵装を有していないレナトゥスで、レーザーブレード(SENDEN)を装備したツルギと近接戦闘を行う。

 通常なら、わざわざ相手の有利な状況に自ら持ち込む事などしない。

 

 だが、先ほどパルスキャノン(MYOJO)を破壊した機転を鑑みれば、何らかの策があっての事。

 

 武蔵はアスルの奇策を警戒しつつも、接近するレナトゥスを迎撃すべくレーザーブレード(SENDEN)の有効範囲への接近を待った。

 

 

 それはまるで一拍分のような、短き時間の後。

 ツルギの懐にまで飛び込もうとしたレナトゥス目掛け、ツルギの振り上げた左腕ごと、レーザーブレード(SENDEN)が振るわれる。

 光の刃がレナトゥスの右腕を捉えようかと思われた、刹那、そんな光の刃の進行を遮るかのように、とある影が、咄嗟に姿を現す。

 

 それは、レナトゥスの左腕に装備したバズーカ(GAN01-SS-WB)であった。

 

 右腕を庇うかのように光の刃を受け止めたバズーカ(GAN01-SS-WB)だが、光りの刃を受け止め切る事は叶わず、チーズの様に光の刃はバズーカ(GAN01-SS-WB)を切断していく。

 だが、刹那。

 光の刃とは異なる光が走り、次の瞬間、爆音と衝撃、そして爆炎が二体のネクストを襲った。

 どうやら、バズーカ(GAN01-SS-WB)に装填されていた弾頭が、レーザーブレード(SENDEN)の光の刃によって内部で爆発した模様だ。

 

「く!」

 

 ゼロ距離にも等しい超至近距離での爆発に、奥歯を噛む武蔵。

 そして、爆煙で完全に視界が遮られたと認識した次の瞬間。

 ツルギのメインカメラからAMSを通して武蔵の網膜へと伝えられたのは、爆煙を切り裂きその姿を現す黒の巨人。

 

 止まる事無く背部の光りを爆ぜ続けさせるレナトゥスの姿であった。

 

「うぐ!」

 

 そして、伝わる大きな衝撃。

 どうやら、ツルギはレナトゥスのタックルを正面から受けたようだ。

 

「くっ!」

 

 だが、伝わる衝撃はそれだけではなかった。

 その推力を落とすことのないレナトゥスは、ツルギの巨体を押し続ける。背後に存在していた廃墟群を突き破りながら。

 

 質量・重量共に大きなレナトゥスに押され、廃墟群に背部をぶつけながらなすすべもないツルギ。

 

 やがて、二体の巨人は、廃墟群を抜け砂漠へとその身を踏み入れる。

 

「ぐは!」

 

 そして、レナトゥスは背部の光が収まり砂漠へと着地する一方。

 ツルギは、タックルの勢いと慣性の法則に従い、砂漠にその巨体を倒れさせる。

 

(まさか、自機の左腕とバズーカ(GAN01-SS-WB)を犠牲にしてレーザーブレード(SENDEN)を使用不可能にするなんてね。そしてあの体当たりか……)

 

 ツルギは散々廃墟群に背部をぶつけた為、二連装チェインガン(JMM-CG01-NOWAKI)は使用不能となり。

 更には、バズーカ(GAN01-SS-WB)が爆発した影響で、左腕はマニピュレーターを含む前腕部の半分近くが吹き飛び、当然レーザーブレード(SENDEN)も使用不可能となった。

 

 この為、現在ツルギに残された武装は、右腕のレールガン(JMM-HR01-IKAZUTI)のみだが。

 

「どうやら、僕はゲームオーバーみたいだね」

 

 右腕のレールガン(JMM-HR01-IKAZUTI)も、実質的に使用は不可能であった。

 何故なら、レナトゥスの左足が踏みつけているからだ。

 

 そして、ツルギの巨体もまた、そんな哀れな姿を見下ろすレナトゥスの右足に踏みつけられ、起き上がれないでいた。

 

 バズーカ(GAN01-SS-WB)爆発の影響で、レナトゥスの左腕もまた痛々しい姿に変貌しているが。

 右腕は、ライフル(047ANNR)共々その姿を保っていた。

 そんな右腕のライフル(047ANNR)の銃口が、ゆっくりと、ツルギのコアへと向けられる。

 

 やがて、砂漠に、数発の銃声が響き渡り。

 刹那、仮想空間の旧ピースシティは、漆黒の闇へと姿を変えた。

 

 

 

「ありがとうございました」

 

 仮想空間の旧ピースシティでの特訓の後も、他のステージでの幾つかの特訓を経て。

 特訓開始から数十分後、ようやくこの日の特訓は終わりを告げた。

 

「アスル君も、お疲れ様」

 

 特訓に付き合ってもらった感謝の気持ちを込めて一礼するアスルに、武蔵は近くに置いてあったクーラーボックスからスポーツドリンクを二本取り出すと、その内の一本をアスルに手渡す。

 

「ありがとうございます」

 

 実機程ではないが、シミュレーターと言えどやはり長時間のAMS接続は心身に疲労を蓄積させ、悪影響を及ぼす。

 そんな疲労を吹き飛ばすかのように、アスルが口にしたスポーツドリンクの清涼感は心地よいものであった。

 

 ふと、スポーツドリンクのラベルを目にすると、それがGAグループの一角、ロケットエンジンのリーディング・カンパニーことクーガー社の飲料事業を展開する子会社の商品だと気が付く。

 同時に、以前CMで同じ商品の紹介を見た記憶も蘇る。

 『青春はVOBだ!』のキャッチコピーが耳に残るCMであった。

 

「でも本当に、アスル君は強いなぁ。シミュレーターとはいえ、ツルギをあんなにボロボロにされたのは僕が現役の時にセレンと戦っていた時以来だよ」

 

「セレンさんと、ですか?」

 

「うん。セレン、当時の霞スミカはサー・マウロスクを抑えてレオーネの実質的な最高戦力だったから、なかなか出撃しないし戦場で会えなくてね……。でも彼女、決まって金曜日には必ず出撃してて、それで彼女に会いたい一心で上に無理言って僕も金曜日には出撃していてね」

 

 武蔵の話に、アスルは、以前フジタから聞いた話を思い出す。

 

「でもほら、当時はお互いライバル企業のリンクス同士、戦場で出会うって事は、戦わなくちゃいけないし、敵の言葉として僕の気持ちも届きにくい。でも、それでも僕はセレンに僕の気持ちに気付いてもらいたい。……そこで考えたのが、彼女の攻撃を受け止めて、僕の気持ちが本気だって彼女に気付いてもらう作戦でね。そのお陰で、金曜日は決まってツルギはボロボロになってね」

 

 そして、更に話を聞いて、思いがけずあの話の真相を知るアスルであった。

 

「それじゃ、先に失礼します、武蔵さん」

 

「うん」

 

 魔の金曜日の真相を知り、シミュレーターに籠りっきりで火照った体もスポーツドリンクである程度冷えた所で、アスルは一足先にシミュレータールームを後にする。

 一方、シミュレータールームに一人残った武蔵は、近くの椅子に腰を下ろすと、手にしたスポーツドリンクを数度に別けて飲んでいく。

 

「ん?」

 

 と、誰かがシミュレータールームに足を運ぶ音が聞こえる。

 

「あれ、アスル君、何か忘れも……。あぁ、親父さんでしたか」

 

「よぉ、武蔵」

 

 姿を現したのは、フジタであった。

 軽く挨拶を終えると、フジタは武蔵の隣の椅子に腰を下ろし、武蔵と話し始める。

 

「どうだった? 久々の対戦ってやつは?」

 

「やっぱりブランクのせいで腕が錆び付いてますね、何度か負けてしまいました」

 

「ははは! そうかそうか。……で、腕が落ちたとはいえ、元ムラクモ最高戦力のお前さんから見て、あの坊主は何処まで上り詰めると思う?」

 

「環境さえ更に整えば、アスル君はカラード上位にも通用するでしょうね。今は本来得意としていた戦い方を生かせるアセンではないので不便な筈ですけど、それでも、自身の置かれた環境の中で最善の結果を出すべく考え行動する彼の姿勢は、熾烈な競争を生き残る為に役立ちます。……でも、正直、何処まで上り詰めるかは、未知数です。なんたって、彼は僕と異なり元レイヴン、ですから」

 

「そうか」

 

 とフジタは一拍置くと、別の話題を切り出し始める。

 

「所で武蔵、お前さん、そんな顔するの久しぶりだな」

 

「え? 顔、ですか?」

 

「何だ、気付いてなかったのか? お前さんのその闘志に燃える顔」

 

「いやー、あはは」

 

「最後に見たのはいつだったか、あぁ、お前さんが現役だった頃、アイツと親善目的で対戦した時だったか?」

 

「えぇ、そうですね。……思えば、彼も元レイヴン、でしたね」

 

「親善試合みてぇなもんだったが、打ち負かされたお前さんのあの時の顔、今でも思い出すねぇ。次こそは負けないって闘志が目の奥でメラメラ燃え上がってたもんだ。あの頃はお前さんも若かったからな!」

 

「お、親父さん、僕も世間じゃまだまだ若い部類です」

 

「ははは! そうだったか?」

 

 再び訪れる一旦の静寂。

 だが程なくして、息を整えたフジタが口火を切る。

 

「しかしまぁ、いずれにせよ、あの坊主、楽しみじゃねぇか」

 

「えぇ、そうですね」

 

「よし、それじゃ。そんな坊主が任務に集中できるように、俺達は万全のバックアップ体制でサポートしてやんねぇとな! その為にも、頼むぜ、社長」

 

「えぇ、分かりました」

 

 そして、二人は改めて決意表明するのであった。




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