ARMORED CORE LOST for Tomorrow Answer   作:ダルマ

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Chapter1 再生への道導
Mission1 元山猫の日常


 世界が、混ざる、光と闇。

 更にそこへ、人工的な音も加わる、アラームと言う名の音だ。

 

「ん……」

 

 そして、彼は意識を夢の奥底から、現実へと覚醒させる。

 瞳を開け、窓から光が差し込むその空間が、見慣れた自身の寝室であると確かめ終えると、彼は、ベッドサイドテーブルに置かれた目覚まし時計に手を伸ばし、アラームを止める。

 

「……」

 

 ベッドから上半身を起こし、暫くぼんやりとする彼。

 整った顔立ち、綺麗な銀色に輝く短い髪、そして、サファイアの如く青く綺麗な瞳。

 その外見は、もはや夢に出てきた少年ではなく、立派に成人を果たした青年であった。

 

「懐かしい……」

 

 先ほど見ていた夢の内容、その感想を口にする。

 全てが大切な訳ではない、忘れたい記憶もある。しかし、彼にとって、それら全てが生きてきた証なのだ。

 

「っと! 準備しないと!」

 

 懐かしい記憶に浸っていた彼ではあったが、ふと、意識を現実に戻すと、目覚まし時計の時刻を目にし、慌ててベッドから起き上がり、朝食の準備を始める。

 寝室を後にキッチンへと移動すると、慣れた手つきで食パンをポップアップトースターにセットし、水を入れた電気ケトルのスイッチを入れる。

 こうして、食パンとお湯の準備が行われている間に、再び寝室に戻った彼は、クローゼットを開け、寝間着から普段着へと着替えを済ませる。

 

 そして、着替えを終えた直後、見計らったかのように、ポップアップトースターから食パンが焼けた合図が響き渡る。

 

「いただきます」

 

 愛用しているマグカップに代用コーヒーを注ぎ、程よく焼けた食パンをお皿に盛りつけ、その他ジャム等と一緒にリビングのテーブルへと運ぶ。

 そして、テレビの電源を入れ、流れるニュース番組を目にしながら、彼は朝食を食べ始めた。

 

「次のニュースです。昨晩、カラードのランキング管理部が、最新のランキングを発表しました。今回の最新ランキングの中でも注目されていたのは、何といっても、ランク十位、今回の最新ランキングでランク五位に浮上した、オーメル・サイエンス・テクノロジー社所属のリンクス、オッツダルヴァ氏です」

 

 朝のニュース番組が取り上げた話題の一つ、それが、カラードランクと呼ばれる所属リンクスの順位付けであった。

 

「同氏は、デビューとなる任務において、GA社が、当時期待の新星としていた同社所属のリンクス、コルト・バレット氏と、同氏が操るネクスト、チェロキーを撃破し、華々しいデビューを飾ると。その後も、数多くの戦果と共に破竹の勢いでランクを浮上させており……」

 

 カラードランクの順位を変動させる要因の一つに、否、大部分を占めると言っても過言ではないものが、カラードの上位組織である統治企業連盟、通称企業連。

 そんな同組織に参加している、各企業の意志である。

 設立当時は、純粋に客観的な能力等で査定されていたが、月日の経った現在では、各企業の意志により各リンクスの順位が左右する。

 これは既に周知の事実だが、それでも、そんな事実をセンセーショナルに伝えたい者がいるのも、まだ事実だ。

 

「さてと……」

 

 その後、小さな出来事を取り扱った内容や今日の占いなど、朝食を食べながら一通りニュース番組を見終えた彼は。

 空になったマグカップや食器などをキッチンで片付け、歯磨きや用を足すなど、出掛ける為の準備を整えると。

 最後に腰のホルスターに護身用の拳銃を差し込み、愛用の鞄を手に取ると、戸締りをして、自宅を後にする。

 

「おはようアスル君、今日もいい天気ね」

 

「おはようございます」

 

「よぉ、アスル、今日も警備かい、ご苦労なこったね」

 

「いえ、全然苦じゃありませんよ」

 

 自宅から目的地へと向かう道中、彼、こと『アスル・ゼルトナー』は、顔馴染みとなった住民達と挨拶をかわしつつ、目的地へと向かう。

 

 目的地へと向かう、通い慣れた道から見える風景は、赤レンガの建物が風情と歴史を感じさせる、ヨーロッパに多く見られる風景そのもの。

 それもその筈、アスルが現在いる場所は、東欧、国家解体戦争以前にリトアニアと呼ばれていた地域。

 その北東部に位置するコロニー・ウテナである。

 

 コロニーとは、国家解体戦争以降、人々が生活する居住区の総称であり。

 有名なものに、リンクス戦争の英雄を輩出した、アナトリアがある。

 

 コロニーの規模や生活様式などは、各コロニーごとに異なっており。

 主に、企業が戦略上重要と考えられる地域に存在するコロニー等は、企業の統治の下、支援などを受け、比較的規模も大きく、安全で豊かな生活を送っている事が多い。

 しかし逆に、企業から戦略上重要と考えられていない地域に存在するコロニー等は、規模も小さく、企業の支援も受けられず、安全も担保されず貧しい生活を送っている事が多い。

 

 そして、コロニー・ウテナは、どちらかと言えば後者に該当するコロニーであった。

 同地は、旧リトアニア時代から天然資源に乏しく。

 国家解体戦争以降も、アルドラやローゼンタール、旧レオーネメカニカにメリエス(現インテリオル・ユニオン)、更にはテクノクラートや旧アクアビット等。

 名だたる企業の本社に近いものの、何れの企業からも戦略的価値を見出されず。

 クレイドル完成以降、多くの企業がクレイドルに基盤を移し、同時にクレイドルの根幹をなすエネルギー供給の基幹インフラ施設"アルテリア"の建設を進め、建設地域が企業の恩恵を受ける中、同施設の建設地域にも選定されず。

 

 この為、コロニー・ウテナは、数多く見られる貧しい小規模コロニーの一つであった。

 

 だが、唯一同様の他のコロニーと違う所を挙げれば、それは、企業にとって戦略上重要でないが為に、同地域のコジマ汚染が軽度で済んでいる事だろう。

 この為、同コロニーは汚染の深刻な地域などでは不可能な穀物の生産を行い、それらを他のコロニー等に輸出。

 それで得た資金を基に、独自の防衛組織である"コロニーガード"を設立し、野盗等、外敵からの防衛体制を整えている。

 

 そして、アスルは、そんなコロニー・ウテナのコロニーガードに雇われている傭兵であった。

 

 

 

「おはようございます」

 

「よぉ、レイヴン、おはよう」

 

 自宅を出て歩く事数十分、コロニー・ウテナの郊外付近に存在するコロニーガードの基地、そこが、アスルの目的地である。

 正面ゲートにいた顔馴染みの警備兵と挨拶を交わし、基地内に足を踏み入れたアスルは、迷うことなく基地内を進む。

 

 基地と言うだけはあり広大な敷地を有する、その中を、歩くこと数分。

 航空機用と異なり、幅よりも高さのある格納庫群がアスルの目の前に現れ始める。

 その内の一つに迷うことなく足を踏み入れたアスル、格納庫内に広がっていたのは、ハンガーに固定された機械の巨人達の姿であった。

 

「おはようございます、ユージェフさん」

 

「よぉ、アスルか、おはよう!」

 

 巨人と比較すると小人のような、作業着を着て巨人達の周囲を忙しそうに動き回る人々の中、そんな人々を監督するかのように佇んでいた人物に、アスルは声をかけた。

 くたびれ薄汚れた作業服を着たその人物は、齢五十ながらも、腕まくりで露わになったその腕は、とても五十とは思えぬ程逞しく、身に纏う雰囲気も若々しい。

 ユージェフを呼ばれたこの人物こそ、現在稼働中の他、格納庫群に収納されたコロニーガードの使用するノーマル等の機動兵器、その整備を担当する整備隊の長。

 整備長ユージェフ、その人であった。

 

「お前さんの機体、バッチリ仕上げておいてやったぜ! 新品とまではいかないまでも、以前より動きは良くなってる筈だ」

 

「ありがとうございます」

 

「いいって事よ。お前さんは、このコロニーの守護神だからな! 守護神様は大切にしねぇとな! ははは!」

 

「そんな、大袈裟ですよ」

 

 豪快に笑いアスルの肩を叩くユージェフ整備長、一方のアスルは、苦笑いしながら対応するのであった。

 

「それじゃ、着替えてきますね」

 

「おう、出撃の準備は進めておく。……あぁ、そうだ、任務から帰ってきたら、整備の感想、聞かせてくれや」

 

「分かりました」

 

 一旦格納庫を後にしたアスルは、近くにある建物に足を運ぶと、そこで働く数人と軽く挨拶を交わした後。

 建物の一室に設けられたロッカールームへと足を運んだ。

 そして、自身の名が書かれたロッカーを鍵を使って開けると、鞄を置き、手際よく着替えを始める。

 

 普段着から着替えたのは、夢で着ていたのとは異なるパイロットスーツ。

 最後にヘルメットを小脇に抱えて、鍵をかけ、ロッカールームを後にすると、再びあの格納庫へと舞い戻る。

 

「よぉ、着替えてきたな」

 

「ユージェフさん、弾薬の方は?」

 

「バッチリだ。いつでも出撃できるぜ」

 

 ユージェフ整備長に声をかけ、お礼を述べると、アスルは格納庫の奥へと足を進める。

 そして、奥のハンガーに固定された、黒を基調とした塗装が施された一体の機械の巨人の前で足を止めた。

 

 一旦その全体像を眺めたアスルは、一呼吸置いて、小脇に抱えたヘルメットを被ると、ハンガーに併設されたエレベーターを使い、巨人の頭部付近へと上る。

 そして、巨人に乗り込むべく、アスルは巨人の胴体後部、スライドし姿を現したコクピットハッチから内部へと乗り込んだ。

 

 狭苦しいコクピット内のシートに身を委ね、ベルトでしっかりと固定すると、アスルは、パイロットスーツの胸ポケットから鍵を取り出すと、迷うことなくコンソールに設けられた鍵穴に鍵を差し込み、鍵を捻る。

 刹那、正面のメインモニターに光がともり、同時に、パスワードの入力画面が表示される。

 アスルは慣れた手つきでコンソールを操作しパスワードを入力すると、刹那。

 

「メインシステム、通常モード、起動します」

 

 女性の機械音声が流れ、同時に、コンソール上に時機の様々な情報が表示されていく。

 そして、黒い巨人の目に、光が宿った。

 

「こちらアスル、"レナトゥス"、これより出撃します」

 

「了解、本日もよろしく頼む、レイヴン」

 

 ハンガーの固定が解除され、オートパイロットに従い黒の巨人、レナトゥスと名付けられたハイエンドノーマルのACが、格納庫のゲートを目指す。

 戦闘機の機首を彷彿とさせるシャープな胴体、丸肩の腕部に直線が目立つ脚部、そして、SFチックなヘルメットを彷彿とさせる流線形の頭部。

 右腕にはリニアライフル、左腕にはレーザーブレード、右肩にはマイクロミサイル、左肩にはグレネードランチャーを装備している。

 そして、左肩には、大鎌を掴み羽ばたく鴉を描いたエンブレムが描かれている。

 

 それはまさに、ノーマルやマッスルトレーサー(MT)とは、一線を画す雰囲気を漂わせていた。

 

 かつて、ネクストが登場する以前は、このハイエンドノーマルこそが最高戦力の兵器であった。

 しかし、ネクストが登場して以降はその座をネクストに明け渡し、更にAF登場以降、代替可能なノーマル程使い勝手もよくなく、かといって量産型AFやネクスト程の絶対的な火力を有している訳でもない。

 そんな中途半端な立ち位置故、ハイエンドノーマルは、今では最盛期と比べ、半数以下ほどにその数を減少させていた。

 

 それでも、ネクストのように戦闘によりコジマ粒子をまき散らす事もなく、量産型とはいえ簡単に手に入れる事も、仮に手に入れても運用する事も難しいAFに対し。

 少し探せば簡単に見つけられ、尚且つ賊相手に自衛としては丁度良い戦力であるハイエンドノーマルは、コロニー・ウテナのような無法地帯に生きる小規模コロニーには頼もしい存在であった。

 

「よ、レイヴン、今日もご苦労さん」

 

「頼んだぞー」

 

「宜しくな」

 

「皆さん、お疲れさまでした」

 

 格納庫を出て、そのまま基地を後に、レナトゥスはコロニー・ウテナの外縁部にまでやって来た。

 その目的は、哨戒任務をこなす為だ。

 すれ違った、哨戒の任を終え基地に帰還する途中のコロニーガードのMT部隊を見送ると、レナトゥスは、プログラムに従って外縁部を歩き始める。

 

「今日は何事もなければいいな……」

 

 レーダー画面に不明機などの表示が現れていないのを確認すると、メインモニターに映し出された、地平線の彼方まで広がる草原を目にしつつ、アスルは独り言ちた。

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