ARMORED CORE LOST for Tomorrow Answer   作:ダルマ

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Mission1-3 自分勝手な者達

 コロニー・ウテナを目指して進む、独自改造を施したGAEM-QUASARの中枢ともいうべき、三連装砲塔の後方に位置する艦橋。

 外見共々、艦橋内も、派手な装飾の追加などで本来の様子とはすっかり様変わりしたその中心部。

 本来は艦長席であったその席に、見るからに不摂生であろう腹部の出っ張りに、悪人の如く人相をした、野盗の頭領の姿があった。

 

「おい! 連中からまだ返信はないのか!?」

 

「へ、へい。それが、返信どころか機体反応すら確認できなくなりまして、おそらく、全滅したかと」

 

「っち! んだと、相手はたかがちんけなコロニーの自警団連中だろうが! そんな連中に全滅させられるとは、くそ、使えねぇ部下どもだ!」

 

 野太い声で怒りをまき散らした野盗の頭領は、最後に、吐き捨てる様に死んだ部下達の評価を下す。

 

「ですが、攻撃隊からの通信では、コロニーの連中、腕利きのレイヴンを雇っていた様ですが?」

 

「だが聞いた限りじゃたった一人だろ。たかがレイヴン一人も倒せず返り討ちにあうようじゃ、我らがダスト・ダンストの面汚しよ」

 

 野盗の頭領は脇のテーブルに置かれた、酒の入ったコップを手にし、その中身の酒を自身の口に一気に流し込むと。

 酒で潤った喉を、再び鳴らし始める。

 

「だが、俺様とコイツ(GAEM-QUASAR)がいれば、どんなレイヴンだろうと一捻りよ! そうだな?」

 

「へ、へい!」

 

「ボスにかなう奴なんていませんよ」

 

「ボスサイコー!」

 

 艦橋内に響く部下達の心地のいい声に、野盗の頭領は、満足げに笑みを浮かべた。

 

「よーし! それじゃ、さっさと蹂躙しにいくとしようか」

 

 そして、上機嫌となった野盗の頭領がそう口走った刹那。

 艦橋内に、警報音が流れる。

 

「ん? 何事だ?」

 

「レーダーに反応! 何かがこちらに接近してきます!」

 

「何かとは何だ! 何かとは!?」

 

 レーダー手を務める部下からの曖昧な報告に、野盗の頭領は報告は詳しくと叱責する。

 

「か、解析完了。……これは、ハイエンドノーマル! ボス、レイヴンです! レイヴンの奴が!」

 

「何レイヴンだと!? 数は!?」

 

「一機だけです」

 

 部下からの再度の報告を聞き、一時は焦りだしていた野盗の頭領の口元が、不敵な笑みを浮かべ始める。

 

「ふふふ、ははははっ! 単機だと、ははは! 腕利きだか何だか知らんが、ハイエンドノーマル単機でコイツ(GAEM-QUASAR)を墜とそうなどと、片腹痛いわ!!」

 

 高笑いを終えると、野盗の頭領は部下達に早速指示を飛ばす。

 

「テメェら! 相手はたかがハイエンドノーマル一機、さっさと薙ぎ払え!!」

 

「おぉ!!」

 

 刹那、艦橋内が慌ただしさを増し、程なくして、艦橋の窓から見える三連装砲塔が火を噴いた。

 この一撃で邪魔者のレイヴンは乗機共々吹き飛ぶ、野盗の頭領はそう考えていた。

 

 だが、程なくして部下からもたらされた報告に、野盗の頭領は耳を疑った。

 

「ボス! 敵は依然接近中!」

 

「な!? 何だとぉ!?」

 

「先ほどの砲撃は避けられたようで……」

 

「だったら当たるまで撃ち続けろ!! ぼさっとするな!!」

 

「へ、へい!!」

 

 再び艦橋内にまで響く三連装砲塔の発砲音。

 しかし、もたらされる報告は、数を増すごとに悲鳴にも似たものとなり、遂には、泣き言が吐かれるまでになった。

 

「ボス、当たらねぇ、当たらねぇよぉ……」

 

「泣き言言ってねぇで撃ちまくりやがれ!!」

 

 部下に喝を入れる野盗の頭領ではあったが、彼自身も、内心ではかなり焦っていた。

 

「敵ハイエンドノーマルからミサイル攻撃!」

 

「迎撃しろ!」

 

 そして、遂に敵のハイエンドノーマル。

 レナトゥスは、砲撃を掻い潜り、GAEM-QUASARを射程に収めるまでに接近した。

 

 そんなレナトゥスから放たれるマイクロミサイルを、自慢の近接防御用のガトリング砲等で迎撃すると、お返しとばかりに、それらの銃口がレナトゥスに向けられ、火を噴き始める。

 しかし、レナトゥスは地面を滑り、時折小さなジャンプを織り交ぜるなど、巧みな動きでそれらを回避していくと、今度は手にしたリニアライフルを撃ち始める。

 

「っ! 何やってる! 敵は一機だろうが!! さっさとハチの巣にしやがれ!」

 

 流石にビショップ等のMTと比較すると、GAEM-QUASARの面の皮は厚く、リニアライフルが当たっても致命傷には及ばない。

 だが、機械のダメージは軽微でも、それを操る人間への精神的ダメージは、かなりのものとなる。

 一方的に撃たれ続ける恐怖、更には幾つかの機関砲がリニアライフルの直撃で吹き飛ばされ、味方の悲痛な叫びと共に、意識せずにはいられない迫りくる死。

 鍛えられた軍人でも辛いそれを、訓練を受けていない野盗程度が耐えられる筈もない。

 

「ボス! 左舷の対空砲連中が逃げ出したとの報告が!」

 

「何だと! 直ぐに持ち場に連れ戻せ!! 今弾幕を途切れさせたら……」

 

 野盗の頭領が危惧した事を、アスルは見逃さなかった。

 弾幕が途切れたGAEM-QUASARの左舷側から一気にレナトゥスを近づけると、ブースターを噴射し、GAEM-QUASARの本体上部に飛び乗る。

 

「な! 何だ!?」

 

 レナトゥスが飛び乗った振動を感じ、何事かと周囲を見渡す野盗の頭領。

 そして刹那、彼は、艦橋の窓から、恐ろしい光景を目にする事となる。

 

「無駄な抵抗を止め降伏すると言うのなら、命までは取らない」

 

 そこに広がっていたのは、三連装砲塔の上に立ち、艦橋目掛けてリニアライフルの銃口を向けている、レナトゥスの姿であった。

 そして、オープン回線を通じて、艦橋内にアスルの降伏勧告が流れる。

 

「繰り返す。無駄な抵抗を止め、降伏すると言うのならば、命までは取らない」

 

「ぼ、ボス……」

 

「……」

 

 艦橋内の部下達の視線が、野盗の頭領へと向けられる。

 幾らGAEM-QUASAR自体が堅牢な装甲を身に纏っていると言っても、艦橋の窓のガラスが防弾ガラスと言っても、ゼロ距離からのリニアライフルの直撃に耐えられるものではない。

 

 それに何より、自分達は目的の為に死をも覚悟し戦う軍人ではない。

 誇りなど、何の役にも立たない。

 自分勝手に生きて、自分勝手に死ぬ、そんな連中。

 

 暫し目を閉じ腕を組んで考えを巡らせた野盗の頭領は、やがて目を開くと、艦長席に備えられているマイクを手に取り、そのスイッチを押した。

 

「こちらダスト・ダンストのボスだ。レイヴン、本当に命の保証はしてくれるんだろうな?」

 

「勿論だ」

 

「……なら、降伏勧告を受諾する」

 

 この瞬間、コロニー・ウテナを巡る戦いは、ウテナ側の勝利に終わったのであった。

 

 

 

 

 アスルがGAEM-QUASARを無力化した報告は、瞬く間に基地司令部内の一角、司令室の雰囲気を歓喜のものへと変貌させた。

 近くの者と喜びを分かち合う者が多い中、薄暗い司令室の一角に佇んでいた一組の男女は、そんな雰囲気に飲まれる事なく、冷静な様子を醸し出していた。

 その身に纏った雰囲気は、関係者とは思えぬものであった。

 

「成程ねぇ、うん、やっぱりいいんじゃないかな?」

 

「確かに動きは及第点以上だが、今回は相手が弱すぎたんだ、勝つのは当然だろう」

 

 司令室に詰める者達と異なり、互いに黒のスーツに身を包んだその男女は、司令室のモニターを目にしつつ会話を続ける。

 

「まぁ、確かに、クエーサーは本来本体上部のVLSからミサイル攻撃が可能な筈だけど、さっきの戦闘を見る限り、ミサイルを撃つような様子は見られなかったしなぁ、積んでなかったのか、それとも改造して撃てなくなったか。それに練度の方も高いとは言えない動きだったし……」

 

「それに、護衛のノーマルもMTもいない。火力で劣っていようと、機動力や被弾面積等で圧倒的に勝っているんだ。一対一の状況なら、並のレイヴンだろうと勝って当然の状況だ」

 

「でも、クエーサー相手にただ勝つんじゃなくて鹵獲したんだよ。並のレイヴンじゃ、そこまで瞬時に状況判断できないと思うけどな」

 

 モニターに映し出された無人航空機からの映像には、艦橋にリニアライフルの銃口を向けたレナトゥスを乗せ、コロニー・ウテナを目指して進むGAEM-QUASARの姿があった。

 アスルからの報告により、その映像の意味するところが、GAEM-QUASARを鹵獲したとの解釈は、既に司令室にいる者全員に行き渡っている。

 

「確かに、このコロニーの防衛戦力の現状を鑑み、破壊ではなく鹵獲を試みる。その判断を瞬時に下したその頭は、評価する所だな。だが、その試みも、相手が弱すぎたからこそ成功したに過ぎん」

 

「スミちゃんは厳しすぎるんじゃないかな? もっと期待しても……」

 

 男性が女性の名を口にした刹那、まるで視線だけで人を殺せてしまいそうな程の鋭い視線が男性に向けられる。

 

「他人がいる場でその名を口にするな」

 

「は、はい」

 

 そして、低い声で注意する女性に、男性は、顔を引きつらせながら返事をするのであった。

 

「そもそも、厳しく評価するのは当然だろう。これから、私達の人生を預けるのだからな」

 

「そう、だね」

 

 刹那、モニターに映し出された鹵獲したGAEM-QUASARが、コロニー・ウテナの外縁部に到着した。

 

 

 

 

「スゲェな!」

 

「よくやったな! レイヴン!!」

 

「あんたは俺達のヒーローだ!!」

 

 鹵獲したGAEM-QUASAR、及び降伏した野盗連中の面倒を引き継ぐべくやって来たコロニーガードの部隊に後を任せると。

 アスルはコロニーガードからの称賛の声を背に、通常モードに切り替え操縦するレナトゥスを、格納庫へと向かわせる。

 

「お前らーっ!! ヒーローのお帰りだ!!」

 

 そして、格納庫へと帰還したアスルが目にしたのは。

 格納庫のゲートで手を振りレナトゥスを出迎える、ユージェフ整備長を始めとした整備隊の面々であった。

 

「お帰り、ヒーロー!」

 

「流石レイヴン! 痺れるぜ!!」

 

「憧れるなぁ~」

 

「レイヴン! レイヴン!!」

 

 レナトゥスの集音マイクが拾った整備隊員達の声が流れるコクピット内は賑やかであったが。

 レナトゥスをハンガーに固定し、ヘルメットを脱いでコクピットハッチから外へと出ると、そこには、コクピット内の何倍もの声量で鳴り響く整備隊員達の声があった。

 

 その勢いに圧倒されそうになるも。

 アスルの体は、整備隊員達の手により本人の意思と関係なく移動させられると。

 格納庫のど真ん中で、胴上げされ、宙を舞うのであった。

 

「ははは! アスル、お前さんはやっぱり凄い奴だよ!!」

 

 そして、何度か宙を舞った所で地に足をつけられたアスルを待っていたのは、ユージェフ整備長の豪快な笑顔と、彼の腕が自身の背中を叩く感触であった。

 

「いえ、そんな……。クエーサーを鹵獲できたのも、ユージェフ整備長や整備隊の皆さんが、機体を仕上げてくれたお陰ですよ」

 

「かーっ!! 嬉しい事言ってくれるじゃねぇか!! おい皆! もう一度ヒーローを胴上げだ!!」

 

「おーっ!!」

 

「え、えぇ!?」

 

 ユージェフ整備長の一声で、再びアスルの体が宙を舞うかと思われた、その時であった。

 

「皆さん、英雄を称えるのも結構ですが、今は、それよりも先にすべき事があるでしょう!?」

 

 凛とした女性の声が響き、整備隊員達の騒ぎが収まる。

 そこにいたのは、コロニーガード司令官の副官を務める女性であった。

 

「っとそうだった。おいお前ら! いっちょヒーローの愛機を直してやるとするか!」

 

「おぉーっ!!」

 

 そして、ユージェフ整備長の声で解散し、各々持ち場に戻っていく整備隊。

 それを他所に、ようやく整備隊から解放されたアスルは、副官に声を掛けられていた。

 

「先ずは、今回の件、個人的にもお礼を申し上げます。本当に、ありがとう」

 

「いえ、俺は自分の役割を果たしただけですから」

 

「謙虚なのね、レイヴンにしては珍しい。……さて、本題だけれども。レイヴン、着替えたら司令官の執務室に来て頂戴。臨時報酬の話がありますので」

 

「分かりました」

 

 こうして副官の女性から用件を聞いたアスルは、着替えるべく、ロッカールームを目指した。

 ロッカールームのある建物でも、既にアスルの活躍の話は広まっていたのか、整備隊程ではないものの、称賛の嵐であった。

 

 そして、何だか戦っている時よりも疲れた気がしながらも、手早く着替えを終えたアスルは、司令官の執務室に足を運ぶべく、基地司令部へと向かった。

 

 

「リンスキー司令、レイヴンをお連れしました」

 

「おぉ、通してくれ!」

 

「失礼します」

 

 何度か足を運んだ事のある司令官の執務室に足を踏み入れると、そこでアスルを出迎えたのは、小奇麗な軍服に身を包んだコロニーガードの司令官、リンスキー司令であった。

 

「よく来てくれた、さ、掛けたまえ」

 

「はい」

 

 リンスキー司令に促され、応接用のソファーに腰を下ろしたアスルは、早速、対面に座ったリンスキー司令から感謝の言葉の嵐を受ける事となる。

 

「本当に良くやってくれた、レイヴン! 鹵獲した大型兵器は部下に命令して、早速使用状況を確認中だ。もし状態が良ければ、我がコロニーガードは大幅な戦力強化となる」

 

 人員の関係で全体を動かせずとも、三連装砲塔を動かすに必要な人員さえ確保できれば、固定砲台として有効活用できる。

 無論、維持していくために消耗品の調達などは新たに必要となるが、それでも、有力な戦力を手に入れられ嬉しくてたまらないと言わんばかりに、リンスキー司令の表情には笑みがあふれている。

 

「あの、所で、今回呼ばれたのは臨時報酬の話をする為だと伺ったのですが?」

 

「ん? おぉ、そうだった! ははは、勿論、忘れてはいないさ。今回の最大の功労者であるレイヴンへの謝礼はな」

 

 リンスキー司令は副官の女性を呼ぶと、彼女の用意した一枚の紙とペンを受け取る。

 やがてリンスキー司令は紙にペンで何かを書き込むと、その紙を、アスルへと手渡すのであった。

 

「どうだろう? この金額で納得していただけるだろうか?」

 

「……えぇ、分かりました」

 

「そうか、それはよかった。では、直ぐにこの金額の臨時報酬を、君の口座に振り込んでおくよ」

 

 臨時報酬として提示された金額の書かれた紙を副官の女性に手渡すと、アスルは、ふと気になった疑問をリンスキー司令にぶつける。

 

「所でリンスキー司令。降伏した野盗の面々はどうするんですか?」

 

「あぁ、彼らは暫く勾留して、企業連管下の警察機関に引き渡す予定だ」

 

「そうですか」

 

 国家解体戦争以降、国家と言う存在と共に国際的な調停機関も、その存在を抹消される事となった。

 その為、野盗やテロリスト等、これら国際的な犯罪者を公正に処罰する機関も失われ、これら犯罪者の処罰に関しては、一時、大幅な退化が巻き起こる事となった。

 

 しかし、無法者とはいえそれらの処罰をこのまま放置しておくのはよろしくないと、新たな統治者たる企業は鑑み。

 リンクス戦争後、新たな企業連合体として誕生した企業連の下に、国際的犯罪者を公正に処罰する警察機関を設置する事となった。

 

 だが一部では、今なお近代的倫理観に基づかない処罰が行われているが、どうやらコロニー・ウテナはそんな例外には当てはまらないようだ。

 

「それにしても、本当に、最後によい土産を置いていってくれたよ君は」

 

「え?」

 

「あ、あぁ、いや、何でもない!」

 

 ふと、リンスキー司令が零した意味深な言葉がアスルは気になったものの。

 結局、リンスキー司令はその意味を答えてくれるような雰囲気ではなかった為、それ以上追及はしなかった。

 

「あぁ、レイヴン」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

「実は君にお客様が来ているんだよ。隣の応接室で待っているんだがね」

 

「俺に、ですか?」

 

 だが、アスルは程なくして、先ほどの意味深な言葉の意味を知る事となる。

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