なにもない正方形の黒い部屋の中心に一人の幼女が立っている。私は彼女の隣に座っている。
ーーまた、この夢か。
邪ンヌを初めて召喚した日から定期的に見る夢。おそらく、サーヴァントの心象風景というモノだろう。
私はこの夢が嫌いだ。自由がない。指一本動かせない。なにをするでもなく、ただ時が過ぎて行く。
暫くすると、隣に立っていた幼女が私の目の前に来る。
のっぺらぼう。幼女には顔が無い。彼女が人差し指をなにも無い顔にあてて、スッと横に引くと裂けて口ができる。グロい。
ーーまた、か。
幼女は私の顔を掴むと、そのできたばかりの口で口付けする。ドロリとした粘性の液体が流れ込んでくる。幸いなことに無味無臭。そして不幸なことに、液体が胃だけでなく肺に入ってきても、その行為は終わらない。
息が、できない。世界が、暗転する。
◆◆◆
ダ・ヴィンチにダメ元で要求したレイシフト不参加願いは、やはりダメだった。
理由は至極単純。私のカルデアにおける立場が危うくなるから。アヴェンジャーである邪ンヌだけでなく、呼び出した私自身も危険視されているらしい。これは初耳。
『クソ兄貴だってアヴェンジャークラスのサーヴァントを呼び出してるのに、私達だけ危険視されてるとか理不尽だと思わない?』
『アレは擬きですから。それを理解しているカルデアの職員は優秀ですよ』
『擬き?』
『言葉どおりの意味です。それより、良いんですか。戦闘に参加しなくて』
私達が念話で会話している前では、クソ兄貴とサーヴァント達が敵と戦っている。今回は珍しくレイシフトが成功し、初めから一緒に行動できているわけだが。
『必要ないでしょ』
『まあ、そうですね』
圧倒的戦力の前に敵が消し飛んでいた。
◆◆◆
『私、人類最後のマスターの一人としてカウントされてなかったけど泣いて良いかな』
『どうぞ御勝手に』
『冷たい』
第四特異点修復が終わったと思った矢先、魔術王ソロモンと名乗る刺青の凄い人が現れた。
ぐだぐだと長ったらしく話していたが、要するに通常呼ばれるサーヴァントより強くて諸悪の根源ってことらしい。
あと、何故かは知らないけど汚物を見るような目で睨まれた。クソ兄貴と私の扱いの差が酷い。
『にしても今回、私達、見事になにもしてないね』
『気にしたら負けです』
◆◆◆
なにもない正方形の黒い部屋の中心に一人の幼女が立っている。私は彼女の隣に座っている。
また、いつもの夢。
ーーと思ったが、違う。私の身体に無数の白い手が巻き付いている。
隣に立っていた幼女が、夢が始まって早々に口付けをしてくる。エグい。
しかも、流れてくる粘性の液体の量と勢いが今までの比じゃない。苦しいッ。
夢の中だから時間はわからないが、少なくとも一時間以上は経った気がする。いつもなら苦しくなって気を失う筈が、今回はそうならない。私の身体に巻き付いていた無数の白い手はいつの間にか消えていた。
ーースター。
ーーマスター、起きてください。
◆◆◆
「大丈夫ですか」
目を覚ますとカルデアのマイルームで、邪ンヌがこちらを見ていた。
「……なにが」
「随分と、うなされていましたよ」
「……覚えてない」
「そうですか。取り敢えずシャワーを浴びて着替えたらどうですか」
「……そうする」
言われて気付いたが、寝汗でパジャマがビショビショだ。最悪。
「ひとまずは大丈夫そうですね」
「なにが?」
「独り言です」
「あ、そう」
今回の話は主人公と邪ンヌの本質に関わる為、わかりづらいです。
詳しい説明は今後の話でします。今は適当に流してください。