オルタなジャンヌ   作:月ノ城

11 / 13
十一話

 どうやら前回、レイシフトが成功したことは偶然だったらしい。

 

 「まーた、失敗か」

 

 思わず愚痴が出てしまう。

 私と邪ンヌは、西部劇に出てくるような街へ転送されていた。

 

 「通信はどうですか?」

 

 邪ンヌに問われ、通信機を確認する。珍しいことに電波が立っている。取り敢えず、現状無事であることを連絡する。

 

 『無事にレイシフトできたようで良かったよ』

 

 ダ・ヴィンチの安堵した声が聞こえてくる。

 

 「まあ、クソ兄貴とは別ですけど」

 

 『それは予定どおりだよ。今回から同じ座標に跳ばす条件を外して、そのリソースを安全面に割いたからね。以前のような空から落ちることは、もう起きないと思うよ』

 

 「流石ですね」

 

 『それほどでもあるさ。取り敢えずリッカちゃん達は、現状の把握と拠点の確保に専念してもらって良いかな』

 

 「わかりました。失礼します」

 

 通信を終了する。

 現状の把握と拠点確保。拠点に関しては、通信ができるこの街で良いだろう。

 

 「邪ンヌ、人の気配は?」

 

 「ありません。ゴーストタウンですね」

 

 現地人が居ないとなると、現状の把握は厳しいか。

 

 「下手に動いて状況が悪化しても嫌だし、次の連絡が来るまでは、この街で待機。人が居ないなら建物は使いたい放題だし」

 

 「わかりました」

 

◆◆◆

 

 数日後、クソ兄貴達と合流した私達は今後の行動方針を話していた。

 

 「戦力を分けてまで、暗殺に挑戦する必要はないと思います」

 

 ジェロニモ発案の暗殺計画は悪くはないが、サーヴァントの人数でアドバンテージを取っている状況でやるべきことではない。

 クソ兄貴は二つ返事で了承し、そのサーヴァント達はマスターの指示に従うと言って考えを放棄。こいつらは使えねえ。

 

 「賛成できないか」

 

 「ジェロニモの言うことはわかるけど、サーヴァントの人数有利を捨ててまでやる必要はないと思います。それとも他になにか理由が?」

 

 私が問うとジェロニモはラーマを見て、少し逡巡してから口を開く。

 

 「ラーマの治療中に邪魔が入らないようにする為だ。私がメイヴの立場なら、アルカトラズ島を攻略中のキミらを背後から襲う」

 

 確かに、いくらサーヴァントの人数で有利を取っていても挟み撃ちをされればキツい。ジェロニモの意見は一理あった。

 

 「ふざけるな!」

 

 私とジェロニモの話を聞いていたラーマが怒声を上げる。

 

 「余は他者を犠牲にしてまで自分が助かりたいなどと思っていない!」

 

 ナイチンゲールが傷に響きます落ち着いてくださいと言って、ラーマを宥める。

 

 「落ち着いていられるか! 余は他者の命を踏み台にしてまで、生き長らえたくなどない!」

 

 「わかっています! 私も反対です! ですが、ここまで貴方を救おうとしてきた想いを無駄にするような、身体に負担を掛ける行動はやめてください!」

 

 ナイチンゲールの言葉にラーマが押し黙る。

 

 「……アルカトラズ島攻略組とその後方を守る組に分けませんか。アルカトラズ島攻略組はラーマの治療が終わり次第、後方を守る組と即時合流。最悪の場合はアルカトラズ島で籠城戦」

 

 今まで、黙って話を聞いていた邪ンヌがおもむろに口を開き、作戦を言う。

 

 「籠城まで追い詰められた場合の勝機はどこにある?」

 

 ジェロニモの当然の疑問に対し、邪ンヌは迷いなく返答する。

 

 「西部アメリカ軍です。敵の敵は味方。東部アメリカ軍の主力が背後を見せれば、当然全力で攻撃するでしょう」

 

 「……それはわからない」

 

 ジェロニモが異を唱える。

 

 「何故ですか?」

 

 「エジソンは今、目が眩んでいる。正しい判断ができるか微妙なところだ。最悪の場合、機械化兵を送り込んで終わりかもしれん」

 

 なんとも言えない残念な空気が場を支配する。頭がライオンと聞いたときは、アホかと思ったが、外見だけでなく中身までとは。

 

 「エジソンは熱病に侵されています。それを治療できれば、正しい判断ができるようになるでしょう。私に彼と話をさせてください」

 

 ナイチンゲールが唐突に言う。

 

 「どうやって?」

 

 私が問うとナイチンゲールが、カルデアとの通信立体映像を指差す。

 

 「それを繋ぐことはできませんか」

 

 『残念ながら媒体のない場所に通信を繋ぐことはできないよ』

 

 ダ・ヴィンチが悔しそうに言う。

 

 「……通信機。私の持っている通信機を届けることができたら可能?」

 

 『……リッカちゃんの持っている通信機を届けることができれば、確かに可能だが危険過ぎる。許可できない』

 

 「それしか方法がないなら、やるしかないでしょ」

 

 「私も許可できません。貴女にはまだ生きてもらわないと困ります」

 

 邪ンヌからも反対されてしまう。少しはマスターの意見に従ってくれませんかね。

 

 「その通信機って、お嬢ちゃん以外は使えないの?」

 

 話を聞いていたロビンがダ・ヴィンチに質問する。

 

 『いや、指紋認証のロックを解除すれば誰でも使えるよ』

 

 「なら、届ける役はオレがやろう。幸いなことに宝具のおかげで、気配を消しながら移動することに苦労はしねーしな」

 

 そう言うと、ロビンはこちらに向かって手を差し出してくる。私は、通信機を取り出し渡す。

 

 「先達からのアドバイスだ、お嬢ちゃん。自分を大事にしな」

 

 「……善処はする」

 

 私の返事に苦笑いすると、ロビンは早々に発とうとする。

 

 「失敗するでないぞ」

 

 「ヘマするんじゃないわよ」

 

 その背中にネロとエリザベートが激励の言葉を掛ける。

 

 「はいよ。そっちもな」

 

 手を軽く振り、ロビンはエジソンが居る城へ向かって駆けて行った。

 

 「方針は決まったな。部隊の編成については、戦争の経験がある者で決める。明日以降、気の休まるときは来ないだろう。今日が最後の休息日になる。各々、英気を養ってくれ」

 

 ジェロニモが話を纏める。

 

 『邪ンヌ』

 

 『なんですか、マスター?』

 

 『部隊編成、私とクソ兄貴は別にしてもらって』

 

 『わかりました。ただ、そうなるとおそらく後方を守る組になりますよ』

 

 『それでいいよ』

 

 邪ンヌとの念話を終え、一息つく。

 疲れた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。