オルタなジャンヌ   作:月ノ城

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十三話

 第六特異点、砂漠のど真ん中にレイシフトした私達は当てもなく歩いていた。

 

 「邪ンヌ。ごめん、もう歩けない」

 

 既に歩き始めてから三時間が経過し、私の体力は限界だった。前を歩いていた邪ンヌが立ち止まり、こちらへ来る。

 

 「リュックを借してください」

 

 言われたとおり、背負っていたリュックを邪ンヌに渡す。彼女は鎧を霊体化し、それを背負う。

 いや、あの。リュックを持ってくれることは嬉しいけど、流石にそれで歩けるようにはならないぞ。

 

 「邪ンヌ、休憩したい」

 

 「無理です。いくらダ・ヴィンチ特製テントが優秀でも、砂漠で運用されることは考えられていないでしょう。使うなら夜です」

 

 私の要望は容赦なく切り捨てられた。

 

 「それはわかるけど、私、もう限界だよ。意識を失うまで歩けってこと?」

 

 「違います。私が運びます」

 

 そう言うと、邪ンヌは問答無用で私の背と膝裏に手を入れ抱え上げた。所謂、お姫様抱っこである。

 

 「邪ンヌ、これは恥ずかしい」

 

 「問題ありません」

 

 私の抗議を却下し、再び邪ンヌは歩き出した。

 

◆◆◆

 

 邪ンヌに運ばれ二時間ほど経った頃、ライオンの身体と鷲の翼、そして人の顔を持つ怪物スフィンクスと遭遇した。

 

 「マスター、私の背後へ下がってください」

 

 地面に降ろされ、リュックを渡された私は言われたとおり邪ンヌの背後へ下がる。

 

 「令呪は?」

 

 「必要ありません」

 

 そう言うと、邪ンヌはスフィンクスへ向かって手を振り下ろす。次の瞬間、突如スフィンクスの手足の真上に漆黒の剣が出現し、それが深々と突き刺さった。

 

 「ガァアアア!」

 

 スフィンクスの絶叫が響き渡る。

 

 「死になさい」

 

 先ほどとは逆に邪ンヌは手を振り上げる。するとスフィンクスの腹の下の地面から幾つもの漆黒の槍が突き出し、その腹を貫いた。

 

 「終わりました」

 

 圧倒的な暴力を振るい終わった邪ンヌは、こちらへ振り向き戦闘が終了したことを告げた。

 

 「ご苦労様」

 

 「リュックを借してください」

 

 邪ンヌが霊体化を解き、手を差し出してくる。リュックを渡すと、先ほどと同じように私を抱え上げようとする。

 

 「いや、もう大分体力回復したから自分で歩けるよ」

 

 抱えて運んでくれることはありがたいが、体力が回復した状況でそれは申し訳ない。なにより恥ずかしい。

 

 「こちらへ向かってくる霊力の気配が複数あります。おそらく今倒したスフィンクスの仲間でしょう。悠長に歩いていては追いつかれます」

 

 「……わかったわ」

 

 私を抱え上げると、邪ンヌはこの場から離れる為走り出す。以前、脇に抱えられ走られたときと比べ走り心地はかなり良い。

 邪ンヌの顔をふと見上げると、紅い血が頬に一滴付いていた。おそらくスフィンクスを倒した際の返り血だろう。

 

 「血、付いてる」

 

 私はそう言って、邪ンヌの頬に付いた血を人差し指で拭った。

 

◆◆◆

 

 三十分経っただろうか、邪ンヌが唐突に立ち止まった。

 

 「どうやら誘導されていたようです」

 

 邪ンヌが私を降ろし、リュックを渡す。彼女が睨みつける先の砂嵐が晴れると、一人の美少女が現れた。

 

 「頭を垂れなさい! 不敬ですよ!」

 

 紫色の髪、頭には兎のような耳、身体に金の飾りを付け、布面積の非常に少ない服を着た、大きな杖を持った美少女が尊大に言い放った。

 

 「痴女だ!?」

 

 私は紫色の髪をした美少女の格好に思わず叫んでいた。

 邪ンヌは隣で爆笑している。

 紫色の髪をした美少女は羞恥で頬を染め、震えている。

 

 「マスター、クフッ、そこの痴女と、フッ、戦闘を始めますから、下がっていてください、アハハハハッ」

 

 邪ンヌが私に指示を出すが、堪えきれず笑っていた。

 

 「……す」

 

 紫色の髪をした美少女がなにか言ったが声が小さい為よく聞こえない。

 

 「大きい声で言ってくれないと聞こえませんよ、痴女さん?」

 

 邪ンヌが聞き返す。

 

 「殺す!」

 

 顔を真っ赤に染めた紫色の髪をした美少女が叫び、戦闘の火蓋は切って落とされた。

 




 筆者はニトクリスのことが嫌いなわけではありません。
 ただ、あの格好は現代の感覚からすれば痴女だと思います。
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