見わたす限り、木しかない。側に居るのはアヴェンジャーだけで、一緒に第二特異点へ転送された筈のクソ兄貴とサーヴァント達は見当たらない。
「……ここどこ?」
「私が知るわけないでしょう」
そりゃそうだ。
「取り敢えず、通信が回復するまでは野宿するしかないね。下手に動いて面倒ごとに巻き込まれるのも嫌だし」
「私はべつに構いませんが、マスター、貴女、野宿に耐えられるのですか?」
「問題ないよ。こんなこともあろうかと野宿セットを持ってきてる」
背中に背負ったリュックにはダ・ヴィンチ製作の特製野宿セットが入っている。
「随分と用意が良いですね」
「……まあね」
幸運値Eのマスターとサーヴァントのコンビだから、なにが起こっても大丈夫なように準備していたとは言わないでおこう。
◆◆◆
「流石にここまでなにもないと暇ですね」
アヴェンジャーがテントの中で横になりながら呟く。第二特異点に転送されてから既に一週間以上が経っていた。
カルデアとの通信が回復する兆しは無く、持ってきていた携帯食糧は底を尽き、付近の魔物も狩り尽くした。つまり、食べる物がない。
「明日、移動しようか」
「そうしましょう」
◆◆◆
やはり私は運がないらしい。
移動しようとした矢先、アヴェンジャーがこちらに近づくサーヴァントの気配を感じ取った。
アヴェンジャーに言われた方角を小型単眼望遠鏡で見ると、確かに長い白髪の褐色美少女がこちらに向かって歩いている姿が見えた。
「味方だと思う?」
「わかりません。ですが、私の勘は敵だと言っています」
歴戦のサーヴァントの勘が敵と判断しているなら、間違いなく敵なんだろうな。
「逃げるって判断は有り?」
「無しですね。私が彼女の気配に気づいたということは、同じようにあちらも気づいているでしょう」
「‥‥‥わかった。それなら遅滞戦闘でなるべく時間を稼いで」
「なぜですか?」
アヴェンジャーが不服そうに聞いてくる。
「あのサーヴァントは明らかに外から来てる。つまり、彼女の向かっている方角にクソ兄貴と味方のサーヴァントが居るってこと」
「それで?」
「私はこれから全力で走る。クソ兄貴達と合流、もしくは通信が出来次第、令呪を使ってアヴェンジャーを呼ぶ。あとは数の暴力で勝つ」
「一対一では私が負けると?」
「そうは思ってない。けど、なにが起こるかわからないのが、戦いでしょ。ならできるだけ勝てる確率を上げたい」
「‥‥‥わかりました」
険悪な空気が幾分か弛緩する。完全に納得してくれたわけではないが、許容はしてくれたらしい。
「ところでマスター」
「なに?」
「べつに、遅滞戦闘で彼女を倒してしまっても構わないのでしょう?」
「‥‥‥なんかその台詞、死亡フラグっぽく聞こえるから言わない方がいいよ」