「だいぶ当たるようになりましたね」
カルデアのシミュレーションルームで射撃練習をしていると、いつの間にかアヴェンジャーが部屋に入ってきていた。
「まあ、暇さえあれば練習してたからね」
片腕を失ったことで、ただでさえ貧弱だった魔術回路が更に貧弱になった私は、ダ・ヴィンチから補助器具として回転式拳銃を第二特異点攻略後に渡されていた。
素人が拳銃を使えるわけないだろ、と思ったが流石はダ・ヴィンチ製、反動が全くない。
「弾を借してもらえますか」
「そこに置いてあるヤツなら好きに使ってもらって大丈夫だよ」
「わかりました」
◆◆◆
練習が終わり廊下に出ると、甘ったるい匂いが漂って来た。
「……今日はバレンタインか」
途中、女性サーヴァント達に追われ、全力疾走するクソ兄貴とすれ違った。八方美人の成れの果ては哀れだった。
食堂に着くと、いつもなら居るエミヤが居なく、代わりにタマモキャットが厨房に立っていた。エミヤはバレンタインで厨房を使うサーヴァント達から追い出されたらしい。
「オムライス二つ」
「おうさっ!」
普段の狂ったハイテンションなタマモキャットの姿からは、想像できない手際の良さで作られた料理をアヴェンジャーの待つ席へ持って行く。
「……意外ですね」
オムライスを食べたアヴェンジャーが開口一番、失礼なことを言うが、実際その通りだった。予想以上にとても美味しい。
「アヴェンジャーは料理できるの?」
「できませんよ」
こちらは予想どおりの返答だった。まあ、かく言う私もカップラーメンとレトルトカレーぐらいしか作れないが。
◆◆◆
ご飯を食べ終え、マイルームへ向かっていると、困り顔のマシュと偶然鉢合わせた。
「あっ、リッカさん。お疲れ様です」
「お疲れ様。……どうかした?」
なにも聞かずに立ち去っても良かったが、暇つぶしがてら質問する。
「その、先輩の姿が何処にも見当たらなくて」
「ああ、それならたぶんロマニの部屋だと思うよ」
サーヴァントに捕まっていなければの話だけど。
「ありがとうございます」
さっきまでの困り顔とはうってかわって、嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「どういたしまして」
「それでは失礼します」
そう言うと、マシュは足早にロマニの部屋へ歩いて行った。
「……人理の危機だと言うのにお気楽なことですね」
アヴェンジャーが皮肉を言う。マシュが居るときに言わなくて良かった。
いや、それぐらいの分別はあるか。
「平和で良いじゃない。眠たくなるぐらい退屈だけど」
「牛になりますよ」
「それもしゃーなしかな」