地平線が良く見える。
第三特異点の空に転送された私とアヴェンジャーは、地上に向かって凄い勢いで落下していた。
『アヴェンジャー、なんとかして!』
『無茶を言ってくれますね!』
令呪を使うべきか迷ったが、要求されないということは大丈夫だと勝手に納得する。
アヴェンジャーは私の腰に腕を回すと、そのまま半回転し、私を上へ投げた。
「ゔをあ!」
驚きのあまり乙女として、あるまじき悲鳴を上げてしまう。
下を見ればアヴェンジャーが地面に向かって宝具を放っていた。着地の衝撃を和らげようとしているらしい。側に居たら炎の熱さで死んでいただろう。
十数秒後、凄まじい爆音が鳴り響く。
土煙りが邪魔ではっきりとした姿は見えないが、アヴェンジャーが私を受け止めようとしていることはわかる。身体を丸め、衝撃に備える。
◆◆◆
「マスター、無事ですか」
どうやら着地したときの衝撃で気を失っていたらしい。
「一応は」
身体を起こし、自分の状態を確認する。怪我は擦り傷程度で、特に問題ない。問題があるとすれば、それはアヴェンジャーの方だった。額からは血が流れ、脚からは骨が飛び出ていた。
「令呪を持って命ずるーー」
「無駄使いはやめなさい。時間が経てばカルデアからの魔力供給で回復します」
令呪を使いアヴェンジャーの傷を癒そうとするが、当の本人から断られてしまう。
「傷よ癒えろ」
「マスター」
「見すぼらしい格好は良くないって前に言ってたでしょ」
私の言い訳に一瞬、アヴェンジャーが呆けた顔をし、笑い出す。
「バカですね」
「うっさい」
◆◆◆
前回の失敗を踏まえ、今回のレイシフトは万全を期しているとレイシフト前に説明されたが、結局、私達の幸運値の低さには敵わなかったらしい。それと、もし次があるならパラシュートを持って行こう。
クソ兄貴達とはぐれ、小さな無人島に着陸した私達にできることはなにもない。
「中身は無事でしたか?」
私がアヴェンジャーに受け止められたとき投げ出されたリュックの中身は、衝撃でぐちゃぐちゃになっていた。
「一週間分の食料は無事だけど、テントがダメ。それに無線機も」
「最悪ですね」
第二特異点のときと違い、今回は転送された場所が問題だった。この小さな島には魔物はおろか、木々も生えていない。
「テントがないとなると、本格的な野宿になりますが大丈夫ですか」
「頑張って耐えるよ」
「わかりました。体調が悪くなったらすぐに言ってください。それと極力体力を使わないようにしてください」
「わかった」
サバイバルが始まった。