色々駆け足気味なところがありますが、温かい目でお願いします。
―天界。
「『時空のひずみ』が、ビルダー星付近で発生しただって?」
天界のトレーニングルーム。そこでベンチプレスをしながら、青い髪の歪みねぇボディをした男は報告に来た天使にそう問いかける。
男の名は『イダテン』。かつて、銀河で猛威を振るったビルダー軍を打ち破った二柱の神の一人である。
「はい、ひずみ自体は今の所大したことはないのですが、念のために調査して欲しいとの事です」
「そうだな、放っておいて近くの星を飲み込むまでに成長したら一大事だ」
天使の答えに、イダテンはそう答えると、ベンチプレスを終え立ち上がると、近くにおいてあったタオルを手に取り、鍛え上げられたボディに滴る汗を拭いた。
「その依頼、引き受けた。シャワーを浴びたらすぐに出る」
そう言って、イダテンはシャワールームへと向かった。その様子を影で観ていた二人の男。その姿は異様だった。スキンヘッドに、腕輪とブーメランパンツのみと言う格好。そして、そのボディは歪みねぇマッチョであった。
「聞いたか、アドンよ」
「応とも、サムソン」
アドンとサムソン。お互いをそう呼び合った二人は、顔を見合わせる。
「兄貴が行くのならばワシらも行くのが道理、つまりはまた兄貴と出撃じゃあ!楽しみじゃのぅ、サムソン!」
「そうじゃのう、アドン!」
そう言葉を交わし、やいのやいのとはしゃぐ二人。何を隠そう、彼ら二人はイダテンのお供である。
ビルダー軍に滅ぼされた星の王子であった二人は、囚われていた所をイダテンに助けられ、以来イダテンのお供として宇宙を駆けたのである。
「昨日買った勝負パンツを兄貴にお披露目しちゃうぜぇ!」
「パンツよりも、鍛え上げた筋肉じゃあ!この魅惑のマッスルで兄貴をメロメロにしてやるんじゃあ!」
だが、忠誠心とかが変な方向に振り切れているが・・・まぁ、それは些細な事だろう。
「兎に角、早速天界のお偉方に直談判して・・・」
「何だ、お前達ここにいたのか」
鼻息を荒くしながら、まくし立てるアドンの背後に声がかかる。振り向くと、シャワーを浴び終えたイダテンが立っていた。
「兄貴どうしたんで?」
「ああ、今回のひずみ調査の事なんだが一緒に来るか?」
「いいんですかい!?兄貴!」
食いつくアドンに、イダテンはああ。と答えた。
「ひずみの場所がビルダー星に付近にあるらしいからな。ひょっとしたらビルダー軍の残党と鉢合わせする可能性もあるから念の為にと思ったんだ。
下手な護衛よりも、一緒に戦ってきたお前らならば安心して背中を預けられるからな」
「う、うおおおおおお!兄貴ィ、なんちゅう心意気じゃあ!!!」
「やっぱり兄貴は最高じゃあ!一生ついていきますぜ!!!」
イダテンの言葉に、感涙するアドンとサムソン。男泣きをしながらそのままガッシ!とイダテンに抱きついた。・・・ぶっちゃけその絵面は気色悪いの一言に限る。
周りのギャラリーは勿論、その光景を見てドン引き。そりゃ当然だ。
男同士で抱き合う光景など誰が見たいだろうか?
だけれども、イダテンは彼らを引き離そうなどはせず、しょうがない奴らだな。といいたげに笑っていた。イダテンの名誉の為に言っておくが、彼は
ビルダー軍との戦いでアドン達には随分と助けられたのだ。いくら神であるとはいえ、イダテン(それとベンテン)だけではビルダー軍に太刀打ちできなかっただろう。
そして、もう一つの大きな理由・・・それは・・・、
慣れたからである。
もう一度言う。
慣れたからである。
初めてアドンとサムソンと出会った当初、イダテンは彼らに抱きつかれてかなりドン引きしていた。
だけれど、ビルダー軍との戦いを続けるうちに兄貴と舎弟としての絆が深まっていった。その結果、イダテンは彼らに抱きつかれても動じなくなったのである。
「グ腐腐腐腐腐・・・、いい絵が描けそうだわ・・・」
「申し訳ないが、俺とアドン達をネタにBLモノを描くのはNG」
だが、自分達がBLのネタにされるのは嫌なのであった。げんなりした顔で、腐女子な女神にツッコミを入れるイダテン。
そんでもって、準備を済ませた後イダテンはアドンとサムソンを連れて、ビルダー星付近へと向かうのであった。
―それから暫くして・・・。
「これだな、報告にあった時空のひずみは」
ビルダー星付近、そこにたどり着いたイダテン達は揺らめくハンドボールほどの球体のようなものを見ていた。
これが、時空のひずみである。今、ここにあるひずみはまだ小さいものの、大規模なものとなれば星はおろか銀河をも飲み込んでしまうほどの凄まじい力を秘めているのだ。
そうならない為にも、ひずみを調査、封印し天界に持ち帰るのである。
「兄貴ー、周囲を警戒していましたがビルダー軍の残党はいませんでしたぜ」
「そうか、ご苦労だった。・・・まぁ、今の所小さいけどいつ大きくなるか分からないからな、封印して天界に持ち帰ろう」
残党の襲来に備えて周囲を見て回っていたアドンが戻ってきた。どうやら異常はないようである。
ビルダー軍の残党がいないとならば、心置きなくひずみの封印が出来る。残党と鉢合わせして、戦闘になった挙句ひずみが暴走・・・などと言う最悪の事態は回避出来たな。とイダテンは胸中で安堵し、ひずみの封印作業に移った。
「まぁ、これで終わりかのぅ。・・・しっかし、ビルダー軍の残党もいないし案外あっさりした終わりよなぁ」
「それほどこの銀河が平和になったって事じゃ。何事も平和が一番だぜ」
イダテンの背中を見ながら、笑いあう二人。このまま何事もなく終わるかと思っていた。
その時だ!
「な、何だ!?いきなりひずみが!?」
「兄貴!?どうしたんでさぁ!?」
何か異変があったのだろう、叫ぶイダテンに問いかけるアドン。それと同時に、ハンドボールほどだった大きさのひずみが大の大人を飲み込めるほどに大きくなったのだ。
「うおおおおお!?何じゃあ!?」
「引っ張られるゥ!?」
ブラックホールのように、吸い込もうとしているひずみ。それを3人は踏ん張って堪える。・・・だが、その力は予想以上に強く、次第に引っ張られていき・・・、
「「「うわああああああああああああああ!!!?」」」
ひずみに3人仲良く吸い込まれてしまったのだ。3人を吸い込んだ後、ひずみは消滅し、後は静寂の宇宙のみが残ったのであった。
―地球のとある場所。
荒野、大地は荒れ果て草木も枯れたこの地を、25人の武装した少女達が駆けていた。
ハンドガン、ライフル、サブマシンガン、アサルトライフル・・・各々が自らの手にその銃器を持ち荒野を駆ける。・・・これらを見れば、少年兵か何かなのだろうか?と思うだろう。だが、よく見て欲しい。
5人ずつ同じ顔なのである。まるで、5つ子か何かのように。・・・正確に言えば、彼女達は人間ではない。
―戦術人形
とある事件と、第三次世界大戦によって荒廃した地球における戦場の主役達だ。パッと見普通の人間のように見えるが、体は機械で出来ており常人の倍ほどの身体能力を持っているのである。
機械でありながらも、表情は豊かであり、人間と同じモノも食べる事もできるのだ。
『こちら、G19地区基地。01部隊、応答願う』
「01部隊、聞こえているわ。どうぞ」
赤みがかった長い茶髪の一房をリボンでまとめた気の強そうな少女が、聞こえてきた通信に答える。
『わーちゃん、最近どうなん?』
「特に異常はないわ。『鉄血の連中』やテロリスト共の影も形もない、だけど油断は出来ないからもう少し偵察を続けるわね。・・・後、わーちゃん言うな」
『いやぁ、スイマセ~ン』
「はぁ、もういいわよ。通信切るわね、指揮官」
通信機から聞こえてくる間の抜けた声に嘆息しながら、わーちゃんと呼ばれた少女・・・『WA2000』は通信を切った。
「え~、まだ続けるの~?」
「当たり前でしょM9?それが任務なんだから」
金の長い髪に、紅いカチューシャとフリフリの洋服を着た少女・・・『M9』にWAは呆れ顔でそう言う。
「だって、奴らも居ないのならこれ以上偵察続けたって意味ないのー!早く帰って買い物がしたいのー!」
「意味無いってアンタねぇ!もし、偵察怠って潜んでたテロリストとかを見つけそこなってたらどうするの!
隊長であるアタシが怒られるんだからね!!それに買い物ならオフの時だって行けるでしょうが!」
ギャーギャーと罵り合うWAとM9。こう言う事は彼女達、「01部隊」にとっては日常茶飯事であり隊員たちであるほかの人形は「またか」と言いたげにその光景を見ていた。
「もういいなの!私だけでも帰るなの!いこ、ダミーちゃん達!」
「勝手にしなさいよ!」
やがて、M9が頬を膨らませ自身のダミーを連れて基地へと向けて帰っていく。WAもまた、そっぽを向いてM9に言った。
ちなみにダミーと言うのは、ダミーネットワークシステムによって動く『ダミー人形』の事である。主となる戦術人形と戦闘能力は同等であるが演算能力は劣っている。
なお、主である戦術人形が強くなる事で最大4体まで使役する事が可能となるのである。
・・・話がそれたので元に戻そう。
帰っていくM9を、誰も止めようとはしなかった。する意味がないからだ。
何故なら、M9は口論してへそを曲げて帰ろうとしてもすぐに不安になり、こちらに戻ってくるからである。これもまた、01部隊のいつもの事である。
「わーちゃーん!皆ー!大変なのーーーーー!!!」
「誰がわーちゃんよ!!!」
暫くして、血相を変えたM9がこちらにやって来た。わーちゃん呼ばわりされ、激昂するWA。これを見たWAを除いた01部隊の面々は、「あれ?」と首をかしげる。
なぜなら、いつもは半べそをかくか、大泣きしながらこちらにやってくるはずなのに、大慌てで来たのである。
何があったんだろう。と同じ部隊である、『MP5』が問いかけた。
「何があったんですか?」
「そ、空から、空から筋肉ムキムキマッチョマンの変態が3人落ちてきたの!」
「え、何それは・・・?(ドン引き)」
「はぁ!?何言ってんのアンタ!?」
M9の言葉に、MP5は軽くドン引きしながら、WAは呆れ半分で反論した。
「ムキムキマッチョ・・・!それは本当ですか、M9ちゃん!」
「ホントぶれないね、9Aちゃん」
何故かムキムキマッチョの単語で反応したのは、ぽわぽわして不思議系な戦術人形『9A-91』。彼女は他の9A-91と違い、マッチョマンが好きと言う変わった性癖を持っている。
M9の言っていたムキムキマッチョマンに興味津々な彼女に苦笑いでそういうキツネ耳のオッドアイの少女の名は『G41』01部隊の癒し枠である。
「ほ、本当なの!嘘なんか言ってないの!兎に角着いてきてなのー!」
9Aの言葉に、M9はぱたぱたと走り出す。WA達は放っておこうと一瞬思ったが、M9がそんなデタラメな嘘を言うだろうか?と思いついて行くのであった。
―01部隊移動中・・・。
「ここなの」
M9が指を指した先には、クレーターがあった。まるで大きな隕石が落ちてきたかのようである。
「とは言っても、ただの隕石か何かじゃないの?3人の男が空から落ちてくるなんてそんな、ラ○ュタみたいな話がある訳・・・」
そう言いながら、WAはクレーターの中心を見て固まった。M9を除くほかのメンバーもである。
何故ならばクレーターの真ん中に『それ』がいたからだ。・・・そう、スケ○ヨの如く上半身が地面に突き刺さっている3人の男の姿が。しかも、その内の二人はどういう訳か、ブーメランパンツである。
「「「なぁにこれぇ・・・」」」
「ね、だから言ったでしょ?」
クレーターの真ん中の3人の男達を見て、WA、MP5、G41は眼を点にして呟く。そんな3人に、M9はうそつき呼ばわりしやがってと言いたげにそう言った。その時、
「む・・・うう~ん。何処じゃここは?」
「兄貴は無事なのか・・・?」
ズボっと、ブーメランパンツをはいている二人の男が地面から上半身を引っこ抜き起き上がった。
それを見て、M9を除く4人は再び固まった。何故ならば男二人の上半身は何も身につけていなかったからだ。
・・・つまり、ブーメランパンツ一丁だけ。後は、鍛え上げられたマッシブな肉体のみである。
「「「へ、変態だぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」
そんな男達の格好を見て、3人は絶叫したのであった。一方の9A-91は・・・、
「ウホッ、いい筋肉」
うっとりしながらそう呟いていた。・・・本当にぶれない女である。
そんなこんなで、出会ってしまった『少女』と『兄貴』。この出会いから、物語は始まるのであった。
続くッ!
いかがだったでしょうか?
今回、超兄貴勢とドルフロ勢の絡みがあまりありませんでしたが、次回は思いっきり絡ませたいと思います。
ちなみに少しネタバレですが、本作で、WAちゃん達が所属する基地の人形達・・・一癖二癖もある奴らばかりです。どんな奴らなのかは・・・、次回のお楽しみに!
それでは~。