今回、ついにイダテン達が大暴れ!鉄血の明日はどっちだ!?
―G19地区司令基地近く。
ザッザッザッザ・・・。
「こうもアッサリと敵の懐まで来れるなんて、ドリーマーの作戦さまさまよね」
基地へと迫る鉄血の軍勢。その中で、白髪のツインテールの少女・・・鉄血のハイエンドモデル『デストロイヤー』は呟いた。
彼女の仲間であるハイエンドモデル『ドリーマー』が立てた作戦はこうだ。
まず居住区域に、
『こちらドリーマー。デストロイヤー、貴方上手くいってる?』
「勿論よ。上手く行き過ぎて怖いくらいなんだけど」
入って来たドリーマーの通信に、デストロイヤーは答える。
『でも、万が一グリフィンの連中がこちらに気づいて応戦してきたとしても、防御力に定評のあるマンティコアとアイギスで編成された部隊だもの。
よっぽどの事がない限り遅れは取らないわ』
「そこまで言うんなら信じないでもないけど・・・。あれ?」
そうドリーマーに返しながら、視界に映ったモノを見て目を瞬かせる。
空から何かが3つこちらへと飛んできているのだ。あれは何だろうか?鳥?飛行機?そう思っていると。
―キラリ。
何かが光った。それが何なのか、そう思った瞬間である。ぞくり!とデストロイヤーは全身の毛が逆立つのを感じた。
あの光は危険だ。と電脳が警鐘を鳴らす。
「ひぃやあああああああっ!!?」
それからのデストロイヤーの行動は早かった。全速力で光が直撃するであろう場所から離れる。それと同時に・・・、
―ずわっ!?
「うきゃああああああああああああっっ!!?」
白い光が、アイギスとマンティコアで編成された軍隊を飲み込む。その衝撃と風圧で、デストロイヤーの体が浮き吹っ飛ばされた。
そのままゴロゴロゴロと地面を転がり、近くの岩にガツンとぶつかり漸く止まった。
「いったぁ~・・・、何なの今・・・の?」
頭を擦りながら起き上がり、目の前の光景を見て絶句した。
さっきまで自分達と行動を共にしていた、アイギスとマンティコアの大半が消失していたのだ。
何かで抉られたであろう、窪みだけを残して。・・・一体なんだコレは?何なのだ?正規軍の武器?それとも、グリフィンが作った新兵器?
全く何が何だか分からないこの光景に、電脳の情報処理能力がついていかずフリーズを起こすデストロイヤー。
「ふーむ、他愛ないのうメンズビーム一発でこれほどまでとは」
「お前ら、ちと鍛え方が足りんわい」
聞きなれぬ声で、デストロイヤーはフリーズから回復する。恐らく、この声の主は先ほどのビームをぶっ放した張本人だ!
突然の事に驚いたが、わざわざこっちに来るのは好都合!まだ兵力も残っている、あの一撃を放つ前にこちらから仕掛ければ・・・。そう思い、声のした方に視線を向け・・・、
「」
「「「む?」」」
固まった。
彼女の視線の先には3人の男達が浮いていた、しかもムキムキマッチョマンの。
その鍛え抜かれた上半身を惜しげもなくさらけ出しているのだ。青い髪の青年はまだいい、下の方が長ズボンだから。問題はその青年の両脇にいるスキンヘッドの双子らしき男である。
何故ならば、その双子の下にはいているのがブーメランパンツだからだ。
もう一度いう、
ブーメランパンツだからだ。
はっきり言って、通報したっていいレベルである。
・・・と言うか、何で浮いてるんだ?最近の戦術人形は空まで飛べるのか?
3人の男達を見ながらデストロイヤーがそんな事を考えると・・・、
「何じゃ?この娘っこ、ワシらの体をジロジロ見おってからに」
「ワシらのこの肉体に見惚れたのかのぅ」
「な訳あるかッッ!!!」
地上に降りて、変な事をのたまう双子に、ツッコミを入れるデストロイヤー。何が悲しくて、ムキムキマッチョの変態に見惚れなければならないのか?彼女はそう思った。
「あんた達!一体何者なのよ!?」
「む?ワシらが何者なのかとな?よかろう!教えてやろうとも!!!」
デストロイヤーの問いに、双子の片割れはそう言って、大胸筋をビクンビクンさせた。それを見て「ヒェッ!」とデストロイヤーは思わず、上ずった声をあげる。
そして、双子の男はそれぞれサイドチェストとサイド・トライセップスのポーズを取りながら自己紹介。
「ワシはアドン!」
「ワシはサムソン!」
そして、自分の自己紹介が終わった後、二人は蒼髪の青年の脇に移動し、バック・ダブル・バイセップスのポーズを取りながら叫ぶ。
「「そして、ここにおわすお方はワシ等の兄貴であらせられるイダテンじゃあああああああああああ!!!!」」
「・・・滅茶苦茶暑苦しいわね、この二人」
「ははは、でもいい奴らだよ」
そんなアドンとサムソンを見てポツリと零すデストロイヤーに、蒼髪の青年、イダテンは苦笑いで答えた。
んでもって、気を取り直すと睨みつけながら問いかける。
「それで?アンタ達、私達に何か用?まぁ、十中八九鉄血にケンカを売りに来たんでしょうけど」
「まぁな、お前達を止めに来た。この先は、俺達を保護してくれた人達の大事な所らしいんでな。
悪いがここから先は俺達が一歩も通さねぇぜ?」
デストロイヤーの問いに、イダテンはそう答えた。そんなイダテンを、デストロイヤーが鼻で笑う。
さっきのビームで大半は失ったものの、まだまだ多く残っている自分の軍勢をたった三人で止める。何と、阿呆で無謀な事か。そう胸中で嘲笑いながら、デストロイヤーは口を開いた。
「あらそう?だけどお生憎様、この軍勢に3人で勝てるわけないでしょ?」
そう言って、サッと手を挙げる。それと同時に、アイギスとマンティコアがイダテン達を取り囲んだ。そして、そのまま続ける。
「さっきのビームでちょっと驚いたけど、これならビームも撃てないでしょ?
ノコノコとこちらにやってきた自分のマヌケさを呪いなさいな。さぁ!やっちゃいなさ・・・」
―ボグシャアッ!!!(×3)
「い?」
自分の部下達に司令を下そうとした次の瞬間。凄まじい音が、鳴り響いた。3人とも拳を振り切った状態で制止している。
その先には、哀れにもイダテン達と近くにいたが為に、吹っ飛ばされた3体のアイギスが居た。3体ともぐったりとしており、顔、胸とどれも何かに殴られ、へこんでいた。・・・信じたくはないが、この三人は装甲人形であるアイギスをグーパンチでぶっ飛ばしたようだ。
「は?え?ちょ・・・えぇ・・・」
あまりの出来事に理解が追いつかず、眼を白黒させながら狼狽するデストロイヤー。
なぜならば、ここにいるアイギスは特注製。火力の高いライフルの弾丸ですらも貫通できない仕様だったのである。それを目の前の三人のマッチョは素手でぶっ飛ばした。しかも、殴った拳は傷一つついていない。
驚くなと言うのが無理であろう。
「悪いが、俺達はビームだけがとりえって訳じゃねぇんだぜ」
「しっかし、脆いのぅ。ワンパンでノビとるわい」
「これなら楽勝じゃのう」
「な、舐めるなぁ!マンティコア、包囲して銃撃!」
デストロイヤーの指示に、マンティコアが4体躍り出てイダテン達を囲む。
―ズバババババババ!!!
マンティコアのチェーンガンが火を吹く。これには流石にイダテン達も蜂の巣か!?否ッ!!!
「「ポージングバリアー!!!」」
アドンとサムソンがイダテンを守るように、前へ出たかと思うとサイドチェストのポーズを取りイダテンの周りを回り始めた。
すると・・・おお、見よ!マンティコアのチェーンガンを弾いたではないか!
「ぬぅん!この程度!」
「ビルダー軍の攻撃に比べれば屁でもないのぅ!」
「」
回転しながらそう言うアドンとサムソンに、デストロイヤーは空いた口が塞がらなかった。
「今度はこっちの番だ!行くぜ、兄弟!!」
「「応、兄貴!」」
イダテンの掛け声と共に、アドンとサムソンが両腕にドッキングする。そして、両腕を広げ、
「「「ローリング、メンズビーム!!!」」」
3人が叫ぶと同時に、アドンとサムソンの頭頂部から白い光が発射された。直線状にいたアイギスとマンティコアはその光に飲み込まれ、爆発する。
そして、イダテンがグルグルと回る。それと共に、爆発がイダテンの周りに巻き起こる。
やがて、光が収まる頃にはデストロイヤーの部隊は壊滅状態に陥っていた。無事なものはさらに少なくなっている。
「は・・・?え・・・?ウソ・・・」
目の前の光景に、ただ唖然となるデストロイヤー。そんな彼女に、3人の男達は無慈悲に歩み寄り、こう言い放った。
「さて・・・」
「「覚悟は・・・」」
「「「出来てるかのう!!!?」」」
―一方その頃・・・。
「一体何があったのかしら・・・?」
どっかのセーフハウスにて、少しデコが広めな長い黒髪の少女が呟く。彼女の名は『ドリーマー』、鉄血のハイエンドモデルだ。
デストロイヤーとの通信中に轟音がしたと思ったら、通信が途絶したのだ。通信の最中にマヌケにもグリフィンの連中の攻撃にでも巻き込まれたのだろう。ドリーマーはそう判断した。
「まぁ、アイツの事だししぶとく生きてる事でしょ。
・・・にしても、通信機越しに聞いたあの音・・・一体何なのかしら?銃声やロケットランチャーとは違ったみたいだけど・・・」
『ザザッ・・・ザ・・・。や、やっと繋がったぁ・・・』
ブツブツと、呟くドリーマー。あの轟音は一体なんだったのかと考察を立てていると、通信機が復旧したのかデストロイヤーの慌てたような声が聞こえる。
「ん?デストロイヤー?」
『ど、どどどどどドリーマー!助けてぇッッ!!!』
「・・・大きな声出さないでよ。どうかしたの?」
怒声に近い涙交じりの声で叫ぶデストロイヤーに顔をしかめつつ、ドリーマーは問いかけた。
『今、敵に襲われてるのよォッ!味方も全滅しちゃったし・・・』
「は!?ちょ、待って待って!味方が全滅!?特注のアイギスとマンティコアなのよ!?
たかだか、ちょっと『特殊』とは言っても、
味方が全滅・・・。もはやヤケクソ気味なデストロイヤーの言葉に、目を白黒させながらドリーマーはうろたえながらも、デストロイヤーに返した。
『それが出来ちゃってるのよ!しかも、たったの3体・・・筋肉ムキムキマッチョな男性モデルの奴に・・・』
「は?3体???」
『宙には浮くわ、ビームは撃つわ、殴った時のパワーは凄いわ、マンティコアのチェーンガンや、私のグレネードは効かないわでもう散々よ!』
「へ?ちょ、え?何それ?もはやそれ、オーバースペックじゃないの!?そんなスペックの人形を作れる技術、I.O.Pにはないはずだけど・・・」
はっきり言ってオーバースペックも良いとこな、相手の詳細にドリーマーは驚きを隠せない。うろたえてばかりはいられない。早い所、デストロイヤーと合流せねば。
そう思いデストロイヤーに、今いる場所の座標を送るように指示しようとした。
「とりあえず、合流しましょう。貴方が今いる座標を送って」
『うん、分かった。今座標を・・・「こんな所におったのか?」ってヒィィィッ!?見つかったァ!?』
「で、デストロイヤー!?」
どうやら見つかったようである。割り込むように聞こえてきた男の声に、恐怖で上ずった悲鳴を上げるデストロイヤー。
『嫌ァァァァ、来ないでェェェェェ!
ちょ・・・止め・・・ア”ッーーーーーーーー!!!』
―ブツン。
「デストロイヤー!?デストロイヤー!!?」
喉が張り裂けんばかりのデストロイヤーの断末魔と共に、通信が途切れる。
ドリーマーは慌てて、デストロイヤーに呼びかけるが、通信しようにも『ザザザ・・・』とばかりで応答する様子はない。そこから、ドリーマーは恐らくデストロイヤーはやられたのだろう。と判断する。
「こりゃあ撤退するしかないね」
ドリーマーは、そう決断的に言い放った。デストロイヤーが斃れれば、次に狙われるのは自分だと判断したからである。このセーフハウスが相手に突き止められる可能性はゼロに等しいが、もしかすれば通信を逆探知して、ここをかぎつけてしまう。と言う万が一が起きない保障はない。
任務失敗の事を上司であるエージェントとかに咎めらるかもしれないが、例の相手に鉢合わせしてボディを破壊されるよりかはマシだ。
そう思い、ドリーマーは行動を開始した。足が着かないように、重要なものをまとめようとしたその時である。
「「メェェェェェンズ・・・ビィィィィィィィィィィィム!!!!」」
「は?」
天を衝くような雄叫びが天井から聞こえてきた。間の抜けた声と共に天井を見上げると。
こちらに落ちてくる白い二条の光を見た。これはヤバイと本能的に察すると同時に、ドリーマーの行動は早かった。
「どおおおおおおっ!!?」
咄嗟に、フォースフィールドを張りその光を防いだ。が、あまりの出力に苦悶の声と共に、膝をついてしまう。
だが、何とか気合でそれを凌いだ。光が収まったのを見計らって、フォールフィールドを解除する。
「あ、危なかった。持っててよかったわ・・・。一体何なのよ、さっきのビーム・・・は?」
悪態をつきながら、上を見上げると絶句した。
なぜならば、3人の筋肉ムキムキマッチョマンな上半身裸の男が上空を浮いていたからだ。それだけならば大したショックにはならなかっただろう。
問題は、双子めいた2人の男だ。ブーメランパンツ一丁である。どう見ても変態の格好だ。
「・・・えぇ・・・(困惑)」
それを見たドリーマーは、ただただ困惑気味にそう呟くのであった。
続くッ!
悲報、デストロイヤーちゃん、この一件で筋肉ムキムキマッチョマンがトラウマとなる!
次回、ドリーマーにこれほどにない悲劇(笑)が!?