ハイスクールD×D 案①『遠坂凛に転生したら』   作:ら・ま・ミュウ

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『タンニーンオルタナティブ』『長いな』

「Aaaaaaaaa!!」

 

それは、神。

かつて封印される前の彼女を知っている堕天使も真には存在しない神だと教えられていた悪魔や天使も、その余りある神性、魔力に圧倒される。これを前にすればあの帝釈天が赤子のように思えて……いや、それは間違いではない。何故なら彼女はこの世全てを産み落とした――

 

 

「『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』が意思のある…いや、魂の封印された神器だったとは…」

 

「……お母様」

 

「マジかよ……コイツだけは復活させちゃいけねぇって聖書の神は結構力使ったんだぜ?

これがなけれりゃあ神滅具クラスが後、五十個は出来たって話だ。高々数千年。悪魔に封印を解かれるとぁ、俺からしたらたまったもんじゃないね」

 

「キミは知っているのかあれを」

 

「知っているも何も―――」

 

 

『…母上』

 

「タンニーン!無事だったか!」

 

アザゼルの言葉を遮ったのは、シャルバ・ベルゼブブが召喚した泥から這い出るタンニーン。三大勢力は異常のない彼に安堵した瞬間……

 

禁手(バランス・ブレイク)!!!!」

 

『ガァァァァァ!!!!』

 

鬼気迫る顔をした曹操が突きだした珠宝に元龍王が放つ全力のブレスが吸い込まれる「駄目だ破壊される!」しかし瞬く間に珠宝は赤銅色に輝き、漏れ出した炎が曹操を包む――「俺に任せろぉぉ!!!!禁手(バランス・ブレイク)!!!!」ヘラクレスがタンニーンの鼻先でロケットミサイルを爆裂させる事でブレスは中断され、曹操とその後ろにいた会議参加者全員の命を救う形になった。

 

「グゥっ」

 

だが、遠距離攻撃のヘラクレスと違い、ほぼゼロ距離で龍王クラスのブレスを受け流した曹操は無傷とは言い難く両腕に酷い火傷を負う。皮膚は爛れ、玉のような汗の浮かぶそれは耐え難い痛みだった。

 

『ガァァ』

 

「また撃つ気か!

ジーク……責任は俺が持つ、あの龍を討て!!」

 

「アーチャー!「了解した」」

 

流れるような動作でアーチャーの投影したオリジナルの投影品『バルムンク』を禁手かした複数の腕で握るジークフリート

 

「邪悪なる龍は失墜し!」

 

「待てドラゴン族の長を殺すなど何を!」

 

全身が沸騰し、明らかに限度を超えた力を引き出そうとしている反動か視界が揺らぐ。

 

ジークフリートは理解していた。

これで、これで俺が決めなければ皆が死ぬ!

 

剣は投影品。使い手の自分は紛い物ですら十全に震えぬ未熟者。ジークがタンニーンを滅ぼす為に即座に思い付いた手段はたった一つだった。

同一宝具による多重真名解放

 

外野の悪魔がうるさいが知った事ではない。

僕達のリーダー

僕の友達を傷つけ、奴は命すら奪おうと今も敵意をぶつけている!

 

ブチブチと血管が嫌な音を立てる。全身が重い、だからっ、だからどうした!

 

ジークフリートは己の全てを出し尽くすが如く雄叫びを上げ

 

「オォォォ!!!!幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!!!」

 

『ガァァァァァ!!!!』

 

一つの光はブレスを打ち破り二つの光は牙を砕き三つの光は元龍王タンニーンを貫いた。

 

 

 

 

 

「…………あぁ、何と言う事を」

 

タンニーンの亡骸と全てを出しきり倒れ伏すジークフリート。

最早『和平』所の話でなくなった。頭を抱えるそんなサーゼクスの頭上から伸びたのは複数の影。

 

『『『我が一端を滅ぼすとは見事である。誇るがいい人間よ、そして絶望するがいい…………我々は不死にして永遠。この泥が尽きるまで無限に産まれ続けるのだ』』』

 

泥から天上へと伸びる漆黒の龍の大群。

 

絶望するにはまだ早い。誰かがそう囁いたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「参加者の安全と避難を急げー!」

 

「泥に触れるなぁ!!!!」「泥から出てきた奴は殺しなさい!アレはもう人じゃない!」 

 

阿鼻叫喚に包まれる冥界

シャルバ・ベルゼブブから溢れ出し異形の怪物、見境なく暴れるタンニーンの群れを産み出した泥は今や、悪魔達の敷く居住領域まで侵食しつつあった。

 

「何なんよあれは!」

 

「アジュカはインドの乳海に近いって」 

 

四大魔王は二手に分かれ、怪物とタンニーンの殲滅を担当するサーゼクス、アジュカ。泥の対処と民間人の避難を呼び掛けるセラフォルー、ファルビウム。

結界で泥を食い止め魔法で焼き払うなど、この緊急事態には、冥界に拠点を置く堕天使や天使も協力してくれているが……

 

「何で肝心な時に遠坂凛が居ない!?」

 

滅びの魔力すらはね除け、三大勢力の同時攻撃にビクともしない不死の怪物、そして殺しても殺しても増え続けるタンニーン。

 

あの人間なら喜んで飛び付きそうな案件なのに何故か居ない!?

 

 

戦力として期待出来た彼女の使い魔も英雄派とともに避難し、不干渉を貫いている。歯がゆい思いだが、もとより旧魔王派の襲撃を予期してそれでも彼らを招いたのは我々悪魔だ。

 

今回の襲撃は、四大魔王が全力をもってテロ組織に与した旧魔王派を一網打尽にすることが目的の一つであり、人間を軽視する今の悪魔社会を建て直す。それを遠坂凛や英雄派を通じて人間社会にアピールするつもりだった。

 

シャルバ・ベルゼブブという個人であるものの予期した通り襲撃は起こり――予想以上に強くて手に終えないから助けてくれ…………厚かましいにも程がある。ミカエルとアザゼルは人が良過ぎるのだ。

 

「あー最悪だ!何で神器に封印された魂の解放なんてアイツが知ってたんだ!

赤龍帝や白龍皇が今後復活する恐れがあるって証明された訳でもあるし…………あの戦争を知る悪魔が黙ってる筈がねぇ!」

 

「本当やることだけは魔王らしいよね旧魔王派って!」

 

 

 

今回の事件が済んだとして、あの二天龍の復活の可能性が僅かにでも浮上してしまった以上、戦争を生き残った悪魔達は赤龍帝と白龍皇の封印を要求し、四大魔王が若手と言われている現状から分かる通り、その規模は全悪魔の総意と言っても過言ではない量が予想出来る。神器保有者を同じ人として見る人間とは対立することになるだろう。

数で勝り、遠坂凛に英雄派など魔王に迫る戦力を備えた人間と今の悪魔が本気で争った時、果たして悪魔に勝ち目などあるのだろうか。

 

 

…………この戦い勝っても負けても詰む。

 

セラフォルーとファルビウムの顔は暗かった。






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