ハイスクールD×D 案①『遠坂凛に転生したら』 作:ら・ま・ミュウ
そもそもこの世界には英霊の座が存在しない。エインヘリヤルという似たようなシステムこそ北欧にあれど、一般に死後の英雄はその他の魂と区別されることなく摂理の輪、輪廻転生の輪へと組み込まれる。
エミヤは限りなくオリジナルに近いコピー、
ギルガメッシュは本人曰く、過去にメソポタミア神話の神々と戦争を起こし、結果的に敗れてコキュートスといわれる牢獄に幽閉されていたこの世界のギルガメッシュらしい。
思えば子ギルのせいで未遂に終わったエインズワース家の置換魔術の最奥、英霊の座へと接続し、クラスカードを作成する方法は英霊の座がないこの世界では、使うことが出来なかった。
当然、英霊召喚も不可能であるが……前回例外的に三アサとグランドクラスたるキングハサンを召喚出来たのは、ぶっちゃけ訳が分からない。
魔力のごり押しで平行世界から無理やり引っ張ってこれたのか、私という特異な存在故に成せたのか。
改めて、召喚しようとしたら不発に終わった。当然クラスカードも無理である。
(エレシュキガルは召喚されたが、あれはイシュタルに喚ばれたようなもので、例外としてみるべきであろう)
だから私は趣向を変えた。
第三魔法の定義があやふやなこの世界では、魂の複製ぐらいやろうと思えばやれなくもない。
もう一から作った方が早いと思ったわけよ。
アーチャーに宝具の複製を頼んで、私が英雄の衣装に寄せた強力な礼装を作り、それをクラスカードの中に収める。そして展開時に武装を纏うだけの―――言ってしまえばカレイドルビーのような礼装を無茶苦茶強化しただけである。
エインズワースからすれば、私のクラスカードなんて玩具みたいなものだろう。
利点があるとすれば英霊の意思など存在せず、たとえギルガメッシュのクラスカードを作成しようと暴走などまずありえないこと。
「……何、消えた!?」
あり得ないったら、ありえない。
「凛……」
やめて、そんな目で私を見ないで。また『うっかり』しやがったみたいな顔を向けないで。
「あ、ははは……そうよ。きっと隠れてるのよ」
三徹で頑張ったの。術式は完璧だったの。
そりゃ、なんでギルガメッシュとか、カルナとか、ランスロットなど、強力なカードを作れる中、全部stay/night鯖で固めたのは失敗したとは思ったわよ。
でも、まさかティアマトがいるなんて思わないじゃない?
それに、さっきも言ったけど高速お着替えするだけの玩具『クラスカード(笑)』だから!
転移する機能なんてつけてないもん!
何の慰めにもならないが、ギルガメッシュはある意味安全な場所に居ると言った。
「クフフフ…ハ」
何が可笑しいのか体を丸めて震えている。
「まぁ兎に角だ。彼らを避難させる手間が省けた」
アーチャーは流石というわけか、切り替えるのが早い。
黒弓を投影するとタンニーン擬きを撃ち落としていく。
「もしかして、私…お邪魔かしら?」
「そんなことないのだわ!」
涙目になる私をエレちゃんが慰めてくれる。
尊い。それでも今の私って邪魔にしかならないのよね。
……せめてアーチャーとエレちゃんの魔力供給量を増やして隅で大人しくしていようと思う。
意気消沈して、とぼとぼと歩く遠坂。
彼女が丁度英雄派の皆がいた所に踏み入れた瞬間―――爆発した。