鉄血のビルドファイターズ(旧題 ガンダムビルドオルガーズ) 作:にくキャベツ
「えぇいアムロめ……私に第2回の開催を知らせないとは」
「……だが、皆良い目をしている。……私もやるしかないようだな」
ホテル、自室にて……あの後、オルガはユニコーンガンダムマーズキングの修理を。そして、三日月は…動かなくなった左半身を動かすために、粒子に反応し動く全く新しいタイプのギプスを提供してもらった。
「……酷くやられたね、オルガ」
「あぁ。だけど今回はこれで満足だ。……決勝大会はまで間に合わなかったら、昭弘とシノに任せる」
「……そっか。俺何か手伝えるかな?」
「お前一個も作ったことないだろ? ……だからお前はしっかり休んでおいてくれ」
「うん、分かった」
その後、三日月はいつものショッピングモールにあるガンプラ売り場に来ていた。
「……オルガがああ言ってるんだ、俺もすごいの作れるようになってオルガを楽にしてあげないと」
棚を見つめ、黙り込む三日月。周りの棚を見回し……その種類の多さに圧倒される。……そしてそれを後ろから覗くのは……シン。
「ステラ……本当にあいつのこと気になるんだな」
「……だって」
「ああ言わなくていいって……」
その背中には、ステラが隠れていた。
「……ララァ・スン専用モビルアーマー? これガンプラの名前?」
「それには事情があってね」
一つのガンプラの箱を持ち上げる三日月に、サングラスをかけた金髪の男が話しかけて来る。
「……あんた一体?」
「あぁ。私の名前はクワトロ・バジーナ。流離のガンプラビルダーとでも名乗っておこう。見たところ君は初心者のようだが? 悩んでいるなら、君に合いそうなガンプラを探してみようか?」
「え、本当に? じゃあお願い」
しゃがみこみガンプラを物色するクワトロ。何か電撃が走ったような音が響き、一つのガンプラを手に取る。
「これとかどうだろうか? HGキャスバル専用ガンダム。前大会で優勝した記念にキット化されたモノだよ」
「……へえ。前回優勝者のガンプラなんだ」
「その通り。それに基本はRX-78だから作りやすさもバッチリだ。……これにするか?」
「……なんか聞いてる限り良さそうだからこれにするよ」
そしてそれを物陰から凝視するシンとステラ。……当然クワトロに見つかる。
「そこの物陰から見ている君たちには……そうだな、このストライクガンダムとSD騎士ガンダムがオススメだ」
「えっ!? 俺ら!?」
「えっとその……ステラは……」
「遠慮するな、私の奢りだほら作るぞ君達!」
困惑する二人を押し切り制作ゾーンに向かうクワトロ。
「待ってくれ、俺たちガンプラ作ったことなんて……いや俺はあるけど三日月ってヤツとステラは!」
「なあに、気にすることはない。私が教えよう。道具だってしっかりあるんだ」
「……まずはその説明書を読め。時間は1分だ」
「えっおい!? 1分はさすがに……」
「確認なんてそれくらいでいいだろう。次はニッパーだ。説明書の一番から作る」
「俺足作るの苦手なんで足から作っていいですか!?」
「……シン君の場合は経験者だからこのような無茶が出来るが、初心者のみんなは一から作ろう」
「……うん」
経験者のシンが初心者の中に混ざっているためクワトロのガンプラ制作講座はかなりグダグダだ。
「ゲートは少し大きめに切り、はみ出た部分をもう一回切る二度切りが有効だ」
「……そんなことしてる暇あったらナイフで削ってヤスリかければいいんじゃないっすか?」
「シン君ちょっと黙ろうか」
少しイライラしてきているクワトロ。が、初心者たちの初組み立ては進み、講座は続く。
「切ったパーツは説明書をよく見て組み立てるんだ」
「……ねえシン……ポリキャップ入れ忘れちゃったんだけど」
「あぁ、それなら大丈夫。ナイフの刃をパーツの間に滑り込ませて……ほら、取れたぞ」
「パーツの取り外しはかなり面倒な作業だから気をつけろ。組み間違えたことに後から気づくと悲惨だぞ。次はシールだ、シールの張り直しは粘着力が弱まる。しっかり慎重に貼るんだ」
「あの……俺ガンダムマーカー持ってきたんで部分塗装していいですか?」
「勝手にやってなさい」
誰がどう見てもシンへの対応を鬱陶しく思っていることが分かるほど不満そうなクワトロ。
「出来ました議長!」
「私は議長ではない。……うむ、三人とも上手くできているな。そうだ、シン君の言っていた部分塗装や墨入れ、トップコートや簡単な合わせ目消しもしてみようか」
「……すごい……」
「どうだ凄いだろう。あぁ、思い起こせば私も昔アムロやカミーユにこのようなことを教えてもらったものだ……」
三人の作ったガンプラを見て思い出に浸るクワトロ。二人のことを口走っている時点で正体はモロバレなのだが……聞かれていないのでセーフのようだ。
「では三人の作ったガンプラでバトルしようじゃないか! そうだな、二対二では一人足りない……私もこの百式で参戦しよう」
クワトロがホルスターから百式を取り出しそれを見せつける。
「……すごい……これ、あんたが?」
「あぁ。昔色々あってね……」
「あの、クワトロさん? だっけ? 実はステラは……その、バトルが嫌いで」
「……そうなのか? ならシン君と三日月君の一対一だな」
「ま、待ってくれよ!? 俺!? そこはあんたが……」
「私の百式で初心者ボコったら可哀想だろ。ほら行け、君も男だろう?」
《battle start》
「シン・アスカ、エールストライク! 行きます!」
「それじゃ三日月・オーガス、ガンダム。出るよ」
宇宙に飛び出すストライクガンダムとキャスバル専用ガンダム。お互い小惑星基地の近くで対面し……撃ち合いが始まる。ストライクのビームを回転を交え、身体を捻り避けるガンダム。反撃のビームライフルでストライクのシールドを粉砕するが、ライフルを捨てサーベルを抜き急接近したストライクにシールドを斬り飛ばされ、ライフルも手で弾き飛ばされる。
「チィッ……!」
ガンダムもサーベルを抜き、ストライクと弾き合う。体制を立て直したストライクが辺りに漂っていたガンダムのライフルを拾い、それを放つ。
「武器を奪った……? だったらこっちも」
ストライクのライフルを拾おうとするガンダムだが、執拗な攻撃の前にライフルに近寄れない。
「もらったぁぁっ!」
サーベルを抜きガンダムに接近するストライクだが……
「え、ちょっと、待っ……」
困惑の声をあげながら何処かから飛んできたビームにストライカーパックを破壊され、小惑星の方向へ墜落した。
「……乱入? 何者だ?」
現れたのは、足の部分に大型クローを取り付けたジオング。そこから放たれるビームを躱すガンダム。
「……あのガンプラ、何処かで……?」
手首を飛ばし放つオールレンジ攻撃も、既にムウ戦で経験しているため容易く避ける三日月のガンダム。そのまま懐に飛び込むも……足の部分に取り付けられた大型クローに捕まる。
「しまっ……この足が……!」
メガ粒子砲をチャージするジオング。決着は決まろうと……しなかった。突如飛んできた剣がジオングに突き刺さる。その衝撃で大型クローからガンダムを手放すジオング。
「……三日月、大丈夫?」
「あ、えっと君……ステラだっけ」
その剣を投げつけたのは……槍を携えた騎士ガンダム。その二人にジオングの腕が迫る……が。それを躱し続けた二人の手助けするように、小刀……アーマーシュナイダーがジオングの腕に突き刺さり爆散する。
「大丈夫か二人とも! ……三日月! こいつを!」
それを投げつけたライフルを回収したストライクが三日月にガンダム用のビームライフルを投げ渡す。それを連射し、ジオングの大型クローを破壊するガンダム。
「こいつで……トドメだ」
槍を構える騎士、サーベルを引き抜くガンダム。二人の攻撃がジオングを貫き……それを受けたジオングは、爆散した。
「……やったなステラ! お前がそんなに楽しそうにガンプラバトルしてるところ、初めて見た!」
「シン……ステラ、そんなに楽しそうだったかな? そうだ、ねえ三日月」
「……?」
「……今のバトル、凄かった。大会で会えるといいね」
「え? 大会って……ああ、やっぱりそうなんだ」
「おいステラそれバラしていいのかよ!? ……アレ? そういやあの人は……?」
三人がそんな会話を交わしていると……いつの間にか、クワトロは何処かへ消えていた。
そしてそんなクワトロが何をやっているか。清掃中の看板が立ててあるトイレにこもり、何やら妙な機械を操作する謎の男。
「……」
何やら不満そうな顔をした後、彼は退室する……が、その個室から出た途端、その前にはクワトロが立ちはだかった。
「……やはりあのガンプラはお前のモノか。あの大会中に現れたジオングも……今回現れたジオングもお前のガンプラだな。ガンプラマフィア、コードネーム《C》」
謎の男の正体と思われる単語を放つクワトロ。
「では私の正体も明かしてやるとするか。私の名は……」
サングラスを取り、投げ飛ばすクワトロ。そして髪を整え……オールバックにする。
「キャスバル・レム・ダイクン。かつてシャア・アズナブルと呼ばれた男だ!」
殴りかかるガンプラマフィアの男の拳を避け、締め落とすシャア。
「……ガンプラを使ってロクでもないことやるんじゃない」
「大佐、また余計なことやったんですか?」
「なあに、今回は成果を出したさ」
「……でも元の動機は遊びたいからでしょう?」
「そう言ってくれるなドレン。私とてビルダーだ、あんな盛況を見て冷静で居られるわけがないだろう?」
「……あんたの場合冷静なのに理性でああいうことするからタチ悪いんでしょうが」
「刹那!やっとアルトライザーが完成したよ刹那ァ!」
「遅かったな沙慈・クロスロード。だがこの完成度は素晴らしいぞ。これならばオルガたちとの決着に相応しい」
次回『最終形態』
「俺が、俺たちが!ガンダムだ!」