鉄血のビルドファイターズ(旧題 ガンダムビルドオルガーズ)   作:にくキャベツ

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第21話 運命の種

「……い、いやぁ……凄い戦いだったな」

 

 震え声で三日月に話しかけるオルガ。だが、三日月はアインの試合を見ておらず……ずっと、破壊されたキャスバル専用ガンダムを見つめ黙り込んでいた。

 

「……ステラ」

 

「やっぱり、そうなんだよな。お前あいつと仲良いんだろ?」

 

「そこまででもないけどさ。次の相手は結局あいつなんだから」

 

 そのようなことを話すオルガたちの部屋のドアが開き……黒髪の青年、シン・アスカが入ってくる。

 

「あんた……よくステラの近くにいる」

 

「シン・アスカだ。……頼む。ここで一旦、ステラを……負けさせてやってくれ」

 


 

「えっと、改めてこんなこと頼んで申し訳ないんですけど……」

 

「いいんだよシン。……ステラを負かしたいって、どういう……」

 

 改めて、沙慈や刹那、キラも呼んで、テーブルを囲みシンの話を聞くオルガたち。

 

「……ステラは無理やり戦わされてるだけなんだ。ちょっとばかり才能があるからって、身体弄られて、変なケーブルまで刺して。ステラは望んじゃいないのに。だっておかしいじゃないですか、ガンプラバトルは本来楽しいものなんですよ……」

 

 俯き、ステラの現状を語るシン。顔を上げ、声を張り上げる。

 

「だから! ……あいつらが欲しいのは、ステラの力だけだから……ステラが負ければ、ステラは奴らに捨てられるはずなんだ。ステラが奴らの手から離れれば、後は俺がなんとかするから……」

 

「それは無理だね」

 

 シンが言うステラを救うための作戦を、一言で否定するキラ。

 

「なんで……ステラを助けるためにはこれしか……」

 

「……ステラが不要になったら、シンが思っている通りには捨てられないと思う。おそらく、ステラは殺される。ステラを通じてガンプラ連合の行なっていることがバレれれば連合は失脚、企業としての体が保てなくなる。だから、ステラを野放しにするはずがない」

 

「そ、そんな……人間を殺すだなんてそんなことすればそれこそ……」

 

「いいかいシン。国籍も、身寄りすらもない女の子の死なんて……連合ならいくらでももみ消せるんだよ」

 

 キラの語る現実の前に、顔が絶望に染まっていくシン。先程から黙って聞いていたオルガたちも冷や汗をかきはじめる。

 

「……だがキラ。お前には考えがあるんだろう?」

 

「刹那は鋭いね。……僕のバックには……ラクスがいる。それに特別に雇った切り札もね。シンがそうやって、ステラを助けたいって言うと思ったから」

 

「キラさん……俺」

 

 絶望一色だったシンの心に一筋の光が射す。

 

「決まりだ。僕たちの中で敗退してないのはオルガたちしかいないから……君たちに頑張ってもらうよ。まずは、ステラを倒すんだ。ガンプラバトルでね」

 

「あぁ……やってくれるな、ミカ」

 

「うん。もちろんだよ」

 

 ここにいる全員と、そしてその仲間たちによる共同戦線。熱き大会のバトルとはまた違う小さな戦いが、今ここに始まった。

 


 

 話を昔に遡ろう。

 

『……エクステンデッド計画?』

 

 ガンプラ連合。主に地方大会の開催やレンタルガンプラの開発、賭けバトル……そしてファイターの育成を中心とする、ファイター、研究者の集まり。彼らにとって世界大会は、一気に名を知らしめる絶好の機会だった。……最初は、純粋なエースファイター、ムウ・ラ・フラガを送り込み正々堂々と優勝するプランが立てられていた。……が、これには確実性がないと判断された。ムウはガンプラ連合調査のランキングにおいてトップランカーを常に維持し、なおかつ連合に所属しているという優秀なファイター候補だったが……

 

『はい。第二回世界大会にはメイジン・アグニカ、アムロ・レイ……そして前回優勝者のシャア・アズナブルも参戦すると思われます。ムウでは優勝を狙うことは難しいかと』

 

 ……はっきり言って、世界大会の舞台で優勝できると本気で期待している人間は、連合の中には居なかった。そこで立ち上がったのがエクステンデッド計画。一部の才能のある人間に、今まで培った技術をつぎ込み最強のファイターを誕生させようという、遊びに対して本気になりすぎた大人たちによる暴走とも言える、狂気のプランだった。だが、そのことに反論する者はもう連合の研究チームには存在しなかった。

 

『阿頼耶識システムは危険すぎます。資金をつぎ込んだエクステンデッドをダメにする可能性を考えれば採用しない方が妥当であると考えます』

 

『……ならば阿頼耶識に耐えられる改良案を探せ。壊れない程度ならいくらでも苦痛を与えて構わん』

 

『容易く言ってくれますね』

 

 そうして生まれた強化人間たち。……第一号、オルガ・サブナック。既に連合のコントロール下を離れている。第二号、クロト・ブエル。同じく、連合には既に居ない。第三号、シャニ・アンドラス。以下同文。初期型三人の反省を生かし、凶暴性を抑え、それと同じように謀反するほどの知能を抑え完成したのが第四号、ステラ・ルーシェ。前三人のように、手術を受けるだけ受け脱走することはなくなったが、幼児退行を起こし少女のような性格になってしまった。それと同時進行で作られたのはそもそも改造手術を受けたとしても連合に反抗することはない人間を、元の素体の人格を最も色濃く残した状態で強化したのが第五号、アイン・ダルトン。性格、人格の変化は全くと言っていいほど存在せず、なおかつ予選敗退し影を落としていたところを拾い、決勝への切符まで用意した為まず反抗することはないという推測だった。……それに、第五号、アインに関してはアリアンロッドの幇助を受け完成している。ワークスチームのライバルとして、興行的に起用したかったらしい。だが……そのような位置で連合が満足するわけがなかった。もちろん、アインはワークスチームに勝たせるつもりだ。

 

『ステラとアイン、そしてムウをそれぞれ別枠で出場させます』

 

 連合はその力で、表向きではムウをメインでプッシュし、別部署の別ファイターという口実でステラ、アインに出場権を用意した。もちろん、本命はこの二人だ。……結果、出場させた三枠全てが決勝トーナメントに出場することとなった。だがムウはステラと当たり脱落、アインは見積もりが甘かったのか連合のコントロール外へ。……そしてステラは……

 

『へえ、君ステラって言うんだ。君もガンプラが好きなの?』

 

 予選大会中に、運命の出会いを果たした。シン・アスカと出会った彼女は休み時間、空いた時間にシンと会うことが楽しみとなり、それがきっかけで……シンは、連合の実態と、ステラの正体を知ることになったのだ。

 

 ……さて。閑話休題。本題に戻ろう。今、現代ではシンにも、そしてシンの他に初めて出来た友達の三日月とも会えなくなり、ベットで寝込むステラがいた。

 

「……助けて……シン」

 

 彼女はもう、あの時の負荷の重ねがけで少しづつ好きになれていたガンプラバトルというものが、一瞬で恐怖の対象に逆戻りしてしまった。シンのデスティニー、インパルス……そしてあのストライクと一緒に頑張ったあの時。三日月が使ったあの赤いガンプラ。彼女はそれを思い起こして、必死にガンプラに対するマイナスな思考を振り払おうとした。……が、三日月のキャスバル専用ガンダムを思い出せば、その三日月のガンプラを、踏みにじるように破壊してしまった自分を思い出してしまう。

 

「ごめん……ステラが……ステラが悪いから」

 

 頭を抱え踞る。……彼女の夜はまだ終わりそうにない。

 


 

「……ミカ。ステラ。シン。……俺も出来る限りの事は、やってみせるさ」

 


 

 翌日。会場にて……

 

『準決勝、第一試合を始めます』

 

 ついに、この時が来た。鉄華団と、連合の最終決戦。

 

「ミカ。ここで勝てばアイツを助けられる。んで、ここで勝てば」

 

「……決勝」

 

「そうさ。……行こうぜ」

 

 強く操縦桿を握りしめる三日月。モニターに目を送るオルガ。

 

「んじゃあユニコーンガンダムマーズキング!」

 

「三日月オーガス。出るよ」

 

 二人の掛け声と共に、カタパルトから射出されるユニコーンガンダムマーズキング。その目の前に立つのは……ガイアガンダムファントム。

 

「……気をつけろミカ、アルミューレ・リュミエールとかいうバリアみてえなのがあるらしいぜ」

 

「つまり破ればいいんだろ?」

 

 ビームマグナムを取り出し、フルパワーで放つユニコーン。ガイアを包む光の壁に防がれるが……その爆風の中から現れたメイスがその膜を打ち破る。

 

「そんな……!」

 

「悪いが……こちとら力押しなら世界一なんだよ!」

 

 メイスでバリアを砕いたユニコーンが本体に殴りかかろうとするも、胴体を蹴っ飛ばされ、なおかつ距離を取ったガイアは変形する。

 

「MA形態か……素早いが耐久性はゴミ以下だぜ!」

 

 メイスをしまい、シールドのビームガトリングを放つユニコーン。躱そうとするガイアだが、空中に追い込まれ、身動きが取れなくなったところを蜂の巣にされ、爆発する。

 

「よっしゃ! 案外呆気なかったな!」

 

 勝利を確信するオルガだが……爆風の中から現れたのは、再びアルミューレ・リュミエールを展開したまったく無事なガイアだった。

 

「効いてねえ……!」

 

「……まあそうなるでしょ」

 

 シールドを投げ捨て腕からサーベルを抜くユニコーン。同じくサーベルを抜くガイア。

 

「おい! あの壁にサーベルは……」

 

「分かってる」

 

 自らはサーベルが通用しない壁に守られながら、一方的な戦いを繰り広げるガイア。ついにユニコーンのサーベルを弾き飛ばしてしまう。だが、ガイアがサーベルを突き出した瞬間……

 

「オルガ、緊急用アブソーブ!」

 

「えっ、おい!?」

 

 実は、ビームを吸収するアブソーブシステムはシールド以外にも……腕にも内蔵されていたのだ。決して見せたことがなかったその緊急用吸収口を開き、サーベルのエネルギーを吸い取るユニコーン。

 

「嘘?」

 

「これで……オルガ、ディスチャージ!」

 

 ディスチャージで時限的強化されるユニコーン。高速でガイアを殴りつける。速度はさらに加速し、それに耐えられなくなったアルミューレ・リュミエールは粉砕され……さらにまだ止まらない。連続で放たれる拳を受け、あらゆる箇所が破損していくガイア。さらに……その光の壁を作り出す発生装置を引きちぎる。地に落ちる、大地の亡霊。その前に立つのは火星の王。

 

「……嫌、嫌……負けるのは嫌、だけど三日月……!」

 

 錯乱しガイアを立ち上がらせるステラ。……だが連合がこのまま見ているだけのはずがなかった。

 

「……阿頼耶識とEXAM、ナイトロだったか? やれ」

 

「は、はい。今度はゼロシステムも搭載しました」

 

 ステラに流れ込む膨大な負荷。そしてそれを補って余りある戦闘力。耳をつんざくような悲鳴と共に、ガイアの目が光る。

 

「……ミカ。やるぞ」

 

「うん」

 

 チャージしたエネルギーを使い切ったユニコーンは、NT-Dを発動すると同時に阿頼耶識を接続、目を赤く光らせる。落としたビームマグナムを拾い、ガイアにビームを放つも……その全てが躱される。

 

「マグナムのエネルギー切れたぞ!」

 

「CAPを……!」

 

 エネルギーCAPを交換しようとするユニコーンだが、ライフルを取り出したガイアに反撃されそのような暇はない。飛行し、木の裏へ逃げようとするが……そこに先回りしていたガイアのサーベルの一撃でマグナムは破壊される。

 

「埒があかない。ここでやる」

 

 ビームトンファーを展開するユニコーン。振り返り、サーベルによる一撃を防ぐ。ガイアのビームライフルを破壊するが、突き出されるサーベルが肩を掠める。

 

「ちょっと当たった……」

 

 それに気を取られている隙にガイアのキックが炸裂し吹き飛ぶユニコーン、地面に激突し、砂埃が巻き上がる。その砂埃の中へ、サーベルを構え突進するガイアだが……

 

「……ねえ」

 

 その瞬間、光が巻き起こり……それが収まった時には、そのサーベルは、素手であっさりと受け止められていた。

 

「一つ聞いておきたいんだけどさ。本当に……手加減しなくていいんだよね」

 

 なんとビームを持ち、そこからガイアを投げ飛ばすユニコーン。今までの勢いが嘘のように、木に叩きつけられるガイア。

 

「なんだ、急に……どうしたミカ?」

 

「……いやさ、今の一瞬でなんか聞いた気がするんだよ」

 


 

「……ここ、何処?」

 

 光に包まれ……何か、真っ白な空間の中で、ステラと対面する三日月。

 

「……嫌……もう嫌」

 

「もしかして嫌々戦ってたの?」

 

「うん。だって……戦わないとダメだって、みんな言うから。ステラはそれだけやってればいいって、みんな」

 

「所詮遊びなんだから好きにやればいいじゃん」

 

 自分のことを話すステラに、三日月は自分の考えを話す。だが、ステラはまだ、安定しない様子のまま言葉を紡ぐ。

 

「でもみんな……戦わないステラに居場所はないって」

 

「俺たちも昔はそうだったよ。プトレマイオス来る? 案外楽しいけど」

 

「本当に? いいの?」

 

 顔を上げ、三日月を見つめるステラ。

 

「あー、そうだ。あんたのこと、シンが呼んでるよ。あんたを助けたいって」

 

「シンが……」

 

「だからさ。あんたはどうしたい?」

 

 光が薄れていく。現世に引き戻される二人。

 


 

「うん。……ステラも手加減しないよ?」

 

「ふーん。まあ頑張ったら?」

 

 お互いに組み付き、森の外へ飛び出す。お互いに離れ、広大な大地を、変形し駆け巡るガイア。そして、殲滅を示す赤から、暖かな緑へ変わっていくユニコーンのサイコフレーム。

 

「行くよオルガ」

 

「お、おう!」

 

 緑の暖かな身体に、熱い赤い血の流れる目が輝く。真っ向から相手しようと、MA形態のままユニコーンへ向かって行くガイア。

 

「後始末は……してくれるってさ!」

 

「そう……それじゃあ安心だね!」

 

 お互いにぶつかり合うガイアとユニコーン。刃と貫手がぶつかり合い……

 


 

《battle end》

 


 

「……ステラが負けました」

 

「よし予定通り破棄だ。戻り次第本部へ返し、殺処分しろ。そのあとはマニュアルに沿って……」

 

 確認すら取らず、ステラの処遇を決める連合の上層部。が、彼らはその会話をダクトから聞いている何者かに気付きもしなかった。排気口を破壊し、降りて来るサングラスをかけた金髪の男。

 

「何者だ……? いや、お前は」

 

「……私の名前はクワトロ・バジーナ」

 

 サングラスを投げ捨てる金髪の男。

 

「そして、シャア・アズナブルだ。……ガンプラ連合、ラクス・クライン氏の依頼につき、諸君らを処罰する」

 

「ちなみに録音は済ませてありますし、証拠の調べもついておりますわ」

 

 その背後のドアから現れるラクス。突然現れた二人の前に呆然とするガンプラ連合の組員。

 

「……は?」

 

「ちなみにステラはラクス氏の方で保護することとし、アインはアリアンロッドにスポンサーを完全に移行するものとする」

 


 

「ステラ……良かったなステラァ……」

 

「近いよシン……」

 

 ステラの頬に頬を擦り付けるシン。両方とも幸せそうだ。

 

「俺の家に来てくれステラ、俺にはステラと仲良くなれそうなくらいの妹が居て……」

 

「でも三日月はプトレマイオスに来いって……」

 

「あー……俺はステラの行きたい方に行けばいいと思うよ」

 

 すっかり仲良くなったステラと三日月。そして、ステラの友達が自分以外にまた一人増えたことを喜ぶシン。

 

「また、バトルしようね」

 

「うん。勿論」

 

 




「メイジンアグニカと呼ばれる男」
「そしてそれを追いかける男」
「アインとマクギリスがついに激突する!」
次回『バエル・フォーミュラ』
「メイジンアグニカの魂!」
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